人材育成の目標とは?職種別の目標例、設定、管理のポイント

人材育成の目標は、理想とする人材像へ社員を成長させるために不可欠な指標です。

多くの企業が取り入れており、社員の成長を通じて自社の発展へとつなげています。

ただ一方で、以下のようなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

「どんな目標を、どう立てればよいか分からない」
「部下が立てた目標を管理できるか不安」

そこで本記事では、人材育成の目標について基本的な立て方や職種別の目標例、目標管理の重要ポイントを徹底解説します。

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企業の発展に社員の成長は欠かせませんが、実際には多くの人事・育成担当者が「適切な目標設定がわからない」「目標管理やフィードバックの仕方がわからない」「そもそも育成のノウハウがない」などの悩みを抱えています。

自身の日々の業務を遂行しながら部下のマネジメントを行い、適宜フォローアップを行うことは決して簡単なことではありません。忙しないなかで「仕組み」をうまく活用して改善を図っていく必要があります。

そこで、人材育成にお悩みの人事・育成担当者に向けて、最新の人材育成モデルやその実現ノウハウをまとめた『デジタル時代の人材育成モデル』をご提供しています。社員の学習が習慣化する育成モデルを4つの視点で紐解きながら丁寧に解説しています。

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人材育成の目標・目的とは

人材育成の目標とは、自社が理想とする人材像へ社員を成長させるための指標です。

社員それぞれが設定して達成に向け取り組み、主に上司が管理・フォローします。人事・教育担当者は各部署からあがってきた目標を取りまとめ、研修・セミナーなどの育成施策の企画に活用していきます。

具体例としては、営業職の「1日5件新規訪問を行い、年間売上250万円達成する」や、事務職の「手書きの伝票処理業務を50%削減する」などが挙げられます。

ただし人材育成の目標は、社員が目標達成に向けて試行錯誤するなかで成長を促すためのものです。育成を担う上司は達成までのプロセスを重視し、適切な管理とフォローを行いましょう。

また、人材育成には以下の3つの目的があり、社員の成長の先に企業の発展を見据えていなければなりません。

  • ビジネスマインドの醸成
  • スキルや専門性の向上
  • 帰属意識の向上

ビジネスマインドの醸成

企業理念や組織人としての心構え、ビジネスマナーなど「仕事の基本となる姿勢や考え方」を身につけます。

姿勢や考え方は日々の行動と結果に影響するため、新入社員に限らずベテラン社員にとっても重要な要素といえます。

スキルや専門性の向上

自社で活躍するためには、業務に求められるスキルと専門的な知識を身につける必要があります。

実践的なスキルを身につけるためには実務を経験するのが近道です。実務を行うなかでの試行錯誤と状況に即した上司からのアドバイスが、部下のスキルと専門性を大きく向上させます。

また知識インプットに関しては、eラーニングや動画研修などを活用し、効率的に行うのも大切です。

帰属意識の向上

「組織に属している」「社員みんなが仲間である」といった帰属意識を向上させます。

帰属意識が高ければ、社内課題の属人化や退職防止にもつながります。

また、自身の目標を明確に認識することで、モチベーションアップにも影響します。

人材育成の目標を立てる手順

人材育成の目標を立てる手順を、基礎的な目標設定のフレームワークである「ベーシック法」をもとに解説します。

1.目標項目の設定

はじめに、何を達成するかを決めます。
目標項目は以下の4タイプです。

 向上・強化:現状をより良くするための目標
       例:売上を30万円向上させる

 改善・解消:現状の問題を改善もしくは解消するための目標
       例:時間外労働の全社平均を月5時間短縮させる

 維持・継続:現状を保ち継続させるための目標
       例:クレーム件数0件を維持する

 創出・開発:現状にない新しいことを創出・開始するための目標
       例:経費精算システムを導入する

また、目標項目を設定する際のポイントが2つあります。

1点目は、自社と自部署の「現状」を正確に把握しておくことです。
目標項目はいずれも現状が基準となるため、自社や自部署がおかれている状況を正確に把握しておくことが必要です。まずは「売上・利益・予算」など関連数値の把握や課題の洗い出しから行いましょう。

2点目は、自社が目指す方向性を理解しておくことです。
せっかく決めた目標が自社の方向性とズレていると、企業にとっても社員にとってもマイナスとなります。企業理念はもちろんですが、経営層が発表している方針などもきちんと把握しておきましょう。。

2.達成基準の設定

次に、目標項目の達成を判断するための基準を設定します。

重要なのは「客観的に判断できるか」です。例えば「~によって売上を上げる」のような目標設定では、実際に「どのくらい」上げれば達成なのかを判断できません。

そこで、下記のような「数値化」により客観的な判断を可能にします。

 ✕:~によって売上を上げる
 〇:~によって売上を「30万円」上げる

目標の数値化が難しい場合は、下記のように客観的に確認できる「状態」で表しましょう。

 ✕:倉庫の商品をつねに整理整頓する 
 〇:倉庫の商品がつねに「定位置にある状態」にする

なお達成基準は「現実的に達成できるか」も大切です。達成の難易度があまりに高い目標にしてしまうと、本人の成長につながらないどころか不安や不満につながりかねません。

3.期限の設定

目標の項目「何を」と達成基準「どのくらい」を設定したら、期限「いつまでに」を決めます。良い項目と達成基準で目標ができても、期限を決めなければ成果につながりません。

期限は目標の難易度に応じて「1年・半年・3か月・1ヶ月」など柔軟に設定しましょう。
また、達成基準と同様に「現実的な期限」になっていることも大切です。

4.達成計画の設定

最後に「何を」「どのくらい」「いつまでに」を設定した目標を達成するために、日々のアクションプラン「どうやって」を設定します。

行動する頻度や日時、関係者名、用いる手段・ツールなどまで達成計画を具体的に設定しておくことで迷わず実践に移せます。

さらに具体的な達成計画は、進捗に遅れが生じた場合に詳細を見直せるため、指導や助言を行いやすいのです。

人材育成の目標例|職種別

人材育成の目標は、職種によって傾向が異なります。
ここでは、人材育成の目標例を職種ごとに紹介します。

営業職の目標例

営業職は、全社目標に基づき個人やチームで売上や利益などの数値目標を設定している場合が多いでしょう。数値目標を達成するためにどのような活動を実践し、本人の成長につなげるかがポイントです。

例:営業職

目標項目「何を」 年間目標の達成
達成基準「どのくらい」 売上250万円
期限「いつまでに」 今期終了までに
達成計画「どうやって」・新規訪問を1日5件実施
・新規顧客を3件開拓
・毎朝9時から〇〇課長と10分ロープレ実施

また例えば、最終的な数値目標の達成には、電話でのアポイント獲得件数アップが課題となる社員であれば、以下のように個別目標を設定するのも良いでしょう。

例:営業職(個別目標)

目標項目「何を」 電話でのアポイント獲得件数アップ
達成基準「どのくらい」 月4件を8件にする
期限「いつまでに」 第1四半期終了までに
達成計画「どうやって」・獲得数1位〇〇主任と毎週月・水に20分ロープレ実施
・毎日10時~11時は見込みリストに沿って順番にアプローチ

技術職の目標例

技術職は製造や開発、修理など多岐にわたります。
ここでは、機器の出張修理担当者の目標例を紹介します。

例:技術職(機器の出張修理担当者)

目標項目「何を」 修理時間短縮
達成基準「どのくらい」 1件当たり10分短縮
期限「いつまでに」 上半期終了までに
達成計画「どうやって」・車載部品と工具を定位置におき、即取り出せるようにする
・毎週水曜日に社内機器で解体と組立を行いタイムを記録する
・製品解説動画を毎日1本視聴して各機器の構造を理解する

また、製造担当者であれば稼働率の向上や不良率の低減、開発担当者であれば新規システム開発や営業と連携したシステム案件の受注件数などが目標として挙げられるでしょう。

事務職の目標例

事務職は数値目標を課せられることが少ないため、目標を設定しにくい傾向があります。

一方で細かな数値やデータを扱うことが多く、正確な処理を求められる職種のため、ミス防止や削減を目標とするのもよいでしょう。

ここでは、営業事務担当者の目標例を紹介します。

例:事務職(営業事務)

目標項目「何を」 伝票入力ミスをなくす
達成基準「どのくらい」 月2~3件の発生を0件にする
期限「いつまでに」 上半期終了までに
達成計画「どうやって」・データの抽出と取り込みにより手打ちの転記作業をなくす
・〇〇さんと連携し入力時に2重チェックを行う
・チェック時は画面に対して指さし確認を行う

この他にも、経費削減やペーパーレス化、新たな業務を行えるようにする、簿記など業務に関する資格取得などを目標に設定するのも効果的です。

人材育成の目標を管理するポイント

人材育成は目標の設定と同様に「管理」も重要です。

上司が部下の「自主性」を尊重しながら目標管理を行うことで、目標達成と成長を両立できます。部下を目標達成へ導くマネジメント過程で人材育成を行う意識をもつとよいでしょう。

ここでは、上司による目標管理の視点から重要ポイントを解説します。

目標に対する理解を深める

「目標達成の必要性」「目標達成で得られる結果」を共有することで、部下の目標に対する理解を深めましょう。

まず「なぜこの目標達成が必要なのか」を自社の現状や課題の提示によって共有します。全社目標と現状の差やあるべき姿とのギャップを示すことで「何とかしたい」という想いを共有できるのです。

少なくとも「会社の方針だから」「ノルマだから」といった受け身の説明にならないよう注意しましょう。人材育成の目標達成において「やらされ感」は厳禁です。

その上で「目標を達成すれば、どのような良い結果を得られるのか」まで共有します。目標を達成した先の明るい未来を共有することで達成意欲が高まります。売上アップや経費削減など会社にとっての良い結果と、スキルや評価アップなどの本人にとっての良い結果を両方示すとよいでしょう。

以上により目標に対する理解を深めることで、部下は自主性をもって目標達成に取り組めるのです。

定期的に進捗確認の機会を設ける

人材育成の目標設定は半年や1年など比較的長期に及ぶものも多いため、定期的な進捗確認が必要です。うまく推進できていない場合のフォローを行うための大切な機会でもあります。

個別面談を毎週行うのが理想ですが、日々の業務やメンバー数によって困難な場合が多いでしょう。

そこで、節目となるタイミングでの個別面談と、定期ミーティングなどを利用した進捗共有を組み合わせる方法がおすすめです。

具体的には、年間目標であれば四半期ごとの個別面談での進捗確認とフォロー、毎週のチームミーティングで進捗共有を行います。進捗共有で個別フォローが必要な社員がいれば、臨時の個別面談を実施しましょう。

うまく推進できていない場合の対応

うまく推進できていない場合は、当人を責めることはせず「どうすれば達成できるかを一緒に考える」姿勢をとりましょう。

「人」ではなく「やり方」に問題があると考え、どこがボトルネックなのか、何につまづいているのかを確認します。

原因が明らかになったら解決のヒントを与えます。すぐに「こうすべきだ」と答えをだしてしまうと成長の機会を逃してしまうためご注意ください。

自分自身でどう対処するかを考えて決めることにより、目標達成に対する自主性を保ちながら課題解決力を養います。

目標管理シートを活用する

進捗を確認・管理するツールとして、目標管理シートの活用もおすすめです。目標管理シートを作成しておくことで、進捗の共有や管理、フォローをスムーズに行えます。

フォーマットに決まりはありませんが、下記は必須項目といえるでしょう。

 ◆目標設定欄

  •   目標項目「何を」
  •   達成基準「どのくらい」
  •   期限「いつまでに」
  •   達成計画「どうやって」

 ◆評価欄

  •   結果(達成度)
  •   本人振り返りコメント
  •   上司の評価コメント

また活動が長期にわたる場合、評価欄を複数設けておけば、四半期などの節目で振り返りと評価に用いることが可能です。

人事担当者であれば目標管理制度を構築して、全社でしっかりと目標を管理できるようになると運用が成功しやすくなるのでおすすめです。

eラーニングの活用

人材育成の目標管理を行うにあたり、部下を指導・教育する機会は多くなります。ただ、日々の業務や個別面談のなかですべてを教えるのは、業務負担や時間の面からみても困難ではないでしょうか。

上司の業務負担を軽減しつつ、部下の自主的な成長を促したい場合は「eラーニング」の活用がおすすめです。

基本的なビジネススキルやコンプライアンススキルはeラーニングで教え、個別指導が必要な内容にのみ注力できます。さらにeラーニングを用いれば、つまづきやすいポイントの対処法やノウハウを動画コンテンツとして共有可能です。

ネット環境さえあれば「いつでもどこでも動画で学べる」ため、部下は上司からの指導に頼ることなく自ら対処できるようになります。

もちろん全てのeラーニングで上記が可能なわけではありません。

すぐに使えるコンテンツがそろっているか、自社コンテンツを簡単に作成できるか、そもそも使いやすいかなどを比較した上で自社にあったシステムを選定しましょう。

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まとめ

人材育成の目標について、基本的な立て方や職種別の目標例、目標管理の重要ポイントを解説しました。

目標を立てる際は「何を」「どのくらい」「いつまでに」「どうやって」を具体的に設定することが重要です。目標を管理する際は、上司が部下の「自主性」を尊重しながら目標管理を行うことで、目標達成と成長を両立できます。

また、目標管理において必要となる社員教育には「eラーニング」の活用も効果的です。

具体的な人材育成の目標設定と、自主性を尊重した目標管理によって、社員と自社の成長を実現させましょう。

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企業の発展に従業員の成長は欠かせません。しかし、

  • 「人材育成を行う時間と余裕がない」
  • 「どのように人材育成を進めるべきかがわからない」
  • 「社員自身が人材育成の重要性を認識できていない」

といった悩みを多くの企業が抱えています。

社員が成長し、成果をあげるためには、時代の変化や企業課題にあわせた適切な育成手法が欠かせません。

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