ビジネスマナー研修は、全ての新入社員にビジネスパーソンとしての振る舞いを身につけてもらうための研修です。しかし研修を行ったからといって、実際の現場ですぐに実践できる社員もいれば、なかなか身につかない社員もいるでしょう。
このようなギャップを埋めるための効果的な研修のやり方を探している担当者もいるのではないでしょうか。
効果的なビジネスマナー研修のポイントは、「ビジネスマナーがなぜ必要なのか」というビジネスマナーの意義を受講者に明確に伝えることです。
形だけでなく意義を理解し、伝えることで、新入社員の学ぶ意欲・身につける意欲を引き出すことが可能になります。
本記事では、ビジネスマナー研修を行う意義や、ビジネスマナー研修の効果を高める方法について詳しく解説していきます。
「ビジネスマナーチェックリスト」も参考にしていただき、自社のビジネスマナー研修をよりブラッシュアップしてください。
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目次
新入社員のビジネスマナー研修とは?
新入社員のビジネスマナー研修とは、新たに社会人となる新入社員に、ビジネスパーソンとして要求される基本的な振る舞いを身につけてもらうための研修です。挨拶や言葉遣い、時間管理、ビジネスメールの書き方など、ビジネスの現場におけるプロフェッショナルな振る舞いを指導します。
そもそもビジネスマナーは、ビジネスの世界における基本であり、社内外の人々との円滑なコミュニケーション、信頼関係の構築を行うための土台となるものです。
社員一人ひとりがビジネスマナーを身につけ、それぞれの現場でステークホルダーとの良好な関係を築くことができれば、会社のブランド力が強化され、信頼性の向上に繋がります。
さらに、周囲からの信頼を得られれば、会社だけでなく社員自身のキャリア形成にも良い影響を与えるでしょう。
ビジネスマナー研修が必要な理由
ビジネスマナー研修は、新入社員が社会人としての責任意識を高める重要な手段です。多くの新入社員は学生からの移行期にあり、一般的なマナーは身につけているものの、ビジネスマナーの基本は身についていません。
一般的なマナーが個人間の利害関係に基づくのに対し、ビジネスマナーはより公的で形式的な行動を要求し、企業の一員としての振る舞いが求められます。つまり、行為の責任が自身だけにとどまらず、会社にまで影響を与えるのが社会人なのです。
このようなビジネスマナーの重要性を言われなくても理解して実行できる社員もいれば、なかなか身につかない社員もいるでしょう。だからこそ、ビジネスマナー研修を通じてその重要性を伝え、自分の行動に対する責任意識を深めてもらう必要があるのです。
逆に研修を適切に行わなければ、社員のビジネスマナーのレベルにばらつきが生じ、会社のイメージや信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。
特にステークホルダーとのコミュニケーションでは、ビジネスマナーの不備が大きなトラブルにつながることもあります。そのためビジネスマナー研修は、社員のスキルアップだけでなく、会社のブランド力や競争力の向上のためにも欠かせません。
ビジネスマナーチェックリスト
1. 挨拶
挨拶は第一印象を大きく左右する、ビジネスマナーにおける基本、かつ重要な要素です。基本的には元気よく、相手の目を見て、そして自分から先に挨拶するのがポイントです。
ただし、TPOをわきまえることも大切です。なぜなら、状況に即した適切なタイミング、適切なトーンで挨拶をすることで、相手に配慮のある人間であることを印象付けることもできるためです。
2. 言葉遣い
正しい言葉遣いや敬語も、ビジネスマナーの基本です。しかし、言葉遣いを変えることは一長一短にできるものではありません。そのため、ビジネスマナー研修では基本的な言葉遣いを教えつつ、普段の会話や新入社員とのチャットのやりとりの中で、その都度修正していくことが大切です。
言葉遣いや敬語を指導する際に注意して教えるポイントは、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の区別です。例として「見る」を取り上げます。
項目 | 概要 |
---|---|
尊敬語(相手を直接高める敬語) | 相手が何かを「見る」動作を直接高めるために、「ご覧になる」という表現を使う |
謙譲語(自分をへり下り、間接的に相手を高める敬語) | 自分の「見る」動作を下げ、「拝見する」という表現を使う |
丁寧語(自分の言葉を丁寧に言う敬語) | 語尾に「です・ます」などをつけたり、語頭に「お」をつけたりして丁寧な表現にする。「ご覧になられます」や「拝見します」のように、尊敬語・謙譲語と合わせて使用する |
またビジネスマナー研修では、正しい言葉遣いの重要性を伝えることも忘れてはいけません。
言葉は話し手の意図と関係なく受け取られてしまうものです。例えば、上司に「了解しました」という言葉を敬意の表現として使ったとしても、上司が「『了解』は目上のものが下のものに使う言葉だ」ということを知っていれば、あまり良い気持ちにはならないでしょう。
このように、コミュニケーションがどのように成り立っているのかを再確認してもらうことで、より効率的に言葉遣いを修正することができるようになります。
3. 時間厳守
ビジネスシーンでは、出退勤、仕事の締切、ミーティングなどの待ち合わせなど、さまざまな場面で時間の制約があります。
どの場面でも共通することとして、時間を守らなければ、会社や利害関係者など多くの人に迷惑をかけてしまいます。そのため時間厳守は徹底しなければなりません。
また、効果的なタイムマネジメントに従って行われた仕事は、締切ギリギリに終わらせられた仕事と比べて、より良い成果がでます。
そのため、ビジネスマナー研修では時間を守ることの重要性と、時間を効果的に管理する術も教えると良いでしょう。
4. 報連相の徹底
報連相とは「報告」「連絡」「相談」の頭文字をとったもので、仕事を円滑に進めるうえで必要不可欠なスキルです。それぞれ次のような意味を持ちます。
- 報告:仕事の進捗具合や結果について上司や先輩等に伝えること
- 連絡:仕事の情報や今後の予定を他者(関係者・上司等)に発信すること
- 相談:疑問や問題が生じたときに上司や先輩、時に同僚等からアドバイスをもらうこと
報連相は部下をまとめる立場に立つようになるほど、その重要性を痛感するものです。
逆に言えば、個々の仕事の機能や重要性を俯瞰して見る必要性が少ない新入社員に、報連相の大切さを伝えることは難しいかもしれません。
だからこそ、研修では具体的な事例を紹介するなど、伝え方を工夫することが大切です。同時に、新入社員が報連相を実行しやすい環境を整えることも忘れないようにしましょう。
5. 電話対応
電話対応におけるビジネスマナーは、意思疎通をスムーズに行い、認識のずれを生じさせないためにあります。
電話の受け方やかけ方、メモの取り方や取り次ぎの仕方など、失礼のない電話対応をするためには、これらを自然に行えるようになる必要があります。
ビジネスマナー研修では、基本的には会社ごとの電話対応のマニュアルを、ロールプレイングなどを通して身につけてもらうと良いでしょう。
電話対応は相手の顔が見えないため、苦手意識を覚える人も多くいます。そのため、反復練習をしっかり行うのがポイントです。
6. 身だしなみ
身だしなみも相手の第一印象を左右する要素です。身だしなみのポイントは「清潔感」です。服装に関しては、業界や時代によっても好ましい格好は変わるため一概には言えませんが、清潔感を決める要素は基本的に共通しています。
項目 | 概要 |
---|---|
髪型を整える | 寝癖や髪のハネは厳禁です。相手に自己管理ができていない印象を与えてしまいます。寝癖などのケアをしつつ、整髪剤で髪を整えるようにしましょう |
シワやシミ、臭いのない服を着る | どのような服装であっても、シワやシミ、臭いには気をつけましょう。普段からアイロンをかけることを心がけ、シミができた時は早めにクリーニングに出すと良いです |
派手なメイクや強い香水を避ける | 派手なメイクやきつい香水の匂いは敬遠されやすいです。メイクはナチュラルに、香水は軽く香る程度に抑えましょう |
研修の場でもこれらを意識させると良いでしょう。
研修前にアナウンスしておくのも良いですし、抜き打ちでチェックするのも効果的です。
7. 名刺交換
名刺交換はビジネスの現場で初対面の人と会ったときに最初に行なわれる挨拶です。
名刺には名前や肩書きが記載されてますが、誰でも自分の名前を粗末に扱われたら良い気分にはなりません。だからこそ、名刺の扱いには気を配る必要があります。
名刺を扱う際のポイントは、次の通りです。
- 両手で扱う
- 文字が隠れないように持つ
- 相手の名刺は胸より高い位置で扱う
これらは最低限守るべきマナーです。そのほかにも、名刺交換には「渡すとき」「受け取るとき」「交換後」のそれぞれ場面で、ある程度決まった型があります。
8. ビジネスメールの書き方
ビジネスメールの基本は、相手を立てて、かつ要点がわかりやすい文面にすることが大切です。
文面に関しては、社内のルールやテンプレートがあるケースも多いですが、以下にビジネスメールの基本的な型とポイントを紹介します。
テンプレート | 文面例 |
---|---|
件名: 明確かつ簡潔な件名 | 会議日程調整のお願い |
宛名:社名と敬称 | 株式会社○○ 山田様 |
はじめに:挨拶と自己紹介 | お世話になっております。 株式会社●●の鈴木太郎です。 |
本文:目的や要点を簡潔に明確に伝える。具体的な要望や問い合わせなどを含める | 来週に予定しておりますプロジェクト会議について、日程の調整をお願いしたくメールいたしました。山田様のご都合が良い日時を教えていただけますでしょうか?可能であれば、3つの候補日を挙げていただけると幸いです。 |
結び:返信期待の旨を伝えるなど | ご多忙の事とは存じますが、ご返信いただけますと幸いです。 何卒よろしくお願いいたします。 |
[差出人の名前] [差出人の役職] [差出人の会社名] [連絡先(電話番号、メールアドレスなど)] | 鈴木太郎 営業部 株式会社●● 電話: 03-1234-5678 メール: suzuki@example.com |
ビジネスメールのマナーとは文面のことだけではありません。そのほかにも、以下のような配慮すべきポイントがあります。
- TO・CC・BCCの使い分け
- 添付ファイルのサイズ
- メールを送るタイミング
文面以外で信頼を損なわないようにするためにも、研修ではこれらのポイントもしっかり指導すると良いでしょう。
ビジネスマナー研修の効果を高める方法
ビジネスマナー研修は、ビジネスマナーの型を指導するだけでは効果的なものにはなりません。
育成担当者は型だけでなく、ビジネスマナーの持つ効果や意味もしっかり伝えていくことを意識しましょう。
ビジネスマナー研修の効果を高める方法は以下の通りです。
- 目的を明確に伝える
- お手本を見せる
- eラーニングを活用する
目的を明確に伝える
効果的なビジネスマナー研修を行うためには、研修を行う目的を明確にすることが重要です。
目的を明確にすることで、各個人がその目的に向けて自己啓発を進めていく動機付けとなります。
これまで解説した通り、ビジネスマナーは会社のブランドを守り、関係先との取引をスムーズに行うための潤滑油として機能します。そのため、ビジネスマナー研修が、ビジネスマナーを身につけるだけでなく、会社の一員としての責任意識を高める場であることを伝えることが大切です。
またビジネスマナーを身につけ、周囲からの信頼を得ることで、自身のキャリアを広げる可能性があることを伝え、学習のモチベーションを高めることも忘れてはいけません。
お手本を見せる
ビジネスマナー研修では目的やその効果を伝えることも重要ですが、研修において達成すべきことは、社会人としての振る舞いや型を身につけてもらうことです。そのため、名刺交換や電話対応など、最初にお手本を見せることが大切になります。
それから新入社員に反復練習をしてもらいましょう。ロールプレイングの相手として先輩社員に協力してもらうことをおすすめします。
適度な緊張感を持たせることで、より効果的・実践的な研修になります。
eラーニングを活用する
eラーニングとは、パソコンやスマートフォン、タブレットなどのデジタル機器、インターネットを利用して、オンライン環境で教育・学習・研修を行うことを指します。
オフラインで実施される手法と比較して、管理者側・受講者側の負担が少ない点がメリットです。
また、eラーニングは、共通のオンライン教材を新人社員全員が視聴することができるため、学習度合いの平準化を図りたいビジネスマナー研修との相性も良いといえます。
さらに、インターネット環境さえあれば、いつでもどこでも受講できるため、理解度が低いと感じる新人社員には上司が指示を行って視聴を促すこともでき、新人社員側は空き時間などを効率的に活用することができます。
新人社員にとっては、入社直後でさまざまなインプットがあり、忘れてはならない社会人としての基本的なビジネスマナーも失念してしまう場面があるでしょう。
そのような場面でも、eラーニングがあれば、取引先と会う前などに手軽にビジネスマナーを復習することができます。
まとめ
新入社員向けのビジネスマナー研修について、その意義や指導項目、研修の効果を高めるコツを紹介してきました。
育成担当者にとって、もはやビジネスマナーは当たり前になっていると思いますが、新入社員にとっては、どのような意味があるかわからず、学ぶ意欲が湧かない場合があります。
そのため、ビジネスマナーを身につけることで、ステークホルダーからの信頼が得られ、会社のブランド力の強化に寄与し、さらには自身のキャリア形成にも良い影響を与えることを伝えましょう。意義が理解できれば、型を身につける意欲も湧きます。
しかし、ビジネスマナーはすぐに身に付くものではありません。現場での実践を繰り返し、何度も復習することが大切です。eラーニングは、時間と場所を選ばずに空いた時間に復習ができるため、ビジネスマナー研修にぜひ活用してみてください。
社員の学習が習慣化する「人材育成モデル」を無料公開
人材育成によって社員が成長し、成果をあげるためには、企業課題や育成課題にあわせた育成スキームの選択が欠かせません。
しかし、多くの企業が
- 「人材育成を行う時間と余裕がない」
- 「どのように人材育成を進めるべきかがわからない」
- 「人材育成が継続的な取り組みとして定着しない」
といった悩みを抱えています。
そこでKIYOラーニングでは、人材育成にお悩みの人事・教育担当者に向けて、最新の人材育成モデルやその実現ノウハウをまとめた『デジタル時代の人材育成モデル』を公開しています。
社員が自発的に学び、最終的に成果をあげるまでに必要な育成施策とその流れをモデル化したものになりますので、自社の状況と照らし合わせて育成方法を検討したい方はぜひご活用ください。