ポータブルスキルとは?スキル一覧と企業内での効果的な鍛え方

ポータブルスキルとは、「真面目さ」、「積極性」、「几帳面さ」といった特定の業種・職種・経歴にとらわれない能力のことを指します。 業種や職種が変わっても「持ち運び可能」なスキルを意味し、就職や転職における重要なスキルとして注目されています。

しかし、その内容は、一般企業の社員が必要とする基礎的なスキルで構成されており、人材育成の観点からも企業内研修で積極的に向上をはかるべきものといえます。

この記事では、ポータブルスキルを構成する各スキルの内容と、それを向上させるための企業内研修カリキュラムについて解説します。

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ポータブルスキルとは

ポータブルスキルとは、一つの職場や業界だけでなく、様々な職場や業界で活用できる汎用性の高い、「持ち運び可能な能力」のことを指します。

多くの場合、ビジネスパーソンの「転職力」を高めるためのスキルという文脈で使われることが多い言葉ですが、企業にとってもポータブルスキルに着目することは非常に重要です。
ポータブルスキルを持つ社員は、組織内の様々な部署で活躍できる柔軟性を持ち、企業の成長に貢献できる人材といえます。このような人材を採用・育成できるようになれば、変化の激しい時代において、企業の競争力を維持できるようになるでしょう。

ポータブルスキルの位置づけ

ポータブルスキルも含めて、社会人が一般的に持つべきスキル、あるいは評価の対象となるスキルは、基礎的なものから順に、ポテンシャル、スタンス、ポータブルスキル、リテラシー、テクニカルスキルの5段階に分類されています。

スキル概要
ポテンシャル「潜在力」「可能性」「将来性」といった社会人が仕事で成長するための潜在的知的能力。もっとも基礎的なこのスキルは、新卒採用では特に重視される
スタンスものごとに対する姿勢や志向を指す。社会人としての基礎となるため、新卒採用者に対して、早い企業では内定段階から、レベルの測定やレベルアップのための研修を実施する
ポータブルスキル「真面目さ」、「積極性」、「几帳面さ」といった特定の業種・職種・経歴にとらわれない能力のことを指す。特に、環境の変化や新しい業務内容への適応が必要になったときに重要となるスキルであるため、最近では、中途採用において重要視されるようになってきている
リテラシー「語学力」、「ITスキル」といった業務を遂行する上での基盤となる能力のことを指す。一般的には、自己啓発の一環として、社員が個人的にスキルアップをはかることが多く、企業が時間的、金銭的に補助する場合もある
テクニカルスキル実際の業務を遂行するために必要となる専門的なスキルのことを指す。人事評価やタレントマネジメントにおいて、主要な対象となるスキルで、企業内研修では、もっとも重視され、集合研修だけではなく、OJTも含めてレベルアップが図られる

以上のような5段階の中間に位置するポータブルスキルは、新卒社員や若手社員で重視されるポテンシャルやスタンスとは異なり、ある程度社会人経験を積んだ中途採用社員が早期に新しい企業文化に順応し、以前とは異なる業務内容に対応するために必要な能力と位置づけられています。

企業がポータブルスキルに着目する理由

人材の能力を推し量る時、テクニカルスキルは可視化されやすい能力ですが、ポータブルスキルは見えづらい能力であることは事実です。だからといって、評価を怠るべきではありません。なぜなら、ポータブルスキルは将来の企業の成長にとって不可欠な能力だからです。ここでは、なぜ企業にとってポータブルスキルが重要なのかを詳しく解説していきます。

VUCA時代への対応

現代のビジネス環境は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ってVUCAと呼ばれています。VUCA時代では、市場の変化のスピードが速く、従来の予測が難しくなっており、企業は常に急激な変化に直面しています。

このような時代において、企業は環境の変化に柔軟に対応していかなければ、競争力を維持することはできません。そのためには、特定の業種・職種・経歴にとらわれない、汎用的な能力を持った人材が求められています。これこそ、ポータブルスキルを持った人材に他なりません。

ポータブルスキルを持つ社員は、新しい環境や業務内容に素早く適応し、柔軟に対応することができます。また、自己啓発意欲が高く、継続的な学習を通じて新しいスキルを身につけることができるため、変化の激しいVUCA時代に欠かせない存在となっています。

採用力の強化

企業がポータブルスキルを採用基準の一つとして取り入れることで、これまでターゲットとしていなかった人材も採用対象となります。例えば、異業種からの転職者や、専門分野が異なる候補者であっても、ポータブルスキルの高さに着目することで、その人材の潜在的な能力を見抜くことができるのです。

また、ポータブルスキルに優れた人材は、幅広い分野で活躍できる可能性を秘めています。行動力や課題解決力が高いレベルにある人材は、新しい環境や業務にも素早く適応し、自ら積極的に問題解決に取り組むことができます。さらに、これらの人材は自己啓発意欲が高く、入社後のテクニカルスキルの向上にも期待ができるでしょう。

このように、ポータブルスキルに着目することは、企業の採用力を強化するための有効な戦略となります。ポテンシャルの高い人材を見抜き、積極的に採用することで、企業は変化に強い組織を作り上げ、持続的な成長を実現することができるのです。

人材配置の最適化

ポータブルスキルに着目することで、テクニカルスキルベースの人材配置に比べ、より組織全体のパフォーマンス向上に寄与する最適な人材配置が可能になります。

テクニカルスキルのみに基づいて人材配置を行うと、その専門性が活かせる部署や職務に限定されてしまいます。しかし、ビジネス環境の変化が速いVUCA時代においては、特定の専門性だけでは対応が難しい場面も多くあります。そこで、ポータブルスキルを持つ社員を適材適所に配置することで、環境変化に迅速に対応し、組織の課題解決能力を高めることができるのです。

例えば、コミュニケーション能力や問題解決力に長けた社員を、部門間の調整が必要なプロジェクトや、新たな課題に取り組むチームに配置することで、円滑な進捗と成果の達成が期待できます。また、リーダーシップや育成力のある社員を、マネジメントが必要な部署や、後輩の指導が求められる職務に配置することで、組織力の強化と人材育成を同時に実現できるでしょう。

ポータブルスキルの具体例・一覧表

ポータブルスキルは、より具体的には、次の3つの能力で構成されています。

  • 対人力:人に対するコミュニケーション能力
  • 対自分力:行動や思考のセルフコントロール能力
  • 対課題力:課題や仕事の処理対応能力

これら3つの能力の具体的な要素は次の通りです。

ポータブルスキルの一覧表
対人力統率力集団をまとめていくことができる力
説得力相手に対して、自分の考えを理解納得させることができる力
支援力相手に気を配り、支援やサポートをすることができる力
対自分力決断力一度決めたら最後まで貫く潔さで行動できる力
冒険力新しいことに対して危険を恐れず挑戦することができる力
持続力長期間継続してひとつのことに取り組むことができる力
対課題力試行力自分で色々と試行錯誤しながら物事を進めることができる力
計画力情報を整理して物事を段取りよく進めることができる力
分析力本質を捉えようと深く掘り下げて考えることができる力

企業におけるポータブルスキルの活用場面

ここからは具体的なポータブルスキルの活用場面について見ていきます。

中途採用

近年のように、人材流動性が高まり、異業種からの転職や、職種の変更が当たりまえになりつつある状況では、中途採用者に必ずしも即戦力性を期待できるとは限りません。

したがって、中途採用における評価基準も変化してきており、上述した5段階スキルで考えると、以前は圧倒的にテクニカルスキルが重視されてきましたが、現在では、リテラシーとポータブルスキルが重視される傾向にあります。

ただし、ポータブルスキルは、リテラシーやテクニカルスキルとは異なり、テストや面接でレベルを判定することは、なかなか難しく、採用する側では、公的機関や民間企業が提供する診断ツール、診断サービスを利用するケースが増えてきています。

また、リテラシーやテクニカルスキルは、レベルが高ければ高いほど優秀という判定になりますが、ポータブルスキルの場合は、ある種の性格診断となりますので、絶対的な優劣が判定されるわけではありません

例えば、「対人力」は、「主張力」「否定力」「説得力」「統率力」「傾聴力」「受容力」「支援力」「協調力」の8つの能力から構成されていますが、これらは、先頭に立って引っ張るタイプにみられる「主張力」「否定力」「説得力」「統率力」と、まわりと協調して仕事を進めるタイプにみられる「傾聴力」「受容力」「支援力」「協調力」に分けることができます。

一般的に前者の能力が高い人は後者が弱く、後者の能力が高い人は前者が弱いという傾向にありますので、どちらが良いかは、企業側がどういう人材を求めているかによって評価が分かれることになります。

したがって、中途採用においてポータブルスキルを診断することは重要ですが、正しい判定を行うためには、事前に自社の求める人材像を明確にしておく必要があります。

研修

ポータブルスキルの向上を目的とした研修を実施することで、社員の汎用的な能力を高め、組織全体のパフォーマンス向上につなげることができます。

以下はeラーニングで提供されている標準コースの一例です。ポータブルスキルと一口に言っても、先述した通り、実際には様々なスキルが含まれています。一つずつ内製するのは大変ですが、eラーニングを活用することで効率的に研修を進めることができます。

講座名内容
対人力リーダーシップトレーニング③:人を動かすコミュニケーションリーダーシップにおけるコミュニケーションスキルのポイントを学び、リーダーシップ強化に向けて、コミュニケーションの観点から実践トレーニングを行う。
チームが成果を出すコーチング「コーチングスキル 中級編」複数のメンバーをコーチングし、成果を出せるチーム作りができるようになることを目指す。
対自分力最高の成果を引き出す目標設定力:①絶対に抑えるべき目標達成の基本目標設定に関する基本知識を学び、目標を達成するためのステップを実践的に行う。
タイムマネジメント入門「なんとなく」仕事をするのではなく、行動を計画・管理し時間あたりの仕事量を増やす、タイムマネジメントのスキルを身に付ける。
対課題力創造性を高めるイノベーション思考:①イノベーションの基本知識イノベーションの定義、価値の意義、をインプットし、その後、実践ワークを通じて、イノベーションの場面設定を行う。
【MBAシリーズ】ビジネス思考法:028_問題解決思考①問題と課題実例を取り上げながら、問題と課題をどのように設定していくのか、問題解決の全体像も含めて、理解を深めていく。

また、ポータブルスキルの研修を実施する際は、あらかじめ社員の現状を把握しておくことも大切です。なぜなら、能力の現状把握を行うことで、より効果的な研修の設計が可能になるからです。

現状把握を行う際は、厚生労働省が提供している「ポータブルスキル見える化ツール」を活用すると良いでしょう。キャリアコンサルタント向けですが、ツールの活用教材も提供されているので、ぜひ参考にしてみてください。

●活用マニュアル

キャリアコンサルタント等支援者向け活用教材

●映像教材

ポータブルスキル見える化ツール活用動画

【参考資料】活用事例全文

キャリアコンサルタント等支援者向け映像教材(基礎編

キャリアコンサルタント等支援者向け映像教材(応用編

参考:ポータブルスキル見える化ツール(職業能力診断ツール)|厚生労働省

ポータブルスキル研修基盤としてのeラーニング

先述した通り、ポータブルスキルの研修にはeラーニングのサービスを活用するのがおすすめです。これは、既存の研修動画を活用できることもそうですが、LMS(Learning Manegiment System)によって、社員の受講状況などをデータでモニターできるようになるからです。

たとえeラーニングといえども、講座ごと、受講ごとに料金が発生するタイプのeラーニングでは、高額な費用が発生してしまいます。

また、いつでもどこでも受講できるのが、eラーニングの長所ですが、研修管理担当者からすると、「この講座を受講していない社員は後何人いるのか?」「この社員が受講済の講座はどれとどれか?」といったデータを収集、集計することは至難の業といえます。

そこで、LMS(Learning Management System)を導入することで、これら二つの問題を解決することができます。

以前のLMSはオンプレミスで導入され、別途、eラーニングコンテンツを購入することが標準的でしたが、クラウドサービスとして提供される最新LMSでは、サブスクリプション・モデルに基づくLMSプラットフォームの利用料に、標準コンテンツと呼ばれる受講し放題のeラーニングコンテンツが含まれるようになっています。

例えば、KIYOラーニング社が提供するLMSクラウドサービスのAirCourseでは、2024年5月時点で900コース以上が標準コンテンツとして提供されています。

さらにLMSは、社員の受講履歴データをLMS内のデータベースで一元管理しているため、研修管理者が、リアルタイムで「この講座を受講していない社員は後何人いるのか?」、「この社員が受講済の講座はどれとどれか?」といったデータを収集、集計することができます。

ポータブルスキルに相当する企業内研修は、いままでは、新卒社員が入社するタイミングでまとまった人数に対して行うのが一般的ですが、在籍中の社員に対して同様に実施することは困難といえ、eラーニングによる実施が現実的といえるでしょう。

しかし、たとえeラーニングといえども、講座ごと、受講ごとに料金が発生するタイプのeラーニングでは、高額な費用が発生してしまいます。

また、いつでもどこでも受講できるのが、eラーニングの長所ですが、研修管理担当者からすると、
この講座を受講していない社員は後何人いるのか?
この社員が受講済の講座はどれとどれか?
といったデータを収集、集計することは至難の業といえます。

そこで、LMS(Learning Management System)を導入することで、これら二つの問題を解決することができます。

以前のLMSはオンプレミスで導入され、別途、eラーニングコンテンツを購入することが標準的でしたが、クラウドサービスとして提供される最新LMSでは、サブスクリプション・モデルに基づくLMSプラットフォームの利用料に、標準コンテンツと呼ばれる受講し放題のeラーニングコンテンツが含まれるようになっています。

例えば、KIYOラーニング社が提供するLMSクラウドサービスのAirCourseでは、2024年5月時点で900コース以上が標準コンテンツとして提供されています。

さらにLMSは、社員の受講履歴データをLMS内のデータベースで一元管理しているため、研修管理者が、リアルタイムで「この講座を受講していない社員は後何人いるのか?」、「この社員が受講済の講座はどれとどれか?」といったデータを収集、集計することができます。

まとめ

ポータブルスキルの内容は、対課題スキル、対自己スキル、対人スキルといった普遍的なものであり、転職を希望しない社員であっても当然求められ、企業が在籍中に社員に当然持っていてほしいスキルであるといえます。

したがって、企業内研修においてもポータブルスキル向上への取り組みが必要となっています。

従来の企業内研修においては、専門的、技術的なスキルの向上が優先されがちでしたが、今後は、ポータブルスキルの体系に沿った企業内研修カリキュラムの見直しをおこなうべきでしょう。

eラーニングによる実施には、高額な費用が発生する可能性がある、受講履歴データの収集、集計が難しいといった課題がありますが、LMSを導入することで、これらの課題を解決することができます。

実際に、標準コンテンツは、ポータブルスキル研修の大部分をカバーしており、クラウドサービスとして提供される最新LMSは、費用面、管理面の双方において、集合研修や従来のオンプレミス型eラーニングと比較すると、ポータブルスキル研修基盤として、はるかに有利で現実的な選択肢といえます。

もしご興味があればAirCourseのサービスについても内容を確認してみてください。

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ABOUTこの記事をかいた人

ソフトウエアベンダーやコンサルティング会社で20年以上にわたりコンサルティング、企業経営に携わる。現在は、IT企業の新規事業立上げ、事業再編を支援するかたわら、データ分析、人材管理、LMSなどに関する講演・執筆活動を行っている。