人材育成を推進していく立場にある担当者のなかには、以下のように感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
- 人材育成のフレームワークを活用したいが、本当に効果はあるのだろうか
- フレームワークを導入することで、どのようなメリットがあるのだろうか
- セミナーなどに参加してみたかピンとこない
フレームワークは人材育成における成功例をモデル化しているため、活用することで、迷いなく適切な人材育成施策を実行しやすくなります。
優秀な人材を育てるために、どのような教育が適切なのかを判断し、効率的な人材育成を実現できます。
ただし、フレームワークに頼りすぎると柔軟性のない人材育成になるデメリットもあります。
フレームワークを適切に理解し活用すべく、本記事ではフレームワークのメリットや注意点、具体的な種類に加え、フレームワークを活かすためのステップを解説します。
自社の人材育成に携わる方は、ぜひ参考にしてみてください。
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外部環境の変化が激しいVUCA時代に対応するために、組織開発や人材育成による従業員の成長は欠かせない要素の1つとなっています。しかし「育成の時間や余裕がない」「育成ノウハウがない」など、多くの企業が課題を抱えています。
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社員が成長し、最終的に成果をあげるまでに必要な育成施策とその流れをモデル化したものになりますので、自社の状況と照らし合わせて育成方法を検討したい方はぜひご活用ください。
目次
人材育成におけるフレームワークの重要性
人材育成におけるフレームワークは、社内に知見がなくても質の高い育成施策を実施できる効果が期待できます。
フレームワークはそもそも成功パターンをモデル化しているため、活用することで効率を高めたり、特定の担当者に依存せず再現性を担保できます。人材育成上の視点も広がるため、育成担当者の能力強化も期待できるでしょう。
例えば、組織のマネジメント能力を強化するために階層別研修を行う場合、カッツモデル(カッツ理論)を活かすことができます。カッツモデルとは、役職ごとに求められるスキルの割合を示したモデル図のことで、階層別にテクニカルスキルなど求められる能力を整理できます。
社員を守り管理するために人事制度などが存在するように、フレームワークが一定のルールを作ることになります。
「自社がどのようになりたいのか」「社員の可能性をどうすればもっと伸ばせるのか」を考えることによって、マッチするフレームワークを見つけることができ、上手に活かすことで質の高い人材育成の実現が可能になるのです。
企業の経営目標・人材育成方針と合ったものを選ぼう
最も重要なポイントとして、人材育成のフレームワークは企業の経営目標・人材育成方針に合ったものを選ぶ必要性があるということです。事業の経営目標や人材育成方針と合わないフレームワークを採用しても、人材育成が効率的に進まないためです。
カッツモデルは上司である管理職層やリーダークラス・経営者に対して、階層別に研修や教育を施すフレームワークですが、トップダウン傾向の強い組織には有効である一方、役職など関係なく全社員が経営参画するような企業では合わない可能性があります。
そのため、人材育成のフレームワークは企業の経営目標と人材育成方針に合ったものを選ぶことが重要です。
また、フレームワークを活用することにとらわれすぎずに、そもそも社員が成長し、最終的に成果をあげるまでの成長ステップを正しく理解することも重要です。人材育成モデルを正しく理解した上で、フレームワークを活用することで、効果をさらに高めることができます。
以下資料では、人材育成にお悩みの企業担当者に向けて、社員が成果をあげるようになるまでの成長ステップや最新の人材育成モデルをまとめています。自社の人材育成施策を考える上でご活用ください。
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人材育成の目的をおさらい
フレームワークは、人材育成を効率的に進めるための手段にすぎません。そもそもなんのために人材育成を行うのか、その目的を明確にすることでフレームワークはより効果的に活用されるでしょう。
企業ごとに人材育成を行う目的は異なりますが、重要なことは社員の能力やスキルをアップさせ、会社として目指している目標を達成することです。
企業にとって重要な人材が育つことで、乗り越えるべき課題をクリアする可能性も高まるでしょう。以下の3つにフォーカスし、人材育成の目的をおさらいします。
- 経営目標や人事戦略の達成
- 社員のスキルとモチベーションアップ
経営目標の達成や人事戦略の実現
人材育成を行う大きな目的は、企業として目指す経営目標の達成や、そのために必要な人事戦略の実現です。企業にとって人材が重要であることは言うまでもなく、経営目標の達成に人事戦略の実現は欠かせない要素となります。
例えば、国内での事業展開を進めてきたホテル経営の企業を例に考えてみましょう。10年後までに海外に30拠点作りたいと考えている一方で、外国語が堪能な正社員が育っていないという問題を抱えているとします。
そこで、外国語教育を人材育成で行いつつ、海外拠点を任せられるようなリーダーシップのある人材の育成が必要です。もし人材が育たなければ新たな拠点は出せない可能性が高く、経営目標の達成も困難となります。
企業としてなにを目指すのか、そのためにどのような人材が必要なのかを逆算して人材育成を行う必要性があります。人事戦略達成と実現のため、人材育成を行いましょう。
社員のスキルやモチベーションの向上
人事戦略の実現には、当然ながら社員一人ひとりの成長が欠かせません。人材育成を行うことで、社員のスキルや自社で働くモチベーションの向上が期待できます。
社員研修やOJTなど、さまざまな人材育成を行うことで、社員の仕事への着眼点や仕事の進め方が変化するなどの良い変化が期待できるでしょう。
社員自身がどのような段階にいまいるのか、仕事を効率的に進めるにはどうすれば良いのかなどを体系的に理解できるようになっていきます。
学んだことを実際の仕事に活かすタイミングで仕事の取り組み方に工夫が出てくるため、スキルやモチベーションがアップしていきます。
フレームワークを取り入れるメリット
フレームワークを活用するうえで、得られる効果を理解しておくことが大切です。フレームワークを活用するなかで、そのような効果が得られているかを振り返ることで、活用方法を見直すことができます。
人材育成にフレームワークを取り入れるメリットには、以下の2つがあります。
- 育成方法が確立できる
- 人材育成が効率的に行える
育成方法が確立できる
人材育成にフレームワークを取り入れることによって、人材育成方法が確立できます。フレームワークは、成功パターンをモデル化して作られているため、自社の育成がうまく成功すれば、手探りな状況から脱却できるでしょう。
もちろん、あくまでフレームワークに過ぎないため、自社の課題や目的にあわせた工夫やカスタマイズは必要ですが、指導方針が明確化するため、自然と人材育成施策が形になっていきます。
人材育成が効率的に行える
フレームワークを活かすことで、より効率的な人材育成を推進することができます。人材育成における成功モデルを型化しているため、ゼロから考案する必要はなく、自社の育成に当てはめ、施策の推進や検証に注力することができます。
そのため、自社の育成における成功パターンの発見や計画的な育成にもつながりやすく、効果的な育成を推進することにつながります。
人材育成のフレームワーク5選
- HPI (Human Performance Improvement)
- SMARTの法則
- カッツ理論
- カークパトリックモデル
- 70:20:10フレームワーク
HPI (Human Performance Improvement)
HPI (Human Performance Improvement)は、人材の現状から組織のあるべき姿を洗い出して改善することに重点を置いています。
人事的な視野だけで終了せず、経営計画と連結しているところが大きなポイントです。
具体的には達成すべき目標が年商100億円であれば、年商100億円を達成するために営業職はどんな能力を身に着ける必要性があるのかを分析して育成・指導します。
SMARTの法則
SMARTの法則は目標設定手法の1つで、以下の5つの頭文字を取っています。
- Specific (具体性)
- Measurable(計量可能)
- Achievable(達成可能)
- Realistic(関連性)
- Time-bound(期限)
SMARTの法則の優れた点は、目標設定レベルを少しずつアップして人材育成が可能な点です。
人材育成計画が細かくなる傾向にはありますが、社員のレベルに合わせて評価をし、具体的な目標を作り、期限までに達成し、また新たな目標を設定することができます。
具体的には2021年12月までに売上目標1億円を達成しなければならないとして、達成するためにはどんな仕事の進め方が必要なのかといった問題を整理していきます。
カッツモデル、カッツ理論
カッツモデルは、米国の経済学者であるロバート・カッツ氏が提唱したマネジメント層のスキルと役職の関連性について言及した理論です。
カッツモデルでは以下の3つのスキルがあります。
- テクニカルスキル(業務遂行能力)
- ヒューマンスキル(人間関係構築能力)
- コンセプチュアルスキル(概念化能力)
また、以下の3つのマネジメント層があります。
- ロワーマネジメント(リーダーなど下級管理職)
- ミドルマネジメント(課長や部長など中間管理職)
- トップマネジメント(社長や役員など経営職層)
各マネジメント層にテクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルが必要な割合がカッツ理論では示されており、管理職が身に着けるべき知識を示しているのが特徴です。
カッツモデルは役職に連動して身に着けるべき能力が示されており、トップダウン型組織で教育効果が出やすいとされています。
関連記事:カッツモデルとは?育成や評価への活用から最新の傾向まで解説
カークパトリックモデル
カークパトリックモデルは、米国の経済学者であるカークパトリックが提唱した理論です。
4つの段階に分けて、教育の効果を計測することができます。
- レベル1:reaction(反応)
- レベル2:learning(学習)
- レベル3:behavior(行動)
- レベル4:result(結果)
上記4段階に分けており、各レベルで教育や研修の効果を測定します。
レベル1では研修の満足度を測り、レベル2では研修の理解度を測り、レベル3では研修を受けての行動がどう変わったのかを計測し、レベル4では業績の向上度を計測します。
人材育成の成果と業績との関連を数値で出せるため、費用対効果を出せるという大きなメリットがあります。もし費用対効果が出せないため人材育成に踏み切れないと悩んでいるのであれば、おすすめのフレームワークです。
70:20:10の法則
70:20:10の法則は、米国のミロンガー社が提唱した考え方です。
ミロンガー社は経営者を調査し、リーダーシップ発揮のためにどのようなことが役に立ったのかを尋ねたところ以下のような割合で役に立ったと回答したとされています。
- 70%は仕事の経験
- 20%は他者からの薫陶(くんとう)
- 10%は研修
つまり、仕事経験があり、他者との関わり合いがあり、最後に知識吸収などに研修が役に立つということです。
企業においては仕事をしながら研修に参加させることが重要だということであり、OJTをメインにする企業では有効なフレームワークです。
ここまでは、人材育成に活用できるフレームワークの種類などを解説しました。
次は、実際に人材育成にフレームワークを取り入れる具体的な方法について解説します。
フレームワークを活かす6つのステップ
人材育成にフレームワークを取り入れるには、以下のステップを参考にしてみましょう。
ステップ1:育成課題の把握
フレームワークを取り入れる前に現場における育成状況を把握しましょう。
現状把握を正確にしなければ、役員や経営者との話し合いがスムーズにいかないことが多々あるためです。
製造業など現場部門が強い発言力を持っている企業では「現場はどうなっていてどのような意見を持っているのか」など経営陣からしっかりと現場の代弁を求められることが多い傾向にあります。
現場社員の育成状況の把握は必ず行いましょう。
ステップ2:経営目標の確認
社長、役員(専務〜執行役員)などと人事部門で直接協議をし、経営目標の最終確認を行いましょう。
経営目標とリンクしていない人材育成を行っても目に見えた成果が出せず途中で人材育成そのものが頓挫する可能性があるためです。
同時に自社の求める人材像の最終確定させ、どのような社員が育つことが必要なのかを決定しましょう。
ステップ3:理想の人材像(ゴール)の明確化
必要な人材像を明確化し、人材育成の目的やゴールを明確にしましょう。
人材育成のプランを立てやすくなり、推進していくなかで「理想の人材に育成できているか?近づいているか?」と振り返る基準にもなります。
全社共通の人材像だけでなく、営業・技術・事務といった部署ごとに設定するといいでしょう。
ステップ4:育成計画や目標を策定
企業にとって必要な人材に育成するための育成計画を作成しましょう。人材育成計画がなければ、フレームワークもうまく機能せず、トラブルが発生しかねません。
具体的な日付を決め、何月何日までに何名の人材にどのようなスキルが身についているのかを考えて人材育成計画を作りこみましょう。フォーマットなどを用いて育成計画を整理・可視化すれば、チームで共通認識を持ち、PDCAサイクルに組み込んだり、振り返りに活かすことができます。
あくまで目標達成することを念頭に置き、都度修正は必要ですが、活かすメリットは大いにあります。計画の実行に必要なフレームワークを選定できると尚良いでしょう。
関連記事:人材育成計画の作り方|具体的な立て方やポイント、フォーマットまで
ステップ5:採用するフレームワークや育成手法を決定
育成計画が立てられたら、実行に必要なフレームワークを決定しましょう。
達成すべき経営目標と求める人物像の設定に基づき、「どのフレームワークが自社に合っているのか」を最終確認します。
例えば、実践を通して社員を育成していくという方針の企業であれば、70:20:10フレームワークなどが適用できるでしょう。
また、育成手法としてはさまざまな施策があげられます。
- OJT
- OFF-JT
- 自己啓発支援
- ジョブローテーション制度
- メンター制度
- eラーニングの活用
特にeラーニングをうまく活用できれば、人材育成はスムーズに進みやすくなります。場所と時間を選ばず効率的な教育が行えるため、実務をこなす中でもうまく取り入れることができます。
以下資料では、eラーニングの導入メリットや具体的な導入手順、企業での導入事例を解説しています。特に、社内の育成不足の課題を感じている方は、ぜひ解決策の一つとして参考にしてください。
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関連記事:eラーニングとは?導入メリットや 活用事例をわかりやすく解説
ステップ6:人材育成の実施と定期的な振り返り
人材育成計画が出来たら、人材育成を開始しましょう。
特に重要なことは、人材育成を開始したら記録を付けることです。どのようなトレーニングを行い、社員がどのような気づきを得たのかを蓄積することで、再度同じトレーニングを行う際も精度が高まります。
また、メンバー自身の振り返りだけではなく、教育担当者や上司からフィードバックできる環境があるとよいでしょう。会社によっては、月報提出や1on1ミーティングが用意されていますが、育成目標について常に触れるようにすると、軌道修正がしやすく、成長したテーマが実感できるようになります。
フレームワークの注意点
人材育成にフレームワークを活用する際の注意点も押さえておきましょう。フレームワークと言っても万能ではないため、あくまで目的・目標の達成に活かせる手段として捉え、活用することが大切です。
- 社員に急な能力成長を求めすぎない
- フレームワークに固執せず、柔軟に対応する
- 経営目標の達成や育成計画の遂行など目的をぶらさない
社員に急な能力成長を求めすぎない
人材育成にフレームワークを取り入れる際には、社員に急な能力成長を求めないようにしましょう。人材育成の効果はすぐに出ないことが多く、短期的には成長が見られずとも、時間をかけて効果が現れることも少なくありません。
急に成長を求めるのではなく、フレームワークに沿って指導を行いながら、じっくりと経過を見守ることが大切です。
フレームワークに固執せず、柔軟に対応する
フレームワークにこだわりすぎて、目的を見失わないようにしましょう。
フレームワークは、人材育成を効率的に進めるための手段に過ぎません。フレームワークに固執してしまうと計画遂行のスピードが落ちたり、ゴールの達成にずれてしまう可能性があることを忘れないようにしましょう。
フレームワークに頼りすぎず、自社の状況に併せて柔軟に施策を検討するようにしましょう。
経営目標の達成や育成計画の遂行など目的をぶらさない
人材育成の目的は、企業の目標達成や人事戦略の実現、および従業員の成長です。フレームワークを活かすそもそもの目的をぶらさないようにしましょう。
昨今の経営環境は変化も大きく、経営判断や目標が変わることも少なくありません。経営陣の意向を読んで人材育成プランの変更を行うことが求められ、必然的に育成計画や取り入れる手法も柔軟な対応が求められるでしょう。ときにはフレームワークを捨てる勇気も必要です。
フレームワークごと変えてしまう必要性があることを常に認識し、経営目標の変化に対応するようにしましょう。
フレームワークにとらわれず、社員の成長のために最適な人材育成を行うためには、社員が成長し、最終的に成果をあげるまでの成長ステップを正しく理解することが重要です。成長ステップを正しく理解することで、フレームワークに頼りすぎずに、最適な人材育成施策が考えられるようになります。
以下資料では、人材育成にお悩みの企業担当者に向けて、社員が成果をあげるようになるまでの成長ステップや最新の人材育成モデルをまとめています。自社の人材育成施策を考える上でご活用ください。
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まとめ|目的達成のために、フレームワークを上手に活用しましょう
今回は、人材育成担当者の方に向けて人材育成のフレームワークについて解説しました。
特に注目して欲しい点として、フレームワークを選ぶ際には、経営目標と人材育成計画をしっかりと連動させた上で選ぶという点です。
経営目標と人材育成計画がしっかり連動していないと、人材育成において成果を上げることが難しくなります。
しっかりと経営目標と人材育成計画が連動していれば、人材育成で効果を高めることができます。人材育成の目的、目標をぶらさず、フレームワークをうまく活用していきましょう。
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人材育成によって社員が成長し、成果をあげるためには、企業課題や育成課題にあわせた育成スキームの選択が欠かせません。
しかし、多くの企業が
- 「人材育成を行う時間と余裕がない」
- 「どのように人材育成を進めるべきかがわからない」
- 「人材育成が継続的な取り組みとして定着しない」
といった悩みを抱えています。
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社員が自発的に学び、最終的に成果をあげるまでに必要な育成施策とその流れをモデル化したものになりますので、自社の状況と照らし合わせて育成方法を検討したい方はぜひご活用ください。