これまでも企業におけるリーダーの重要性は多く語られてきました。
そのため多くの企業でリーダーシップ研修を導入する動きが増えてきましたが、果たしてどのような効果があるのでしょうか。また一部、リーダー研修の効果に懐疑的な意見があるのは何故なのか解説します。
目次
リーダー研修とは
リーダー研修はリーダーシップの求められる人材に向けて、知識やスキルの習得を目的に実施される研修です。
代表的な例として、部下の能力開発やモチベーションのマネジメント、チームビルディングなどが挙げられます。
対象者となるのは新規登用されるリーダー(各社によりますが一般的には主任や係長などのリーダークラス)が多く、一部では管理職(課長・部長クラス)の再教育として実施される機会があるようです。
また近年のリーダーシップに対する重要性の高まりを受けているせいか、中堅社員(次期リーダークラス)への研修実施も増えています。
リーダーが抱えている課題
リーダーが抱えている課題の代表格といえば、これまでの業務を継続しながら、管理者としての業務をこなさなければならないという「業務過多」からくる物理的な時間不足やプレッシャーではないでしょうか。
新任リーダーはこのような環境の中でも何とかやり抜こうと努力を重ねていますが、日々の業務に忙殺されてしまい、なし崩し的に進んでいくことも少なくありません。
このような問題はかねてからささやかれていますが、多くの会社で問題として残り続けています。会社としてはリーダー研修を実施するなど問題の解決に努めているはずなのに、何故このような状況から脱却できないのでしょうか。
リーダー研修で成果が出ない理由
リーダー研修で成果が出ないと思われる理由はいくつか考えられますが、中でも大きな理由は3つあると考えられます。
理由①「参加者のモチベーションが低い」
この問題は、実は一番根深い問題ではないかと考えられます。
研修を受講するのは優秀な人材が多いと思いますが、優秀ゆえに普段から膨大なタスクを抱えていることが予想されます。そんな通常業務をこなしながらの研修はどうしても身が入らない状態になってしまいます。
さらに受講生自身が自分にとってなぜ必要なのか。何を学ばなくてはいけないのか。を明確に持っておくことが重要です。会社に参加しろと言われたから。昇進のためやむを得ず。というような理由での参加では成果が出づらいと言えます。
理由②「研修内容を自社の組織に合わせて落とし込めていない」
リーダー研修の多くは半日~2日程度の期間で実施するものが多く、あまり多くの時間を取られていないケースがほとんどです。
このような時間的制限がある中で研修を実施すると、総論的なリーダー論を学ぶことしかできません。逆に総論をおざなりにしてしまうとスキルに傾倒してしまい、フレームワークは使えるけれど実効性を欠いてしまします。
このような環境であるために学習した内容を自社の(または自チームの)なかで効果的に活用するにはどうするか。自分が使いやすいようにするにはどうするか。というローカライズが不足しているように思われます。
そのため研修で学んだ内容と現場での実効性にギャップが生まれ、結果として成果が出ない(研修の意味がない)という状況に陥っていると考えられます。
理由③「研修に参加させる人材が適切ではない」
信じがたい話ではありますが、これは現実に起こっている問題です。
本来であれば管理職になるためのトレーニングを完了し、管理職としてのスキルを習得して適性を見極めてからの登用が望ましいところですが、実態は登用したのちにスキルを習得していくという状態が散見されます。
現在の一般的な企業のキャリアステップはどうしてもエースプレイヤーが管理職になっていくのが一般的で、必ずしも適性があるとは限りません。しかしながらプレイヤーと管理職では求められる資質もスキルも異なります。
そういったギャップが生まれることで本来はプレイヤーとして抜群の成果を出せる人材が、苦手な管理職を任されることによって期待以下の成果を出している可能性があります。
リーダー研修で効果を最大化するためのカリキュラム設計
リーダー研修の基本的な構成の一例として、
1.リーダーとは何か?(総論)
2.リーダーに求められる役割
【1】目標設定・計画
【2】チームビルディング
【3】後進育成
3.リーダーに必要なスキル
【1】コミュニケーション能力
【2】コーチング
【3】メンタリング
【4】分析力・判断力
といったものが考えられます。カリキュラム自体は上記をベースに、自社の管理職として重点的に教育したい箇所を決めて強弱をつければ良いと思います。
そしてこのような研修の効果を最大化するためには、
- 事前に研修参加の目的と必要性を考える。
- 事前に受講者の社内(チーム)での役割と期待を明確にする。
- 研修後「自分のスキル」として落とし込むために内省を行う。
- 内省の内容を共有し社内(チーム)の方向性として齟齬がないか確認する
- 研修および受講前後に①~④十分な時間を確保する
という5点を十分に考慮することが重要です。
またこのような前後の準備を行うためには、社内での協力・理解も不可欠。会社として重要な業務であると位置づけ、研修を受講しやすい環境を整えることで研修効果は飛躍的に上がることとなります。
まとめ
近年では若年層がリーダーになりたがらないという意見も聞こえてきます。
このような背景から、ただ「リーダー研修に参加させる」というのでは効果が出づらい環境にあります。
だからこそ事前のマインドセットと事後の振り返りに重点を置き、前後が連動した研修カリキュラムを組み立てることが、優秀なリーダーを育成する近道です。