■御社の事業・サービス内容、ご担当者様の業務内容を教えてください。
佐相様(以下、佐相):ソフトウェアの品質保証・テストを専門とし、開発したソフトが正しく動くかバグがないかの品質チェックを行っています。
ソフトウェア開発産業の国内マーケットは約15.5兆円あり、そのうちの5兆円がソフトウェアテストマーケットとなっていますが、99%が自社または開発者がテストを行っています。第三者に依頼するアウトソースは1%という現状です。
自前で行うソフトウェアテストだと、どうしても客観性の担保や厳格なチェックが疎かになりやすいので、欧米では第三者機関へのアウトソースが既に一般的となっています。日本でも徐々に需要は増えつつあり、当社では2009年からソフトウェアテストサービスをスタートしましたが、売上は約1.5倍の成長をし続け、2019年には東証マザーズから東証第一部へ市場変更をしました。99%のブルー・オーシャンのマーケットが待っているので今後もさらなるシェア拡大を目指しています。
業務としては、社内向けと社外向けの研修を管轄している能力開発部にて、主に社内向け研修を担当しております。
この10年間でグループ会社含め社員数が500人から5,000人に増えており、さらに毎月100名ほど中途社員が入社してきますので、そこに対する教育が中心となっています。
伊藤様(以下、伊藤):私は社外向け研修を担当しています。
外部にヒンシツ大学という教育機関を展開し、公開講座や企業様向け研修、eラーニングの提供を行っています。ソフトウェアに関わる事業会社やSIer、情報システムに携わる若手・中堅社員の方々がお客様です。毎年1350名を超えるお客様がヒンシツ大学をご受講して頂いております。
■ AirCourse導入前の状況や抱えていた課題を教えてください。
佐相:中途入社者向けに5日間の集合研修を行っていますが、地方拠点も含め毎月100名もの新しい社員が入社してくるので、導入前はその度に拠点ごとに講師の手配を行わなければならず、場所によって研修内容に差が生じるケースがあることも課題としてありました。
また、研修業務に関わる工数削減は勿論のこと、どの拠点に対しても均一の研修や教育を提供できる環境づくりが急務でした。
背景として、スキルアップやキャリアップを目指す社員を対象とした、当社独自の教育システム『トップガン教育(社内検定試験制度)』を導入したいという、全社での方針があったので、拠点によって学習環境や内容に偏りがあってはいけなかったからです。
■AirCourse導入の経緯、および導入の決め手などを教えてください。
佐相:UI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)が決め手です。AirCourse以外のLMSも調査はしていたのですが、UI/UXの観点からAirCourse一択でした。 ユーザーにとっての使いやすさは特にこだわっていました。使いにくいインターフェースだとその時点でやる気が減少し、それが原因でユーザーが受講から遠ざかってしまいます。そういう事態は絶対に避けたいと考えていました。
また、直感的に使えるものでなければ、eラーニングシステムの利用開始をアナウンスした際に、管理者が問合せや説明の対応に時間と工数を奪われてしまうことも自明でした。
決め手となったUI/UXのおかげで導入時から導入後も受講者からの使い方に関する問合せはほとんどありませんでした。利用しているにも関わらず問合せがないということは、直感的に使えているという証左でもあるので、AirCourseは受講者と管理者の双方にとってとても有益なUI/UXだと感じています。
伊藤:ちょうどその頃、ヒンシツ大学でも受講生の進捗管理を効率的に行いたく、それにはLMSが必須だと考えていたので、社内と並行して導入を決めました。UI/UXに加え、スマホートフォンで簡単に利用できる点も非常に重要なポイントになりました。
■導入時に苦労されたこと、注意した点などがあれば、教えてください。
佐相:LMSの導入がはじめてだったので、そもそもeラーニングにどのくらいの効果があるのかが未知数でした。この部分の懸念はあったものの、まずは導入理由であった『トップガン教育』の検定試験での成功事例をどんどん作っていくように努めました。
後述しますが、この検定試験はキャリアや給与を大きく左右するものなので、イベントも複数回開催しました。実際に大きなメリットを享受した合格者はもちろん、社長や役員にも積極的に登壇してもらいました。
さらに、この検定試験とAirCourseはワンセットでの運用を想定しており、AirCourseに触れてもらう機会を増やす必要があったので、経営陣からのメッセージや合格者へのインタビュー動画、過去の熱のこもったイベントの様子も視聴できるようにしました。他にも、試験の傾向と対策といった合格に関わる更新情報の通知、コース内容や試験内容に関するアンケートなど、情報の配信は出来る限りAirCourse上で行うようにしました。
検定試験にチャレンジする魅力とAirCourseというツールの具体的な活用という両側面から、様々な施策を実施しました。
その中でも、経営陣と共により高みを目指す世界観をもってもらえるよう、「価値観の共有」が導入時の最も注力したポイントでした。
伊藤:UI/UXが優れているためAirCourseを使うことに対する苦労はありませんでしたが、品質に関わる専門機関として、講師とともにコンテンツ制作は入念に行いました。対面での講座をeラーニングのコンテンツに置き換えるわけなので時間もかかりました。
初期の頃は、講師もオンラインでの講義に慣れずに戸惑いを感じていましたが、毎日オンラインでの講義を行うことで徐々に慣れるようになり、講師のスキルも高まっていきました。
■現在のAirCourseの具体的な活用方法、内容などを教えてください。
佐相:2つあります。1つ目は入社者を対象とした研修、2つ目は『トップガン教育』での検定試験及びその教材としての活用です。
入社者研修では、講義動画を各自がAirCourse上で学習することにより、対面の時間は演習やディスカッションに集中することができるようになりました。これによって効率のよい反転学習のサイクルが実現できました。
『トップガン教育』に関しては、希望者が自身で受講、受験ができる仕組みなのですが、AirCourseでの登録者は約1,000名おり、学習から試験までワンストップでAirCourse上で運用しています。 この資格試験に合格すると、ワンランク上の仕事にアサインされるようになります。仕事のランクが高くなるとお客様の支払い単価が増加し、それに応じ自分の収入も上がっていく給与体系となっています。
完全オンライン化の仕組みが出来上がったことで、拠点に関係なく平等な学習環境を提供でき、コロナ禍であっても普段と変わらずに活用できたことはとても助かりました。
eラーニング導入前は、本当に効果が得られるのかという懸念がありましたが、eラーニングを活用したオンライン化をすることで、生産性の向上や圧倒的な効率化が実現できました。
今でこそ在宅ワークも一般的になりましたが、少し前までは本当に家で仕事が捗るのかといった疑念を抱く人も少なくなかったと思います。しかし、現在だとこのほうがむしろ効率的ではないかと感じます。これらと同じような状況ですね。
伊藤:ヒンシツ大学では、当社オリジナルのeラーニング講座の提供をAirCourseで行っています。
機能面での活用でいえば、コース評価機能が重宝しています。お客様の満足度合いやコメントによるフィードバックがコンテンツ制作に役立つのでこの機能は欠かせないものとなっています。
■ AirCourse導入・活用により、実感された効果などがあれば教えてください。
佐相:AirCourseを活用した検定試験導入後、平均受注単価が15.2%アップしました。現在だと約400名の受験者のうち半数が合格していますが、合格するための平均学習期間は4.3ヶ月なので、相当な学習量をこなしています。
キャリアとインセンティブに直結するものなので、受講者が自らAirCourseを積極活用する仕組みが出来上がっています。『トップガン教育』が功を奏し、当社では現在一種の検定試験ブームが巻き起こっており、新しい検定試験も続々展開予定です。先々にはグループ会社含め全社員にAirCourseを活用してもらいたいと考えています。
伊藤:集合研修だと場所に制約がありますが、AirCourse上で開講した講座であればどこからでも受講ができるので全国から申込があります。コロナの影響を強く受けた時期に対面での講座を中止せざるをえなかった状況でもAirCourseの講座は続けることができましたし、直近のオンライン講座の申込も急増しています。非常に良いタイミングでオンライン化を果たせたと感じております。
■今後の展開・展望を教えてください。
佐相:3つあります。1つ目はあらゆる業界から能力が高い人材を選抜することです。そのためにIT業界未経験であっても高い潜在能力があれば合格可能な入社検定試験を開発・運用しています。入社者全員に受験してもらっていますが、実際に約3割はIT業界未経験者となっています。IT業界が人材不足の中、業界未経験であっても優秀な人材であれば積極的に採用したいので、この制度をグループ会社にも展開していきたいと考えています。
2つ目はどんな人にもキャリアアップのチャンスを提供することです。例えば、課長職や部長職の昇進試験は一部の人のみが対象となりますよね。当社の制度では本人にやる気があって検定試験をクリアできれば、誰にでもどんどんキャリアアップの機会が手に入りますので、『トップガン教育』のブラッシュアップを推進したいです。
3つ目は能力の可視化です。例えば、健康診断で体重の増加がわかれば、運動や食事量を減らす必要性を感じますよね。それと同様に、半年に一度、営業力やPM力を計測する試験を行っています。このような能力を可視化する試験にもAirCourseを活用しながら、人事・教育の改革を進めていきたいです。
伊藤:「無駄をなくしたスマートな社会の実現」が当社のビジョンとなっています。その実現に向けて、ヒンシツ大学はソフトウェアの「Made in Japan」品質を教育という観点から支援し続けていきます。企業様向け研修では、オンラインライブ研修を開始し場所を問わず提供が可能となり、非常に多くのお客様(前年比165%)にご受講頂いています。また、ヒンシツ大学ではエバンジェリスト活動の一環として、専門学校と産学連携を行い、高校生や大学生を対象としたヒンシツ大学の特別講座も行っています。
今後はそれらの教育支援の中でも、AirCourseの活用をしていきたいと考えています。