1on1とは?目的やメリット、実施時の基本的な流れを解説

近年、多くの大手企業が部下の成長を促すマネジメントとして「1on1ミーティング」を導入していることをご存じでしょうか?

上司と部下が1対1かつ自由なテーマで面談を実施する1on1ミーティングには、仕事の進捗状況の把握や社員のパフォーマンス向上、モチベーション向上や上司と部下のコミュニケーション円滑化、離職防止などのメリットがあり、上手に活用すれば、部下の成長促進と企業の組織力強化に貢献できます

しかし、1on1ミーティングに近いかたちでの個別面談は行っているものの、明確な目的を把握しないまま形式的に実施してしまい、無駄な時間を消費してしまったり、部下からの信頼を失ってしまったりするケースは少なくありません。

そこで本記事では1on1ミーティングについて、注目されている理由や目的・メリット、実施時の基本的な流れ、目的を達成させるポイントなどをわかりやすく解説します。

1on1ミーティングの実施を検討している方や、1on1ミーティングの目的やメリットを把握して成功させたいと考えている方にとって有益な内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

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1on1ミーティングとは

1on1ミーティングとは、社員のパフォーマンス向上やモチベーション向上などを目的として、上司と部下が1対1かつ自由なテーマで面談を行うことです。

頻度は週1回〜月1回程、所要時間は30分~1時間程が一般的です。もともとアメリカの企業から始まった手法ですが、今では日本の企業も積極的に導入しています。

1on1ミーティングが注目されている理由

リモートワークの普及

新型コロナウイルスの流行や働き方改革によるリモートワークの普及によって働き方が大きく変化した結果、QOLが大きく向上し集中しやすい環境での労働が実現しました。

しかしその反面、メンバーとのコミュニケーションの機会が減り、誰がどんな作業をしているのか把握しづらかったり、どんな悩みを抱えているのかが見えづらかったりといった問題が浮き彫りとなっていました。

1on1ミーティングはそんなデメリットの解消に効果的で、上司と部下の良好な関係の構築のみならず、部下の進捗の把握や誰にも相談できずに問題を抱えてしまうリスクの軽減にも活用できる手段として注目されているのです。

キャリアの多様化

先行き不透明な社会情勢である「VUCA時代」の到来により、同じ会社で同じ仕事を続けていくことが重要である、という考え方は前時代的なものとなりました。

今や転職が当たり前の時代になり、目指すべきキャリアが多様化していく中で社員一人ひとりのモチベーションや生産性を維持するために、本音で話し合える環境の構築や価値観を共有できる場の提供が求められているのです。

1on1ミーティングはこれらの変化に対応して一人ひとりに向き合えるため、多くの企業が導入を検討していると考えられます。

1on1ミーティングの目的

部下の成長促進

1on1ミーティングの最大の目的は、部下の成長促進を支援して能力を引き出すことです。

部下は普段言えないような悩みや不安を打ち明けて、上司は適切なアドバイスやフィードバックを行い、現状と課題を整理できるようにサポートを行います。

その際には上司の一方的なコミュニケーションではなく、上司と部下の双方向のコミュニケーションを意識的に行い、今後なにをすべきか、どのように業務に取り組むべきかを気づかせてあげるような対話の仕方が重要となります。

上司と部下の信頼関係の構築

上司と部下が定期的に本音で話し合い、信頼関係を構築することも1on1ミーティングの主な目的のひとつです。

上司はあえて業務と関係のない趣味や世間話など、短時間でのアイスブレイクを活用しつつ気軽に話せるような雰囲気を作り、部下の意見や考え方を尊重しながら肯定的に捉えてあげることで円滑なコミュニケーションが実現可能です。

部下にとっては「自分の話を聞いてもらえている・理解してもらえている」と考え、上司にとっては「安心感を持ってもらえている・本音で打ち明けてくれる」と考えるため、信頼関係を築きやすく1on1ミーティングが有意義な時間となるでしょう。

組織力の強化

前述した通り、1on1ミーティングは「部下の成長促進」と「上司と部下の信頼関係の構築」が実現可能です。

その結果、自主性をもって働ける社員の増加や社員同士のコミュニケーションの活性化につながり、組織全体の生産性やパフォーマンスの向上が期待できます。

このように、職場内で好循環を生み出して組織力の強化ができる点も1on1ミーティングの主な目的であるといえます。

1on1ミーティングのメリット

仕事の進捗状況の把握

リモートワークなどで上司と部下のコミュニケーション機会が少ない場合は、部下が何をやっているのか、進捗がどうなっているのかを上司は細かく把握できません。

しかし、1on1ミーティングでは上司と部下がコミュニケーションのための時間を設けてしっかりと話し合うため、部下の業務状況や進捗がどうなっているのかをリアルタイムでヒアリングできます。

どんな課題があって、なぜ乗り越えるのか困難であるのかを把握して素早く解決に持っていければ、信頼関係構築の第一歩となるでしょう。

社員のパフォーマンス向上

1on1ミーティングを通じて、現在取り組む業務の効率的な進め方、行き詰った課題の解決策など、実践に活かせるアドバイスをすれば、部下は自主的に困難を乗り越える力がつき、業務に対するパフォーマンスが飛躍的に向上します。

そのため、ミーティング時には否定的な意見や主観的な解決策を提示するのではなく、解決のための糸口や道筋を提示して、一緒に最善策を検討してあげる姿勢が重要となります。

社員のモチベーション向上

1on1ミーティング時に、部下が現在抱えている不安や悩みをヒアリングし、解消に導いてあげることでモチベーションアップにつなげます。

また、上司から部下への期待を示したり、業務上のアドバイスを行いながら成功体験を与えたりしてあげることで、より仕事に対するモチベーションを向上させることも可能です。

上司と部下のコミュニケーション円滑化

上司と部下が1対1で話すことで、お互いの性格や仕事やプライベートでの考え方や出来事を共有できます。

その結果、普段から話しかけやすい関係性が構築され、会話の内容も多くのとっかかりができているため、両者のコミュニケーションをスムーズにします。

このように、悩みや不安など本音で話せる機会を設けることで、互いの理解や信頼につながり、普段のコミュニケーションにも良い影響を及ぼすのです。

離職の防止

1on1ミーティングでは上司と部下が信頼関係構築のための雑談や業務上のアドバイス、仕事・プライベートでの悩みを共有するなどして、ひとり一人に対して向き合う時間ができます。

その時間を利用して上司は部下の心理や状況を整理し、部下のエンゲージメントやモチベーションの低下を察知できる可能性があります。

部下にひとりで抱え込ませないように寄り添ってあげることで離職防止につながる点も、1on1ミーティングのメリットの一つといえるでしょう。

1on1ミーティング実施時の基本的な流れ

1. テーマやゴールの共有

最初は1on1ミーティングのテーマやゴールを部下と一緒に設定しましょう。

その際には、いきなり仕事の話から入るのではなく「天気の話」や「今朝のニュース」など、他愛もない雑談から入ると緊張が緩和して本音で話しやすい環境が構築されます。

その後は部下の主体性を尊重した投げかけを行い、当日の1on1ミーティングにおけるテーマやゴールを共有します。

例として、プロジェクトの進捗状況と課題、現体制に対する不満・要望などをテーマとしつつ、将来的にどうなるべきかの明確化をゴールとして設定できるとよりスムーズな話し合いができます。

このように、最初にテーマやゴールを明確にしておけば、話が脱線してしまうのを防ぎ、限られた時間をより有意義なものとします。

2. 現状の理解

次に部下の現状を理解します。部下が現在おかれている状況や本人の心境について、正確に理解することに努めましょう。

現状を理解する際は、部下に話してもらうことを優先します。適度なうなずきや相づちをすると部下は安心して話せます。

必要に応じて、ポイントとなる部分の詳細を確認する質問を投げかけたり、事実に対する本人の感想や解釈を確認したりすることで、現状をより正確に理解しましょう。

例として、「何に対してどんな悩みがあるのか?」「自分、もしくは周囲に対してどんな要望や不満があるのか?」を話せるとよいでしょう。

部下が説明に行き詰まった場合は「ここまでの話を要約すると〇〇ということで、合ってるかな?」とヒアリングした内容を要約することで、正確な把握と部下が考えをまとめるサポートを同時に行えます。

3. 課題の特定

テーマやゴールと現状を理解することでみえてくる「課題」を特定します。

現状を理解する段階で話の範囲が広がるため、そのなかでも特にポイントとなる課題を見極めることが大切です。

「今の話で特に解決したい点はどこかな?」「上手くいかない理由はどんなことがあるかな?」といった質問を投げかけることで、本人にネックとなっている課題を自覚させることができます。

4. 行動の決定

課題に対する具体的な行動を決定します。「何か考えている対策はある?」のようにまずは本人がどのような行動をとる予定かを確認します。

この段階で上司が行ってしまいがちなのが、自らの経験から思いついたアドバイスや解決策を先に提示してしまうことです。

経験豊富な上司から提示された意見は、部下にとっては正解として映ります。提示された意見に意識が向いてしまうと、自ら考える機会を逃すだけでなく、1on1ミーティングでの主体性を失いかねません。あくまでも上司は、部下の主体性を尊重する姿勢を貫きます。

ただし、回答に困っている様子がみられるようであれば「例えば〇〇をしてみるのはどうかな?」「私がサポートできそうなことはある?」など投げかけて、不要なプレッシャーを与えないように行動の決定まで導きましょう。

部下の主体性を維持するため「自らで決めた行動(解決策)」であることが重要です。

5. クロージング

ここまでに話し合った内容を成果につなげるためにも、クロージングまでしっかりと行いましょう。1on1ミーティングの最後で、以下を確認しておきます。

  • まず何から着手するか
  • いつまでに行うのか
  • どのように報告するか(口頭やメールなど)
  • 次回の1on1ミーティングの日時

また1on1ミーティングの目的である「モチベーション向上」を意識して、当日のテーマに関わらず、最後は前向きな心持ちで終えるように心がけます。

1on1ミーティングの目的達成させるポイント

下の主体性を重視する

前項の「ミーティングの基本的な流れ」でもふれている通り、1on1ミーティングにおいて「部下の主体性」を維持することは非常に重要なポイントです。

部下が主体性をもてず、やらされ感で1on1ミーティングに臨んだり、上司からのアドバイスを指示・命令と捉えて行動したりしては、本来の目的を果たせません。

そのため、1on1ミーティングにおいて「上司ばかり話して部下が受け身になっていないか」「部下が自分の考えを話せているか」などに留意しましょう。

また1on1ミーティングの初回で、部下にも本人の主体性を重視したい旨をしっかりと説明しておくことで、主体性は保ちやすくなります。

上司が部下の個人目標を正確に把握しておく

1on1ミーティングで話すテーマとしてあがりやすいのが、個人目標の達成についてです。多くの企業が目標管理制度を導入している背景もあり、各社員にとって最も意識するテーマといえます。

そのため上司は、部下の個人目標を正確に把握しておくことが重要です。

具体的には、どのような目標を設定しており、どのくらいの難易度なのか、現時点ではその程度達成しているかなどを把握した状態で1on1ミーティングに臨みましょう。

こうした姿勢が部下にも伝わることで部下は「自分のことを気にかけてくれている」「理解しようとしてくれている」と感じます。

その結果、1on1ミーティングの目的である「上司と部下とのコミュニケーション円滑化」や「エンゲージメント向上」につながるのです。

上司が必要なスキルを習得する

上司が円滑なコミュニケーションを行うためのスキルを習得していれば、より効果的に1on1ミーティングを実施できます。

主に必要とされるスキルは以下の通りです。

スキル概要
コーチングスキルコーチングスキルとは、主に対話を通じて対象者の能力・気力を引き出し、自己成長や自発的な行動を促すためのスキルです。 上下関係を意識せず並走しながら目標達成を目指すスタンスが特徴です。部下の主体性を重んじる1on1ミーティングと相性が良く、コーチングを通して部下に気づきや成長の機会を与えることができます。
傾聴力相手の話を耳で聞くだけでなく、目で表情やしぐさを見ながら、相手の感情や真意に寄り添い共感を示す能力です。1on1ミーティングは対面でのコミュニケーションのため、ぜひ習得しておきたいスキルといえます。 特に経験が豊富な上司ほど、部下の話をヒアリングする途中で「この話の流れは、目標が高くて不安だというパターンか」と察しがついてしまいます。 さらに「そのパターンなら、〇〇さんのエピソードを基に話すと良いのではないか」など、次に言おうとすることに意識が向いてしまうことがあります。これでは、部下の感情や真意に寄り添うことはできず、重要なサインや本音を見逃してしまいかねません。 1on1ミーティングにあたって、あらためて傾聴力について学ぶことをおすすめします。
質問力不明点を解消する的確な問いかけを行うスキルです。相手に気づきを与える際にも用います。 1on1ミーティングのなかでは、主に部下が話すように促していきますが、上手く表現できない場合や、重要な箇所があいまいになってしまう場合があります。 こうした際に、質問力があれば課題解決に必要な情報を引き出すことができます。 また質問力を身につければ、部下が誤った解釈や望ましくない発想をもっている場合に、すぐに否定するのではなく質問を通じて本人に気づきを与えることも可能です。
ロジカルシンキング(論理的思考)ロジカルシンキングとは、物事の結果と原因を明確にとらえ、両者のつながりを考える思考法です。 1on1ミーティングのなかで明らかになる様々な悩みごとや不安などの課題を結果と原因に分解・整理して、本質を見極めるのに役立ちます。
クリエイティブシンキング(水平思考)クリエイティブシンキングとは、前提を設けず水平方向に発想を広げる思考法です。 ラテラルシンキングと表される場合もあります。固定観念や既存の手法にとらわれず自由に考えることで、新しい発想につなげます。 1on1ミーティングにおいては、部下の行き詰ったと感じている状況に対して、新たな視点や発想を提供するためにも身につけるべきでしょう。
クリティカルシンキング(批判的思考)クリティカルシンキングとは、物事の本質を見極めるためにあえて疑いをもって考える思考法です。 「批判的思考」と和訳されますが、批判のために誤りや欠点を探すわけではありません。本来の目的は、本質を見極めて改善やリスク回避につなげることです。 例えば、1on1ミーティングのなかで部下が考えている解決策について、「本当にこの方法でよいのか」や「もっと効率的・効果的な方法があるのではないか」など、あえて疑いをもつことでより良い結果に導きます。

社員の負担軽減

これまでの業務に加えて1on1ミーティングを行うとなると、上司の負担増加は避けられません。上司に限らず部下においても、新たな拘束時間が発生します。

そこで有効なのが、パソコンやスマートフォン等とインターネットを利用して教育、学習、研修を行えるeラーニングです。eラーニングはネット環境さえあればいつでもどこでも受講可能なため、空き時間などを学習に活用できます。

例えば、1on1ミーティングでアドバイスが必要なテーマが発生した場合、ミーティング内や別途時間を設けて教育することは困難ですが、eラーニングであれば該当テーマの研修動画を視聴することで学習可能です。

さらに上司が学ぶべきスキルも、eラーニング上で学ぶことができます。

eラーニング活用について詳細を知りたい方は以下の資料をご確認ください。
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まとめ

1on1ミーティングは部下の成長を促進させ、上司と部下の信頼関係の構築や組織力の強化に大きく貢献できる対話方法といえます。

働き方が変化してコミュニケーションの機会が不足している昨今においては、上司と部下が1対1でしっかりと話し合える貴重な時間となるでしょう。

しかし、そのためには気軽に話せるような環境の構築や、部下の意見・考え方を尊重しながら課題解決に導けるスキルの習得が求められています。

本記事の内容を参考にして1on1ミーティングを実施し、円滑なコミュニケーションを実現させ、部下の成長と組織成長の貢献につなげていただければ幸いです。

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