企業の人材育成研修におけるポイント|階層別の研修方法の種類を紹介

近年、多くの企業で、従来の人事評価制度を見直し、社員一人ひとりの能力開発やパフォーマンス向上に焦点を当てた「戦略人事」の考え方が広まっています。

また、グローバル化が進展する中で、企業は競争力を維持・強化するために、時代の変化に対応できる柔軟性と高度なスキルを持つ人材を育成することが求められています。

しかしながら、多くの企業では人材育成において従来の教育プランを踏襲しており、抜本的な見直しが必要となっています。

従来型の「前年の踏襲」を基本とした人材育成には、以下のような課題があります。

課題詳細
環境変化への対応不足社会の変化が速い現代において、過去の成功体験に基づいた人材育成では、変化に対応できない人材を生み出す可能性がある。
個別対応の不足画一的な研修は、個々の強みや弱みを考慮できず、社員のモチベーションや成長意欲を阻害する可能性がある。
成果に結びつきにくい研修内容が実際の業務と結びついていない場合、習得した知識やスキルが活かされず、企業の業績向上に貢献できない可能性がある。

このような課題を解決し、企業の競争力を強化するためには、企業の目標達成に貢献できる人材を育成する効果的な「人材育成研修」が不可欠です。

本記事では、人材育成における研修の必要性や、階層別の人材育成研修のポイント、設計手順を解説します。

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人材育成における研修の必要性

人材育成は多くの企業にとって重要な課題ですが、その手法として研修は本当に必要なのでしょうか。

結論から言えば、研修は必要です。その理由を以下に詳しく説明していきます。

たしかに、業務に必要なスキルは、実務を通して習得することも可能です。OJTを通して先輩社員から指導を受けたり、自ら積極的に業務に取り組むことで成長を促すこともできます。

しかしながら、すべての社員が、自主的に学習したり、指導者としての役割を担えるわけではありません。

適切な指導や体系的な知識がないまま、場当たり的な教育が行われると、非効率なだけでなく、誤った知識やスキルが身についてしまう可能性もあります。

研修によって、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境を整え、企業全体の成長へと繋げていくことが重要です。

【階層別】人材育成研修のポイント・研修例

階層別研修では、それぞれの階層の社員に求められる役割やスキルを考慮した上で、研修内容を設計していく必要があります。

階層研修のポイント
新入社員学生から社会人への意識改革、ビジネスマナー、社内ルール、企業理念などを習得させ、円滑に業務を行えるよう基礎を築きます。
若手社員基礎的なビジネススキルを習得させ、担当業務を効率的・効果的に遂行できるよう育成します。 また、将来的なリーダー候補として、指導力や育成力の基礎を養う研修も有効です。
中堅社員チームリーダーや係長などの役割を担うために必要なリーダーシップを養います。 部下の指導や育成、チーム目標の達成、業務改善などを推進できるよう、実践的なスキルを身につけます。
管理職組織全体の目標達成に向けて、戦略立案、意思決定、問題解決、人材育成など、多岐にわたるマネジメントスキルを習得します。 また、変化の激しいビジネス環境に対応できるよう、リーダーシップ、コーチング、コンプライアンス、リスクマネジメントなどの研修も重要となります。

各階層において、それぞれの成長段階に合わせた研修を実施することで、社員のモチベーション向上や定着率向上に繋がるだけでなく、企業全体の活性化や競争力強化にも大きく貢献します。

新入社員研修

新入社員研修とは、企業に新しく入社した社員に対して、社会人としての基礎知識やビジネスマナー、企業理念などを習得させるための研修です。

企業文化や価値観を共有し、早期に組織への適応を促すことを目的としています。

新入社員研修で習得すべき主な内容には、下記のようなものがあります。

研修内容説明eラーニングの研修例
ビジネスマナー研修社会人としての基本的なマナーを習得します。身だしなみ、挨拶、言葉遣い、電話対応、来客対応、名刺交換などが含まれます。【学習パス】ビジネスマナー研修
社内ルール・制度研修就業規則、服務規程、人事評価制度、福利厚生制度など、企業で働く上で必要なルールや制度を理解します。人事評価トレーニング【被評価者編】_(2)目標管理制度_③個人目標の設定方法
企業理念・ビジョン研修企業理念、ビジョン、行動指針、事業内容、組織体制、企業文化などを理解し、企業への帰属意識を高めます。
部署紹介・OJT配属先の部署、業務内容、上司や先輩社員の紹介などを行い、配属後の不安を軽減します。OJT研修の基礎知識とやり方
関係構築研修同期や先輩社員との関係を築き、円滑なコミュニケーションを図るための研修です。グループワークや自己紹介などを実施します。コミュニケーション講座(社内編)

新入社員研修は、集合研修で行われることが多いですが、近年では、eラーニングを活用した研修を取り入れる企業も増えています。

新入社員研修は、新入社員が安心して働き始め、早期に戦力として活躍できるよう、企業が計画的に実施する必要があります。

若手社員研修

若手社員研修は、企業の将来を担う人材を育成するために非常に重要です。

2~3年目の若手社員には、主体性を発揮し、質の高い仕事で成果を出すことが求められます。

4~5年目になると、さらに高いパフォーマンスが求められるだけでなく、チーム全体を率いるリーダーシップも求められます。

これらの課題を解決し、成長を促進するために、企業は若手社員研修に力を入れています。

若手社員研修のポイントは、以下の3つにまとめられます。

年次ポイントeラーニングの研修例
2~3年目・主体性を発揮し、ミスなく質の高い仕事をする
・上司・先輩からの指導を踏まえ、自ら考え行動する
仕事の基礎トレーニング【マインド編】①:主体性の向上仕事の基礎トレーニング【スキル編】①:仕事の進め方(PDCAサイクル)
4~5年目・スピードと成果にこだわり、チームに視野を広げる
・後輩指導やチーム全体を動かす
・円滑なコミュニケーション
タイムマネジメント入門仕事の速い人の情報整理術①:なぜ整理術が必要なのか

これらのポイントを踏まえ、研修では、実践的なスキル習得だけでなく、問題解決能力やコミュニケーション能力などを養うことが重要です。

また、若手社員のモチベーションを維持し、離職を防ぐためには、キャリア自律を支援することも重要です。 研修を通じて自身のキャリアプランを明確化し、スキルアップ意欲を高めることで、企業への貢献意欲を高めることができます。

リーダー研修

組織の目標達成を牽引していくためには、リーダーの存在は欠かせません。

リーダーシップは、経験を通して身につくものでもありますが、より効果的にリーダーの資質を育成するために、リーダー研修は有効な手段となります。

リーダー研修では、戦略立案や意思決定、部下のモチベーション管理など、リーダーに求められるスキルを習得することができます。

リーダー研修には、大きく分けて「階層別研修」と「役割・職種別研修」の2つの種類があります。

研修の種類概要eラーニングの研修例
階層別研修対象者の階層ごとに必要なスキルを習得する研修 (例: 新任管理職研修、中堅層向け研修)リーダーシップトレーニング②:リーダーシップの強化方法リーダーシップトレーニング③:人を動かすコミュニケーション
役割・職種別研修役割や職種に求められる専門知識やスキルを身につける研修 (例: 営業リーダー研修、プロジェクトマネジメント研修)コミュニケーション講座(社外編)リーダーシップトレーニング④:チームマネジメント

階層別研修では、新任管理職に対して、基本的なマネジメントスキル(目標設定、評価、指導など)を習得させることを目的とするケースが多いです。

中堅層向けの研修では、複数部署をまとめあげる、あるいは組織全体の目標達成に貢献するために必要な知識やスキルを習得します。

役割・職種別研修では、営業部門のリーダーであれば、営業戦略の立案やチーム目標達成のための部下育成などを学びます。

プロジェクトマネジメント研修では、複数部署を巻き込みながら、プロジェクトの成功に導くための計画立案や進捗管理、関係者とのコミュニケーションなどを習得します。

リーダー研修は、企業の将来を担う人材を育成するために重要な投資です。 リーダーシップを効果的に発揮できる人材を育成することで、組織全体の活性化、そして、業績向上にも繋がる可能性があります。

管理職研修

管理職研修では、組織を率いる上で必要な知識・スキルを習得し、組織目標の達成に向けて部下を指導・育成できる人材育成を目指します。

具体的には、以下のような内容が挙げられます。

研修テーマ内容eラーニングの研修例
マネジメント力向上研修リーダーシップ、モチベーション管理、目標設定、評価・指導など部下育成トレーニング①:部下育成の基本
コミュニケーション能力向上研修部下との信頼関係構築、コミュニケーションの改善、指導力向上などリーダーシップトレーニング③:人を動かすコミュニケーション
問題解決能力向上研修論理的思考、問題分析、意思決定など課題を発見し、成果を実現する可視化スキル:①組織全体を理解するマネジメントの可視化
人材育成研修コーチング、フィードバック、OJTなど管理職のための1on1実践講座①1on1ミーティングとコーチング
メンタルヘルス対策ストレスマネジメント、ハラスメント防止など事例で学ぶ「しない・させない」ためのハラスメント総合研修

人材育成研修の設計手順

人材育成研修を設計する際には、闇雲に研修内容を決めるのではなく、体系的に設計していくことが重要です。ここでは、人材育成研修を設計する際の基本的な手順を紹介します。

  • 課題の提出
  • 求める人物像の確立
  • 必要なスキルの洗い出し
  • 育成方法の検討
  • 育成目標・育成計画の策定
  • 実践・フィードバックを繰り返す

課題の抽出

人材育成の取り組みを検討する際に、まず始めに取り組むべきことは、現状における課題を正しく把握することです。

人材育成は、経営方針や将来像を達成するための手段の一つであり、闇雲に実施すれば良いというものではありません。

課題を適切に把握・分析できていなければ、的外れな人材育成計画を立ててしまい、研修の効果が出ないだけでなく、時間や費用、人材を無駄にしてしまう可能性があります。

例えば、以下のような表を用いて、各部署・階層における課題を整理すると良いでしょう。

部署課題具体的な内容(例)
営業部営業成績の向上・顧客への提案力不足
・新規顧客開拓数の低迷
開発部開発スピードの向上・開発スキルの不足
・最新技術への対応の遅れ
人事部新入社員の定着率向上・研修制度の質の向上
・メンター制度の導入

課題を整理する際には、従業員へのヒアリングやアンケートなどを実施し、現状を正確に把握することが大切です。

求める人物像の確立

人材育成の目標設定と同様に、どのような人材を育成したいのかを明確にすることは非常に重要です。

言い換えれば、企業理念やビジョンを実現するために、どのような人材へと成長してもらう必要があるのかを明確化する必要があると言えるでしょう。

項目内容
企業理念・ビジョン企業の根幹となる理念や、将来像と照らし合わせて、どのような人物像が求められるかを検討します。
行動指針社員として、あるいは組織の一員として、どのような行動をとることが求められるかを具体的に示します。
スキル・能力業務遂行の上で必要となるスキルや能力を明確化します。
知識・経験業務遂行の上で必要となる知識や経験を明確化します。
マインドセット組織文化や価値観に合致した、どのような考え方や価値観を持って業務に取り組むべきかを明確化します。
コミュニケーション能力組織の一員として円滑なコミュニケーションを図るために、どのようなコミュニケーション能力を有しているべきかを明確化します。
問題解決能力業務上、発生する問題に対して、どのように対応することが求められるのかを明確化します。

これらの項目を参考に、育成対象となる社員が、将来的にどのような役割を担い、どのような成果を上げることを期待されているのかを具体的にイメージすることが重要です。

求める人物像が明確になれば、それに基づいた具体的な育成計画を策定することができます。

必要なスキルの洗い出し

人材育成研修を設計する上で、研修の対象者にどのようなスキルを習得させたいのかを明確にすることは非常に重要です。

必要なスキルの洗い出しは、現状のスキルレベルと、会社が求める人物像に到達するために必要なスキルレベルとのギャップを分析することから始まります。

現状のスキルレベルを把握するためには、人事評価やスキル管理システム、または360度評価などを活用します。

会社が求める人物像については、例えば、将来的に会社がどのような方向に進みたいのか、そのためにどのような人材が必要なのかといった視点から、具体的な行動指針や能力を定義する必要があります。

これらの分析結果を基に、必要なスキルを可視化していきます。スキルを可視化する際には、下記のような表を用いると分かりやすくなります。

階層必要なスキル具体的な行動指標現状のスキルレベル(5段階評価)目標とするスキルレベル(5段階評価)
新入社員ビジネスマナー電話対応、社内メールの作法25
若手社員コミュニケーション能力報告・連絡・相談を適切に行う35
リーダー部下育成力部下のモチベーション向上、指導・教育24
管理職戦略立案力中長期的な視点での事業計画策定35

必要なスキルの洗い出しは、研修の効果を最大化し、従業員の成長を促すために欠かせないプロセスになるため、必ず実施しましょう。

育成方法の検討

育成方法には、OJT、Off-JT、自己啓発の大きく3つの種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

効果的な人材育成を行うためには、これらの特徴を理解した上で、自社の課題や育成対象者に最適な方法を組み合わせることが重要です。

育成方法メリットデメリット
OJT(On-the-Job Training)・ 実務を通して実践的なスキルを習得できる
・ 業務に関連した内容を学べるため、学習意欲の向上や習熟度アップに繋がりやすい
・ 研修費用を抑えられる
・ 指導する側、される側の負担が大きい
・ 指導者の指導力によって、育成効果にばらつきが出る可能性がある
・ 指導する側の時間確保が難しい場合がある
Off-JT(Off-the-Job Training)・ 新しい知識やスキルを体系的に学べる
・ 職場環境に左右されずに、学習に集中できる
・ 社外の人脈形成を促進できる
・ 業務との関連性が低い場合、学習内容が身につきにくい
・ 費用や時間がかかる場合がある
自己啓発・ 費用を抑えられる
・ 社員の自主性やモチベーション向上に繋がる
・ 育成効果が見えにくい
・ 従業員任せになってしまう可能性がある

例えば、新入社員研修のように、ビジネスマナーや社内ルールなど、基礎的な知識を短期間で習得させたい場合は、Off-JTが適しています。

一方、営業ロープレなど、実践的なスキルを習得させたい場合は、OJTの方が効果的です。

育成対象者や育成内容に最適な方法を組み合わせることで、より効果的な人材育成を実現できます。

育成目標・育成計画の策定

人材育成研修を実施するにあたり、育成目標と育成計画の策定は非常に重要です。

育成目標とは、研修を通じて従業員にどのような状態になってほしいのかを明確にすることを指し、企業の目指す方向性や従業員のキャリアプランを考慮する必要があります。

例えば、以下のように設定します。

階層育成目標
新入社員ビジネスマナーを習得し、基本的な業務を一人でこなせるようになる
中堅社員部下の指導、育成ができるリーダーシップを身につける
管理職経営戦略を理解し、組織全体の目標達成に貢献できるようになる

育成計画とは、設定した育成目標を達成するために具体的な行動計画を立てることを指します。

計画を策定する際には、研修内容だけでなく、研修期間や担当者、評価方法なども明確に定義する必要があります。

育成計画策定時のポイントは下記の通りです。

  • 研修の進捗状況や成果を定期的に評価する機会を設ける
  • 計画に無理がないか、個人の状況に合わせて柔軟に対応できるものになっているか確認する
  • 従業員の意見を聞きながら、モチベーションを維持できるような工夫を取り入れる

実践・フィードバックを繰り返す

人材育成は、一度研修を行えば完了するものではありません。

研修で得た知識やスキルを実際に活用し、その成果や課題を振り返りながら、継続的に改善していくことが重要です。

このサイクルを回すことによって、より効果的な人材育成が可能になります。

実践とフィードバックを効果的に行うためのポイントは以下の通りです。

項目内容
研修内容の振り返り研修で学んだ内容を再確認し、業務でどのように活かせるかを具体的に検討します。
実践の場を設ける研修で得た知識やスキルを活かせる場を設け、積極的に実践する機会を与えましょう。
フィードバックを行う上司や同僚からのフィードバックを通じて、自身の強みや課題を認識し、改善につなげます。
振り返りを習慣化する定期的に自身の成長を振り返り、今後の育成計画に活かしましょう。

これらのポイントを踏まえて実践とフィードバックを繰り返し、企業全体の成長へと繋げていきましょう。

最適な研修方法・種類の決め方

研修には、「階層別研修」「テーマ別研修」「職種別研修」の大きく3つの種類があり、さらに、集合研修、eラーニング、OJT、Off-JT、コーチングといった多様な方法が存在します。

これらの選択肢の中から、自社にとって最適な研修方法・種類を選ぶには、以下の3つのステップを踏むことが大切です。

ステップ1.必要なスキル・求める人物像を洗い出す

研修方法を選ぶ際に、まず最初に行うべきことは「自社に必要なスキル・人物像は何か」を明確にすることです。

まずは自社の現状を分析し、以下のような点を洗い出す必要があります。

項目詳細
現状の課題は何か?・売上目標の未達は、営業部の提案力不足が原因である。
・顧客満足度が低いのは、接客対応の質が低いことが原因である。
どのような課題を解決したいのか?・営業部の提案力を向上させ、売上目標を達成したい。
・接客対応の質を向上させ、顧客満足度を向上させたい。
課題解決のために、どのような人材が必要なのか?・顧客の課題を分析し、最適な提案ができる人材
その人材になるためには、どのようなスキルが必要なのか?・論理的思考力
・コミュニケーション能力
・プレゼンテーション能力

ステップ2.各研修の特徴、メリット・デメリットに照らしあわせる

研修には、集合研修、OJT研修、eラーニング、コーチングなど、様々な種類があります。

それぞれの研修の特徴を理解し、メリット・デメリットを比較検討することで、自社にとって最適な研修方法を選ぶことが重要です。

例えば、知識やスキルを短期間で集中的に習得させたい場合は、集合研修が適しています。費用を抑えつつ、場所や時間に縛られずに研修を受けさせたい場合は、eラーニングが効果的です。

研修方法特徴メリットデメリット
集合研修講師から受講者に向けて、一斉的に講義を行う・短期間で集中的に学習できる
・受講者同士の交流を通して、刺激や相乗効果を得られる
・費用がかかる場合がある
・実施場所や時間の調整が必要
OJT研修上司や先輩社員が、実際の業務を通して部下や後輩を指導する・業務に直結した実践的な指導ができる
・個々の習熟度やレベルに合わせた指導ができる
・指導者の負担が大きい
・指導者のスキルによって、指導の質にばらつきが生じる可能性がある
eラーニングインターネットを通じて、動画やテキストなどを使って学習する・場所や時間に縛られずに学習できる
・繰り返し学習できる
・費用を抑えられる
・一方的な学習になりがち
・学習意欲の維持が難しい場合がある
コーチング対話を通して、社員の目標達成や課題解決を支援する・社員のモチベーション向上や自主性を引き出すことができる
・個々の課題や状況に合わせた支援ができる
・コーチングのスキルを持った人材が必要
・効果が出るまでに時間がかかる場合がある

このように、研修方法によってメリット・デメリットは様々です。自社の課題やニーズ、育成目標、予算などを考慮し、最適な研修方法・種類を検討しましょう。

ステップ3.費用対効果を可視化して最適な方法・種類を決める

費用対効果を可視化して比較検討することで、最適な研修方法・種類を決定することができます。

費用対効果を可視化するとは、研修によって期待できる効果を数値化し、研修費用と比較することです。

例えば、下記のように研修方法別に費用対効果を比較してみましょう。

研修方法費用(例)効果(例)費用対効果
研修A100万円営業利益120万円増加120%
研修B50万円営業利益55万円増加110%
研修C20万円営業利益22万円増加110%

上記のように可視化すると、研修Aが最も費用対効果が高いということが分かります。 費用を抑えたいのであれば、研修BやCを検討するのも良いでしょう。

費用対効果を可視化することで、予算や状況に合わせて最適な研修方法・種類を判断することができます。

人材育成研修を成功に導くポイント

人材育成研修は、ただ実施するだけでは意味がありません。

研修の効果を最大化し、組織全体の成長へと繋げていくためには、以下の5つのポイントを押さえることが重要です。

成果を評価する体制を構築する

研修はただ実施すれば良いというものではありません。研修の効果を測定し、その後の改善に活かしていくことが、人材育成の成果に繋がっていきます。

そのためには、研修の効果を適切に評価できる体制を構築することが重要です。研修の効果測定では、下記のような評価指標を用いることができます。

評価指標内容具体的な評価方法の例
知識習得研修で得られた知識の量研修前後の知識テスト、理解度チェックリスト
スキル向上研修で身についたスキルのレベルロールプレイング、シミュレーション、OJTでの評価
行動変化研修後の行動変化の度合い上司・同僚・部下からの360度評価、行動観察チェックリスト
組織目標達成への貢献研修が業績に与えた影響の度合い売上目標達成率、顧客満足度、業務効率化によるコスト削減効果など、研修内容と関連性の高い具体的な指標

これらの指標を組み合わせて評価することで、研修の効果を多角的に捉えることができます。

また、評価結果をフィードバックし、次回以降の研修内容・方法の改善に活かしていくことが重要です。

効果の低かった研修は思い切って内容を刷新したり、別の研修方法を検討したりするなど、柔軟な対応が必要です。

研修の効果を最大化するためには、評価体制の構築と継続的な改善が欠かせません。

実践で活かせる環境を整える

研修で得た知識やスキルを実際に業務で活用できなければ、せっかくの研修も宝の持ち腐れになってしまいます。

学んだことを活かせる環境を整えるためには、OJT担当者と連携して研修内容を共有したり、新しい知識やスキルを試せる機会を設けることが重要です。

また、研修後のフォローアップ体制を構築することも効果的です。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

取り組み例内容
定期的な面談の実施研修で学んだことの進捗状況や課題を共有し、上司や先輩社員が適切なアドバイスやフィードバックを行うことで、継続的な成長をサポートします。
社内勉強会やワークショップの開催研修で得た知識やスキルを他の社員と共有し、実践的なノウハウを深める機会を提供します。
社内システムへのアクセス権限の付与研修内容に関連する業務ツールやデータベースへのアクセス権限を付与することで、学んだことをすぐに業務で試せる環境を提供します。
メンター制度の導入経験豊富な先輩社員がメンターとなり、研修後の業務への適用をサポートすることで、新入社員の不安や疑問を解消し、スムーズな立ち上がりを支援します。
ジョブローテーションの実施様々な部署を経験することで、多様な業務知識やスキルを習得する機会を提供し、研修で得た知識やスキルを活かせる場を広げます。

これらの取り組みを通じて、研修で学んだことを実践する場を設け、継続的にスキルを向上させていくことが重要です。

育成担当者のスキルを高める

企業の人材育成を成功させるには、育成担当者が十分な知識やスキルを持っていることが重要になります。

育成担当者には、育成対象者の個性や課題を見抜き、適切な指導やアドバイスを行うスキルが求められます。

育成担当者のスキルアップには、以下のような方法が考えられます。

方法概要
研修への参加人材育成や指導に関する専門的な知識やスキルを習得できる研修プログラムに参加する。
資格取得人事関連の資格を取得することで、専門知識を深め、客観的なスキルを証明する。
書籍や教材による学習人材育成やマネジメントに関する書籍や教材を活用して、最新情報や効果的な手法を学ぶ。
社内勉強会の実施育成担当者同士が情報交換や意見交換を行うことで、ノウハウを共有し、スキルアップを図る。
メンター制度の導入経験豊富な社員が育成担当者のメンターとなり、指導やアドバイスを行うことで、実践的なスキルを習得する機会を設ける。
OJT(On-the-Job Training)実際の業務を通して、必要な知識やスキルを習得する。先輩社員による指導やフィードバックを受けることで、実践的なスキルを身につける。

育成担当者がスキルアップすることで、より効果的な人材育成プログラムを実施できるようになり、企業全体の成長に貢献することができます。

自主性・自発性を養う

研修の効果を高めるには、社員一人ひとりが「やらされ感」を持つのではなく、自ら学び、成長しようという意欲を高めることが重要です。

自主性や自発性を育むためには、研修の中に「自ら考え、行動する」という要素を取り入れることが有効です。

具体的には、以下のような研修方法が考えられます。

研修方法概要
OJT(On-the-Job Training)実際の業務を通じて、上司や先輩社員から指導・教育を受ける方法
Off-JT(Off-the-Job Training)集合研修やeラーニングなど、業務から離れて研修を受ける方法
自己啓発支援書籍購入やセミナー参加にかかる費用を補助するなど、社員の自主的な学習を支援する制度
コーチング部下が自ら目標を設定し、その達成に向けて行動できるよう、上司が対話を通してサポートする
メンタリング上司や先輩社員が、部下に対してキャリア形成やスキルアップのアドバイスやサポートを行う制度

研修を通して、社員一人ひとりが自身のキャリアプランや目標を明確化し、それに向かって主体的に行動できるようになることが理想です。

モチベーションを管理する

研修の効果を高めるには、従業員のモチベーション管理が欠かせません。

研修を受ける従業員のモチベーションが高いほど、学習効果や成長意欲も高まります。

従業員のモチベーションを維持・向上させるためには、内発的動機付けと外発的動機付けの両面からアプローチすることが重要です。

モチベーションの種類具体的な方法
内発的動機付け・研修の目的や目標を明確に伝える
・研修内容に興味関心を持たせる工夫をする
・自己成長を実感できる機会を設ける
・達成感や充実感を得られるように設計する
外発的動機付け・研修成果を評価・昇進・昇給などに反映する
・研修参加者にインセンティブを与える
・周囲から認められる環境を作る

内発的動機付けとは、自身の内側から湧き上がる意欲を高めることです。

研修を受ける目的や目標を明確に伝えることや、研修内容に興味関心を持たせる工夫、自己成長を実感できる機会を設けることなどが有効です。

一方、外発的動機付けとは、報酬や評価など外的な要因によって意欲を高めることを指します。

研修成果を評価・昇進・昇給などに反映することや、研修参加者にインセンティブを与える、周囲から認められる環境を作ることなどが有効です。

従業員のモチベーションを効果的に管理し、研修の効果を最大化するためには、これらの方法を組み合わせることが重要です。

まとめ

人材育成研修は、企業の持続的な成長を支える上で欠かせない取り組みです。変化の激しい現代社会においては、社員一人ひとりの能力向上は企業の競争優位性を築く上で重要性を増しています。

しかし、闇雲に研修を実施するだけでは、期待する成果を得ることは難しいでしょう。本記事で紹介した内容を踏まえ、自社の課題や目指す方向性に合致した研修プランを策定し、効果的な人材育成を実現していただければ幸いです。

人材育成を成功に導く「最新育成モデル」を活用しませんか?

人材育成を成功に導くためには、育成過程の注力ポイントを知り、必要な成果に向けて適切なステップと育成スキームを選択することが重要です。

KIYOラーニングでは、「人材育成で大切な8つのこと」を仕組みでカバーできる『デジタル時代の人材育成モデル』をお届けしています。

社員が成長し、最終的に成果をあげるまでに必要な施策とその流れをモデル化したものになりますので、自社の状況と照らし合わせて育成方法を検討したい方はぜひご活用ください。