ロジカルシンキングとは、物事を分解し、それらを体系的に整理したうえで道筋を立てて矛盾のない結論を導き出す思考法です。ビジネスの場においてロジカルシンキングは必須の思考法とされていますが、漠然とした知識で深く理解できていない方も多いのではないでしょうか。
ロジカルシンキングを深く理解するためには、6つの構成要素、3つの手法、4つのフレームワークを知っておくことが重要です。理解を深めないことには、部下へ教えることも難しいでしょう。そのことを踏まえ、本記事の内容を参考に、ロジカルシンキングの知識を確認していきましょう。
目次
ロジカルシンキングとは?
ロジカルシンキング(論理的思考)は、ある事象を体系的に整理し、道筋を立てて矛盾のない結論を導き出す思考法を指します。コンセプチュアルスキルのひとつでもあり、本質をとらえて最適な判断を下すための基本的な思考法としても考えられています。
物事を適切に分解し、それぞれの項目がどのような意味を成すのかを合理的に判断する必要があるため、普段からそのような思考を意識していない方には、ロジカルシンキングを鍛えるための研修等が求められるでしょう。
昨今では、ロジカルシンキングがビジネススキルの中でも基礎的なものとして挙げられることが多く、大学生など若年層のスキルアップでも注目されている分野です。多種多様な情報が飛び交う現代のビジネスシーンにおいて、自分の考えを相手に分かりやすく伝えたり、問題解決や情報整理を行ったりする際に役立ちます。
クリティカルシンキングとの違い
クリティカルシンキング(批判的思考)は、物事の本質を見極めるために、多角的な視点を持ち、論理的・客観的に考える思考法です。ロジカルシンキングと同様に物事の本質を捉える目的は変わりませんが、視点の持ち方が異なります。
類似した考え方として知られているため、ロジカルシンキングとクリティカルシンキングのふたつを併せて活用すれば、より客観的な見極めが可能です。
例えば、ある事象に対して前提を据えてロジカルシンキングで結論を出したとします。その結論に対し、「本当に前提との整合性はあるか」「そもそも前提が間違っている可能性はないか」などと批判的に問いかけることで、さらに説得力を高められるでしょう。
ラテラルシンキングとの違い
ラテラルシンキング(水平思考)は、固定観念や既存の論理にとらわれることなく、従来にないアイデアを導き出す思考法です。ある事象に対する結果や原因をそのまま受け止めずに、直感的な発想や過去の経験などをもとに拡張的で柔軟な発想を生み出します。
ロジカルシンキングは物事を順序立てて考えますが、ラテラルシンキングの場合はそういった概念がありません。新しい発想を生み出すことが目的で、既存の事象に対して疑うところから入るため、どちらかというとクリティカルシンキング寄りの思考法とも言えます。
ロジカルシンキングの構成要素
ロジカルシンキングを構成する要素は、主に以下の6つがあります。
- 筋道の通った考え方
- 合理的思考
- 因果関係の正しい把握
- 物事の適切な分解
- バイアスの排除
- 言葉や数字の適切な使用
初心者は、ロジカルシンキングをいきなり説明されても理解しにくいため、6つの要素をベースに教えることが大切です。それぞれの内容を確認し、教育に役立ててください。
筋道の通った考え方
ロジカルシンキングには、主張と根拠が乖離せずそれぞれが明確に繋がりを持ち、主張に対して説得力が有ることが重要です。「演繹的思考」と「帰納的思考」を組み合わせて考えることで、説得力のある論理構成を実現します。
演繹的思考は、2つの情報を関連付けることで、そこから結論を必然的に導き出す思考法です。帰納的思考は、「複数の物事や事例をならべ、これらの事象に共通する情報・ルールを抽出し、共通項を統合して結論を得る」という思考法です。
これら2つの思考法を組み合わせることで、筋道の通った考え方が出来るようになるでしょう。
合理的思考
合理的思考とは、問題に対していかに無駄なく能率的に解決できるかを考える思考法です。この思考法を実践するためには、何が重要で何が重要ではないのかを見極める力が求められます。重要なポイントを理解したうえで問題に対する解決策を考えることで、無駄のない効率的な解決策に繋げられます。
因果関係の正しい把握
結果と原因を正しく把握します。「物事には必ず原因と結果が存在する」ということを前提に考えることで、原因と結果を明確に把握することが可能です。また、正確に把握することで、それぞれの繋がりについても正しく認識できます。
問題の本質を把握するうえでも重要なポイントで、この要素の理解が弱いと本質を掴みづらくなってしまうでしょう。
物事の適切な分解
問題や事象を要素ごとに分解することで、ロジカルシンキングがしやすくなります。
ロジカルシンキングでは、物事を体系的に整理し、順序立てて考えることが大切です。この際、物事が適切に分解されていなければ、体系的に整理することも、順序立てて考えることもできません。
物事を適切に分解する際、「MECE(ミーシー)」というフレームワークを活用します。MECEは「ヌケモレなくダブリなく」を意味しており、より正確な分析を行うために抜け漏れがない事を徹底します。MECEの詳細は本記事の後半でも解説しています。
バイアスの排除
バイアスとは認知の偏りのことを指します。物事に対して主観的かつ根拠なく思い込んでしまうと、思考の歪みが生じ、論理的な結論が出せなくなります。そのため、バイアスに捉われずに全体をバランスよく捉えて思考や判断を心掛けることが重要です。
言葉や数字の適切な使用
言葉の意味・定義、根拠ある正確な数字、これらを意識して適切に使用することで説得力のある結論を提示できます。抽象的にならず、定量的な思考を心がけることが大切です。
ロジカルシンキングを身に付けるメリット
分析力の向上
ロジカルシンキングではロジックツリーやMECEといったフレームワークを用いながら学習していきます。そうすることで、普段は頭の中で考えていたことや、漠然と問題に向き合っていたことをフレームに落とし込みながら可視化することが可能です。
その結果、問題の根本原因は何なのか、ボトルネックになっているのはどこかという考え方ができるようになり、現状把握や分析のスピードと精度が高まります。
提案力の向上
自身の提案を受け入れてもらうためには、相手に分かりやすく納得感のある提案を行うことが不可欠です。しかしながら立場や部門によって前提となる考え方が異なり、提案の本質が伝わり辛いといというのはしばしば起こり得る課題です。
ロジカルシンキングを身に着けることで、自分の意見が何を前提として、どのようなプロセスで考えているのかが明確になり、説得力のある提案ができるようになります。
ロジカルシンキングの3つの手法
ロジカルシンキングを実践するためには以下3つの手法を覚えておく必要があります。
- 帰納法
- 演繹法
- 弁証法
それぞれの手法を理解することで、様々な視点から物事に対する結論を導き出せます。経験や直感などから漠然とした結論を導き出さないためにも、これら3つの手法を押さえてロジカルシンキングの理解を深めましょう。
帰納法
帰納法とは、いくつかの事柄から共通点を導き出して結論を出す手法です。主に統計分析で用いられる手法で、マーケティングリサーチ等で活躍します。
帰納法の例は以下の通りです。
- 複数の事柄がある:卵焼きが値上がりした。卵を使用しているサンドイッチが値上がりした。
- 共通点を見つけ出す:卵を使用している
- 結論を出す:卵の価格が上がっている
このように、いくつかの事柄から共通項を見つけて結論を出すのが帰納法です。
演繹法
演繹法とは、三段論法とも呼ばれ、一般論(確定している情報)や観察事項から結論を導く手法です。例えば以下のように実践します。
- 一般論:オウムは鳥です
- 観察論:買っているピーちゃんはオウムです
- 結論:ピーちゃんは鳥です
2つの正しい情報から結論を導きます。例では2つの情報ですが、複数の情報がある場合でも同様の考え方で結論を出していきます。注意点として、情報に誤りがあると結論に間違いが産まれる可能性があるため気を付けましょう。
弁証法
弁証法とは1つの事柄に対して、対立する意見を提示して矛盾を解決する結論を考える手法です。例えば以下のように実践します。
- 事柄:市販のアイスティーを飲みたい
- 対立意見:砂糖の摂りすぎは身体に良くない
- 解決案:無糖のアイスティーを飲む
このように対立案に対して統合案を出すことが弁証法です。3つ目の解決案を出す方法として優れており、順序立てて結論を出そうとしているがうまくまとまらない場合に適しています。
ロジカルシンキングのフレームワークを使った鍛え方
ロジカルシンキングの基礎は、様々なフレームワークを適切に使いこなすことに始まります。以下では4つのフレームワークをご紹介します。
- MECE
- So what/Why so
- ピラミッドストラクチャー
- ロジックツリー
それぞれの詳細を解説していきます。
MECE
MECEとは、Mutually Exclusive Collectively Exhaustiveの頭文字で、「ヌケモレなくダブリなく」を意味します。
ロジカルシンキングを行う上では前提に間違いがあると、その後の論理構成全てに間違いが起こることになります。そのためより正確な分析を行うために抜け漏れがない事を徹底します。
またダブりがあった場合には同じ事項の検討を繰り返すことになり、業務効率が低下します。
一見すると違う事項も、本質的には同じことを言っているというケースは非常に多く、多大なタイムロスにつながるため注意が必要です。
So what/Why so
「So What?」と「Why So?」という2点の問いかけを繰り返すことで、思考を深堀していくスキルです。
So What?つまり?と繰り返し問いかけることで目の前の問題の結論を探っていきます。
またWhy So?なぜ?を繰り返し深堀することで、問題の根本的な原因を探ります。
この2つの問いかけを効果的に使い、表層的ではない本質的な解決策を発見することができるようになります。
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーとは、結論と根拠をセットにして論理的に伝えるためのフレームワークを指します。ピラミッドと付けられている理由は、結論を頂点におきその下に根拠となる事柄を並べていく様がピラミッドのようになるからです。
先述したように、結論に付随する事柄を並べると、結論と根拠を可視化できるため、自身の意見を客観的に判断するのにも役立ちます。また、いくつかの事柄から結論が出されている証明にもなるため、論理的に導き出された結論としての説得力も持ちます。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、ある事柄に対する問題点や原因などの要素をツリー状に書き出すことで、解決法を導き出すフレームワークです。ピラミッドストラクチャーと似ていますが、ロジックツリーは横方向に細分化していくことで問題の解決策を導き出します。
また、ピラミッドストラクチャーの場合は説得力をもって相手に結論を伝えるために活用する目的があるのに対し、ロジックツリーは事柄を細分化することで解決策を導き出すために活用する目的があります。
何のために活用すべきかを念頭に置いたうえで、ピラミッドストラクチャーと使い分けることが重要です。
ロジカルシンキングを活用する際の注意点
ロジカルシンキングを活用する際は、論理的であること自体が目的にならないように注意しないといけません。あくまでもロジカルシンキングを行う目的は、論理的な結論を出すためです。結論を出すという最終目的ありきの思考法であるため、そこを忘れずに取り組むようにしましょう。
新人にロジカルシンキングを教える際も同様に、ロジカルシンキングの目的を念頭に置かせてから学んでもらうように意識することが大切です。
まとめ
ロジカルシンキングは物事に対して論理的に結論を出すのに最適な思考法です。ロジカルシンキングと似ている思考法に、クリティカルシンキングというものがあり、この思考法と組み合わせて結論を導くことで、さらに説得力のある結論が出せます。
ロジカルシンキングの思考法を身につけることで、分析力の向上や提案力の向上が図れ、結果的に社内全体の生産性が向上するでしょう。