人材育成で大切なこと9つ|必要なスキルやフレームワークを解説

人材育成は、企業の成長の礎となる重要な取り組みです。しかし、人材育成を任されたものの、「まず何から行動に移すべきかわからない」、「人材育成を行うためのスキルがあるのかわからない」という担当者も多いのではないでしょうか。

人材育成の第一歩は、「人材育成をマネジメントすることによって組織のパフォーマンスを高める」という、今までよりも高い視座を持つことにあります。人材育成に対する視座を高めることで、自社に必要な取り組みやスキルが見えてきます。

本記事では、人材育成の大切なポイントや重要な考え方をはじめとして、必要なマネジメントスキル、具体的な育成手法、役立つフレームワーク、育成計画の立て方など、人材育成を成功させるために必要な知識を網羅的に紹介していきます。

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本資料では、社員が成長し、最終的に成果をあげるまでに必要な施策とその流れをモデル化した人材育成モデルを解説しています。自社の育成状況と照らし合わせ、ぜひご活用ください。

目次

人材育成とは

人材育成とは、「企業に貢献できる人材を育成すること」です。組織の成長や発展に寄与するため、個々の社員の能力を最大限に引き出し、育て上げる活動のことを指します。

重要なポイントは、「自社で貢献・活躍できるように育成する」ということです。そのため人材育成計画は、どこでも使える普遍的なものにはなりません。自社の理念や戦略、現状の課題などに基づいた自社独自の計画を立てることが求められます。

人材育成のアプローチには、狭義では「OJT」「自己啓発」「eラーニング」など、広義では「ジョブローテーション制度」「人事評価制度」など、さまざまな手法があります。

いずれも社員一人ひとりが持つ可能性を伸ばし、そのスキルや知識を高め、より高いパフォーマンスを発揮できるように支援することを目指しています。

人材開発との違い

人材育成と人材開発は、ともに企業の人的資源を強化するための取り組みですが、その目的と方法に違いがあります。

人材育成が企業に貢献できる人材の育成を目的としているのに対し、人材開発は、社員一人ひとりの能力やキャリア志向に応じた個別支援に力を入れます。自己啓発支援やeラーニングなどを通じて、社員の内発的動機づけを引き出し、自発的なスキルアップを促すことで、組織全体のパフォーマンス向上を目指します。

人材育成が組織の基盤を固めるための取り組みだとすれば、人材開発は、その基盤の上に、個々の社員の可能性を最大限に引き出すための施策だと言えるでしょう。

人材教育との違い

人材育成と混同されがちな言葉に「人材育成」もあります。人材育成は「企業が望む方向に人材を育て、成長させること」であるのに対して、人材育成は「業務上、必要な知識やスキルを教えること」を意味します。

人材教育の方法には、座学等の教育のほか、実技による経験も含まれます。また、内容は人間性や理念など、概念的なことも多く、対象範囲が広いのもその特徴です。一方、人材育成は、経営目標の達成のために役職ごとに必要とされる実践的な知識・スキルの習得を対象とします。

社会人・組織人としてのベースを人材教育で教えることになるため、人材教育は人材育成の手法の一つとして捉えられます。

企業における人材育成の重要性

少子高齢化に伴い、15〜64歳の生産年齢人口は減少傾向にあり、どの業界においても人手不足が深刻化しています。そのため、従業員1人ひとりがカバーすべき業務量が増加しています。そこで人材育成による知識やスキルの向上を図り、生産性を高めていく必要があるのです。

また、テクノロジーの進化によりコモディティ化した現代では、商品・サービスなどの「モノ」での差別化は難しくなっています。こうした背景もあり、次なる企業の競争力を担う要素として「人材」が注目を集めています。

つまり、今日における人材育成とは、企業の命運をかけた一大プロジェクトと言っても大げさではないほど、重要なプロセスなのです。

人材育成で大切な9つのこと

人材育成の実施において大切なポイントを押さえておきましょう。人材育成で大切なことは次の9つです。

  1. 目的を明確にする
  2. 目標を設定する
  3. スキルの可視化を行う
  4. 期日を決める
  5. 自主性・自発性を養う
  6. モチベーションを管理する
  7. 育成担当者のスキルを高める
  8. 人材育成に関する制度を整える
  9. 最適な育成スキームを選択する

1. 目的を明確にする

人材育成はただ教育やトレーニングを行うだけではなく、その目的を明確にすることが非常に大切です。

目的を明確にすることで、各個人がその目的に向けて自己啓発を進めていく動機付けとなります。人材育成の目的例として以下があげられます。

  1. ビジネスマインドの醸成
  2. スキルや専門性の向上
  3. 帰属意識の向上
  4. 幹部候補人材の育成

各個人の目指すべき具体的なゴール設定とともに、これらの目的を追求することで、より有意義かつ効果的な人材育成が可能となります。

2. 目標を設定する

人材育成を行う上で、目標の設定は欠かせません。人材育成における目標とは、自社が理想とする人材像へ社員を成長させるための指標です。

社員それぞれが設定した目標の達成に向け取り組み、主に上司が管理・フォローを行います。人事・教育担当者は各部署からあがってきた目標を取りまとめ、研修・セミナーなどの育成施策の企画に活用します。

組織をあげた人材育成は、明確な目標があって初めて行えるのです。

また人材育成の目標は、「客観的に判断できる指標であること」「企業としての成果にもつながること」が重要です。

参考:人材育成の目標とは?基本的な設定方法や管理のポイントを紹介 

3. スキルの可視化を行う

スキルの可視化は、各従業員の現在地を把握し、成長を図る上で重要です。可視化を行うことで、個々人のスキルレベルや育成の必要性が明らかになります。

一般的には、スキルマップを作成し、長所・短所を評価します。スキルマップは、各種業務スキルを軸にした表で、それぞれのスキルレベルを数値化します。各従業員のスキル状況が一目でわかるよう、採点やレーティングを行い、その結果をもとに育成計画を立てます。

また、スキルの可視化は、リーダーと部下のコミュニケーションを促進します。具体的なスキルとそのレベルを示すことで、共通の理解を深め、育成の方向性や目標を明確化することが可能です。

4. 期日を決める

人材育成において、具体的なスキル獲得や能力開発のための期日設定は重要です。

まず育成計画を策定する際には、目標とするスキルや業績の向上度を明示し、それを達成するための具体的な期日を設定します。これにより、育成対象者は自身の成長を具体的にイメージしやすくなります。

また、期日設定は育成の進行管理にも寄与します。期日があることで、育成担当者と育成対象者の双方が進行状況や成果を確認し、必要に応じて育成計画を修正することが可能となります。

5. 自主性・自発性を養う

人材育成において、育成対象者の「自主性・自発性」は不可欠です。成長は、本人の「成長したい」という思いがあって初めて実現します。いくら周りが成長させようとしても、本人に成長を望む気持ちが無ければ成り立ちません。そのため「自主性・自発性」を持っていることが前提となるのです。

なお「自主性」と「自発性」は似た言葉ですが、以下のような違いがあります。

  • 自主性:決められたことを自分の判断でこなしていくこと
  • 自発性:決められていなくても自ら進んで行うこと

自主性を養うには、育成対象者に自ら考える機会を多く与えることが有効です。一方で自発性を養うには、あるべき姿や理想とする状態を育成対象者に問いかけ、明確化させることが有効です。

6. モチベーションを管理する

人材育成では、育成対象者のモチベーション管理も大切です。モチベーションがなければ、成長につながる活動を行えません。

育成対象者のモチベーションを管理するためには、そもそも「モチベーションとは何か」を正しく理解する必要があります。モチベーションは単なる「やる気」と捉えられる場合も多いのですが、正確には「やる気を起こさせる動機づけ」のことです。「行動するための目的や理由」と表すとよりイメージしやすいでしょう。

また下表の通りモチベーションは「内的モチベーション」と「外的モチベーション」に分けられます。

モチベーション
(やる気を起こさせる動機づけ=行動するための目的や理由)
内的なモチベーション 外的なモチベーション
どうなりたいのか
何がしたいのか
どう生きたいか
…など
給料アップ
報奨金
ライバルの存在
…など
特徴
上がりにくく下がりにくい
外部の影響を受けにくい
自らコントロールしやすい
(中長期)
特徴
上がりやすく下がりやすい
外部の影響を受けやすい
自らコントロールしにくい
(短期)

人材育成においては、日々の指導や面談などを通じて「内的なモチベーション」を高めつつ、社内施策などで「外的なモチベーション」にも働きかけるのがポイントです。とくに内的なモチベーションは、外部の影響を受けにくく自らコントロールしやすいため、やる気を安定させるのに有効です。

「内的なモチベーション」と「外的モチベーション」それぞれに働きかける指導や施策を組み合わせて、社員のやる気が高まった状態を維持しましょう。

7. 育成担当者のスキルを高める

人材育成を行う上では、育成担当者のスキル向上も欠かせません。

具体的には、設定した目標を達成できるようにする「目標管理能力」やティーチングやコーチングなどを含む「コミュニケーションスキル」、正確な状況把握と判断のために必要な「ロジカルシンキング」などです。

いずれのスキルも日々多忙な業務を遂行するなかで、並行して学び、適切な評価を下すことは困難を極めます。育成担当者のスムーズなスキルアップを図るならば、社員が好きなタイミングで学びを深められる「e-ラーニング」の活用がおすすめです。

オンラインで学習できるeラーニングシステムを使えば、時間や場所に縛られることなく、より広範囲な人材のスキルアップや教育の均質化を実現できます。

また、最新の情報に常にアップデートして学習コンテンツを提供できるため、新人向け・管理職向けといった階層別研修や、従業員のリスキリングなども幅広く対応可能です。

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8. 人材育成に関する制度を整える

人材育成を安定して行うためには、人材育成に関する各制度を整備することが必要です。具体的には、OJT制度、研修制度、ジョブローテーション制度、人事評価制度、目標管理制度、メンター制度があります。

人材育成に関する制度を整えるためには、フレームワークを活用して既存の制度を見直すのも効果的です。

ただ、人材育成に関する各制度が完璧に整備されている企業は決して多くありません。

整える努力をすると同時に、少なくとも「制度が整っていないから人材育成を行えない」という認識をもたない・もたせないことが大切です。

日常業務における一つひとつの経験やコミュニケーションが人材育成の機会であり、制度はそれらの効果や効率をさらに高めるためのものという位置づけが好ましいでしょう。

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9. 最適な育成スキームを選択する

人材育成を成功させるためには「最適な育成スキームの選択」が重要です。育成スキームの選択が適切でないと、時間やコストを無駄に消費し、結果として育成が進まないどころか、従業員のモチベーション低下を招くこともあります。

以下に示す表は、具体的な職位とそれに対応する育成スキームの例です。

職位育成スキーム
新入社員・OJT ・OFF-JT ・メンター制度 ・eラーニング
中堅社員・OJT ・メンター制度 ・eラーニング ・ジョブローテーション
マネージャー・eラーニング ・外部研修 ・人事評価研修

新入社員には実務を通じた学習(OJT)、メンター制度が有効で、中堅社員には経験豊富なメンターから学ぶ制度やジョブローテーションが効果的です。マネージャーになると、多角的な視点を持つための外部研修や人事評価研修が推奨されます。

このように、育成スキームは個々の職位や能力によって最適な選択が異なるため、企業全体が推進する人材育成モデルの整備(最適な育成スキーム選び)が重要になるのです。

階層別のポイント

人材育成は、階層別(役職別)で重視すべきポイントが異なります。ここでは、新入社員・中堅社員・管理職の3つの階層ごとに人材育成において大切なことを紹介します。

新入社員の育成

新入社員は、まずは自社の経営理念から組織人としての心構え、ビジネスマナーなどの基礎を理解させることが大切です。また、離職率の高まりが指摘されるなかで帰属意識の向上も重要なテーマといえます。

新入社員の育成で大切なことは以下の5つです。

自社への理解を深めてもらう

まずは組織に属して活動する上での基礎・基本である「自社への理解」を深めることが大切です。

  • 経営理念
  • 自社の歴史と今後のビジョン
  • 自社のビジネスモデル
  • 自社の組織構造
  • 業界の基礎知識

ポイントは組織や活動についての全体像をまず理解させることです。全体像をイメージできれば以降の経験で得る情報に対して「どの部分の話か」を認識できるため、知識として定着しやすく、不明点があれば質問もしやすくなります。

心構えやビジネスマナーを身につける

新入社員は、学生時代の感覚や習慣が残っていることも多いため、組織人としての心構えやビジネスマナーを学ばせる必要があります。具体的には以下のようなテーマが挙げられます。

  • 挨拶と表情
  • 動作や態度
  • 身だしなみ
  • 電話応対
  • 生活習慣
  • 言葉づかい(敬語)
  • 名刺交換
  • ビジネスメール

ポイントは、やらされ感や受け身にならないように「なぜ大切なのか」をセットで伝えることです。心構えやマナーは「自分ごと化」できて初めて身につきます。

業務遂行に必要な知識とスキルを習得させる

基本的な知識やマナーなどを身につけたら次は、業務遂行です。集合研修形式での学びも基礎知識の習得には有効ですが、スキルの習得にはOJTやメンター制度を通じた実践形式での学びが有効です。

自らの役割を自覚させる

新入社員は、入社後しばらくは自社や業務について様々な知識習得に追われるため、自らの役割を自覚するまでには至らないことも少なくありません。

そこで、あらためて「自分は組織から何を期待されているか」や「自分はこの組織でどうなりたいのか」を考える機会を設けて「組織における自らの役割」を自覚させます。

自らの役割や目標が明確となることで、成長スピードの向上だけでなく、モチベーションや帰属意識の向上も期待できます。

メンタル面を意識した育成を行う

新入社員はこれまでと大きく異なる環境のなかで、慣れない業務へのチャレンジや失敗を経験するため、少なからずプレッシャーやストレスを感じています。こうした状況下ではメンタル面を意識した育成を行うことが大切です。

具体的には以下のような点を意識しましょう。

  • 定期的に面談の機会を設ける
  • 雑談など気軽なコミュニケーションを心がける
  • 良いことは具体的かつ直ぐに褒める
  • 悪いことも具体的かつ直ぐに指摘する
  • 人格や性格を否定しない
  • 指摘や指導の後にはフォローを行う

ポイントは、各社員の性格や考え方を尊重することです。新入社員の指導では、つい「自分が新人の頃は」という感覚で考えがちです。

もちろん自らの経験を指導に活かすことは重要ですが、育成対象者は自分とは異なる性格や考え方をもった他人であることを忘れてはなりません。

相手の性格や考え方を尊重しつつ自己開示を交えたコミュニケーションを行えば、信頼関係を構築でき、結果として帰属意識の向上ひいては定着率の向上にもつながるのです。

中堅社員の育成

中堅社員(入社4年目以降を想定)は、業務にも慣れて独り立ちし、部下や後輩もできる頃です。中堅社員に対しては、組織の中枢を担うことの自覚や育成担当者としてのスキル向上、管理職候補としてのマネジメントスキル向上などが必要となります。

中堅社員の育成で大切なことは以下の3つです。

組織の中枢を担っていることを自覚させる

中堅社員には、あらためて自分たちが組織の中枢を担う重要な存在であることを再認識させることが必要です。

中堅社員は、業務にも慣れて効率的に成果を上げられるようになるケースが多いでしょう。ただ一方で「慣れ」が、マンネリ化による効率ダウンやモチベーション低下につながるケースも少なくありません。新入社員に比べると育成の対象となる機会が減少することも、こうした傾向を助長するのです。

そこで、自分たちは組織の大部分を占める階層であり、実績をつくる役割や新人をけん引する役割を担っていることを、あらためて自覚するよう促します。

具体的な育成手法としては、役員や管理職による啓発を目的とした研修や、個別面談によるヒアリングとキャリアプランの確認などが挙げられます。状況に応じて「ジョブローテーション」も活用しましょう。

育成担当者としてのスキルを向上させる

中堅社員になると部下や後輩の育成を担当する場面も増えていきます。そのため以下のような育成を行うのが良いでしょう。

  • 部下育成をテーマにした研修やeラーニングを受講させる
  • 得意分野で社内研修の講師を経験させる
  • メンターを経験させる
  • OJTでトレーナーを経験させる
  • OJT研修を受講させる

ただし、メンターやトレーナーを任せる場合は、育成担当者の負担増加に注意が必要です。周囲の業務支援や上司との定期的な面談などにより、育成担当者任せにしないようにしましょう。

参考:OJT研修とは?目的や手順、優秀なトレーナーを育成するポイント

マネジメントスキルを身につけさせる

中堅社員は、管理職候補としても期待されます。そのため「マネジメントスキル」を身につけていく必要があります。

そのためには、プロジェクトリーダーなどを任せることで現場で実際にマネジメントを経験させることが効果的です。もちろん先にリーダー補助などを経験させておく、いざという時の相談役を設けておくといった配慮は不可欠です。

マネジメントでは、以下のように様々なスキルが必要となります。

スキル概要
リーダーシップ指導力・統率力、自らの言動により人・組織を動かす「対人影響力」のこと
目標管理能力自分や他者を目標達成に導く能力。進捗管理やスケジュール調整、必要な知識・スキルの提供支援など
部下育成力仕事で成果を出すことを目的として、部下の成長を支援する能力。観察力、言語化能力、フィードバック力など
コミュニケーションスキル情報のやり取りを正確に行う能力。ティーチングスキル、コーチングスキルも含まれる
ロジカルシンキング (論理的思考)物事の結果と原因を正確に捉え、両者の繋がりを考える思考法。原因に応じて、適切な施策を検討するために必要
クリエイティブシンキング(水平思考)固定概念や既存の手法などの前提を設けずに水平方向に発想を広げる思考法
クリティカルシンキング (批判的思考)物事の本質を見極めるために、あえて疑いを持って考える思考法。本質を見極めて改善・リスク回避に繋げる

中堅社員の育成を担う上司は、各スキルが定着するように現場で生じた課題や経験と結びつけながら指導・育成を行いましょう。また、各スキルを研修やeラーニングなどの学習で補うとさらに効果的です。

参考:マネジメントスキルを高める人材育成手法|重視すべき部下育成力

管理職の育成

管理職は、企業理念や経営層の経営方針やビジョンを正しく理解して、目標達成に向け社員をマネジメントしていく役割です。管理職ではマンツーマンのような形式ではなく、実際のマネジメント業務や研修、自己啓発などを通じて自ら学びを得ていくケースがほとんどです。

管理職の育成で大切なことは以下の3つです。

経営戦略や組織論などを学ばせる

管理職は、組織全体を俯瞰できる視野と経営的な視点を求められます。具体的には、以下のようなテーマへの理解を深める必要があります。

  • 経営に関わる数値
  • 組織構造や人員配置の展望
  • 業界全体の傾向
  • 競合他社の動向

育成手法としては、外部研修への参加や経営層による研修、代表が指定した書籍での学習などが挙げられます。

社員を評価および育成する能力を高める

社員に対する正当な評価と育成は組織の発展には欠かせません。管理職はそのどちらもを担う重要な立場です。

もしも「管理職が人事評価制度の運用方法を理解していない」や「人事評価を育成に活かせていない」といった状況がみられる場合は、人事評価研修の実施をおすすめします。

参考:人事評価研修とは?目的と実施手段、教育すべき内容を解説

コミュニケーションスキルを再確認する

管理職では、コミュニケーションスキルの再確認をおすすめします。とくに昨今はハラスメント問題が頻繫に取り沙汰されており、多くの部下をもつ管理職にとって不安な状況であることは間違いありません。

その他にも、コーチングやティーチングなど管理職に必要とされるスキルは多いため、あらためてコミュニケーションスキルについて学びなおす機会を設けることをおすすめします。

人材育成計画の立て方とポイント

人材育成計画は、育成計画を立てるために必要な資質を持った人材が、正しい立て方を遂行することで成功につながりやすくなります。

以下のステップを参考に、自社の育成計画の取り組みを1つずつ進めていきましょう。

課題の抽出

人材育成計画の作成に際しては、まず組織の課題を多角的に抽出することが重要です。新入社員のビジネスマナーや業務遂行スキルの不足、中堅社員のマネジメントスキルの向上など、組織運営に必要不可欠な育成課題に加え、以下のような視点からも課題を洗い出します。

  • 特定部署のパフォーマンス低下の原因
  • 従業員自身が感じている課題感やニーズ
  • 外部環境の変化に対応するために必要なスキル

これらの視点を取り入れることで、既存の人材育成の不足点を明らかにし、従業員のモチベーションを高める学習環境の整備につなげることができます。

求める人物像の確立

課題が明確になったら、次はその課題を解決するためにどのような人材が必要かを具体的に描き出します。この段階では、単に「DXを推進できる人材」といった大まかな像ではなく、より詳細な人物像を設定することが重要です。

例えば、DXの推進に必要な人材像を設定する際は、以下のような点を考慮しましょう。

  • デジタル技術に関する深い知識と実践経験を持っている
  • 変革をリードするためのビジョンを描き、実行できる
  • 社内外のステークホルダーと効果的にコミュニケーションできる
  • データに基づく意思決定ができる
  • 新しいことに挑戦し、失敗から学ぶ姿勢を持っている
  • チームをまとめ、メンバーの能力を最大限に引き出せる

このように、求める人物像を具体的な能力や資質レベルで定義することで、その人材を育成するために必要なスキルや育成方法が明確になります。

また、求める人物像は、組織の目指す方向性や価値観とも整合している必要があります。会社のビジョンや戦略を踏まえ、将来のあるべき姿から逆算して人材要件を定義することが大切です。

求める人物像を明確にすることは、効果的な人材育成計画を立案するための重要なステップです。課題解決に必要な具体的な能力・資質を定義し、組織の方向性や現実的な制約を踏まえた人物像を設定することで、その後のスキルの洗い出しや育成方法の選択がスムーズに進みます。

必要なスキルの洗い出し

課題を解決するために必要な人材が明らかになったら、そのような人材を育成するために必要なスキルを洗い出します。

そして、必須スキルが明らかになったら、スキルマップを活用して従業員の現在のスキルレベルと比較すると良いでしょう。そのほかにも、個別面談や360度フィードバックなどを行うことで、よりパーソナライズされた育成計画の作成が実現できます。

育成方法の検討

従業員1人ひとりのスキルや自己評価、周囲からの評価が明らかになったら、最適な育成方法を検討していきます。人材育成の手法には、例えば以下のようなものがあります。

  • OJT
  • 集合研修
  • ジョブローテーション制度
  • メンター制度

自社にノウハウがあれば上記のような育成方法で十分ですが、ITに明るくない企業がDXに取り組もうとすると、育成人材の不足が問題になります。このような場合は、e-ラーニングなどの外部サービスの活用も検討すると良いでしょう。

育成目標・育成計画の策定

上記の準備を基に、育成目標を設定し、それを達成するための育成計画を立案します。目標の粒度は、課題や求める人物像に応じて調整します。長期的な育成が必要な場合は、目標を細分化し、定期的に成果を測定できるような設計にします。

目標設定には、のちに紹介するベーシック法やSMARTの法則などの手法が有効です。

目標が決まったら、具体的なスキーム、必要なスキル、育成方法、評価方法を育成計画書にまとめます。この際、メンタルケアのための個別面談なども計画に盛り込むと良いでしょう。

実践・フィードバックを繰り返す

人材育成計画は作成して終わりではありません。設定した目標達成に向け、実践とフィードバックを繰り返すことが大切です。

研修や教育プログラム等を実施した場合は、参加者がどの程度スキルを習得したかを確認します。フィードバックをコメント欄に記載するなどして、必ず人材育成研修の受講者に対してリアクションをしましょう。 そして、その結果をもとに反省点や改善点を洗い出し、再度実行に移します。このプロセスを定期的に行うことで、従業員一人ひとりのスキルアップを図ることができます。

人材育成マネジメントに役立つ5つのフレームワーク

人材育成には、目標の設定やスキルの管理などさまざまなステップがあります。フレームワークを活用することで、それぞれのステップを効率的に進めることができます。

目的有効なフレームワーク
目標管理ベーシック法
SMARTの法則
トレーナー選出・育成段階管理思考の6段階モデル
スキル管理カッツモデル
効果測定カークパトリックモデル

1. ベーシック法

ベーシック法とは、人材育成において必須である目標設定のフレームワークです。具体的には以下の4ステップで目標を立てます。

  • 目標項目の設定
  • 達成基準の設定
  • 期限の設定
  • 達成計画の設定

以下の記事では、人材育成の目標設定について詳しく解説しています。

参考:人材育成の目標とは?基本的な設定方法や管理のポイントを紹介 

2. SMARTの法則

SMARTの法則とは、以下5つの視点で設定した目標の「質」を評価するために有効なフレームワークです。

  • Specific(具体性)
  • Measurable(計量可能)
  • Achievable(達成可能)
  • Realistic(関連性)
  • Time-bound(期限)

人材育成においては、設定した目標に対して「客観的に評価できるのか」「無理はないか」などを評価することで、目標そのもののクオリティ向上に役立ちます。

3. 思考の6段階モデル

思考の6段階モデルとは、人が物事を記憶・理解して最終的に創造に至るまでを示したフレームワークです。人材育成では、トレーナーやメンターの選出基準や、育成対象者の育成段階の指標として活用できます。

  • レベル1:記憶→事実・言葉・方法などを知っている
  • レベル2:理解→解釈・説明・言い換えができる
  • レベル3:応用→得た知識を様々な場面で用いることができる
  • レベル4:分析→全体像をつかみ、要素の分類や区分ができる
  • レベル5:評価→内容を確認し評価できる
  • レベル6:創造→レベル1~5を用いて新しいものを生み出せる

4. カッツモデル

カッツモデルとは、役職ごとに求められるスキルの割合を示したフレームワークです。

図:カッツモデル(3つの階層と3つのスキル)

図の通り、3つのマネジメント層と3つのスキルで構成されています。人材育成においては、各階層(役職)における各スキルの割合により「階層ごとにどのスキルを重視すべきか」を把握するのに役立ちます。

参考:カッツモデルとは?育成や評価への活用から最新の傾向まで解説

5. カークパトリックモデル

カークパトリックモデルは、教育効果を以下の4段階に分けて計測するためのフレームワークです。

  • レベル1:reaction(反応)
  • レベル2:learning(学習)
  • レベル3:behavior(行動)
  • レベル4:result(結果)

人材育成においては、研修がどの程度の教育効果をもたらしたかを把握するために用います。具体的には、レベル1では研修の満足度、レベル2では研修の理解度、レベル3では研修後の行動変化、レベル4では業績の向上度をそれぞれ計測します。

人材育成に求められるマネジメントスキル

人材育成をマネジメントするためには、人に教えるということ以上の広範なスキルが求められます。これから人材育成を推進していく方や、人材育成の成果があまり感じられないという方は、本章を通じて、今一度自身のマネジメントスキルを見直してみてください。

以下で紹介するマネジメントスキルは次の通りです。

  • リーダーシップ
  • 目標管理能力
  • 部下育成力
  • コミュニケーションスキル
  • ロジカルシンキング(論理的思考)
  • クリエイティブシンキング(水平思考)
  • クリティカルシンキング(批判的思考)

リーダーシップ

リーダーシップの定義は様々ですが、一般的には指導力および統率力を示します。また、自らの言動により人や組織に影響を与えて動かす「対人影響力」と捉えるとイメージしやすくなります。

人材育成は他のメンバーと協力しながら進めていく取り組みです。自分だけが主体的に取り組んでも、他のメンバーの協力が得られなければ、十分な成果は得られないでしょう。そのため、人材育成担当者には、高いリーダーシップが求められます。

目標管理能力

目標管理能力とは、自分や他者を目標達成に導くための能力です。具体的には、進捗把握や達成までのスケジュール調整、必要に応じた支援などを行い、目標を達成します。

目標管理を行う目的は、もちろん育成計画で立てた目標を達成することにありますが、一連の取り組みは育成対象者のモチベーションを維持することにもつながります。例えば、育成担当者の進捗状況を適切に把握できていれば、定期的な面談でフィードバックしたり、課題達成に必要な知識やスキルを提供することも可能です。

部下育成力

部下育成力とは、仕事で成果を出すことを目的として部下の成長を支援する能力です。部下の持つ能力や可能性を最大限引き出し、自立して成果を上げられるよう支援することが求められます。

そのためには、部下一人ひとりの強みと弱みを把握し、適切な助言やフィードバックを提供することが重要です。

コミュニケーションスキル

コミュニケーションスキルとは、相手と情報を正確にやり取りするための能力です。やり取りのなかで相手に与える印象や感情も重視されます。人材育成においても必須のスキルです。

ここでは、なかでも人材育成において重要な「ティーチングスキル」と「コーチングスキル」を紹介します。

ティーチングスキル

経験豊富な人から経験が浅い人へ知識やノウハウを教えるためのスキルです。分かりやすい説明ができるか、上手く手本を提示できるかなどが求められます。

コーチングスキル

主に対話を通じて対象者の能力・気力を引き出し、自己成長や自発的な行動を促すためのスキルです。上下関係を意識せず、並走しながら目標達成を目指すスタンスが特徴です。

ロジカルシンキング(論理的思考)

ロジカルシンキングとは、物事の結果と原因を明確にとらえ、両者のつながりを考える思考法です。人材育成で生じる様々な問題を結果と原因に分解・整理して、本質を見極めるのに役立ちます。

例えば、育成計画を立案する際にもロジカルシンキングは必須です。育成計画の立案ステップでは、抽出した課題に基づいて目標を設定し、そしてその目標を達成するために、論理的に導き出された最適なスキームを選択しなければなりません。

そのほか、育成対象者の業績が伸び悩んでいる場合も、ロジカルシンキングを用いて次のように解決策を導き出すことができます。

  1. 課題の特定:業績の伸び悩みという結果に着目する。
  2. 原因の分析:スキル不足、モチベーションの低下、環境要因など、考えられる原因に分解する。
  3. 解決策の立案:スキル研修の実施、目標の再設定、業務プロセスの見直しなど、原因に応じた施策を検討する。

このようにロジカルシンキングを活用することで、育成担当者は問題の本質を見抜き、根本的な解決につなげることができます。

クリエイティブシンキング(水平思考)

クリエイティブシンキングとは、前提を設けず水平方向に発想を広げる思考法です。ラテラルシンキングと表される場合もあります。固定観念や既存の手法にとらわれず自由に考えることで、新しい発想につなげます。

人材育成マネジメントにおいても、課題解決など広い視野や多角的な視点を求められる場面が多々あります。

例えば、人材育成の手法が慣習的に集合研修に頼っているような場合、クリエイティブシンキングを用いることで、育成課題にマッチした新たな育成手法を導入することができます。

クリティカルシンキング(批判的思考)

クリティカルシンキングとは、物事の本質を見極めるために、あえて疑いをもって考える思考法です。「批判的思考」と和訳されますが、批判のために誤りや欠点を探すわけではありません。

本来の目的は、本質を見極めて改善やリスク回避につなげることです。「本当にこの方法でよいのか」や「もっと効率的・効果的な方法があるのではないか」など、あえて疑いをもつことでより良い成果に導きます。

人材育成マネジメントにおいて様々な施策や企画を行う際や、業務効率を見直す際、部下を育成する際など、あらゆる場面で役立ちます。

人材育成ができる人の特徴・スキル

組織的かつ戦略的な人材育成を推進していくためには、OJTのトレーナーやメンター、研修の講師などを任命し、巻き込んでいく必要があります。しかし、人材育成を推進するための適切なスキルや経験がなければ、人材育成が失敗に終わる可能性もあるでしょう。

そのため、人材育成ができる人の特徴・スキルを把握し、それに基づいて最適な人材を見極め、アサインすることが大切です。

目標・目的を部下と共有している

マネジメントが上手な人は、部下に対してチームの目標を浸透させ、一つひとつの業務の目的を理解させるのに長けています。目的が理解できている部下は、自分がどのようにチームに貢献できており、より効率的に目標を達成するために自分が何をすべきかを自発的に考えられるようになります。

このように、目標・目的を部下と共有し、部下のモチベーションを高めるマネジメントができている社員は、人材育成の場でも高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。

達成に向けた動き方を部下に考えさせている

人材育成に適している人は、常に部下に対して内省を促し、目標達成に必要なプロセスを部下自身に考えさせることができます。

タスクベースで細かく指示を出し、堅実に目標達成へとけん引する能力も会社にとっては価値のあることでしょう。しかし、このようなマネジメントでは、部下一人ひとりの自発的な成長を妨げる可能性があります。

そのため、部下にある程度の指示は行いつつも、作業やスケジューリングなど、ミッション達成に向けた動き方を考える余地を与え、自身はプロジェクトにおける達成目標に責任をもつことが理想です。

こまめにコミュニケーションやフォローを行なっている

こまめにコミュニケーションを取り、適切なタイミングでフォローを行うことも、人材育成を行う人に必要な資質です。日々の日常会話やチャットツール上でのこまめなリアクション、また成果に対する正当な評価やフィードバックを積み重ねることで、部下との信頼関係は構築されていきます。

一見すると簡単に思えますが、これらを部下一人ひとりに対して継続的に行うことは大変根気がいる作業です。それでも、組織の目標達成と部下の成長のために粘り強く努力し続けられる人は、人材育成にも向いているといえるでしょう。

人材育成のよくある課題とその対策

人材育成を成功させるためには、事前にリスクを把握し、どうすれば回避できるかを理解しておくことが重要です。

  1. 社員が忙しくて時間と余裕がない
  2. 人材育成の知識やスキルが不足している
  3. 社員が重要性を認識できていない
  4. 人材育成そのものが目的化している
  5. 計画的に行えていない

1. 社員が忙しくて時間と余裕がない

人材育成を推進する上で、社員の多忙は大きな障壁となります。日常業務に追われ、育成のための時間を確保することが難しい状況では、効果的な人材育成を実現するのは容易ではありません。

そのため、人材育成計画を立案する段階で、社員の業務負荷や時間的制約を十分に考慮しながら、現実的に実行可能な計画を立てることが重要です。

また、人材育成の手法にはeラーニングのように、育成を効率的に行うことができるツールもあります。時間的制約の問題を解決するには、このような新しい育成手法も検討しながら、より柔軟に人材育成が遂行できる仕組み作りを行うことが大切です。

2. 人材育成の知識やスキルが不足している

人材育成を効果的に進めるためには、育成担当者自身が必要な知識やスキルを身につけていることが不可欠です。しかし、事業の成長や業績向上に注力する一方で、人材育成に関する専門的な知見やノウハウの蓄積が十分でないケースも少なくありません。

この課題を解決するためには、早期に育成担当者の能力開発に取り組む必要があります。先に見た通り、人材育成には多くのスキルが必要です。これらのスキルは、通常の業務で身につけることが難しいものもあります。そのため、育成担当者候補向けに、特別に研修プログラムなどを実施することが大切です。

3. 社員が重要性を認識できていない

人材育成の取り組みを成功させるためには、経営層や育成担当者だけでなく、社員一人ひとりが育成の重要性を理解し、積極的に参加することが不可欠です。しかし、現実には「現場は研修どころではない」「研修参加は義務ですか?」といった声が上がることも少なくありません。これは、社員が人材育成の意義を十分に認識できていないことの表れと言えるでしょう。

この課題を解決するためには、まず人材育成の目的や価値を社員に丁寧に説明することが重要です。単に知識やスキルを習得するだけでなく、育成を通じて個人のキャリア開発や組織の成長にどのようにつながるのかを明確に伝える必要があります。

また、育成プログラムの内容や方法を、社員のニーズや関心に合わせて設計することも効果的です。一方的に研修を押し付けるのではなく、社員の意見を取り入れながら、実践的プログラムを提供することで、参加意欲を高めることができます。

4. 人材育成そのものが目的化している

人材育成を行っているものの、先に紹介したような育成手法の導入自体が目的化しているケースも見受けられます。例えば以下の通りです。

  • OJTを行っているが、目標は設けずにトレーナーを任命するだけになっている
  • 集合研修を行っているが、開催後の効果測定やフォローはしていない
  • ジョブローテーション制度を導入しているが、形式的な配置替えになっている

これらの問題を解決するためには、まず人材育成の目的を明確にすることが重要です。育成施策を実施する際には、その目的や期待する成果を具体的に設定し、関係者で共有する必要があります。

5. 計画的に行えていない

人材育成が目的が曖昧なまま不定期・単発で開催されたり、継続的な育成手法が中断されたりといった場合、計画性が不足していると効果が出なくなってしまいます。計画的ではない人材育成は、費用や人など各コストがかかるだけでなく、人材育成に対する不信感を抱きかねません。

先述した人材育成計画の立て方を改めて振り返りましょう。

  • 課題の抽出
  • 求める人物像の確立
  • 必要なスキルの洗い出し
  • 育成方法の検討
  • 育成目標・育成計画の策定
  • 実践・フィードバックを繰り返す

人材育成を行う目的や目指す目標を明確にし、実行計画を策定しましょう。フォーマットを活用することで効率的な作成も可能です。

参考:人材育成の育成計画書の作り方|無料のサンプルフォーマット付き

最適なスキームの選択で人材育成に成功した事例

人材育成では、自社課題に応じた最適なスキーム選択が、成果を高める重要なポイントです。以下では最適なスキームを選択したことで、人材育成に成功した事例を紹介します。

OJTトレーナー制度の導入で信頼関係の構築に成功|トッパン・フォームズ株式会社

トッパン・フォームズ株式会社では、新入社員に対して入社後1年間にわたってOJTトレーナーをつけています。必要な能力一覧に沿って、業務に必要な知識・スキルを伝承。自己評価・上司評価と面談によるキャリア形成の支援を行っています。

1年間をともに行動することで、プライベートな相談やコミュニケーションも生じます。これにより、お互いに信頼関係が育まれることで、特に女性のライフステージの変化にも対応しやすい、風通しの良い働きやすい環境づくりに成功しています。

参考:厚生労働省 人材育成事例007「トッパン・フォームズ株式会社」

自他推薦による公募制を取り入れ、意欲のある優秀な人材を早期発見|株式会社アイエスエフネット

IT人材サービス、ITインフラ業を展開している株式会社アイエスエフネットでは、企業からの指名ではなく、自他からの推薦による管理職公募制を取り入れることで、意欲の高い優秀な人材の早期発見に成功しています。

IT人材サービスを行っていることで、社員の多くは顧客先に常駐しているなか、キャリアアップを目指す人材の発掘、および直接的な支援が難しい状況でした。そこで取り入れたのが、管理職の公募制度です。8ヶ月間かけて仮管理職として審査を受け、2回の合否で合格を勝ち得た人が管理職となれます。

社員のやる気を認め、キャリアビジョンを明確にすることで管理職へのチャレンジを促した結果、2年間で10名の管理職が誕生。企業からの指名制度を廃止したことで、職歴やスキルの確認といった管理職登用のために発生していたコストの削減にも繋がっています。

参考:厚生労働省 人材育成事例026「株式会社アイエスエフネット」

階層ごとに最適な育成スキーム、若年層の定着率・売上高・利益UP|東日本機電開発株式会社

東日本機電開発株式会社では、自社独自の「教育に関する方針」をもとに、社員教育の体系を定めて、新人・中堅・幹部・管理監督者の階層ごとに教育を実施。社内研修・社外研修・OJT研修などをはじめ、社員1人ひとりが作成する「自己啓発計画書」に基づき、資格取得や研修の助成を実施しています。

また、社員の自発的な行動を促すために、提案制度や表彰制度も取り入れた結果、5年間にわたって新卒入社した社員の離職者をゼロにすることに成功し、さらに売上高・利益も過去最高を記録。そして最大の成果として、社員自らが必要な知識やスキルを自覚し、自ら研修に志願したという能動的人材の育成に成功したことを挙げています。

参考:厚生労働省 人材育成事例032「東日本機電開発株式会社」

まとめ|人材育成を成功に導くには「最適な育成スキーム選び」が重要

人材育成の本質は、個人の成長とチーム全体のパフォーマンス向上を同時に追求することにあります。そのためには、育成担当者自身が高い視座を持ち、戦略的に育成計画を立案・実行していく必要があります。

そして、これらを効果的に遂行していくためには、様々なマネジメントスキルが必要です。人材育成担当者が日々スキルアップに努めることで、より高い成果を実現できるでしょう。

また、事例で紹介したように、人材育成では自社課題に応じて最適なスキームを選択することが大切です。eラーニングは一つの手段ですが、「人材育成に時間が取れない」「人材育成が計画的に行えていない」などの課題がある企業は、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。

材育成が計画的に行えていない」などの課題がある企業は、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。

人材育成を成功に導く「最新育成モデル」をお届け

人材育成を成功に導くためには、育成過程の注力ポイントを知り、必要な成果に向けて適切なステップと育成スキームを選択することが重要です。

KIYOラーニングでは、人材育成で大切なことを仕組みでカバーできる『デジタル時代の人材育成モデル』をお届けしています。

本資料では、社員が成長し、最終的に成果をあげるまでに必要な施策とその流れをモデル化した人材育成モデルを解説しています。自社の状況と照らし合わせながら、ぜひご活用ください。