人材育成のよくある課題5選と解決策|階層別や事例まで徹底解説

人材育成には課題がつきものです。人材育成は企業の発展に欠かせないものの、以下のような課題を抱えている企業様も多いのではないでしょうか。

「社員が忙しくて、人材育成を行う時間と余裕がない」
「人材育成の知識やスキルが不足している」
「社員が人材育成の重要性を認識できていない」

そこで本記事では人材育成の課題について、そもそもの人材育成の目的や定義から振り返ったうえで、具体的な解決策、解決できた事例までを解説します。さらに、階層別の課題と解決策についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

人材育成の課題解決における前提

人材育成の課題を解決するにあたり、そもそもの人材育成の目的と定義をおさえておきましょう。

人材育成の目的

人材育成を行う目的は、社員の成長を通じた企業の発展です。そのため育成が、組織としての成果につながっているかを重視しましょう。

人材育成の目的を具体的に示すと以下の3つです。

ビジネスマインドの醸成

企業理念や組織人としての心構え、ビジネスマナーなど「仕事の基本となる姿勢や考え方」を身につけます。姿勢や考え方は日々の行動と結果に影響するため、新入社員に限らずベテラン社員にとっても重要な要素です。

スキルや専門性の向上

自社で活躍するためには、業務に求められるスキルと専門的な知識を身につける必要があります。実践的なスキルを身につけるためには実務を経験するのが近道です。実務を行うなかでの試行錯誤と状況に即した上司からのアドバイスが、部下のスキルと専門性を大きく向上させます。

帰属意識の向上

「組織に属している」「社員みんなが仲間である」といった帰属意識を向上させます。帰属意識が高ければ、社内課題の「自分ごと化」や退職防止にもつながるのです。また自分の目標を明確に認識することで、モチベーションアップにも影響を及ぼします。

人材育成の目的・目標については以下の記事もご覧ください。
人材育成の目標とは?基本的な設定方法や管理のポイントを紹介

人材育成の定義

人材育成の定義は「企業に貢献できる人材を育成すること」です。より厳密には「狭義」と「広義」に分かれており、各手法が以下のように分類されます。

狭義の人材育成:OJT、OFF-JT、自己啓発、eラーニング

広義の人材育成:ジョブローテーション制度、人事評価制度、目標管理制度、メンター制度

人材育成の定義については以下の記事もご覧ください。
人材育成で大切なこと5つ!必要なスキルやフレームワークを徹底解説

人材育成のよくある課題5選

人材育成の課題には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、人材育成を進める上で生じがちな課題を5つ紹介します。解決策の前にまずは、どのような課題があるかを確認しましょう。

1. 社員が忙しくて時間と余裕がない

人材育成を推進しようとしても、社員が忙しくて時間と余裕がないというケースは非常に多いです。現場の社員は日常業務や目標などに追われて、プラスアルファの時間を取りにくい状況がよく見られます。

また現場に限らず、人材育成を担う人事関連の部署も同様に忙しく、推進に向けた動きをとれない場合もあるのではないでしょうか。

2. 人材育成の知識やスキルが不足している

人材育成についての知識やスキルが社内に不足している場合もあります。事業の発展や業績アップに注力する一方で「人に教え、育てる」ための知識やスキルの習得が課題として残っているケースも少なくありません。

3. 社員が重要性を認識できていない

経営層や人材育成を担う部署が推進を図る一方で、その他の社員が人材育成の重要性を認識しておらず上手く巻き込めないパターンもあります。

「現場は研修どころではない」「研修参加は義務ですか?」のような声があがる場合、重要性の認識が不足している可能性が高いでしょう。

4. 人材育成そのものが目的化している

人材育成を行っているものの、施策そのものが目的化しているケースも見受けられます。具体例は以下の通りです。

  • OJTを行っているが、具体的な目標は設けずにトレーナーを任命するだけになっている
  • 集合研修を行っているが、開催後の効果測定やフォローはしていていない
  • ジョブローテーション制度を導入しているが、形式的な配置替えになっている

5. 計画的に行えていない

人材育成が目的が曖昧なまま不定期・単発で開催されたり、継続的な育成手法が中断されたりといった場合、計画性が不足していると効果が出なくなってしまいます。計画的ではない人材育成は、費用や人など各コストがかかるだけでなく、人材育成に対する不信感を抱きかねません。

人材育成の課題に対する解決策

人材育成の課題を解決するための方法を6つ紹介します。解決策のなかには先に示した人材育成の課題のうち複数を解決に導けるものもあるため、ぜひ参考にしてください。

人材育成の目標を明確に定める

人材育成を行うにあたり、明確な目標設定は欠かせません。具体例としては、営業職の「1日5件新規訪問を行い、年間売上250万円達成する」や、事務職の「手書きの伝票処理業務を50%削減する」などが挙げられます。

また人材育成の目標は、自社が理想とする人材像へ社員を成長させるための重要な指標です。

社員それぞれが設定して達成に向け取り組み、主に上司が管理・フォローします。人事・教育担当者は各部署からあがってきた目標を取りまとめ、研修・セミナーなどの育成施策の企画に活用していきます。これによって現場が求めるテーマでの人材育成が可能となり、現場社員の人材育成への参画意識の向上も期待できるのです。

ただし人材育成の目標は、社員が目標達成に向けて試行錯誤するなかで成長を促すためのものです。育成を担う上司は達成までのプロセスを重視し、適切な管理とフォローを行いましょう。

人材育成の目標の立て方

人材育成の目標を立てる手順は以下の4ステップです。ここでは目標設定の基礎的なフレームワークである「ベーシック法」をもとに簡潔に解説します。

1.目標項目の設定

はじめに、何を達成するかを決めます。目標項目は以下の4タイプです。

 向上・強化:現状をより良くするための目標
       例:売上を30万円向上させる

 改善・解消:現状の問題を改善もしくは解消するための目標
       例:時間外労働の全社平均を月5時間短縮させる

 維持・継続:現状を保ち継続させるための目標
       例:クレーム件数0件を維持する

 創出・開発:現状にない新しいことを創出・開始するための目標
       例:経費精算システムを導入する

2.達成基準の設定

次に、目標項目の達成を判断するための基準を設定します。能力は業績等と異なり、数値化などによる客観的な評価が困難です。そこで、数値や状態で示せる基準にしましょう。

また達成基準は「現実的に達成できるか」も大切です。達成の難易度があまりに高い目標にしてしまうと、能力開発につながらないどころか不安や不満につながりかねません。

3.期限の設定

目標の項目「何を」と達成基準「どのくらい」を設定したら、期限「いつまでに」を決めます。良い項目と達成基準で目標ができても、期限を決めなければ成果につながりません。

期限は目標の難易度に応じて「1年・半年・3か月・1ヶ月」など柔軟に設定しましょう。

また、達成基準と同様に「現実的な期限」になっていることも大切です。

4.達成計画の設定

最後に「何を」「どのくらい」「いつまでに」を設定した目標を達成するために、日々のアクションプラン「どうやって」を設定します。

行動する頻度や日時、関係者名、用いる手段・ツールなどまで達成計画を具体的に設定しておくことで迷わず実践に移せます。

さらに具体的な達成計画は、進捗に遅れが生じた場合に詳細を見直せるため、指導や助言を行いやすいのです。

人材育成の目標についての詳細な立て方は以下の記事をご覧ください。
人材育成の目標とは?基本的な設定方法や管理のポイントを紹介

育成計画書を作成する

人材育成の育成計画書を作成することも有効な手段です。

計画性のない人材育成では、どこに向かって社員を育成しているのかを見失いがちになります。そこで、計画書を作成し、振り返りを行いながら育成を進めることで、不足点を補いつつ社員の着実な成長につなげることができるのです。

また人材育成の育成計画書を作成するメリットとして、効果的な教育・研修体制の確立につながるという点があげられます。

育成計画書はかたちとして残るため、各社員の成長過程を記録・共有することが可能です。加えて、どのような育成を行ったのかという実績が、育成に関するノウハウとして組織の資産になるでしょう。新入社員に対しても効果的な方法が適用しやすくなります。

育成計画書についての詳細はこちらの記事をご覧ください。
人材育成の育成計画書の作り方|無料のサンプルフォーマット付き

教える側の育成を行う

人材育成の課題を解消するためには、教える側(育成担当者)の育成も重要です。

例えば、営業担当としては優れた社員であっても、部下や後輩に対して営業に関する知識・スキル・ノウハウを教えることも得意とは限りません。育成に必要なスキルは異なるため当然のことでしょう。

そこで育成担当者に対しては、以下のようなテーマでの育成をおすすめします。

OJTトレーナー

OJTを行うトレーナーとしての能力向上を図ります。集合型研修研修で短期間で行うのが一般的です。「OJTの質」および「トレーナーとしての育成スキル」が向上します。さらに育成者・指導者としての経験が、管理職候補としての成長につながる点もメリットです。

メンター

メンターとしての能力向上を図ります。またメンター制度とは、知識と経験のある先輩社員がメンター(育成担当者)となり、後輩社員(育成対象者)に対して指導・業務支援・メンタル面のサポートを行う制度です。

ティーチングとコーチング

ティーチングスキルとは、経験豊富な人から経験が浅い人へ知識やノウハウを教えるためのスキルです。コーチングスキルとは、主に対話を通じて対象者の能力・気力を引き出し、自己成長や自発的な行動を促すためのスキルです。

業務を教える際はティーチングスキル、目標達成に向けた個人面談ではコーチングスキルなど場面ごとに適切に発揮できるようになるための育成を行いましょう。

マネジメントスキル

マネジメントスキルスキルの習得は、人材育成で発揮するために限らず、次期管理職候補としての育成にもつながります。一言でマネジメントスキルといっても、経営資源(ヒト・モノ・カネ)を効率的に活用するための能力として複合的なスキルの習得が求められます。

マネジメントスキルについての詳細はこちらの記事をご覧ください。
マネジメントスキルを高める人材育成手法|重視すべき部下育成力

人材育成を実施中や実施後のフォローに行う

人材育成は、集合研修での単発開催や、OJTなど数か月〜1年に及ぶものまで様々です。重要なのは、人材育成を実施中あるいは実施後にフォローを行うことです。どのような人材育成も、社員に知識やスキルが定着してこそ意味を成します。

短期や単発での開催であれば、1週間後に部署ごとのミーティングで「研修内容をどう活かせたか」「どのような変化があったか」を共有する等がよいでしょう。また、あえて1週間後に研修参加者にアンケートを行い、研修内容の想起や成長の自覚を促すのもおすすめです。

長期に及ぶ場合は、定期的な進捗確認が必要です。うまく推進できていない場合のフォローを行うための大切な機会でもあります。個別面談を毎週行うのが理想ですが、日々の業務やメンバー数によって困難な場合が多いでしょう。

そこで、節目となるタイミングでの個別面談と、定期ミーティングなどを利用した進捗共有を組み合わせる方法がおすすめです。

具体的には、年間目標であれば四半期ごとの個別面談での進捗確認とフォロー、毎週のチームミーティングで進捗共有を行います。進捗共有で個別フォローが必要な社員がいれば、臨時の個別面談を実施しましょう。

人事評価制度を見直す

人事評価制度とは、各社員の「業績・能力・勤務態度や意欲」などを客観的指標により評価して、昇給や昇格に反映するための制度です。

人事評価制度は、社員を評価するためだけの制度ではありません。人材育成の手法としても重要な役割を担います。具体的には、人事評価によって被評価者は「何が足りないのか」および「何を身につけるべきか」を明らかにでき、次回の目標設定に活用できるのです。

人事評価の項目に「人材育成に関する項目」を設ければ、組織として人材育成に力を入れていることや、各社員に育成担当者としての役割を求めていることを示せます。

人事評価の詳細についてはこちらの記事もご覧ください。
人事評価の項目とサンプル|目的や基準、実施手順を解説

eラーニングシステムの導入

人材育成を行いたいが「運営側も含めて社員の時間と余裕がない」といった根本的かつ難解な課題を解消できるのが、eラーニングです。

eラーニングとは、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器とインターネットを利用して教育、学習、研修を行うことです。

ネット環境さえあればいつでもどこでも受講可能なため、受講者側は空き時間などを活用できます。開催側も受講案内のみで、研修のために参加者全員のスケジュール調整を行う必要もありません。さらに、OJTの予習や復習に用いるなど補助的な活用も可能です。

手間や負担の少なさから「運営側も含めて社員の時間と余裕がない」という課題に対する有効な解決策となるでしょう。

eラーニング活用について詳細を知りたい方は以下の資料をご確認ください。
失敗しない『企業向けeラーニング』の始め方|無料でダウンロードする

【階層別】人材育成の課題と解決策

人材育成の課題と解決策を「階層別」で紹介します。より個別かつ具体的な内容となっていますので、参考にしてください。

新入社員における人材育成の課題と解決策

新入社員における人材育成の課題としてあがりやすいのが「モチベーションマネジメント」です。仕事に対するモチベーションは定着率にも影響しやすく、上手くマネジメントできないがゆえに離職に至ったというケースが後を絶ちません。慣れない環境や業務からくる不安をいかに解消するかが求められます。

解決策としては、育成対象者(新入社員)と育成担当者の両者が「モチベーションマネジメント」について学ぶことです。具体的には、以下の通りです。

育成対象者:
自らのモチベーションをいかに維持・向上させるかという視点でセルフマネジメントについて習得させます。組織としてしっかりと社員のモチベーションをマネジメントしつつ、「自らのモチベーションは自らでマネジメントする」ことの大切さを説きましょう

育成担当者:
部下や後輩のモチベーションには、自らの言動も大きく関わることを認識させることが大切です。例えば、部下に対して「期待を言葉にして表す・意見を求める・裁量権を与える」等を行うことで、部下は「期待されていることを実感」でき、成果向上にもつながります

なお、「周囲からの期待が高いと成果も高くなる傾向」はピグマリオン効果と称されており、以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。
ピグマリオン効果とゴーレム効果の違い|ビジネスでの活用と注意点

以上より、育成対象者の「自らのモチベーションは自らでコントロールしないと」という思いと、育成担当者による「部下のモチベーションを高く維持するには、自分の言動も意識しなければ」という認識が合致することで、真価を得られるでしょう。

中堅社員における人材育成の課題と解決策

中堅社員における人材育成の課題としてあがりやすいのが「管理職候補としての自覚・育成」です。ここには、育成担当者としてのスキルも含まれます。独り立ちしたプレーヤーからいかに管理職候補としての自覚を持たせるか、マネジメントスキルを向上させるかが課題です。

解決策としては、「OJTやメンター、プロジェクトリーダーとして抜てき」など、現場でのマネジメントが必要になる経験をさせることです。もちろん、任命・抜てきだけしてあとは本人任せというケースはあってはなりません。

例えば、OJTやメンターを行う前には、マネジメントする側および育成担当者としての学びを得るためのOJT研修やメンター研修の受講をおすすめします。

また中堅社員は担当する業務も増えており、育成担当者としての立場が追加されると業務過多となることも懸念されます。こうしたケースでは、育成担当中は周囲が一部業務を代理したり、育成対象者の予習や復習にeラーニングを活用したりして負担を軽減しましょう。

管理職における人材育成の課題と解決策

教育対象者となる機会は少ない管理職ですが、それゆえに組織から見れば自らも育成対象でもあることの自覚不足が生じるケースもあるでしょう。

解決策としては、以下の通りです。

  • 経営知識やハラスメントなど管理職にも必要な内容での研修に参加させる
  • 資格取得や書籍購入の補助など自己啓発の機会を与える
  • 部下が参加する研修にオブザーバーとして参加させる

管理職として自ら積極的に学ぶ姿勢を部下に示すことで、部下の学習意欲向上も期待できます。

人材育成の課題を解決した事例

人材育成の課題を解決できた事例をストーリー調で2つ紹介します。課題発見から解決策までの流れをより具体的にイメージできるため、ぜひご参照ください。

人材育成の「目標の立て方」を見直したS社

健康食品をメインで取り扱う商社のS社。ここ数年は人材育成にも力を入れ、年度初めには全社員が個人目標の設定を行っています。

しかし、経営層と各部門長が集まり各社員の人事評価を行う場面で、ある問題が発生しました。

人事U部長「営業担当Aさんの目標は“毎朝ロープレを行い昨年よりも売上を上げる”とありますが、これは達成できたということで良いのでしょうか?」

営業K部長「はい、達成で良いと考えています。Aさんは宣言通り上司である私と毎朝ロープレを行いました。売上も昨年度より向上しています。」

社長「確かに有言実行は素晴らしい。ただ、昨年度より売上が上がったとはいえ3%程度なのが気にかかるね。これで売上が上がったと評価して良いのだろうか。」

営業K部長「確かに数値としては少ないですが、上がったという事実には違いありません。Aは目標達成として良いと思います。」

周囲のメンバーも「確かに達成はしているけど・・・」という釈然としない印象はぬぐい切れません。

こうした経験を糧にS社は、「個人目標は数値や状態など、客観的に判断できるものとする」というルールを設けました。

これにより、全ての営業社員の個人目標が数値化し、組織として全体目標とも結びついたものになりました。また、それまで客観的な目標設定が困難だった事務系の社員も、「状態(例:1人で経理業務を完結できるようにする)」で目標を示すことにより客観的な評価を可能にしたのです。

「余裕のなさ」をeラーニングで解消したY社

工場用機械の販売とメンテナンスを手がけるY社。業績も好調で事業拡大によりメンバーも増えてきました。

一見順調に見えるY社ですが、ある課題を抱えています。それが新入社員の離職です。もちろん、多くのメンバーが入社するため数名は離職者が出てもおかしくはありません。

ただ、Y社における課題の根源にあったのは、現場での「パワーハラスメント問題」でした。あからさまにパワハラと呼べる程の問題はありませんが、離職者のなかには現場でパワハラに近い行為を受けたことをほのめかす者が複数名いたのです。

新卒社員や中途社員の入社が相次ぎ、既存社員における人材育成のウェイトも高まっています。事業も拡大して忙しくなるなか、新しいメンバーが入ってはくるものの、業務の複雑さや特殊さから即戦力とはなりません。既存社員は担当業務をこなしながら人材育成も行わなければならない状況にありました。

その結果、語気が強くなってしまったり、新入社員へのフォローが疎かになってしまっていたのです。

こうした状況を理解しながらも、ハラスメント問題におけるリスクの大きさを知っている人事C係長は、全社員を対象とした「パワーハラスメント研修」の実施を企画します。

しかし、現場から返ってきた言葉は次のようなものでした。

「今現場がどれくらい忙しいか知っているだろう?悪いけど研修など受けている暇はない」

理解はしているが重要性を理解していないと思えるような発言に苛立ちを覚えるC係長。上司に訴えるにも「確かに今は現場も難しいかもね」という答えです。しかし、今この瞬間にも本来は誰も望んではいないパワハラまがいの行為が行われる可能性もあります。

頭を抱えたC係長でしたが、インターネットで解決策を探るなか「eラーニング」の存在を知ります。価格や操作面でのハードルも低く、稟議もスムーズに通り、容易に導入が完了しました。

早速C係長は、社内に「本日から1週間の間で、いつでもどこでも良いので30分だけ時間を取って対象の研修動画を受講して下さい」といった案内を送ります。研修とは異なり開催準備も必要ありません。誰が受講したかも一目でわかり、管理も簡単に行えます。

未受講者にはリマインド案内をしながら1週間足らずで、全社員の受講が完了しました。現場からは「これならちょっとした業務の合間で受講できるから良い」「聞き逃しても見返せるのが便利」など好意的な意見があがります。

その後も様々な機会でeラーニングを活用したS社。今では新入社員研修にもeラーニングを用いて既存社員の負担軽減に役立てています。

まとめ

人材育成の課題について、人材育成の目的や定義から、課題とその解決策、解決できた事例までを紹介しました。

そもそも人材育成の目的は「ビジネスマインドの醸成」「スキルや専門性の向上」「帰属意識の向上」の3つです。人材育成の定義は「企業に貢献できる人材を育成すること」ですが、より厳密には「狭義」と「広義」に分かれています。

人材育成の課題は、「社員が忙しくて時間と余裕がない」「人材育成の知識やスキルが不足している」「社員が重要性を認識できていない」「人材育成そのものが目的化している」「計画的に行えていない」の5つでした。いずれも多くの企業様を悩ませる課題ばかりではないでしょうか。

そして、人材育成の課題を解決するための対策を6つ紹介しました。「人材育成の目標を明確に定める」「育成計画書を作成する」「教える側の育成を行う」「人材育成を実施中や実施後のフォローに行う」「人事評価制度を見直す」「eラーニングシステムの導入」、適切な解決策を施すことで自社の課題を解決しましょう。

さらに階層別の課題と解決策も解説しました。課題は、新入社員はモチベーションマネジメント、中堅社員は管理職候補としてのマネジメントスキル、管理職は自らも育成対象でもあることの再認識です。各課題に対しての解決策も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

最後に人材育成の課題を解決した事例を2つ紹介しました。各企業で抱える課題は様々ですが、今回紹介した事例に近いケースもあるのではないでしょうか。

まずは自社における人材育成の課題に気づくためにも、日常業務におけるちょっとした不安や違和感に注目してみるとよいでしょう。それをきっかけに課題を発見できて解決まで導ければ、人材育成を通じた企業の発展を実現できるのです。