新入社員の育成|具体的な方法やテーマから重要ポイントまで解説

新入社員の育成で求められることや取り扱うべきテーマについて解説します。この記事では具体的な育成方法や育成計画の立て方、新入社員育成の重要ポイントも紹介しています。

企業の育成担当者であれば、新入社員育成の重要性をすでに理解しているでしょう。新入社員が会社に定着し、成長してくれることで企業価値が向上するとの期待により新入社員が採用されているためです。

しかし、昨今では新入社員の入社3年以内における離職率は、3割を超えています。そのため、新入社員が「この会社であれば成長できる」「この会社で続けたい」と思えるよう会社全体でバックアップする必要があるといえるでしょう。

そこで本記事では、新入社員の育成で求められること、取り扱うべきテーマ、具体的な育成方法や育成計画の立て方、新入社員育成の重要ポイントを解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。

新入社員育成で求められること

まずは、新入社員の育成で求められることを解説します。ポイントは以下の3つです。

早期戦力化

新入社員の育成においてぶれてはならない軸は、新入社員に早く会社の戦力になってもらうことです。つまり、新入社員が会社に必要とされる人材に早くなれるようサポートするのが育成担当者の役割の1つともいえるでしょう。

特に新入社員が入社した後の数ヶ月間、人事担当部署が預かって研修など行う場合は十分注意が必要です。人事担当部署と新入社員のみでは、学校の先生と学生のような関係になりやすいため、育成方法を誤ると新入社員が社会人の自覚を持つまでに余計な時間がかかります。

そのため、会社から給料(報酬)をもらって働くという意味を理解してもらい、浸透させることが早期戦力化には欠かせません。

離職防止

離職をいかに防止するかも新入社員の育成で大切な要素の1つです。参考までに、新入社員の離職を防止できないことによる企業の損失について3つ例を挙げます。

  • 採用や育成にかかったコストが無駄になる
  • 新入社員の育成や世話にかかった労力が無駄になる
  • 再度一から採用活動をしなければならない

このように、せっかく新入社員を受け入れても退職されると、余計なコストや労力がかかり続けます。そればかりか、新入社員が一人前に育たないことにより会社の生産性が上がりません。

実際、新入社員の大半は初めての社会人という環境に日々不安を抱えながら過ごしています。また、終身雇用が当たり前ではなくなってきている現代では「いつでも辞められる」風潮になってきているのも事実です。

そのため、新入社員に定着してもらうための企業努力が求められるのです。

モチベーション維持・向上

新入社員のモチベーションの維持や向上へのサポートも育成の現場では求められるでしょう。新入社員は会社に希望を持って入社してくるため、入社時点ではモチベーションが高い傾向にあります。

しかし、入社後に会社の雰囲気や業務内容などを知ることで、入社前に抱いていた希望とのギャップからモチベーションを下げる社員もいるでしょう。

また、時間の経過とともに入社時のような緊張感が無くなり、まだ一人前にもならないうちに精彩を欠く社員が出てくるのも事実です。

そのため、新入社員の状態に応じたフォローが育成担当者には求められます。社会人としての基本を教えつつ、頑張った先の未来を示しながら新入社員に希望を持ってもらえる環境を整えるのも大切な業務の1つだといえるでしょう。

新入社員の具体的な育成方法

新入社員の具体的な育成方法は、以下の5つです。新入社員の人数や会社のバックアップ体制などを加味しながら、育成内容を使い分けてみてください。

集合型研修(座学研修)

1つ目は、集合型研修(座学研修)です。集合型研修は、研修対象者を一つの会場に集め、社内外から選抜された講師が直接教える研修方法です。

集合型研修を行うメリットは、以下の3つなどがあります。

  • 体系的な学習に向いている
  • 新入社員のモチベーションの向上が期待できる
  • 会社側としても一斉に研修できるため時間効率がよい

このため、集合型研修は初期の段階に向いている育成方法といえるでしょう。集合型研修を利用して会社の理念や社会人の心構えなどを教えつつ、社員同士の交流の場を設けることで新入社員の帰属意識を高められる効果があります。

ただし、集合型研修の注意点も抑えておく必要があるでしょう。集合型研修は実務の場ではないため、集合型研修で優秀だと会社が評価する社員が、必ずしも実務で高いパフォーマンスを発揮するとは限りません。集合型研修での評価は、あくまで参考程度にみておきましょう。

また、集合型研修の内容と現場の状況にあまりにもギャップがあると、新入社員のモチベーション低下に繋がる可能性があります。そのため集合型研修を実施する場合は、最終的に現場へスムーズに橋渡しできることをイメージして組み立てることをおすすめします。

オンライン研修

2つ目は、オンライン研修です。オンライン研修は、研修対象者を1ヶ所に集める必要がない上にリアルタイムで研修できることから、特にコロナ禍以降は集合型研修の代わりに多く採用されている研修方法です。

PCがあればどこからでも研修可能なため、新入社員の移動にかかる時間やコストを削減でき、効率的な研修が可能となるでしょう。

ただし、オンライン研修は臨場感がないため、受け身になりやすくモチベーションの向上に繋げにくいのが注意点です。オンライン研修を実施する場合は、新入社員が発言する機会を意識的に設けるなどの工夫が必要となるでしょう。

OJT制度

3つ目は「OJT制度」ですが、まず「OJT」から簡潔に解説します。

OJTとは「On the Job Training」の略で、実践を通して仕事のスキルを身につける手法のことです。新入社員に実務を教える先輩や上司のことをOJT担当者と呼び、教える行為をOJTと呼ぶことが多いです。

OJTは、経験豊富なOJT担当者のもとで、座学研修では学べない知識や経験が得られるため、新入社員がひとり立ちをするまでの過程で最も重要な育成方法の1つだといえます。

ただ、従来のOJTではOJT担当者の経験値や育成スキルに委ねられるため、どうしても研修品質にムラが出てしまいます。それにより、会社が求める教育が行き届かないことから新入社員が辞めてしまうなどの障害が生じやすいのもOJTの難点です。

そのため、OJTを現場任せにするのではなく制度化すること、つまり「OJT制度」を確立することでOJTの品質を会社が担保するのです。

メンター制度

4つ目は、メンター制度です。メンター制度とは、経験値のある先輩社員がメンターとなり、新入社員に対してキャリアにおける課題やメンタル面の支援などを行う制度です。

メンターは、新入社員とは部署が異なる先輩社員が担当するのが一般的です。また、社歴や年齢が近い先輩社員が担当することが多いため、新入社員が安心して相談できる環境となり、先輩社員としても新入社員特有の悩みなどを想像・共感しやすいといった利点があります。

とはいえ、メンターである先輩社員の負担が増すことに加え、相性によってはメンター制度のメリットを活かせないデメリットも持ち合わせています。

そのため、メンター制度を効果的に活かすためには、先輩社員と新入社員双方を必要に応じてサポートする上司の存在が欠かせません。メンター制度を導入したとしても決して放置しないよう注意が必要です。

eラーニング

5つ目は、eラーニングです。eラーニングとは、ネット上で研修、アンケート、理解度テストなどを実施できる研修ツールのことです。スマホやパソコン1台あれば場所や時間に縛られずに実施可能なことから、とても効率のよいツールだといえます。

ネット環境さえあればいつでもどこでも受講可能なため、受講者側は空き時間などを活用できます。開催側も受講案内のみで、研修のために参加者全員のスケジュール調整を行う必要もありません。

「新入社員の育成ツールの幅を広げたい」という課題の解決策になるでしょう。eラーニング活用について詳細を知りたい方は以下の資料をご確認ください。
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新入社員の育成で取り扱うべきテーマ

ここからは、新入社員の育成で取り扱うべきテーマを解説します。

ビジネスマナー

新入社員の育成テーマの中でも最初に身につけてもらうべき項目と位置づけられるのがビジネスマナーです。新入社員が社会人としてのキャリアに躓かないためにも欠かせません。

社会人になると社内の同僚や先輩、社外のクライアントや協力会社など、さまざまな人とのかかわりを持つことになります。このときに、ビジネスマナーが身についていないと相手からマイナス評価を受けてしまい、あらゆる場面で機会損失を招きかねません。

また、ビジネスマナーを理解していない社員が対外交渉の場に出ることで、会社の評価も下がってしまうのも注意点の1つです。

新入社員のキャリア形成のためにも、会社の生産性を高めるためにも、新入社員にはビジネスマナーをしっかりと身につけてもらう必要があるでしょう。

具体的なビジネスマナーの項目は、以下などがあります。

  • 挨拶
  • 言葉遣い
  • 電話応対
  • 来客応対
  • 名刺交換 など

ビジネスマナーの重要性をしっかりと説いた上で育成していきましょう。

ビジネスマインド

ビジネスマナーと同様に教育しておくべき項目が、ビジネスマインドです。社会人としての心構えやタイムマネジメント、セルフモチベーションといったマインド面を教育し、社会人としての自覚を芽生えさせることが大切です。

授業料を払う対価として教育が受けられる学生と、誰かに価値提供する対価として報酬(給料)をもらう社会人では根本の考え方が異なります。

報酬をもらう立場である以上は自分で自分を監督する力が求められます。こうしたビジネスマインドの重要性を説いていき、自立を促していくことが新入社員の育成では大切です。

コミュニケーション

コミュニケーションの大切さ、コミュニケーションの取り方を教えることも新入社員の育成で外せないテーマの1つです。

コミュニケーションは、相手との意思疎通を図るためであったり、目的を達成させるためであったりなど、あらゆる場面で必要となります。

実際に、順調にキャリアを重ねている人ほどコミュニケーション能力が高い傾向にあります。なぜなら、コミュニケーション能力が高い人は、他者の求めるニーズを適切に捉えられる上に、過不足なく正確なやり取りができるためです。それにより、周囲に多くの価値提供ができることから信頼される人材となるのです。

しかし、コミュニケーション能力はあくまで天性のものであり、鍛えられるものなのかと疑問に思う方もいるかもしれませんが、仕事に必要となるコミュニケーション能力は訓練によって鍛えることが十分可能です。

仕事におけるコミュニケーションスキルとは、仕事の目標や目的を達成するために必要なスキルを指すため、誰とでも気軽に仲良くなるスキルのようなものとは性質が異なります。

したがって、育成の内容としては以下となります。

  • 報連相の重要性やその方法
  • 相手への伝え方と聞き方
  • プレゼンや発表のコツ など

このように、仕事で必要になるコミュニケーションの要素を中心に教えていくとよいでしょう。

また「明るくて話し上手な人=コミュニケーションスキルが高い」というわけではないことへの理解が大切です。相手の気持ちを汲み取ることが円滑なコミュニケーションには欠かせません。そのため、むしろ聞く能力を高めるほうが重要ともいえるでしょう。

ビジネス文章の書き方

ビジネス文章の書き方を教えることも重要な項目の1つです。代表的なビジネス文章はEメール、企画書、稟議書の作成などがあります。また、グループウェア機能を導入している会社であれば回覧板やメッセージの作成なども必要です。

ビジネス文章の書き方は、家族・友人と連絡ツールを使ったやり取りや日記などとは大きく異なります。そのことを新入社員に意識づけする必要があるでしょう。

ビジネス文章の書き方で大切なポイントは、以下の3つです。

  • 正しい敬語を使うこと
  • TPOをわきまえること
  • 伝わりやすさを意識すること

まずは、これらを常に心がけながら文章作成するよう意識づけするとよいでしょう。また、新入社員が作成したビジネス文章を添削してフィードバックすることで、文章作成スキルの飛躍的な向上が期待できます。ぜひ参考にしてみてください。

ITスキル

会社や配属部署により程度の差はあるものの、現代ではパソコンを使用して業務を行うケースが増加傾向にあるため、ITスキルを高めるのも必須項目の1つとなっています。

教育の範囲としては、IT領域にかかわる企業でなければ、基本的なパソコンや社内システムの操作方法を理解させる程度で問題ないでしょう。

ITスキルについては、若年層のほうが順応性が高い傾向にあるため、基本的な操作方法を教えてしまえば、あとは実務のなかで必要となるスキルを習得してくれます。

また、IT関連の業務を教える際には、情報漏洩などのリスクを排除するための情報管理方法

についてもしっかりと伝えるようにしましょう。

新入社員の育成計画を立てる方法

新入社員の育成において育成担当者がすべきことは、まず育成計画を立てることです。育成計画があることで一貫性をもった指導ができるため、新入社員が余計なストレスを受けることなく業務に励んでくれる効果が期待できます。

また、育成担当者側としても育成プランがあることで検証や改善がスムーズに行えるのもメリットの1つといえるでしょう。

新入社員の育成計画を立てる際は、以下の5つを抑えましょう。

  • 目標の設定
  • 具体的な教育内容
  • 現状の把握
  • 課題の発見
  • フィードバック

育成計画に限らずですが、計画を立てるときは後々検証できるような内容にすることが極めて重要です。この育成計画を立てる方法や育成計画書の作り方については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
人材育成の育成計画書の作り方|無料のサンプルフォーマット付き

新入社員育成の重要ポイント

新入社員育成の重要ポイントを解説します。

考える機会を与えて意見を尊重する

新入社員の成長を促すには、考える機会を与えて意見を尊重することが重要です。

仕事においては正解が決まっていない事柄に取り組む機会が多々あるため、自分の力で問題解決する力が求められます。問題解決能力を育むことは、本人の自信を高める効果と企業価値の向上の両面から見て重要なポイントだといえるでしょう。

そのためにも、本人の意見を尊重して自分で考える楽しさを覚えてもらうことが大切です。

仕事の意義や目的を認識させる

仕事の意義や目的を認識させるのも重要な要素の1つです。具体的には、会社の理念を浸透させることと本人のキャリアビジョンの確立を支援することが重要だといえるでしょう。

生活のためだけではなく「やりがい」や「他者貢献」などを仕事に見いだせたときに、新入社員が飛躍的に成長するポイントがあります。ただ、これらは一朝一夕では育まれないため、常に会社が新入社員に伴奏する意識が大切です。

仕事の意義や目的を認識できた新入社員は自走してくれるようになるため、育成担当者としても1つの目標において取り組むべき項目だといえるでしょう。

気軽に相談できる窓口を設けておく

気軽に相談できる窓口を設けておくのも大切です。社会人経験のない新入社員はすべてが新鮮に映っている反面、これまで抱えたことのないストレスを感じる時期でもあります。

新入社員の段階では、自分でストレスを解消する引き出しが少ない傾向があるため、一度抱えた悩みに耐えられずに辞めてしまうケースもあるでしょう。

このときに、気軽に相談できる窓口を設けておくことで、新入社員が悩みを抱え込むのを防止できる効果が得られます。また、新入社員の悩みに向き合う方法としてメンター制度を導入するのも有効な手段の1つです。

本人への期待を示す

本人への期待を示すことも重要なポイントの1つです。周囲からの期待が高いと本人が認識することでモチベーションの向上や自信に繋がり、成長速度が上がるでしょう。そのため成果にもよい影響を及ぼします。

反対に、本人が期待されていないと感じたときはモチベーションの低下や自信喪失を招くため、適切なフォローが必要です。

このように、本人への期待を示すことは重要ですが、プレッシャーにならない程度にする見極めも欠かせません。

本人への期待を示す効果については、別記事にて詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
ピグマリオン効果とゴーレム効果の違い|ビジネスでの活用と注意点

まとめ

この記事では、新入社員の育成で求められること、具体的な育成方法や取り扱うべきテーマ、育成計画を立てる方法、新入社員育成の重要ポイントを解説してきました。

新入社員の育成で求められることは「早期戦力化」「離職防止」「モチベーション維持・向上」の3つです。

具体的な育成方法は「集合型研修(座学研修)」「オンライン研修」「OJT制度」「メンター制度」「eラーニング」の5つです。

取り扱うべきテーマは「ビジネスマナー」「ビジネスマインド」「コミュニケーション」「ビジネス文章の書き方」「ITスキル」の5つです。

新入社員の育成計画を立てる方法は「目標の設定」「具体的な教育内容」「現状の把握」「課題の発見」「フィードバック」の5つです。

参考:人材育成の育成計画書の作り方|無料のサンプルフォーマット付き

そして、新入社員育成の重要ポイントは「考える機会を与えて意見を尊重する」「仕事の意義や目的を認識させる」「気軽に相談できる窓口を設けておく」「本人への期待を示す」の4つです。

新入社員の段階でしっかりとした育成ができれば企業に欠かせない人材に育ちます。そのため、新入社員の育成は企業価値の向上には欠かせない命題だといえるでしょう。ぜひこの記事を参考にして日々の活動に役立ててみてください。