DX推進人材の育成における課題と研修担当者の果たすべき役割│第1回「DXの現状」

多くの企業でDXが検討、実施されている中でDXを推進するための人材育成の必要性が声高に叫ばれていますが、具体的に研修担当者が果たすべき役割は明確になっていません。

この記事では、IPAの調査結果(※)をもとにDX推進における課題を総括するとともに、その課題解決のために研修担当者が果たすべき役割を全3回にわたって解説します。

「DX推進人材の育成における課題と研修担当者の果たすべき役割(全3回)」

第1回「DXの現状」

第2回「DX推進人材の現状と課題

第3回「研修担当者の果たすべき役割」

連載第1回の今回は、DXの現状について解説します。

DXの必要性は強く認識されている

独立行政法人情報処理推進機(以下IPA)は、東証一部上場企業1,000 社に対して、DX の取り組みに関するアンケート調査を行い、回答のあった92社のデータを集計し、その結果を2019年5月17日に「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」(以下、IPA調査)として発表しました。

IPA調査によると、「貴社では、既存のビジネスの変革や新たなビジネスの創出の必要性を感じていますか?」という問いに対して、6割以上(63%)の企業がビジネス変革・創出の必要性を「非常に強く」感じており、「ある程度強く感じている」と回答した企業を含めると、9割以上(91.3%)の企業においてDXの必要性が強く認識されていることがわかりました。

出典:「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」

現時点での取り組みは「業務の効率化」が主流となっている

それでは、実際に企業が行っているDXの取り組みとはどのようなものなのでしょうか?

IPA調査によると、「人工知能(AI)やIoTなどのデジタル技術の活用により、何を達成することが重要だと考えていますか?」という問いに対して、「業務の効率化による生産性の向上」については、約6割(60.9%)の企業が「極めて重要である」と回答した一方で、他の4項目については、「極めて重要である」と回答した企業は4割に満たないという結果になっています。

出典:「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」

「業務の効率化による生産性の向上」以外の4項目とは、「既存製品・サービスの高付加価値化」、「新規商品・サービスの創出」、「現在のビジネスモデルの根本的な変革」、「企業文化や組織マインドの根本的な変革」といったDXの本来の目標であるべき内容であり、これら4項目よりも、「業務の効率化による生産性の向上」がはるかに重要視されていることがわかります。

つまり、DXの必要性は強く認識しているものの、実行に移す段階では、DXの主眼であるビジネス変革にいきなり取り組むのではなく、今までの延長線上にある効率化と生産性の向上に取り組むことをDXへの第一歩とする企業が多いと考えられます。

実際に成果が上がっている企業は、まだ少数にとどまっている

次に、DXへの取り組みが実際にどの程度の成果を上げているのかを見てみましょう。

IPA調査では、前述のDXへの取り組み内容5項目それぞれについて成果の状況を問い、回答を集計しています。

出典:「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」

それによると、もっとも多くの企業が重要視している「業務の効率化による生産性の向上」の取り組みですら、「既に十分な成果が出ている」と「ある程度の成果が出ている」を合計しても3割に満たない(28.2%)という結果になっており、さらに他の4項目については、なんらかの成果が出ている企業はせいぜい10%にとどまっていることがわかります。

DX専門組織を設置した企業の方が成果を出しやすい傾向にある

前述の調査結果から、DXで実際に成果が上がっている企業は、まだ少数にとどまっていることがわかりますが、どのような企業が成果を出しているのでしょうか。

IPA調査では、回答企業のDXの取り組み成果の水準をLV0からLV5の6つのレベルに分類した上で、成果の出ている企業の特徴を分析していますが、その中で、成果の水準ともっとも関連性の高い項目として「DX専門組織」の有無をあげています。

次のグラフは、DX推進レベル(回答企業のDXの取り組み成果の水準をLV0からLV5の6つのレベルに分類したもの)ごとに、「DX専門組織」が「ある」か「ない」の比率を表示したものです。

出典:「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」

このグラフから、DX推進レベルが上がるにつれて「DX専門組織」があると回答した企業の比率が高くなっています。

つまり、DX専門組織を設置した企業の方が成果を出しやすい傾向にあることがわかります。

まとめ

IPA調査によると、ほとんどの企業でDXの必要性が強く認識されています。

しかし、実際の取り組みは、DXの主眼であるビジネス変革ではなく、今までの延長線上にある「効率化と生産性の向上」が多くなっています。

さらに、具体的な成果が出ている企業は非常に少なく、もっとも積極的に取り組まれている「効率化と生産性の向上」でさえ、成果の出ている企業は3割にも満たないという結果になっています。

さらに、この調査では、成果の出ている数少ない企業の特徴を分析していますが、もっとも顕著な特徴として「DX専門組織」を設置していることをあげています。

IPA調査の結果から、DXを推進し成果を出すためには、「DX専門組織」の設置が必要であるということがわかりますが、実際に「DX専門組織」を設置するためには、その組織を構成するDX推進人材を採用、育成する必要があります。そこで、次回は、DX推進人材に焦点をあてて、その現状と課題を、同じくIPA調査をもとに解説します。

「DX推進人材の育成における課題と研修担当者の果たすべき役割(全3回)」

第1回「DXの現状」

2回「DX推進人材の現状と課題

第3回「研修担当者の果たすべき役割」

ABOUTこの記事をかいた人

平井 明夫

ソフトウエアベンダーやコンサルティング会社で20年以上にわたりコンサルティング、企業経営に携わる。現在は、IT企業の新規事業立上げ、事業再編を支援するかたわら、データ分析、人材管理、LMSなどに関する講演・執筆活動を行っている。