マネジメントスキルを高める人材育成手法|重視すべき部下育成力

管理職(候補)のマネジメントスキルの向上は、人材育成のなかでも特に重要なテーマです。

ただ一方で、以下のような疑問や悩みを抱える企業さまも多いのではないでしょうか。

「マネジメントを担える人材が少ない」
「次の管理職が育たない」
「具体的にどんなスキルを育成すれば良いのか分からない」

そこで本記事では、そもそも管理職のマネジメントスキルを高めるべき理由から、具体的な育成手法まで紹介します。さらにマネジメントスキルにおいて重要かつ課題となりやすい「部下育成力」についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

マネジメントスキルを人材育成で高めるべき理由

マネジメントスキルを人材育成で高めるべき理由は3つあります。具体的には以下の通りです。

1. 組織の成果に直結するため

マネジメントスキルを身につけた社員は、以下のような活動により成果をもたらすことを期待できます。

  • リーダーシップを発揮して、部署やチームを目的達成に導く
  • 高いコミュニケーションスキルで、社内外との調整をこなす
  • ロジカルシンキングなどを駆使して、的確な判断・指示を行う

またマネジメントスキルはこうした総合的な能力のため、人材育成を通じて計画的に高めていく必要があるのです。

2. 次期管理職を育成するため

組織を継続・発展させていくためには、次期管理職の育成が欠かせません。管理職としての役割を担う上で必須となるマネジメントスキルを習得させるためには人材育成が必要です。

3. 部下育成力を高めるため

マネジメントスキルの重要な要素の一つに「部下育成力」があります。部下育成力とは、仕事で成果を出せるように部下の成長を支援する能力です。

部下育成力が高い社員が育つことで、人事課題として上がりやすい「社員の定着率」の向上も期待できます。

人材育成でマネジメントスキルを高めるべき対象者

人材育成を通じてマネジメントスキルを高めるべき対象者は、管理職と中堅社員(入社4年目以降を想定)です。管理職は主にマネジメントを担う立場のため当然ですが、中堅社員においては次の管理職候補を育成するためにも対象とすべきでしょう。

とはいえ、中堅社員を全員対象にするのは現実的ではないかもしれません。その場合は、一部のメンバーを厳選して選抜型教育として実施するのもおすすめです。

育成とマネジメントの違い

組織における「育成」と「マネジメント」の違いが曖昧な場合が多いため、あらためて以下の通りに定義します。

育成:上司や能力のある社員が部下を指導し、育てること

マネジメント:組織が成果を上げるために経営資源(ヒト・モノ・カネ)を効率的に活用すること

つまり組織における育成は、マネジメント手段のひとつです。社員を成長させることで組織としての成果を高めます。

人材育成で高めるべきマネジメントスキルとは

マネジメントスキルとは、組織が成果を上げるために経営資源(ヒト・モノ・カネ)を効率的に活用するための能力です。そのため、人材育成を通じて複合的なスキルの習得が求められます。

以下では、マネジメントスキルを構成するスキルのうち、特に重要なものを7つ紹介します。

1. リーダーシップ

リーダーシップの定義は様々ですが、一般的には指導力および統率力を示します。また、自らの言動により人や組織に影響を与えて動かす「対人影響力」と捉えるとイメージしやすくなります。

2. 目標管理能力

目標管理能力とは、自分や他者を目標達成に導くための能力です。具体的には、進捗把握や達成までのスケジュール調整、必要に応じた支援要請などを行い目標を達成します。

一般社員のうちから求められるスキルではありますが、マネジメントを行う上では、自分だけではなく部署やチーム全体の目標管理を求められるためより重要です。

3. 部下育成力

部下育成力とは、仕事で成果を出すことを目的として部下の成長を支援する能力です。ポイントは、成果を出すのが目的であること。自立して成果を上げられる部下の育成が求められます。

4. コミュニケーションスキル

コミュニケーションスキルとは、相手と情報を正確にやり取りするための能力です。やり取りのなかで相手に与える印象や感情も重視されます。なかでも育成や目標達成に関わる「ティーチングスキル」と「コーチングスキル」は特に重要です。

ティーチングスキルとは、経験豊富な人から経験が浅い人へ知識やノウハウを教えるためのスキルです。分かりやすい説明や手本の提示などが求められます。

コーチングスキルとは、主に対話を通じて対象者の能力・気力を引き出し、自己成長や自発的な行動を促すためのスキルです。上下関係を意識せず並走しながら目標達成を目指します。

業務を教える際はティーチングスキル、目標達成に向けた個人面談ではコーチングスキルなど場面ごとで適切に発揮しましょう。

また、昨今はコミュニケーションに起因するハラスメント問題が頻繫に取り沙汰されています。マネジメントを行う上では、多くの社員とのコミュニケーションが欠かせないため、ハラスメントに関する育成も併せて実施するのがおすすめです。

5. ロジカルシンキング(論理的思考)

ロジカルシンキングとは、物事の結果と原因を明確にとらえ、両者のつながりを考える思考法です。マネジメントを行うなかで生じる様々な問題を結果と原因に分解・整理して、本質を見極めるのに役立ちます。

6. クリエイティブシンキング(水平思考)

クリエイティブシンキングとは、前提を設けず水平方向に発想を広げる思考法です。ラテラルシンキングと表される場合もあります。固定観念や既存の手法にとらわれず自由に考えることで、新しい発想につなげます。

マネジメントにおいては、課題解決など広い視野や多角的な視点を求められる場面が多々あります。発想を広げる思考法も身につけるべきでしょう。

7. クリティカルシンキング(批判的思考)

クリティカルシンキングとは、物事の本質を見極めるためにあえて疑いをもって考える思考法です。「批判的思考」と和訳されますが、批判のために誤りや欠点を探すわけではありません。

本来の目的は、本質を見極めて改善やリスク回避につなげることです。「本当にこの方法でよいのか」や「もっと効率的・効果的な方法があるのではないか」など、あえて疑いをもつことでより良い成果に導きます。

マネジメントにおいて様々な施策や企画を行う際や、業務効率を見直す際、部下を育成する際などあらゆる場面で役立ちます。

マネジメントスキルを高める人材育成手法

マネジメントスキルを高めるために、どのような人材育成を行えば良いのでしょうか。ここでは、具体的な手法を紹介します。

OJTトレーナーに任命する

OJT(On-the-Job Training)とは、職場での実務経験を通じて知識やスキルを習得する育成方法です。主に新人を対象として、同じ部署の上司や先輩がトレーナー(育成担当者)となり育成を行います。

トレーナー(育成担当者)を経験させることで、マネジメントスキルを向上させます。OJTの育成対象者(部下や新人など)を育てるためには、目標管理能力、コミュニケーションスキルなどが必要となるため有効な手法です。

とはいえ、いきなりOJTトレーナーを任せても成果は出ないため、次にご紹介するOJT研修と組み合わせて実施するのがおすすめです。

OJTについての詳細は、こちらの記事をご参照ください。

OJT制度とは?構築時の注意点と効果を高める方法を解説

OJT研修を実施する

OJT研修とは「OJTを行うトレーナーを育成するための研修」です。「OJT」と「OJT研修」は混同されがちなため注意しましょう。

「OJTの質」および「トレーナーとしての育成スキル」が本来の目的ですが、育成者・指導者としての学びを得られるため、マネジメントスキル向上につながります。

OJT研修の具体的な実施手順などはこちらの記事をご覧ください。

OJT研修とは?目的や手順、優秀なトレーナーを育成するポイント

OFF-JTでインプットを行う

OFF-JT(Off The Job Training)とは、職場や通常業務から離れて特別な時間や環境において行う教育や訓練のことです。

具体的には、外部研修への参加や、社内外の講師による集合型研修の実施などが挙げられます。体系的な学習を行えるため知識・スキルを整理しながら身につけられる点がメリットです。

マネジメントスキルはリーダーシップやロジカルシンキングなど、心構えや思考法に関する内容が多く、実務経験のみでの習得は容易ではありません。そこで、体系的な学習でインプットに集中できるOFF-JTでの補完が有効といえるでしょう。

eラーニングで効率的に学ぶ

eラーニングとは、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器とインターネットを利用して教育、学習、研修を行うことです。

ネット環境さえあればいつでもどこでも受講できるため、受講者側は空き時間などを活用できます。他の手法と比較して、管理者側・受講者側の双方とも負担が少ない点がメリットです。

実施する負担の少なさから、マネジメントスキルのようにリーダーシップ・部下育成・ロジカルシンキングなど学ぶべき内容が多岐にわたるテーマと特に相性が良いといえます。「忙しくて研修を行えない」といった課題の解決策となるでしょう。

eラーニング活用について詳細を知りたい方は以下の資料をご確認ください。

失敗しない『企業向けeラーニング』の始め方|無料でダウンロードする

人事評価制度でスキルの習得を喚起する

人事評価制度とは、各社員の「業績・能力・勤務態度や意欲」などを客観的指標により評価するための制度です。等級制度や報酬制度とあわせて用いることで、各社員の給与や賞与、昇格を決定します。

評価項目にマネジメントスキルに関する項目を設けることで「マネジメントスキルが求められており、評価にも影響すること」を理解でき、能動的なスキルの習得と発揮につながるのです。

人事評価制度や評価項目についての詳細はこちらの記事をご覧ください。

人事評価の項目とサンプル|目的や基準、実施手順を解説

目標管理制度の実践でスキルを身につける

目標管理制度とは、各社員が個人目標を設定して、進捗や達成度合いを評価するための制度です。

マネジメントスキル向上のためには、育成対象者にプロジェクトリーダーなど部下やメンバーの目標管理を担う役割を経験させましょう。

部下やメンバーの目標管理には、進捗の把握や状況に応じた指導やアドバイスが必要となります。こうした経験がマネジメントスキルである「目標管理能力」や「部下育成力」の向上につながるのです。

目標を管理する際のポイントなどはこちらの記事をご参照ください。

人材育成の目標とは?基本的な設定方法や管理のポイントを紹介

メンターに任命する

メンターとは、メンター制度において知識と経験のある先輩社員(育成担当者)が、後輩社員(育成対象者)に対して、様々なアドバイス・メンタル面のサポートなどを行う役割のことです。

OJTトレーナーとの違いは、以下の通りです。

  • OJTトレーナー
    実務内で、育成対象者に知識やスキルを教育する役割、
    自部署の先輩社員が担うケースが多い。
  • メンター
    実務内に限らず、育成対象者の成長促進と離職防止を担う役割、
    他部署の先輩社員が担うケースが多い。

マネジメントスキルを高めるためには、メンターを経験することが有効です。指導やメンタル面のサポートなどマネジメントスキルには欠かせない能力を実践で学ぶことができます。

また管理職に比べるとマネジメントに関わる機会が少ない中堅社員が、実務経験を通じてマネジメントスキルを学べる点もメリットです。

ただし、メンターを担当する社員の負担が増すこと、相性によっては悪い結果を招きかねないことはデメリットです。

マネジメントスキルで重視すべき「部下育成力」

マネジメントスキルのなかでも「部下育成力」は特に重要です。経営資源(ヒト・モノ・カネ)のなかで最も重視される「ヒト」に関するテーマであることからも明らかです。

その反面、「ヒト」に関するテーマであるからこそ、問題・課題が生じやすいことも確かです。

ここでは、マネジメントスキルのなかでも特に重視すべき部下育成について、心構えと重要ポイントについて解説します。

部下育成の心構え

部下育成を行う上で大切な心構えを5つ紹介します。部下育成における心構えをもつことで、状況に応じた柔軟な判断を可能にし、マネジメントスキルの向上に繋がります。

1. 上司が徹底的に成果にこだわる

部下育成とは、部下が仕事で「成果」を出せるよう成長を支援することです。指導することが目的とならないように、育成と成長の先で部下が成果を上げることを目指しましょう。

2. 自分で考えるきっかけを多く与える

部下育成は一方的な指導やアドバイスだけでは成立しません。育成対象者が自分自身で考える機会を多くもつことで成長につながります。すぐに答えを教えるのではなく「どう思う?」といった質問を投げかけることが有効です。

3. できるまで継続的にやらせる

丁寧に指導したからといっても、育成対象者がすぐにできるようになるとは限りません。教えた内容は実際にできるかを必ず確認し、できていなければ繰り返し指導しましょう。

4. できるだけ多くのコンタクトをもつ

部下育成の問題はコミュニケーション不足に起因するものが少なくありません。可能な限り多くのコンタクトをもつことで、部下の悩みやモチベーションの変化などに気づけるのです。お互いに業務が忙しく直接の面談が困難な場合でも、web面談や電話などを駆使しましょう。

5. 必ず育つと信じる

ときには育成が進まないこともあるでしょう。ただ上司が諦めてしまうと部下は育ちません。上司は部下を信じて期待を示しつつ、根気強く指導していくことが大切です。すぐに成果に表れずとも指導するたび部下は少しずつでも着実に成長します。

部下育成の重要ポイント

ここでは部下育成を行う上で重要となる「目標設定と管理」と「コミュニケーション」のポイントを紹介します。いずれもマネジメントスキルとしても重要なポイントのため部下育成を行う際は意識しましょう。

目標設定と管理

部下育成では、育成の結果として「何を達成するのか」という目標を設定・管理することが大切です。ポイントは以下の通りです。

目標設定のポイント

  • 目標が客観的に判断できる指標であること
  • 企業としての成果につながること

目標管理のポイント

  • 定期的に進捗確認の機会を設ける
  • 進捗が芳しくない場合は「どうすれば達成できるかを一緒に考える」
  • 目標管理シートを活用して、進捗の共有・管理・フォローを行う

目標の設定および管理についての詳細は、ぜひ以下の記事もご覧ください。

人材育成の目標とは?基本的な設定方法や管理のポイントを紹介

コミュニケーション

部下育成を効果的かつ円滑に行う上で、コミュニケーションの重要性は疑いようがありません。以下では特に大切な「褒め方・叱り方・期待のかけ方」のポイントを紹介します。

褒め方のポイント

  • すぐに褒める
  • 結果だけでなくプロセスも褒める
  • 具体的な事実をもとに褒める
  • 時には第三者を通じて褒める

叱り方のポイント

  • 人前では叱らない
  • 人格や性格を否定しない
  • 具体的な事実をもとに叱る
  • 何のために叱るのかを伝える

期待のかけ方のポイント

  • 期待を言葉にして表す
  • 意見を求める
  • 裁量権を与える
  • 過度な期待をかけないように注意する

とりわけ「期待のかけ方」については、こちらの記事も参考にしてください。

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まとめ

マネジメントスキルとは、組織が成果を上げるために経営資源(ヒト・モノ・カネ)を効率的に活用するための能力です。「組織の成果に直結する・次期管理職の育成につながる・部下育成力が向上する」という3つの理由から人材育成により高める必要があります。

マネジメントスキルは複合的なスキルであり、リーダーシップや目標管理能力、部下育成力、コミュニケーションスキルなどによって構成されます。

そのため、OJTやOFF-JT、人事評価制度など様々な人材育成手法での教育が必要です。幅広いテーマを開催側と受講側のどちらも負担なく受講するためにはeラーニングがおすすめです。

また、マネジメントスキルのなかでも部下育成力は経営資源の「ヒト」に関するテーマのため、重要である一方で問題・課題が生じやすい傾向にあります。本記事で紹介した「目標管理と設定」および「コミュニケーション」のポイントを参考にして、部下育成力ひいては組織全体のマネジメントスキル向上にお役立てください。