リーダー研修とは?目的や内容、実施手順、効果的なポイントを解説

これから社会を担うリーダーの育成は、企業の持続的な成長やチームの維持に不可欠な要素です。しかし、優れたリーダーは自然と生まれるものではなく、裏付けられた理論や技術によって育成されます

それを実現する手段の一つが「リーダー研修」です。

しかし、そんなリーダー研修の検討を急に任された方や、自社にリーダー研修の前例やマニュアルがない場合、「そもそもリーダー研修って何をすればいいのだろうか?」「リーダー研修にはどんなメリットがあって、何に注意しなければならないのだろうか?」と悩んでしまうこともあるでしょう。

本記事では、リーダー研修の概要と目的、内容や実施手順について解説しています。リーダー研修の実施に不安を感じている人は、ぜひ本記事を参考にしてください。

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リーダー研修とは

リーダー研修とは、企業が従業員向けに実施する研修の一種で、特にリーダーシップを発揮する立場の人、もしくは将来リーダーとして期待される人を対象とした育成プログラムです。

研修内容は多岐にわたり、研修の目的や対象者によって異なりますが、代表的な例としてコミュニケーションスキルやコーチングスキルの向上、チームビルディングの実現に必要なスキルの獲得などが挙げられます。

一般的に新規登用されるリーダー(主任や係長など)や中堅社員(次期リーダー)が対象となりますが、管理職(課長・部長クラス)の再教育として実施されることもあります。

リーダー研修の目的

リーダー研修の主な目的は以下の3つです。

リーダーに必要なスキルを習得させる

リーダー研修では、リーダーにまずチームをまとめ目標達成に導くためのスキルを習得させるのが大きな目的です。

求められるスキルについては後述しますが、リーダーが身につけるべきスキルは非常に多く、リーダー研修ではそれらの必要なスキルを体系的に学べることが大切です。

受講者は研修を通じて、自身の強みや弱みを理解し、不足部分を補うなど更なる成長を目指すことができます。リーダーのスキルが高いグループは、必然的に組織全体の生産性が向上し、結果的に企業の成長にもつながるのです。

組織全体の労働環境を改善させる

リーダーシップのある人材が育成されると、組織全体のコミュニケーションが円滑になり、労働環境の改善につながります。

リーダー研修として取り入れられる「チームビルディング研修」や「組織開発研修」の中で、労働環境の改善点の洗い出しや具体的な改善策を検討する場も設けられます

現状の課題と改善策をまとめ、研修内で共有すれば、受講者同士の意識改革にもつながるでしょう。

それ以外にも、例えば部下が仕事で行き詰まっているとき、リーダーがコーチングスキルを用いて適切な質問や助言を行うことで、部下は自ら課題を解決でき、成長することができます。

リーダー研修を受けることで、新たな視点や理解がチームに反映され、組織全体の雰囲気にポジティブな影響を与えるのがわかります。その結果、社員のストレスが軽減し、離職率の低下や社員満足度の向上につながり、労働環境の改善になるのです。

リーダーとしての自覚を持たせる

リーダー研修の目的の1つは、リーダーとしての自覚を持たせ、組織運営の視点から物事を考えられるようにすることです。

リーダーの役割を理解していない従業員は、リーダーシップを発揮することに躊躇したり、責任を負うことを避けたりする傾向があります

このような状態では、チームをまとめることは難しく、共通の目標に向かって協力し合えないため、チームのプロジェクト遅延や目標未達成につながりかねません。

リーダー研修では、リーダーシップの重要性を認識させ、リーダーとしての責任感と自覚を養うことが必要です。

リーダーに求められる能力やスキル

リーダーには、チームをまとめ、目標達成に導くためのさまざまな能力やスキルが求められます。個人としての能力だけではなく、チームをまとめるための能力、そして組織全体の目標達成に貢献するための能力が必要です。

ここからは、リーダーに求められる能力やスキルについて解説します。

ティーチングスキル

ティーチングスキルは、リーダーの指導方法や指導技術をもって、知識や技術、ノウハウなどを部下やチームメンバーに伝える能力のことです。

リーダーとして、部下の成長をサポートし、チーム全体のレベルアップを図るためには、ティーチングスキルは不可欠です。

ティーチングスキルはコーチングスキルと混同して考えられがちですが、指導者が持つ知識やノウハウを相手に伝えるのがティーチングなのに対して、対話を通じて相手が自ら答えを導き出せるように支援するのがコーチングです。

コーチングスキル

コーチングスキルは、相手の目標達成を支援するためのスキルです。

リーダーが部下にコーチングを行うことで、部下自身の成長を促進し、チーム全体の成果向上につなげることができます。

効果的にコーチングを行うには、傾聴力、質問力、承認力といった基本的なスキルを身につけることが必要です。

スキル説明
傾聴力相手の言葉に真剣に耳を傾け、真摯に理解しようとする姿勢
質問力適切な質問で相手の思考を深め、行動を促す力
承認力相手の行動や成果を認め、評価すること

これらをバランス良く活用し、コーチングスキルを高めます。

メンタリング

メンタリングとは、経験豊富なリーダー(メンター)が、経験の浅い相手(メンティー)に助言や指導を行うことで、メンティーの成長を支援する取り組みです。

リーダーは、単なる指示者ではなく、部下の成長を促すメンターとしての役割も担います。具体的なアドバイスだけでなく、部下の視点に立って一緒に考え、問題を解決することで、部下は自信を持って仕事に取り組めるようになります。

また、メンタリングは、部下だけでなくリーダー自身にとっても、新たな視点や学びを得る貴重な機会になります。組織全体でメンタリングを推進すれば、人材育成の質を高めることができるでしょう。

コミュニケーションスキル

リーダーに求められる能力として、コミュニケーションスキルは必須であるといっても過言ではありません。リーダーのコミュニケーションスキルは、チームの生産性やモチベーションに大きな影響を与えます

リーダーとしてチームメンバーの情報を適切に伝達し、共有するコミュニケーションスキルは業務をスムーズに遂行するために不可欠です。

また、部下やチームメンバーの意見や気持ちの理解や、自分の考えや意図を明確に伝える表現力や、他者の意見や行動に対して建設的なフィードバックをするにもコミュニケーションスキルが求められます。

高いコミュニケーションスキルを身につければ、リーダーとしてチームをまとめるのはもちろん、部下からの信頼も高まり、組織全体の目標達成へと導くことができるでしょう。

業務に関する知識やスキル

リーダーには、グループをまとめる能力以前に、担当業務に関する深い知識と高いスキルが求められます。

なぜなら、リーダーに業務に関する知識がなければ、チームメンバーへの指示や助言ができず、組織全体の質を落とすことになるからです。

業務に関する知識やスキルは以下のようなものが挙げられます。研修例とともにまとめました。

職種知識・スキル研修例
営業・営業戦略立案
・顧客管理
・部下育成
・営業戦略策定研修
・コーチングスキル研修
エンジニア・プロジェクト管理
・技術的専門知識
・品質管理
・プロジェクトマネジメント研修
・最新技術研修
現場職・安全管理
・作業効率向上
・チームワーク
・安全衛生研修
・チームビルディング研修

リーダーは常に自身の知識・スキルをアップデートし、変化する状況に適応していく必要があります

洞察力

洞察力とは、物事の本質を見抜く力のことです。リーダーは、常に置かれた状況に対して、何が問題なのか、何が重要なのかを見極め、適切な判断を下す必要があります。

例えば、リーダーは組織の成長のために、将来的なリスクやチャンスに対して常に敏感でなければいけません。このとき高い洞察力を持っていれば、組織の成長につながるような適切な判断を下すことが可能です。

また、リーダーは部下の能力を引き出すために、部下の感情やニーズを理解することが求められます。洞察力が優れていると、一人ひとりが何を求めているのかを見極め、必要な言動や態度を自ずと示すことができます。

このように、洞察力はリーダーにとって必要な要素であり、リーダー研修を通じて身につけたいスキルのひとつです。

分析力・判断力・決断力

リーダーには、チームの現状を正確に分析し、適切な判断が求められます。この分析力・判断力・決断力は、リーダー研修で特に鍛えるべき能力といえます。

ただ単純に分析や判断をするだけでなく、具体的な事象や情報から、重要な傾向やパターンを見抜き、状況に応じた適切な意思決定によって戦略を立てられる行動力が必要です。以下に例をまとめました。

能力具体的な例
分析力 (物事を多角的に捉え、本質を見抜く力)売上データや顧客フィードバックを分析し、業績低迷の原因を特定する
判断力 (分析結果に基づき、最適な解決策を選択する力)競争激化への対策として、新製品開発を選択する
決断力 (判断した内容を迅速に実行に移す力)新製品開発のプロジェクトを立ち上げ、推進する

リーダーの分析力・判断力・決断力は組織運営において欠かすことのできない要素であり、リーダー研修においても重要なカリキュラムとなるでしょう。

課題発見力・解決力

リーダーには、現状の課題を発見し、解決策を実行に移す能力が求められます。これは、組織の目標達成、そして成長に欠かせない要素です。

課題発見力は、問題点を見つけるだけでなく、その根本原因を分析し、組織全体への影響を予測する洞察力が重要になります。

解決力とは、発見した課題に対して適切な解決策を立案し、関係者を巻き込みながら実行し、その効果を検証していく一連のプロセスを推進する力です。

リーダーが課題発見力や解決力を磨くには、常にアンテナを高く張り、周囲の意見に耳を傾けることが重要です。

リーダー研修の内容

リーダー研修では、企業のニーズや育成対象者のレベルに応じてさまざまな内容が扱われます。ここでは、代表的な研修内容を3つのカテゴリに分けて解説します。

リーダーとして不可欠なスキル磨く

リーダー研修では、リーダーとして不可欠なスキルを磨きます。リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決能力といった、部下育成に不可欠なスキルを習得します。

カリキュラム内容目的と身につけるスキルeラーニング研修例
リーダーシップ研修部下を鼓舞し、目標達成へ導く
(影響力、動機付け、目標設定など)
コミュニケーション講座(社外編)リーダーシップトレーニング④:チームマネジメント
コミュニケーション研修部下との信頼関係構築、コミュニケーションの改善、指導力向上 (傾聴、質問、フィードバックなど)リーダーシップトレーニング③:人を動かすコミュニケーション|AirCourse
問題解決研修課題の発見と解決、業務効率化、成果を実現させる (倫理的思考、分析、意思決定など)課題を発見し、成果を実現する可視化スキル:①組織全体を理解するマネジメントの可視化

これらの研修を通して、リーダーとして必要なスキルを効果的に習得できます。実践的な演習やケーススタディなど、具体的なスキルを身につけるカリキュラムを併用するとスキル強化になるでしょう。

部下を成長させ、チームを成功に導く

部下の成長を促しチームを成功に導くために、リーダー研修では、部下の育成とチームビルディング、そしてメンバーのモチベーション向上という3つの視点で、実践的なスキルを身につけます。

部下育成

カリキュラム例研修内容
目標設定とフィードバック・部下と定期的に面談を行い、具体的な目標を設定し、進捗状況を確認する
・目標達成のための具体的な行動計画を立て、定期的なフィードバックを通じて軌道修正する
権限委譲と育成・部下に適切な権限を委譲し、責任ある仕事を任せることで、成長を促す
・新しいスキルや知識を習得するための機会を提供し、挑戦を支援する
動機付けと承認・部下のモチベーションを高めるために、仕事へのやりがいや貢献を実感できる環境を作る
・成果や努力を認め、適切に評価することで、さらなる成長を促す

チームビルディング

カリキュラム例研修内容
明確なビジョンと戦略・チームの進むべき方向性を明確に示し、メンバー全員が共有することで、一体感を高める
・達成すべき目標を明確化し、具体的な戦略を立て、実行することで、成功へと導く
効果的なコミュニケーション・チーム内での情報共有や意見交換を円滑に行うことで、メンバー間の連携を強化
・風通しの良い環境を作ることで、問題発生時の迅速な対応
チームワークの醸成・メンバー同士がお互いを尊重し、協力し合うことで、チーム全体の結束力を高める
・共通の目標に向かって共に努力することで、チームワークを育む

モチベーション向上

カリキュラム例研修内容
モチベーション理論社員のやる気を引き出し、高いパフォーマンスを発揮させるための理論や手法を学ぶ
ポジティブ思考とストレスマネジメント・自分のネガティブな思考パターンを認識し、それをポジティブな思考に転換する方法を学ぶ
・ストレスの原因を特定することで、適切な対処法を見つける
成長マインドセット・努力によって能力は向上するという考え方を持つことの重要性を学び、それを実践するための具体的な方法を学ぶ
・リーダーが率先して成長マインドセットを実践し、周囲に影響を与える方法を学ぶ

研修では、これらのスキルを学ぶ機会を設けることで、部下を成長させ、チームを成功に導くリーダーを育成できるのです。

多様な価値観を持つチームをまとめる

近年、多様な価値観を持つ人材で構成されるチームが増加しています。異なる文化や考え方、経験を持つメンバーが協力することで、より創造的で革新的な成果を生み出す可能性が高くなります。

しかし、価値観の多様性は同時に、誤解や対立のリスクも否めません。そのため、リーダーには多様な価値観を持つチームをまとめ、個々の強みを最大限に活かすスキルが求められます

以下は、多様な価値観を持つチームをまとめるのに必要なスキルを身につけるためのカリキュラム例です。

スキルカリキュラム例
自己理解と他者理解・自分の価値観や強み、弱みを分析するワークショップ
・他者の視点や立場を理解するためのロールプレイング
コミュニケーションスキル向上・積極的な傾聴、アサーティブな表現、ノンバーバルコミュニケーションなどのトレーニング
・フィードバックの受け方、伝え方
多様性マネジメント・多様な価値観を持つメンバーとの効果的なコミュニケーション方法
・異文化理解
・多様な人材の育成方法
リーダーシップ開発・ビジョン設定
・目標設定
・モチベーションマネジメント

リーダー研修によって、これらのスキルを習得、強化して多様な価値観のチームもまとめられるリーダー育成に努めましょう。

リーダー研修の実施手順

リーダー研修を効果的に実施するためには、次のような手順を踏むことが重要です。

  1. 目的や目標を設定する
  2. 対象者と利用する形式を決定する
  3. カリキュラムを設計する
  4. 研修後フィードバックを行う

研修の目的や目標を設定する

リーダー研修の実施前には、まず研修の目的や目標を設定します。

目的や目標が明確でないと、効果的な研修を実施することができません。研修によってどのような成果を期待するのかを具体的に定めることで、研修内容の設計がしやすくなります。

目的設定時は下記のような内容を設定しましょう。

項目内容
研修の目的リーダー研修を通して、組織全体の活性化を図る
研修の目標・リーダーシップスキルの向上
・チームワークの強化
・コミュニケーション能力の向上
・問題解決能力の向上
具体的な目標設定・研修後、3ヶ月以内に部下のモチベーションが10%向上する
・研修後、6ヶ月以内にチームの目標達成率が5%向上する
・研修後、1年以内に離職率が2%減少する
目標達成の評価指標・部下からのフィードバック
・チームの業績
・離職率

対象者と利用する形式を決定する

次に、研修の対象者を明確にし、研修形式を決定します。

対象者の選定にはリーダーとして適切かどうかの判断が必要です。対象者を決定したら、研修の形式を検討します。

リーダー研修には、集合研修、eラーニング、個別研修など、さまざまな形式があります。それぞれの形式にはメリット・デメリットがあるため、研修をスムーズに進めるために適切な形式を選択しましょう。

研修形式メリットデメリット
集合研修参加者同士の交流や情報共有ができるコストや時間がかかる
eラーニング時間や場所を選ばずに受講できる参加者同士の交流や質問が難しい
個別指導個々の課題に合わせた指導を受けられるコストが高く、スケジューリングが難しい

また、それぞれの形式を組み合わせることで、より効果的な研修を実施することも可能です。

例えば、集合研修で基礎を固め、eラーニングで復習し、再度集団研修のロールプレイングで実践力を養うといった学習アプローチも考えられます。

カリキュラムを設計する

目的と対象者などが決まれば、いよいよカリキュラム設計をする段階です。

どんな研修が理想のリーダー像に近付ける内容なのかを見極め、効果的な研修カリキュラムを作成することが大切です。

以下の項目を考慮してカリキュラム設計を行いましょう。

項目考慮すべき点
研修期間・短期間で集中的に実施するのか、長期間かけてじっくりと学ぶのか、適切な研修の期間を設定する
・研修期間は、目標設定や研修対象者、予算などを考慮して決定する
研修内容リーダーシップの基本、コミュニケーションスキル、部下育成、問題解決能力、意思決定、目標設定、時間管理、ストレスマネジメントなど、リーダーに必要なスキルを網羅的に盛り込む
評価方法・研修の効果を測定するために、適切な評価方法を設定する
・研修前後のアンケートや、参加者による自己評価、上司による評価など、複数の方法を組み合わせることで、より客観的な評価が可能

研修後フィードバックを行う

研修後は必ずフィードバックすることが大切です。フィードバックは、研修内容の振り返りだけでなく、今後のリーダーとしての行動変容を促す機会となります。

効果的なフィードバックを行うためには、以下の点に注意しましょう。

  • フィードバックは研修直後、数週間後、数ヶ月後など定期的に行う(研修内容を忘れかけた頃にフィードバックを行うことで、研修内容の定着を促す)
  • フィードバックをするときは、面談やアンケートなどを通して、研修内容をどのくらい理解しているか、研修で学んだことをどのように実践しているか、どのような課題を感じているかなどを確認した上で行う

フィードバックが終わったら、研修の参加者同士でフィードバックの内容を共有する場を設けるのも効果的です。他者の視点を取り入れることで、新たな気づきを得てもらえるようになります。

リーダー研修を成功させるポイント

リーダー研修を成功させるには、いくつかのポイントがあります。これから紹介するポイントを押さえて、有意義なリーダー研修を実現しましょう。

研修の目的を明確にし周知する

リーダー研修を成功させるためには、設定した研修の目的を参加者に周知することが重要です。目的が明確でも、参加者が理解していなければ効果的な学びが得られません

また、参加者も研修の意義を理解できず、モチベーションが低下する恐れもあります。

例えば、「リーダー層のコミュニケーション不足が課題となっているため、研修を通じてコミュニケーション能力を向上させ、チームワークの強化を図る」といった目的を設定したら、研修前に参加者へ共有します。

共有する際には、研修でどのようなスキルや知識が得られるのか、どのようなキャリアアップにつながるのかを説明することで、参加者のモチベーションも向上します。

体系的に学べるカリキュラムにする

効果的なカリキュラムとは、研修内容が整理され、受講者が段階的にスキルアップできるよう構成されています

例えば、リーダーシップ研修で「チームをまとめる」という目的を設定した場合、チームビルディング、コミュニケーション、モチベーション向上、問題解決といった内容を段階的に盛り込むのが効果的です。

まずは、全ての活動の根底となるコミュニケーションから始め、チームの目標設定、役割分担、協力体制の構築が学べるチームビルディングスキルを身につけます。

次に、チームビルディングのスキルを活かしてモチベーションを高める方法を学びます。

最後に、チームで協力して問題解決するためのスキルを学ぶという流れが一般的です。

研修内容が体系的に整理されていると、受講者は研修後も学んだ内容を振り返りやすく、継続的な学習につなげることができます。ただし、研修内容の順序は組織の状況や課題によって変化することも覚えておきましょう。

自社にあった研修を実施する

リーダー研修を成功させるには、自社の課題やニーズに合った研修を実施することも大切です。

なぜなら、自社に合った研修でなければ、研修で学んだ内容と現場での実効性にギャップが生まれ、結果として成果が出ない(研修の意味がない)という状況に陥る可能性があるからです。

例えば、「コミュニケーションはとれているけれど、チーム目標が達成できない」という課題がある場合は、目標設定、計画立案、進捗管理などが学べ、相互理解と協力体制を構築できるチームビルディングを強化するための研修の実施が有効です。

自社に合った研修の実施は、課題を解決するために活躍できるリーダー育成につながります。

対象者によって研修内容を変える

リーダー研修は、すべてのリーダーに同じ内容で実施すれば良いというものではありません。研修対象者の経験やスキル、ポジション、そして目指すべきリーダー像によって、研修内容を変える必要があります。

例えば、初めてリーダーになる人材には、リーダーシップの基本やチーム運営の基礎、コミュニケーションスキルといった研修が必要です。

一方、すでにリーダー経験が豊富な人材には、戦略的な意思決定や組織マネジメント、変革リーダーシップといった、リーダーの質を上げるための高度な内容の研修が求められます。

対象者研修内容の例
初級リーダー (初めてリーダーになる人)・リーダーシップの基本
・チーム運営の基礎
・コミュニケーションスキル
・部下育成
・モチベーション管理
中堅リーダー (既にリーダー経験がありる人)・問題解決能力
・意思決定
・目標設定
・チームビルディング
・パフォーマンス向上
・コーチングスキル
上級リーダー (経営幹部など)・戦略的思考
・組織マネジメント
・変革リーダーシップ
・リスクマネジメント
・リーダーシップ開発

このように、研修対象者に合わせた内容にすることが研修の成功につながります。

定期的に行い改善する

研修は一度実施すればそれで終わりではなく、定期的に行うことで効果を高めることができます。定期的な研修の実施は、リーダーの成長を促進するにとどまらず、組織全体の活性化にもつながります。

また、研修は実施後のフィードバックを参考に、内容を改善していくことが重要です。改善を行うことで、研修内容の質を高め、より効果的なものにすることができるでしょう。

1on1の実施

1on1とは、上司と部下が1対1かつ自由なテーマで面談を行うことです。社員のパフォーマンスやモチベーション向上などを目的に行われるこの手法は、リーダー育成にも活用することができます。

目指すキャリアが多様化する今、そもそもリーダーになろうというモチベーションが低いと、やらされ感が生まれてしまい、良いリーダーは育ちません。

1on1を通じて、自身が目指すキャリアは何なのか、どう取り組んでいくのかを本音で話し合うことで、主体性が生まれ、やらされ感なくリーダーを育成することができるでしょう。

eラーニングの活用

新人教育から各種研修まで、さまざまな活用方法のあるeラーニングは、近年多くの企業で導入が進んでいます。

リーダー候補となる優秀な人材は、普段から膨大な業務をこなしていると考えられます。そのため、リーダーとしてのスキルアップを目指そうにも、時間の制限が生じてしまい、思うように学べなかったり、成果が出ないこともあるでしょう。

eラーニングは、会場に受講者を集めて実施する集合研修とは異なり、時間や場所を選ばず、習熟度に合わせて自分のペースで学習できます。そのため、通常業務への影響を最小限におさえつつリーダーを育成できるのです。

まとめ

リーダー研修は、組織の成長に欠かせない重要な投資です。効果的なリーダーシップは、チームの生産性向上、従業員のモチベーション向上、そして最終的には企業全体の成功に直結します。

しかし、優れたリーダーは自然と生まれるものではなく、裏付けられた理論や技術によって育成されます。それを実現する手段のひとつがリーダー研修なのです。

本記事を参考にして、リーダー研修の本質や目的を理解し、どんな研修にすべきかをご検討いただければ幸いです。

社員研修の基本を押さえ、次に考えるべきこととは

社員研修の基本的な流れは理解できたものの、実際にどう進めればよいか迷っていませんか。 研修を効果的にするには、具体的な設計の手順と運用の工夫が重要です。

しかし、進め方が曖昧なままだと、内容がまとまらなかったり、受講者の理解が深まりません。

そこで、研修設計を成功させるための3つの原則をまとめた「研修設計の基礎ガイド」 をご用意しました。研修設計の基本から、具体的な計画の立て方や運用のポイントを整理した一冊です。 資料を活用し、研修の準備を進めていきましょう。

社員の学習が習慣化する仕組みなど、人材育成を成功に導くポイントが詰まっていますのでぜひご活用ください。

ABOUTこの記事をかいた人

大学卒業後、人材系コンサルティング会社に就職し、従業員数10,000名を超える大企業から15名程度の中小企業までの採用に係るコンサルティングを歴任。その後、2011年に自ら考えられる人材を育てたいという想いを元に一念発起し、粋なり株式会社を創設する。自社コンテンツ「神保町大学」「就職課」などを立ち上げ、就職支援分野では多くの大学生を社会に送り出し、内定率100%、3年以内離職率5%未満の実績を持つ。