1on1ミーティングの目的は、社員のパフォーマンス向上やモチベーション向上、エンゲージメント向上、上司と部下のコミュニケーション円滑化の4つです。
多くの企業において1on1ミーティングに近いかたちでの個別面談は行われていますが、明確な目的をもたず形式的に実施しているケースも少なくありません。
そこで本記事では1on1ミーティングについて、目的から基本的な流れ、重要ポイント、必要となるスキルまで解説します。1on1ミーティングの実施を検討している企業様や、実施している1on1ミーティングの効果を高めたい企業様にとって有益な内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
1on1ミーティングとは
1on1ミーティングとは、社員のパフォーマンス向上やモチベーション向上などを目的として、上司と部下が1対1かつ自由なテーマで面談を行うことです。
頻度は週1回〜月1回程、所要時間は30分~1時間程が一般的です。もともとアメリカの企業から始まった手法ですが、今では日本の企業も積極的に導入しています。
1on1ミーティングの目的
1on1ミーティングの主な目的は以下の4つです。
社員のパフォーマンス向上
1on1ミーティングを通じて、社員の業務に対するパフォーマンスを向上させます。例えば、現在取り組む業務の効率的な進め方、行き詰った課題の解決策など、実践に活かせる相談を行う機会として活用します。
社員のモチベーション向上
社員が現在抱えている不安や悩みをヒアリングし、解消することでモチベーションアップにつなげます。上司から部下への期待を示してモチベーションを高めることなども可能です。
上司と部下のコミュニケーション円滑化
上司と部下が1対1で話すことで、両者のコミュニケーションをスムーズにします。悩みや不安など本音で話せる機会を設けることで、互いの理解や信頼につながり、普段のコミュニケーションにも良い影響を及ぼすのです。
社員のエンゲージメント向上
1on1ミーティングを通じて、社員のパフォーマンス向上やモチベーション向上、上司とのコミュニケーション円滑化を実現することによって、社員のエンゲージメントも向上します。組織として1on1ミーティングの機会を設けること自体でも「社員を大切にする姿勢」が伝わるでしょう。
1on1ミーティングの基本的な流れ
1on1ミーティングは、以下のように進行します。
1.信頼関係構築
まずは、ある程度の信頼関係を構築しましょう。信頼関係を構築できていない状態では、部下は本音で話せず、上司の発言やアドバイスを指示・命令のように受け取られかねません。
とはいえ難しく考える必要はなく、部下に「何を話しても受け止めてもらえる安心感」をもってもらうことを意識すると良いでしょう。
あえて業務と関係のない趣味や世間話など、短時間でのアイスブレイクも有効です。
2.テーマやゴールの共有
「今日は何についての話を聞こうか?」「今、何か悩みや困りごとはある?」など、部下の主体性を尊重した投げかけを行い、当日の1on1ミーティングにおけるテーマやゴールを共有します。
ここでテーマやゴールを明確にしておくことで、話が脱線して話したいことが話せなかったとなってしまうのを防ぎ、限られた時間をより有意義なものとします。
3.現状の理解
次に部下の現状を理解します。部下が現在おかれている状況や本人の心境について、正確に理解することに努めましょう。
現状を理解する際は、部下に話してもらうことを優先します。適度なうなずきや相づちをすると部下は安心して話せます。
必要に応じて、ポイントとなる部分の詳細を確認する質問を投げかけたり、事実に対する本人の感想や解釈を確認したりすることで、現状をより正確に理解しましょう。
部下が説明に行き詰まった場合は「ここまでの話を要約すると〇〇ということで、合ってるかな?」とヒアリングした内容を要約することで、正確な把握と部下が考えをまとめるサポートを同時に行えます。
4.課題の特定
テーマやゴールと現状を理解することでみえてくる「課題」を特定します。
現状を理解する段階で話の範囲が広がるため、そのなかでも特にポイントとなる課題を見極めることが大切です。
「今の話で特に解決したい点はどこかな?」「上手くいかない理由はどんなことがあるかな?」といった質問を投げかけることで、本人にネックとなっている課題を自覚させることができます。
5.行動の決定
課題に対する具体的な行動を決定します。「何か考えている対策はある?」のようにまずは本人がどのような行動をとる予定かを確認します。
この段階で上司が行ってしまいがちなのが、自らの経験から思いついたアドバイスや解決策を先に提示してしまうことです。
経験豊富な上司から提示された意見は、部下にとっては正解として映ります。提示された意見に意識が向いてしまうと、自ら考える機会を逃すだけでなく、1on1ミーティングでの主体性を失いかねません。あくまでも上司は、部下の主体性を尊重する姿勢を貫きます。
ただし、回答に困っている様子がみられるようであれば「例えば〇〇をしてみるのはどうかな?」「私がサポートできそうなことはある?」など投げかけて、不要なプレッシャーを与えないように行動の決定まで導きましょう。
部下の主体性を維持するため「自らで決めた行動(解決策)」であることが重要です。
6.クロージング
ここまでに話し合った内容を成果につなげるためにも、クロージングまでしっかりと行いましょう。1on1ミーティングの最後で、以下を確認しておきます。
- まず何から着手するか
- いつまでに行うのか
- どのように報告するか(口頭やメールなど)
- 次回の1on1ミーティングの日時
また1on1ミーティングの目的である「モチベーション向上」を意識して、当日のテーマに関わらず、最後は前向きな心持ちで終えるように心がけます。
1on1ミーティングの目的達成に向けた重要ポイント
1on1ミーティングの重要ポイントについて解説します。いずれも1on1ミーティングの目的を達成するためには不可欠なため、実施の際の参考にしてください。
部下の主体性を重視する
前項の「ミーティングの基本的な流れ」でもふれている通り、1on1ミーティングにおいて「部下の主体性」を維持することは非常に重要なポイントです。
部下が主体性をもてず、やらされ感で1on1ミーティングに臨んだり、上司からのアドバイスを指示・命令と捉えて行動したりしては、本来の目的を果たせません。
そのため、1on1ミーティングにおいて「上司ばかり話して部下が受け身になっていないか」「部下が自分の考えを話せているか」などに留意しましょう。
また1on1ミーティングの初回で、部下にも本人の主体性を重視したい旨をしっかりと説明しておくことで、主体性は保ちやすくなります。
上司が部下の個人目標を正確に把握しておく
1on1ミーティングで話すテーマとしてあがりやすいのが、個人目標の達成についてです。多くの企業が目標管理制度を導入している背景もあり、各社員にとって最も意識するテーマといえます。
そのため上司は、部下の個人目標を正確に把握しておくことが重要です。
具体的には、どのような目標を設定しており、どのくらいの難易度なのか、現時点ではその程度達成しているかなどを把握した状態で1on1ミーティングに臨みましょう。
こうした姿勢が部下にも伝わることで部下は「自分のことを気にかけてくれている」「理解しようとしてくれている」と感じます。
その結果、1on1ミーティングの目的である「上司と部下とのコミュニケーション円滑化」や「エンゲージメント向上」につながるのです。
上司が1on1ミーティングの目的を理解する
上司が1on1ミーティングの目的を正確に理解した状態で、1on1ミーティングを行うことも重要です。
慣習的に個人面談を行ってきた経緯があれば、これまで同様の趣旨のまま1on1ミーティングを行うリスクがあります。
また、本来の目的を理解しないままで1on1ミーティングを行うと、雑談やネガティブな内容に終始したり、上司から部下への一方的な指導の場になってしまったりしがちです。
必ず事前に目的と趣旨を理解しておき、1on1ミーティングを意義のある場にしましょう。
上司が必要なスキルを習得する
1on1ミーティングを効果的に行うためには、さまざまなスキルの習得が必要です。
具体的には、コーチングスキルや傾聴力、質問力などのコミュニケーションスキルに限らず、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングなどの思考法も習得すべきです。
後の項目で詳細を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
社員の負担軽減
これまでの業務に加えて1on1ミーティングを行うとなると、上司の負担増加は避けられません。上司に限らず部下においても、新たな拘束時間が発生します。
そこで有効なのが、パソコンやスマートフォン等とインターネットを利用して教育、学習、研修を行えるeラーニングです。eラーニングはネット環境さえあればいつでもどこでも受講可能なため、空き時間などを学習に活用できます。
例えば、1on1ミーティングでアドバイスが必要なテーマが発生した場合、ミーティング内や別途時間を設けて教育することは困難ですが、eラーニングであれば該当テーマの研修動画を視聴することで学習可能です。
さらに上司が学ぶべきスキルも、eラーニング上で学ぶことができます。
eラーニング活用について詳細を知りたい方は以下の資料をご確認ください。
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1on1ミーティングで必要となるスキル
1on1ミーティングで必要となるスキルについて紹介します。上司が以下のスキルを習得することで、より効果的な1on1ミーティングを実現できます。
コーチングスキル
コーチングスキルとは、主に対話を通じて対象者の能力・気力を引き出し、自己成長や自発的な行動を促すためのスキルです。
上下関係を意識せず並走しながら目標達成を目指すスタンスが特徴です。部下の主体性を重んじる1on1ミーティングと相性が良く、コーチングを通して部下に気づきや成長の機会を与えることができます。
傾聴力
相手の話を耳で聞くだけでなく、目で表情やしぐさを見ながら、相手の感情や真意に寄り添い共感を示す能力です。1on1ミーティングは対面でのコミュニケーションのため、ぜひ習得しておきたいスキルといえます。
特に経験が豊富な上司ほど、部下の話をヒアリングする途中で「この話の流れは、目標が高くて不安だというパターンか」と察しがついてしまいます。
さらに「そのパターンなら、〇〇さんのエピソードを基に話すと良いのではないか」など、次に言おうとすることに意識が向いてしまうことがあります。これでは、部下の感情や真意に寄り添うことはできず、重要なサインや本音を見逃してしまいかねません。
1on1ミーティングにあたって、あらためて傾聴力について学ぶことをおすすめします。
質問力
不明点を解消する的確な問いかけを行うスキルです。相手に気づきを与える際にも用います。
1on1ミーティングのなかでは、主に部下が話すように促していきますが、上手く表現できない場合や、重要な箇所があいまいになってしまう場合があります。
こうした際に、質問力があれば課題解決に必要な情報を引き出すことができます。
また質問力を身につければ、部下が誤った解釈や望ましくない発想をもっている場合に、すぐに否定するのではなく質問を通じて本人に気づきを与えることも可能です。
ロジカルシンキング(論理的思考)
ロジカルシンキングとは、物事の結果と原因を明確にとらえ、両者のつながりを考える思考法です。
1on1ミーティングのなかで明らかになる様々な悩みごとや不安などの課題を結果と原因に分解・整理して、本質を見極めるのに役立ちます。
クリエイティブシンキング(水平思考)
クリエイティブシンキングとは、前提を設けず水平方向に発想を広げる思考法です。
ラテラルシンキングと表される場合もあります。固定観念や既存の手法にとらわれず自由に考えることで、新しい発想につなげます。
1on1ミーティングにおいては、部下の行き詰ったと感じている状況に対して、新たな視点や発想を提供するためにも身につけるべきでしょう。
クリティカルシンキング(批判的思考)
クリティカルシンキングとは、物事の本質を見極めるためにあえて疑いをもって考える思考法です。
「批判的思考」と和訳されますが、批判のために誤りや欠点を探すわけではありません。本来の目的は、本質を見極めて改善やリスク回避につなげることです。
例えば、1on1ミーティングのなかで部下が考えている解決策について、「本当にこの方法でよいのか」や「もっと効率的・効果的な方法があるのではないか」など、あえて疑いをもつことでより良い結果に導きます。
まとめ
1on1ミーティングについて、目的から基本的な流れ、重要ポイント、必要となるスキルを解説しました。
1on1ミーティングの目的は「社員のパフォーマンス向上」「社員のモチベーション向上」「上司と部下のコミュニケーション円滑化」「社員のエンゲージメント向上」の4つです。
1on1ミーティングには基本的な流れがあります。
まず信頼関係構築を行った上で、テーマやゴールの共有からスタートします。次に部下から現状を共有してもらい、ネックとなっている課題を特定しましょう。そして課題に対する具体的な行動を決定し、最後にクロージングでミーティングで決定したことを確認すれば終了です。
1on1ミーティングの目的を達成するための重要ポイントも5つ紹介しました。
「部下の主体性を重視する」「上司が部下の目標を正確に把握しておく」「上司が1on1ミーティングの目的を理解する」などいずれも重要ですので、ぜひ参考にしてください。とりわけ「上司が必要なスキルを習得する」と「社員の負担軽減」を実現するためは、最小限の負担で人材育成を行えるeラーニングの活用が有効です。
また1on1ミーティングに必要となるスキルを紹介しました。
具体的には「コーチングスキル」「傾聴力」「質問力」「ロジカルシンキング(論理的思考)」「クリエイティブシンキング(水平思考)」「クリエイティブシンキング(批判的思考)」の6つです。
採用市場の競争激化や働き方に対する価値観の多様化、人材の流動性の高まりなど、個々の社員と向き合うべき理由は挙げればきりがありません。
1on1ミーティングはこうした状況に対する有効な手段となるため、ぜひ本記事の内容を参考にして効果的な運用につなげてください。