eラーニングとは?導入メリット・デメリット・活用法を解説

eラーニングは、コンプライアンス研修や新人教育・動画マニュアルなど、さまざまな活用方法で多くの企業で導入が進んでいます。

従来の集合研修と比較してコスト面や管理面でメリットがあり、人材育成に大きく貢献しますが、導入や実際に運用する際には注意すべき点もあります。

本記事ではeラーニングの基礎的な知識から、管理者側・受講者側のそれぞれのメリット・デメリット、導入の注意点や成功のポイントについて解説します。

効果的な社員研修に「eラーニング」を活用してみませんか?

変化の激しいVUCA時代において、常に最適な研修プログラムを提供するために「eラーニング活用」が注目されています。

eラーニングシステムを活用すれば、時間や場所に縛られることなく学習でき、常に最新の情報にアップデートした学習コンテンツを提供できるため、新入社員のオンボーディングや、中堅社員のリスキリングなどに広く導入されています。

『eラーニング導入・活用 完全ガイド』では、効果的な社員研修をご検討中の人事・教育担当者に向けて、eラーニングの基本から運用のコツなど、導入事例を交えて詳しく解説しています。

どなたでも無料でダウンロードいただけますので、研修プログラム設計の参考にしてみてください。

目次

eラーニングとは?

eラーニング(e-Learning、イーラーニング)とは、パソコン、スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器、インターネットを利用して教育、学習、研修を行うことです。

インターネットを通じて学習するため、会場に受講者を集めて実施する「集合研修」とは異なり、時間や異なり時間や場所を選ばずに受講者個人の事情に応じて、いつでもどこでも学習でき、受講者個人の習熟度に合わせて自分のペースで学習できる点が特長です。そのため、以前は集合研修に参加できなかった受講者にも学習機会を提供することができるようになりました。

eラーニングはコンピュータ上で受講できる学習教材と、学習履歴やテストの成績などを把握管理するシステム(LMS: 学習管理システム)を組み合わせたものが一般的で、教育担当者が集合研修を実施したり、紙で受講状況を管理する場合と比較して、大幅に手間を削減することができるようになりました。

「eラーニング」の日本での呼称は統一されておらず、「e-ラーニング」「e-Learning」「elearning」「イーラーニング」など表記の違いがあります。また、同じような用語として「Webラーニング」「ITラーニング」「ICTラーニング」「オンライン学習」など、さまざまな形で呼ばれています。

eラーニングのトレンドと大きな変化

eラーニングは、テレワークの普及や利用者のニーズの変化によって、機能面において年々変化を遂げています。具体的なトレンドについて、それぞれ詳しくみていきましょう。

クラウド型で最新の教育をかんたんに導入できる

現在のeラーニングはクラウド型となっており、最新の教育をかんたんに導入することができます。なぜなら、クラウド型はインターネット環境さえあれば常に最新のコンテンツを活用できるためです。

自動的に素早く最新の状態にアップデートされたコンテンツを受け取ることができるため、情報鮮度が常に高い状態で教育を実施できます。クラウド型で常に最新の教育を導入しましょう。

AI(人工知能)の登場により、これからのeラーニングは大規模な学習データを分析し、学習の効率を高めることができるようになりつつあります。また、VR(仮想現実)も導入されてきています。そのために、これまではeラーニングでは難しかった「実技についての学習」にも対応が可能になってきました。

このように、知識学習だけではなく、体験型学習がeラーニングの大きなトレンドになっています。

テスト・アンケート・課題提出も可能に

eラーニングは講座をただ受講するだけといったイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、現在のeラーニングシステムではテスト・アンケート・課題提出なども行えます

そのため、講座満足度や知識定着度をかんたんに測定できるため、教育の効果を可視化しやすくなりました。さらに講座内で実施したワークを課題として上司に提出し、上司から採点・フィードバックをもらえる機能などもあり、双方向型の学習も可能です。

従来の個別学習というメリットを最大限活かしつつ、双方向での学習にも対応できるようになっており、効果・効率ともに向上しています。

10年前より進捗管理がよりかんたんに

現在のeラーニングは進捗管理機能が充実しており、10年前よりもかんたんに管理できるようになっています。

10年前に社員教育の一貫として配信されるコンテンツを管理することは手間がかかり難しく受講状況すら分からなかったため効果測定が難しかったです。

最新のeラーニングは費用対効果も良くなっており安心して導入できるなど、導入の手間以上に得られるメリットが大きくなっています。進捗管理機能が向上したeラーニングをぜひ導入しましょう。

社員が自発的に学べる環境づくり

人材育成を進めていて大きな悩みは画一的な人材育成を行ってしまうことです。しかし、最新のeラーニングでは社員が交流できる機能がついており、学びたいコンテンツを自分で探すことができます

他の社員が受けたコンテンツを知り、自分も学んでみたいという自発的な学習意欲を呼び覚ますことができます。自立型人材の育成にもつながるeラーニングシステムをぜひ試してみましょう。

従来のオフラインでの社員研修の問題点

従来は社員研修といえば、社内外の会議室を利用したオフラインの「集合研修」を実施するのが一般的でした。しかし、新型コロナウイルスの影響により集合研修の実施が難しくなったことから、eラーニングの導入が急速に進みました。

ここでは、eラーニングの利点を再確認するために従来のオフラインの社員研修の問題点について解説していきます。

実施するコストや労力

研修を実施する担当者は、研修企画や対象者の決定、タイムテーブルの作成・講師の選定など、非常に多くの労力がかかります。特に、全社研修など大規模な研修を実施する際には、各部署やステークホルダーの日程を把握した上で、開催時期と場所を選定する必要がありました。

そのため、肝心の研修の内容や研修後の効果測定に時間を割くことができず、十分な効果が得られたのかを把握できずに研修が毎回開催されているといったことも少なくありませんでした。

eラーニングでは、研修コンテンツをシステムにアップロードし、対象者に受講の時期について伝えるだけで、細かい日程調整や場所取りをする必要がなくなります。担当者は、今まで調整に使っていた時間を、より研修の内容を充実させることや、深い分析に使うことができ、研修の効果をより高めていくことが可能になります。

受講者の学習理解度が異なる

研修会場に一堂に会する集合研修では、研修前・研修後で受講者個人の学習理解度のレベルが異なります。そのため、前提の知識がない状態で研修を受けた場合、内容がまったく理解できなかったといった事案もしばしば起こっていました。

また、集合研修では講師を招いての授業形式での研修が多く、理解ができなかった受講者がいるからといって再度同じ内容の研修を行うことは難しいという問題点がありました。

eラーニングでは、受講者の理解が追いつかないと感じた時点で、巻き戻して視聴することや分からない点について調べながら研修を受けることができます。

また、理解度が低い受講者に関しては、別のコンテンツで学習を深めるといったフォローをすることも可能になります。

導入メリット

学習機会を提供する雇用者側と学習に取り組む従業員側、それぞれの視点からのメリットを紹介します。

大勢の受講者に届けられる

eラーニングの最大のメリットといえます。集合研修の場合、一人の講師が一回の講義でカバーできるのはせいぜい40-50名です。仮に1000名の社員にコンプライアンス教育を行うとしたら、20回も同じ研修を行う必要があります。

大げさに聞こえるかもしれませんが、eラーニングの場合は一つの教材を一度に数千人、数万人に配信することができるので、圧倒的に便利です。

時間と場所を確保する必要がない

eラーニングによる学習はオンラインで完結できるため、時間と場所に縛られることがなくなります

集合研修の場合、全国各地の拠点ごとに日程を組んで会場を決め、受講者に集まってもらう必要があります。スケジュール調整も大変ですし、その受講者も必ずその日に集まれるか?というとそうではありません。どうしても休まなければならない状態になった場合は、その受講者の為にスケジュールを組む必要もでてきます。

本業務をストップしなければならず、業務進行を妨げたり、顧客対応が遅れたりする懸念があるものです。業務が気になって研修への集中度が落ちたり、研修後の業務負担が大きくなったりする可能性もでてくるでしょう。

eラーニングの場合、国内はもちろん、インターネット環境が許せば世界のどこへでも同じ教材を配信できます。業務時間外でも自宅、通勤中、休憩中など、都合のよい時間に取り組むことができ、業務に支障が出る心配もなく集中して学習できます。

教育の品質や従業員のスキルを統一できる

eラーニングを利用すれば同じ教材を同じように提供できるため、教育の品質を統一させることができます。

研修を同時期に開催する場合、複数の講師を手配する必要があります。仮にテキストの内容が同じでも、講義の展開は講師次第です。講師も同じことを何度も話さなければなりません。しかしeラーニングの場合、どこで誰が受けても教材は同一ですので、講師の質に左右されることがありません。

最も評価の高い講師の研修をeラーニング化して配信も可能です。

また、毎回同じ学習コンテンツを使えることは、従業員の知識やスキルの統一化にもつながります。講師や研修が変わるごとに生じやすい内容の質の差も無くなるでしょう。何百人、何万人規模の従業員を対象にしても同一の内容を提供できます。

インターネット環境があれば、世界中どこでも同じ学習ができるため、地理的な問題もありません。個人レベルだけでなく、事業所レベルでの知識・スキル・情報の統一化が図れます。

教育施策のオリジナリティや更新性が高い

企業の人材育成プランは自社の課題に基づいて設計されるのがベストです。もちろん、自社オリジナルの集合研修を開発することも可能ですが、基本的には専門家である講師のプログラムをベースにすることになります。

eラーニングの教材の調達方法は多様です。

  • 既製品を買う
  • オーダーメイドする
  • 既製品をカスタマイズする
  • 自社で制作(内製)する

これらを組み合わせて活用することで、自社の人材育成上の課題に対して最も理想的な教育施策を追求できます。

eラーニングの教材は「モノ」ですので、「ヒト」を相手にするよりも調整が楽で自由度が高いという点も実は重要なポイントです。

また、学習コンテンツが単一化されているため、修正や変更などが必要になってもシステム内での一回の編集で完結できます。

紙ベースで配布したあとに誤植が判明したらとても面倒です。あちこちに散らばった情報の担当者への通知も、それぞれの処理の手間も要りません。必要な修正や変更をしそびれることも無くなるでしょう。

コスト削減につながる

eラーニングは、人材育成に掛かる経費、時間、労力、リスクといったさまざまなコストの削減を可能にします。集合学習で発生する場所の確保、講師選定やスケジュール調整、招集通知や出欠管理などの毎回の準備を省けます。場所は不要のため人数制限もなく一度に数千、数万という規模で実施することも可能。講師なしでも進めることができるなど、コスト面で比較しても大きな差が出ます。

学習内容や資料も一度できあがれば、毎回の作成やコピーも不要です。従業員の業務スケジュールに影響しないので、業務負担やリスクを発生させずに学習効果を得られます。

eラーニング導入の先駆者である株式会社オートバックスセブンが試算を行ったところ、同社がeラーニングを用いて始めた教育施策を集合研修で行うと仮定した場合、eラーニングの4倍のコストがかかるという結果が出ています。

さらに、ある大手学習塾では、新人講師向けの初期教育として実施していた3時間×4コマの集合研修のうち1コマをeラーニングに置き換えることで、教壇に立つまでの期間の圧縮と、集合研修のトレーナーにかけていたコストを25%削減することに成功しました。

教育にかけられるコストは企業によってさまざまなので、一概に比較することはできませんが、eラーニングの導入により学習機会や対象者が拡大されれば、仮にコスト自体が増えたとしても、費用対効果はより高いと言えるでしょう。

上述のオートバックスセブンが試算対象とした教育も、eラーニングを導入したからこそ実施が可能になったものと考えられます。そうしたことを踏まえた評価が必要です。

従業員の分析・評価、履歴の取得ができる

学習している従業員の利用状況が記録に残せるため、進捗や理解度がチェックしやすくなります。残されるデータを基にすることで、適正な評価や、理解を促すための適切なフォローが可能になります。従業員との良好なコミュニケーションの確立や公平な評価の実現は、従業員エンゲージメントの向上にも寄与するでしょう。

集合研修の実施結果を「数値化」するのは大変ですが、eラーニングの場合は学習を実施するごとに学習時間や進捗率、取得点数などが自動的にデータベースに記録されます。状況を把握したり、実施後のレポートのために集計を行ったりする手間は圧倒的に少なく済みますし、最初からデータ化されているのでさまざまな軸での分析も可能です。

また、全ての情報が一つのデータベースに蓄積されていくので、ある受講者の学習履歴を一元管理し、必要なときに可視化することが可能です。その集合はビッグデータとなり、自社の人材の傾向分析や教育施策の検討に活用することが可能です。

受講者とのコミュニケーションが楽

eラーニングの管理システム(LMS)には、受講者とのコミュニケーション機能がついているのが普通です。集合研修を手で管理していた時代は、メールソフトを駆使して受講者に連絡を取っていたと思いますが、この場合、送信先のセットだけで一苦労。誤送信のリスクも高く、連絡回数を極力減らす方向に調整していたと思います。

LMSでは、バイネームでメールアドレスを指定するのではなく、「ある教材の配信対象者」や「ある教材の進捗率が50%未満の受講者」といった条件でメールを送信することができるので、手間もリスクも減らせます。自動配信機能も使えるので、事前にメールをセットしておくことも可能です。メールのほかにも掲示板などの機能も使えます。

自分のペースで継続しやすい

学習において、個々の理解力や習得ペースには差があるものです。

集合研修のほとんどは、講師1~数名対複数。指導やサポートが行き届かないことも多く、大勢の前で恥ずかしくて質問できなかったり、場の流れに合わせて、知りたいことも分からないことも解決できないまま終わってしまうこともあるようです。eラーニングは、聞き取れない、理解できない箇所は何度でも繰り返すことができます。また、何度でも復習できるため、理解を確実にし、結果的に効率的なスキル習得につなげられるのです。

パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットなどモバイル機器にも対応しているため、学習に取り組む準備が要りません。起動してすぐに学習を開始することができます。学習プロセスをすべて端末内で完結できる手軽さは、学習の継続効果にもつながるようです。

受講者にとってのメリットは利便性に関するものが中心です。利便性は学習の動機を拡大し、ひいては学習効果につながっていきます。

導入のデメリット

受講者同士の交流が減る

eラーニングの登場以来、デメリットとして言われ続けていることです。集合研修の大きなメリットとして、同期との仲間意識や組織横断的なネットワーク作り、そして企業風土の醸成などが挙げられます。

これらの要素は会社への帰属意識、いわゆる「エンゲージメント」につながっていきます。仮に集合研修を全てeラーニングに置き換えた場合、こうした点で機会損失が生じることは否めません。

eラーニングのメリットを優先するなら、社員同士の交流を図る別の施策を行うなど、工夫が必要になるかもしれません。

その場で質疑応答ができない

集合研修なら、その場で講師や他の受講者に質問ができます。eラーニングの場合、基本的に単独で学習を進めることになるので、不明点や疑問があってもその場で解決することができません。

教材の作成や、別途質問対応窓口を設ける、社内SNSを活用するなど、運用上の工夫が必要になるでしょう。

受講者のモチベーションの維持が難しい

「いつでもどこでも学習できる」というメリットと引き換えになります。

eラーニングでは仲間と一緒に雑談を交えながら学習することはできません。そのため、モチベーションの維持に苦しむ場合があります。

受講者のモチベーション維持には管理者側の働きかけが必要でしょう。

強制感を感じることがある

「いつでもどこでも学習できる」ということは、その学習から「逃げられない」ということにもつながりかねません。

そもそも会社から提供される学習機会はフル活用すべきですし、集合研修なら逃げられるというものでもありませんが、システムで管理されるという状況にストレスを感じてしまう場合があります。

強制感を感じないよう、教材の数やスケジュール等に工夫が必要でしょう。

受講するための環境・端末が必要

集合研修は身一つあれば受講できますが、eラーニングにはインターネット環境と端末が必要です。

昔は問題になりがちでしたが、今では企業における個人用パソコンの支給は一般化していますし、eラーニング受講に個人のタブレットやスマートフォンの利用を許可している企業も多くみられます。風化しつつあるデメリットと言えるでしょう。

活用シーン、活用方法

eラーニングは個別教育だけではなく、教育の目的に合わせてさまざまな形態で教育を行うことができます。

階層別教育

eラーニングは階層別教育に有効活用できます。eラーニングは対象者の属性に合わせてコンテンツを提供することができるためです。

例えば、課長職以上の管理職には経営層予備軍としてプロジェクトマネジメントのコンテンツを配信することが可能です。階層別教育を検討している方は、ぜひ活用してみましょう。

関連記事:階層別教育・研修とは?実施目的・方法・カリキュラムを徹底解説

全社一斉教育

eラーニングは、全社一斉教育が可能です。例えば、情報セキュリティやコンプライアンスに対する認識は全社員共通認識を持つ必要があります。また、社内外に溢れる情報や社員の経験、技術やノウハウなどを集積し、全社員に共有することで新しい知識や文化の創造を目指します。これらの企業における知識資産を全社的に共有・管理したり、新しい意思決定や行動に共有・管理している知識資産を生かすためのマネジメント方法のことを「ナレッジマネジメント」と言います。

コンテンツを指定し、期日までに受講完了を指示することで効率的な全社一斉教育を行えます。全社一斉教育研修にeラーニングは大きな効果を発揮するでしょう。

専門スキル教育

eラーニングは専門スキル教育研修を実施したい教育担当者の手助けとなります。eラーニングには職種ごとに必要な知識を学びとれるコンテンツが用意されています。

例えば、専門職を育成しようと人材育成担当者が努力しても職種の経験がなければ上手く知識を伝授することが難しいことがあります。専門知識・スキルが必要な職種に大きな効果を発揮する専門スキル研修はeラーニングが有効です。

離れた拠点での研修や動画マニュアル

全国展開する企業においては、各地に拠点や店舗があり、研修を実施するためには講師の手配や会場の手配を行う必要があり、担当者に大きな負担がかかります。

また、拠点ごとに講師が異なると、研修の質にばらつきが出るといった弊害もあります。

eラーニングは、場所を問わずに同一のコンテンツで学習ができるため、全国に拠点がある企業においても研修を開催する負担を減らしつつ高いレベルの研修を行うことができます。

導入に必要なもの

eラーニングを導入するにあたって、必要なものを解説していきます。

インターネット環境

eラーニングを活用するためには、インターネット環境を整えておく必要があります。社内環境については、企業が担う範疇となるでしょう。

活用デバイス

現代では、ほとんどの人がパソコンやスマートフォンを所有しているでしょう。企業では、各従業員にスマートフォンやタブレットを貸与しているところもあります。いずれにしても、インターネット環境に適応するデバイスが必要です。

学習コンテンツ

学習の教材にあたる学習コンテンツの準備が必要です。音声のみ、講義映像、アニメーション講義、パワーポイント資料などがあり、それぞれを組み合わせたものもあります。

学習コンテンツは、自社オリジナルの内容のコンテンツも制作できますし、すでにオンライン上で提供されている学習コンテンツやコースを選択して活用することも可能です。外部コンテンツは、サービス業者と法人契約を結んでの活用となるでしょう。コンテンツ制作は、自社で内製する方法と制作業者などに外部委託する方法があります。

実はeラーニングには「SCORM(スコーム)」という各際標準規格があり、この規格に沿ったコンテンツ制作によって、あるLMSで運用したeラーニングコンテンツとその履歴を別のLMSに移すことが可能です。学習コンテンツの国際標準規格のことをSCORM(スコーム)といいます。規定に沿うコンテンツ制作によって、再利用、アクセシビリティ、互換性などを実現します。

そのため、eラーニングを本格的に導入する際は、以下のようなやり方がおすすめです。

  • LMSを選び、ベンダーのコンテンツのラインナップを確認する
  • 希望がない場合は、他のベンダーのeラーニングコンテンツを探す

これらを実践していくことで、LMSもeラーニングコンテンツも、自社に最適なものを選ぶことができます。

LMS(学習管理システム)

LMS(学習管理システム)とは、誰が、いつ、どの教材を、どのくらい閲覧したのか等の学習履歴やテストの点数、状況のデータの蓄積や分析および評価を一元化するシステムです。

個人の成長が個人の財産となる学校とは違い、企業では個人の成長が会社の業績を左右します。教育サービスの提供側(企業)と受講側(従業員)が、運命共同体なのです。そのため、企業の人材育成シーンでは、学習目標とそれを達成するための体系的な教育を用意し、一人ひとりの社員が目標に到達するまでのプロセスを管理してあげるのが理想的です。

これを可能にするのがLMS(学習管理システム)です。

必要なデータを集計し、社員の学習状況を管理者が定期的に確認することで、個人や組織全体の学習進捗率や達成度合い(学習内容の理解度)が分かるのです。

LMSの仕組みを活用することで、進捗の悪い社員に学習を促す連絡をしたり、理解度の低い社員に必要なサポートを行うことができます。

また、複数の学習コンテンツの中から、学習者が選択したり、管理者が割り当てることもできます。受講者同士が意見や情報交換のできる機能を備えたLMSも登場しています

関連記事:LMS(学習管理システム)とは?5つの特徴と活用法を解説

成功に導くための5つのポイント

導入の目的を明確にする

何のためにeラーニングを自社に導入するのかを明確にすることによって、具体的にどのように運用していくのかのイメージを持つことができます。eラーニングシステムは、数多くのベンダーから開発されており、達成したい目的によって選ぶべきシステムは異なります。

一般的な学習コンテンツで研修の目的が達成できるのか、それとも現場のニーズに合わせてコンテンツを内製する必要があるのかなどをあらかじめイメージしておくことが大切です。

リアルな場でコミュニケーション機会を設ける

eラーニングの導入によって、受講者同士のリアルな場でのコミュニケーションの機会が減少することは避けられません。しかし、受講者同士のコミュニケーションは、モチベーションの維持や情報交換の観点から非常に重要です。

eラーニングのみで研修を完結するのではなく、eラーニングとリアルな場での学習機会を設けて、使い分けることが大切です。また、リアルな場を創出することが難しい場合は、チャット機能やビデオ会議ツールを活用し、オンラインでの相互コミュニケーションを促進するようにしましょう。

受講に関するルール作りを行う

eラーニングを導入する際には、受講のルールを徹底しましょう。

eラーニングを使った学習は、就業時間に含まれるのか曖昧なケースがあります。人によっては、休日や終業後の時間で学習を進めることもありますが、時間外労働として賃金を払う必要性が出てくることもあります。

そのため、受講者の負担とならないように、就業時間内に受講することや、やむなく22時以降や休日に学習する場合には、特別手当を支払うなどといった明確なルールを定めましょう。また、受講自体が任意なのか、強制力を伴うものなのかを周知させることも大切です。

効果を定期的にモニタリングする

eラーニングの導入目的は、従業員の知識レベルの底上げや特定スキルの習得・ビジネスマナーの習得など、企業によってさまざまです。eラーニングの導入後は、それらの目的が達成できているのか、明確な成果が出ているのかといった効果をモニタリングする必要があります。

学習状況によってフォローアップを実施する

eラーニングシステムには、受講者の学習理解度や進み具合・テストの結果などを管理する機能があります。管理者はこれらの機能を活用して、学習のスピードが遅い・理解の度合いが低い受講者に別のコンテンツを用意するなどのフォローアップの仕組みを作ることが求められます。

導入時の注意点

集合研修をeラーニングに置き換える際の注意点を確認します。

全ての教育をeラーニングで学べるわけではない

集合研修には集合研修ならではのメリットや、集合型でしかできない要素があります。例えばディスカッションやロールプレイなど、応用や実技面のトレーニングは集合研修の方が向いているでしょう。

eラーニングが登場した初期の頃は、集合研修を機械的にeラーニングに置き換えたため、学習効果が損なわれてしまう例がみられました。そのような事態にならないよう、eラーニングで予習として知識の習得を行い、集合研修で実践を学ぶなど、それぞれの特徴を活かした教育設計が必要です。

従来型の対面型授業、人と人との授業と併用し、支え合うことで、教育効果の相乗効果も生まれます。最適なシーンで最適な方法を選択することが、これからのeラーニングの重要なポイントです。

もっとも、IT技術の発展により、eラーニングでカバーできる範囲は着実に広がってきています。

例えば、以前は業務に必要な「動作」を教材コンテンツで伝えるのは困難でしたが、動画配信技術の向上により、今では熟練スタッフの動画を撮影して配信することで、手を使った細かな作業の仕方や体の動かし方などを、受講者にリアルに伝えることができるようになりました。

ディスカッションやシミュレーション、実技確認が必要な学習についても、SNSやテレビ会議システム等を取り入れることで補完が可能です。

eラーニングとそれ以外の教育手法をどのように組み合わせて活用していくか、自社に最適な形を検討しましょう。

受講者のモチベーション維持に工夫が必要

eラーニングの導入により、集団性が失われる分、個人のモチベーション喚起や受講促進に苦労が生じる場合があります。

一般的なLMSでは、進捗状況に応じてメール配信を行う(例えば未修了者だけにチアアップメールを送るなど)ことができますが、メンタリングの実施やランキング発表等を通じた学習する風土作り、集合研修との組み合わせ等、システムだけに頼らない工夫も大切です。

受講環境の整備が必要

注意点というより導入の大前提となりますが、eラーニングの利用には、インターネット環境と端末が必要です。自社のインフラの状況を確認し、必要に応じて投資が必要になります。

なお、個人端末が支給されていなくても、受講サイト自体は個人ごとのログインアカウントで切り替えができるので、共用パソコンやタブレットを利用している例もみられます。

自社のニーズに合わせる

企業がeラーニングを導入する効果は、単に従業員のスキルアップに留まりません。導入の前に、eラーニングを導入するそもそもの目的を明確にしておくことが大切です。明確な目的によって、自社にとっての適切なニーズを見出すことができるでしょう。

従業員の誰に、どのタイミングで、どんな学習コンテンツを提供し、どのように管理していくのかなど、自社のeラーニング構築のすべてのフェーズでの指針となります。目的が明確になっていないと、単なる学習提供に留まりやすく、従業員のスキルアップや業務反映効果が低くなってしまうでしょう。

コミュニケーション機会への配慮

コストの掛かりやすい集合研修の代わりにeラーニングを取り入れたとき、社員同士の接点の減少は避けられないでしょう。eラーニングのデメリットにもなり得る点です。学習やスキルアップに関わるすべてのことをeラーニングに置き換えてしまうのは得策ではないようです。

リアルに集まって一緒に学習する環境は、コストは掛かりますがデメリットばかりではないはずです。感情や五感の感覚が重要な技術など実技トレーニングなしには習得できないものもあります。eラーニングを社内活用する中で、使い分けをしていくことが大切です。

導入事例

eラーニングシステム「AirCourse」を提供している当社では、以下の企業様が導入しています。

eラーニングシステムを導入し育成情報を一元管理|株式会社ぐるなび

課題

数百名を超える営業メンバーの研修をオフラインで実施していたため、管理者・受講者ともに負担が大きかった

施策

eラーニングシステムを導入し、育成情報を一元管理

結果

会場や日程調整の手間が軽減し、担当者の負担が減った。また、積極的にコンテンツを受講するメンバーが増加

飲食店の情報サイトや店舗効率化のサポートなどを手がける株式会社ぐるなびでは、営業活動の支援や営業メンバーの育成を行うセールスイネーブルメントグループにおいて、弊社の提供するeラーニングシステム「AirCourse」を活用しています。

従来は、営業メンバーの育成を集合研修で実施しており、受講者の日程調整や会場の手配などに時間がかかり、受講者・管理者双方に大きな負担となっていました。特にエクセルを用いて数百人のメンバーの情報を管理していたため、膨大な手間が生じていました。

AirCourse」の導入後は、受講情報の管理やアンケート結果など育成に関する情報を一元でまとめて管理できるようになり、担当者の負担が大幅に軽減しました。また、レポート機能を活用し、進捗状況のフィードバックやアンケート結果の共有を実施することによって、積極的にコンテンツを受講するメンバーが増えています。

事例記事:育成に関する情報をeラーニングで一元管理し、運営工数を大幅削減!|株式会社ぐるなび様 AirCourse導入・活用事例

中途入社のメンバーに向けた研修に利用し、管理工数を削減|株式会社ニチイケアパレス

課題

新型コロナウイルスの影響で集合研修が実施できなくなった

施策

eラーニングシステムを導入し、研修をオンラインで実施

結果

移動にかかる工数の削減、研修に参加する従業員の穴埋めにかかる負担がなくなった

介護付有料老人ホームや高齢者向け住宅の運営を手掛ける株式会社ニチイケアパレスでは、人事部教育研修課において弊社の提供するeラーニングシステム「AirCourse」を活用しています。

従来は中途メンバーの研修を集合研修で実施していましたが、新型コロナウイルスの影響で研修の実施ができなくなってしまったため、eラーニングシステムの導入を決定。また、従業員が3,000名を超えたため、同一の研修を実施することに課題を感じていました。

中途入社者が毎月1日と16日に30名前後入ってくるので、入社後のオンボーディングという形での導入研修として活用しています。受講者からは、「かつては片道2時間以上をかけて研修に行っていたため、移動の時間を省くことができた」「移動による感染症への不安が軽減した」といった声が上がっています。

また、研修の期間は別の職員が業務の穴埋めをする必要があったので、その負担を軽減することができたのも「AirCourse」を導入して良かった点です。

事例記事:eラーニングで「中途入社者へのオンボーディング」「資格試験対策」「福利厚生」をすべてカバー|株式会社ニチイケアパレス様 AirCourse導入・活用事例

eラーニングで拠点ごとの研修の質を均一化|株式会社SHIFT

課題

拠点ごとに講師を派遣する必要があり、研修の質にばらつきがあった

施策

eラーニングシステムを活用した社内試験を実施

結果

積極的に社員がeラーニングを活用し、受注単価が15.2%アップ

ソフトウェアの品質保証・テストに関するサービスを提供する株式会社SHIFTでは、中途入社者向けに5日間の集合研修を実施していますが、拠点ごとに講師の手配を行わなければならず、場所によって研修内容に差が生じるケースがあることに課題を感じていました。

特に、当社独自の教育システム『トップガン教育(社内検定試験制度)』を導入したいという方針があったので、拠点によって均一の研修や教育を提供できる環境づくりが急務でした。

eラーニングを活用した検定試験を導入した後は、平均受注単価が15.2%もアップしました。検定試験の結果は、キャリアやインセンティブに直結するため、積極的にeラーニングシステムを受講する従業員が増えています。

事例記事:ムーブメントにまで発展した社内検定試験制度により、受注単価15.2%アップを実現|株式会社SHIFT様のAirCourse導入・活用事例

まとめ|導入後は効果測定を行い、適切に運用しよう

本記事ではeラーニングの基礎知識から、メリット・デメリット、具体的な導入事例などについて解説しました。eラーニングの実施は、コストや管理工数の面で企業に大きなメリットをもたらすとともに、従業員のスキルレベルの底上げに繋がり、企業の発展に大きく役立ちます。

AirCourseは、クラウド型のeラーニングサービスで初期費用0円&月額200円/名~の低コストで利用できます。自社オリジナルコースを作成しての運用はもちろん、受け放題の動画研修がついているためすぐに人材育成をスタートできます。

効果的な社員研修に「eラーニング」を活用しませんか?

VUCA時代の社員研修は、企業を取り巻く流動的な環境にあわせた適切な研修プログラムや、定期的なコンテンツのアップデートが欠かせないため、eラーニングの活用が成功の鍵となります。

eラーニングシステムを活用すれば、時間や場所に縛られずに学習できるため、より広範囲な人材のスキルアップや教育の均質化を実現できます。

また、最新の情報に常にアップデートして学習コンテンツを提供できるため、社内人材に即戦力のスキルを身に付けさせる「リスキリング」にも活用可能です。

KIYOラーニングが提供する『eラーニング導入・活用 完全ガイド』では、効果的な社員研修をご検討中の人事・教育担当者に向けて、eラーニングの基本から自社運用のコツを導入事例とあわせて解説しています。

どなたでも無料でダウンロードいただけますので、自社のeラーニング活用の参考にしてみてください。

ABOUTこの記事をかいた人

大手コンサルティング会社や研修会社にて、人材育成・組織開発の指導と研修講師に従事し、2012年より独立。 上場企業、中堅企業、地方自治体への指導、3000名以上のキャリアカウンセリングなど豊富な実績を持つ。 若手社員・リーダー育成、営業力強化、組織改革、キャリア開発など多様な研修プログラムで各企業の要望に応えている。