チームをまとめるリーダーは、企業の持続可能な成長にとって重要な存在です。リーダー育成に課題を感じている企業も多いでしょう。
リーダー育成を成功させるポイントは、リーダーに求められるスキルを捉え直すことです。
本記事では、リーダーとは何か、必要な資質やスキル、効果的な育成方法を解説します。
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企業の発展にリーダー人材の育成は欠かせません。しかし、「育成の時間や余裕がない」「どう進めるべきかがわからない」など、多くの企業が課題を抱えています。
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リーダーとは
リーダーとは、チームや組織の指導者、統率者、先導者のことを指し、その役割は目標達成と課題解決のために指揮することです。優れたリーダーは、チームの能力を最大限に発揮し、良い成果を出せます。
リーダーとしての能力は、先天的な素質のみで決まるわけではありません。これまでの訓練や経験を通じて身に付けてきたスキルによって能力を発揮できます。
リーダーとマネージャーの違い
リーダーとマネージャーは、目標達成のためにメンバーを指導するという共通点があります。
違いは、チームにおける役割です。リーダーはチームを目標達成に導く役割を、マネージャーは業務が円滑に進むように環境を整備する役割を担います。
主体的にチームを先導するリーダーと、管理者であるマネージャーが共同することで、チームは最大限のパフォーマンスを発揮できるようになります。
リーダーに求められる6つの資質・スキル
リーダーは、主体性に対する認識の次元を高める必要があります。
これまで、主体性とは基本的に自分1人の世界で完結するものでした。リーダーに求められる主体性はこれとは違い、その選択と判断が他者(メンバー)を巻き込むものであることを理解しなければいけません。
ここでは、リーダーに求められる資質とスキルを6つ解説し、それぞれのスキルがある場合とない場合の具体的な行動特性および改善策を提示します。
1. 主体性と判断力
リーダーに必要な主体性と判断力を身に付けるには、視座を上げることが重要です。
視座を上げて、指揮命令者として物事を考えるようになると、自ずと主体性が生まれてきます。
その後の行動を考えるときに「ミスを減らすには」「納期を短縮するには」「コストを下げるには」といった目的視点がもてると、主体的に何をすればよいかを考えられるようになり、行動につながっていくでしょう。
また、リーダーになると、判断基準も変わります。
例えば、ある仕事を8時間で行うように指示を受けたものの6時間で終わる内容だった場合、受動的であればゆっくり8時間かけて終わらせようと考えます。ここで、視座を上げると、「6時間で終わらせて2時間コストを削減しよう」「空いた時間を別の仕事に活用しよう」という判断になるでしょう。
スキル有りの行動特性 | ・指示を待つだけでなく、自ら課題を発見し、解決策を提案する ・チーム目標達成のために、率先して行動を起こし、周囲を巻き込む ・情報収集を怠らず、状況の変化に応じて柔軟に判断を修正する |
スキル無しの行動特性 | ・指示された業務以外は行わず、受け身な姿勢で仕事に取り組む ・状況の変化に気づかず、当初の計画に固執してしまい、結果的に目標達成を阻害する |
改善策 | ・周囲の状況をよく観察し、問題点や改善点に気づく訓練させる ・小さなことからでも良いので、自ら行動を起こし、成功体験を積ませる |
2. 目標設定・計画立案力
リーダーには、メンバーの主体性を引き出す目標設定と計画立案力が必要です。
自分がメンバーだったときは、リーダーに目標設定や計画を立案してもらい、仕事の指示を受けて行動していたはずです。しかし、リーダーになれば、その役割は自身がもつようになります。
指揮命令者の立場になると、「いつまでに何を達成するのか」という視点が必要になります。「誰に・何を・いつまでにやってもらうか」という具体的な計画を立案して初めて、他のメンバーに細かく指示することが可能です。
ゴールまでの見通しを他のメンバーに示すことで、チーム全体のモチベーションアップにもつなげられるでしょう。
スキル有りの行動特性 | ・チームメンバーの意見を聞きながら、具体的かつ達成可能な目標を設定する ・目標達成までのプロセスを明確に示し、メンバーのモチベーションを高める ・計画に柔軟性を持たせ、予期せぬ事態にも対応できるようにする |
スキル無しの行動特性 | ・チームメンバーの意見を聞かずに、独断で目標を設定する ・現実的ではない目標を設定し、メンバーのモチベーションを低下させる ・計画が硬直的で、状況の変化に対応できない |
改善策 | ・目標設定の際には、必ずチームメンバーと合意形成を図るよう促す ・目標達成までのプロセスを可視化し、進捗状況を共有する |
3. コミュニケーション力
目標を達成するためにメンバーと協力し合う必要がある場合、リーダーのコミュニケーション力が重要です。リーダーのコミュニケーション力が低いと、計画の実行度も低下し、目標も達成できなくなります。
言葉の選び方、コミュニケーションの頻度、コミュニケーションの媒体(オンラインかオフラインか)など、メンバーの行動はさまざまな要因に影響を受けます。プロジェクトを成功に導く行動を引き出すために、リーダーはメンバーそれぞれの立場に立って、どのようなコミュニケーションが最適なのかを状況に応じて選び取ることが求められるでしょう。
スキル有りの行動特性 | ・メンバーの意見に耳を傾け、共感的に対応する自分の考えを明確かつ簡潔に伝える ・非言語コミュニケーションも意識して円滑な人間関係を築く |
スキル無しの行動特性 | ・メンバーの意見を軽視し、一方的に指示を出す自分の考えを伝えるのが苦手で、誤解を招く ・非言語コミュニケーションが乏しく、冷たい印象を与える |
改善策 | ・傾聴スキルを磨き、相手の立場に立って考える訓練をさせる ・自分の考えを整理し、分かりやすく伝える練習をさせる |
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4. 課題解決力
リーダーとして組織を目標達成に導くために、課題解決力は必須のスキルです。
目標達成のために立てた計画は、必ずしも計画通りに進行するとは限りません。計画を完璧に作ることは難しいうえ、日々状況は変化します。
当初の計画通りに進まず目標達成が難しい場合には、リーダーは課題を見つけて解決する必要があります。ギャップが生じていることをいち早く認識し、解決すべき課題が何なのかを特定したうえで、解決策を明示する必要があるでしょう。
スキル有りの行動特性 | ・課題の原因を多角的に分析し、最適な解決策を選択する ・関係部署と連携を取りながら、迅速かつ効果的に課題解決に取り組む ・失敗からも学び、次に活かす |
スキル無しの行動特性 | ・課題の原因を深く分析せず、場当たり的な対応をする ・関係部署との連携が不足し、課題解決が遅延する失敗を隠蔽し、同じミスを繰り返す |
改善策 | ・論理的思考力や問題解決のためのフレームワークを学ばせる ・関係部署とのコミュニケーションを密にするよう促す |
5. コーチング力
主体的に行動できるメンバーを育成する役割で重視されるスキルが「コーチング力」です。
コーチングとは、コーチ(リーダー)とクライアント(メンバー)の対話を通じて、メンバーが目標達成に向けて主体的に行動することを支援するプロセスです。リーダーが事前に答えを用意する、何かを強制することはせず、メンバー自身が気づくことを重視します。
コーチングを行う際、リーダーはメンバーに目標達成に向けて必要な考え方や行動を問いかけ、思いや考えを引き出すサポートをします。
自身の中から生まれた気づきや答えは、納得感のある指針となり、主体的に行動できる力を引き出せるようになるでしょう。
スキル有りの行動特性 | ・メンバーの強みを引き出し、成長を支援する ・メンバーの自主性を尊重し、自ら考え行動するよう促す ・建設的なフィードバックを提供する |
スキル無しの行動特性 | ・メンバーに過剰に指示や命令を出す ・メンバーの自主性を阻害する ・抽象的なフィードバックしか提供できない |
改善策 | ・コーチングスキルを学び、実践させる ・メンバーの個性や強みを理解し、適切な指導を行うようサポートする |
6. メンタリング
リーダーがメンタリングのスキルを身に付けておくと、メンバーの育成・スキルアップに大いに役立てられます。
メンタリングとは、経験豊富なメンター(リーダー)が自身の知識や経験を活かし、成長段階にあるメンティー(メンバー)の成長を支援する役割のことです。二人三脚のように共に成長を目指す過程を通じて、メンバーは知識や技術を短期間で吸収しつつ、組織の風土を学べます。
結果として、業績向上やチームの一体感につながるでしょう。
さらに、困ったときに相談できるリーダーの存在は、メンバーにとって安心感にもなり、仕事のモチベーション向上にも寄与します。
スキル有りの行動特性 | ・経験に基づいたアドバイスや指導を提供する ・メンバーのキャリア形成を支援する ・ロールモデルとして、メンバーの成長を促す |
スキル無しの行動特性 | ・自分の成功体験だけを語り、押し付ける ・メンバーのキャリアプランを無視する ・リーダーシップを発揮できない |
改善策 | ・メンタリングスキルを学び、実践させる ・メンバーのキャリアプランを尊重し、適切な助言を行うよう促す |
リーダー育成の課題
リーダー育成において、企業はさまざまな課題に直面します。例えば、現場の負担の大きさやリーダー志向をもつ人材の減少などが挙げられるでしょう。
課題に対策していくために、まずは生じる可能性のある課題について把握しておくことが重要です。
現場の負担が大きい
リーダー候補の人材は即戦力である場合が多く、育成のために現場から離せるほど余裕がないといった課題があります。リーダースキルの育成に専念させてしまうと、業務を行う現場への負担が大きくなるでしょう。
とはいえ、長期的な企業の発展を考えると、リーダー育成は重要です。目先の利益にとらわれず、うまく現場をまわせるような工夫が必要です。
育成体制が整っていない
リーダー育成についてのノウハウがなく、社内の教育体制が整っていないと、効果的な育成を行えません。
新任リーダーが、これまでの業務の遂行に加え慣れない管理者としての役割を担うと、業務過多が生じやすくなるでしょう。物理的な時間の制約とプレッシャーは、アサインした人材に期待するリーダーシップの発揮を阻害する要因となります。
企業には、リーダー研修の他、実務支援や1on1ミーティングなど包括的なアプローチが必要です。明確なリーダー基準を作り、中長期的に取り組んでいくことが重要です。
リーダー志向をもつ人材が減少している
近年では、働き方の多様化により、社員の帰属意識が低下傾向にあります。
率先してリーダーになろうという志向をもたない人も多いため、企業はリーダーになるメリットを周知するなど、モチベーションを上げるような取り組みが必要です。
育成の効果がわかりづらい
リーダー育成は、実践機会がなければ効果がみえづらくなります。
育成方法ごとに目的を明確化し、リーダーの育成担当者による実践後のフィードバックを行うのも一つの方法です。
リーダーを育成する手順と方法
リーダーの育成は、以下のような手順で進めます。
- リーダー育成の目的を明確にし共有する
- リーダー候補者を選定する
- 育成計画を立てる
- 育成施策を実施し、検証する
また、リーダー育成には、研修や現場での教育、1on1ミーティング、eラーニングなど、さまざまな方法があります。
体系的なリーダー育成の方法をそれぞれ確認しましょう。
リーダー研修の実施
リーダー研修は、リーダーとして求められる基礎的な知識やスキルを身に付けてもらうために行う研修です。
主な対象者は、新規登用されたリーダーです。さらに、次期リーダー候補にも研修に参加してもらうと、早い段階からリーダーとしての物事の捉え方を養うことができ、引き継ぎ時に生じる負担を軽減できます。
関連記事:リーダー研修とは?目的や内容、実施手順、効果的なポイントを解説
現場での教育、実践
現場での教育や実践には、新入社員向けに多くの企業が導入するOJT(On-The-Job Training)という方法があります。これは、リーダーの育成においても有効です。
実際の職務現場での教育を行うOJTでは、育成対象者は育成担当者と密にコミュニケーションを取りながら業務を学べるため、慣れない立場に対する不安を解消しつつ、モチベーションを高められます。
1on1ミーティングの実施
1on1ミーティングとは、社員のパフォーマンスやモチベーションの向上を目的に行われる、1対1の話し合いです。
1on1ミーティングを実施することで、育成対象者が抱えている問題を自ら言語化する機会を与えられます。自分が置かれている状況を客観視でき、課題が明確化されることで、育成担当者がサポートすべき内容も明確になるでしょう。
eラーニングの活用
eラーニングは、PCやタブレット、スマートフォンを利用して、オンライン上でさまざまな内容を学べる電子的手段を用いた教育・学習プロセスです。最新の情報が迅速に共有されるため、育成対象者は常に最新の知識を得られます。
また、eラーニングは個々のスキルレベルや進捗に沿ってカスタマイズされたカリキュラムで学習できます。興味や必要性に合わせて、育成対象者のペースで学習できるでしょう。
時間の制約でまとまった研修の時間を取れない新任リーダーでも、時間を見つけてリーダースキルを高められます。
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リーダー育成を成功させるためのポイント
リーダー育成を成功させるためには、企業はリーダーに求める行動を明確化し、人事制度へ反映させる仕組みを作ることが重要です。企業全体で取り組めるような工夫も必要でしょう。
リーダー育成を成功させるためのポイントを解説しますので、ぜひ取り入れてください。
リーダーに求める行動を明確化する
リーダー育成の導入前には、企業は自社に必要なリーダーの素質・スキルを明確化することが重要です。
明確化した素質・スキルはゴールとして設定できるため、統一した育成を行うのに役立ちます。また、リーダーに求める行動を具体的に示すことで、リーダー候補者も目指すべき方向性を理解しやすくなり、リーダー育成がスムーズに行えるでしょう。
選抜基準を作り、人事制度へ反映させる仕組みを作る
リーダー志向をもつ人材を増やすために、選抜基準を作り、人事制度へ反映させる仕組みを作るのも有効です。
選抜基準は求めるリーダー像に基づいて、具体的なスキル、経験、パーソナリティ等で定義します。
例えば、コミュニケーション能力が高い、問題解決能力がある、責任感があるといった抽象的な表現ではなく、複数部署との連携経験がある、3年以上の実務経験がある、周囲からの信頼が厚いといった具体的かつ測定可能な基準を設定することで、客観的で公正な選抜を実現できます。
また、選抜基準は人事制度に反映させることで、組織全体で共有され、透明性の高い運用が可能になります。昇進・昇格基準、評価シート、研修プログラムなどに選抜基準を組み込めば、リーダー候補者はもちろん全社員がリーダーシップへの意識を高めることができるでしょう。
選抜されたリーダー候補者には、育成プログラムへの参加機会を提供するだけでなく、継続的なフォローアップが必要です。定期的な面談やフィードバック、メンタリング制度などを活用し、育成状況を把握することで、個々の成長を支援し、リーダーシップの発揮を促進できます。
企業全体で取り組む
リーダー育成においては、周囲の協力を得られる体制を構築し、企業全体で取り組む姿勢が重要です。リーダーはプレッシャーのかかりやすいポジションのため、ストレスを抱えやすく、孤立してしまうことがよくあります。企業全体でリーダーをサポートできる体制を作ることは欠かせません。
上司がロールモデルとなり、企業全体で育成していけると、効果も早く出やすくなります。
継続的な学習機会とアウトプットの場を提供する
リーダー育成は短期間で取り組むものではありません。研修などで学んだことを現場で活用するというプロセスを、繰り返し行うことで定着を図ります。そのためには、継続的な学習環境とアウトプットの場を設けることが必要です。
学習で身につけたスキルや知識を発揮させるためには、ストレッチアサインメントを取り入れるのも有効です。ただし、初めてリーダーとなる若手社員には、スモールステップで成功体験を積ませることを意識しましょう。
リーダー候補者に合った長期的な育成計画を立て、幅広い経験を積ませることで、多様な状況にも対応できるリーダーの育成につながります。
まとめ
リーダーは、チームの能力を最大限に引き出し、目標達成や課題解決を主導する存在です。そのスキルは、研修や経験を通じて高められます。
ただし、リーダー育成の難易度は高く、研修も失敗しやすい傾向があります。リーダー育成を成功させるために、失敗にありがちな原因を把握し、それらを回避する対策を講じることが重要です。
研修アンケートは、その対策として有効な方法です。効果的なアンケートは、研修プログラムの問題点を発見するのに役立ちます。
適宜アンケートの最適化を図り、研修の効果が下がらないように注意しましょう。研修アンケートの作り方については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。
関連記事:研修アンケート作成のコツを大公開(無料テンプレート付き)
また、リーダーの育成がうまくいかないと感じているのであれば、人材育成計画自体を見直す必要があります。人材育成計画書の作り方について知りたい担当者は、以下の記事を参考にするのがおすすめです。
関連記事:人材育成の育成計画書の作り方|無料のサンプルフォーマット付き
“効果的なリーダー研修”にeラーニングを活用してみませんか?
役職やスキルにあわせて階層ごとに必要な知識を身に着けてもらうリーダー研修では、一人ひとりにあった最適な研修プログラムの提供が大切です。
また、企業を取り巻く流動的な環境にあわせた適切なプログラムや、定期的なコンテンツのアップデートが欠かせません。
そのため、効果的なリーダー研修を実施するためには、eラーニングの活用がおすすめです。
オンラインで学習できるeラーニングシステムを活用すれば、より広範囲な人材のスキルアップや教育の均質化を実現できます。
時間や場所に縛られることなく、また、最新の情報に常にアップデートして学習コンテンツを提供できるため、リーダー研修だけでなく従業員のリスキリングなど幅広く導入されています。
『eラーニング導入・活用 完全ガイド』では、効果的な社員研修や人材育成にご検討中の人事・教育担当者に向けて、eラーニングの基本から運用のコツなど、導入事例を交えて詳しく解説しています。
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