コーチングとは│ビジネスシーンでのコーチング

コーチングは昨今、ダイエットや英語学習、経営や組織マネイジメントなど、自己管理や人間関係が伴う多種多様な場面で活用されています。

皆さんも既にその効果を実感されたり、あるいは電車広告や各メディアで、一度は見聞きされたりしていることでしょう。

今回は、改めて、ビジネスシーンで経営や組織マネジメントを目的として、会社や研修の場面でコーチングと言う時、どういった文脈で使われるのか、ご紹介致します。

コーチングとティーチングの違い

日本語でコーチ(英:coach)という時、スポーツやダンスなどの指導者を想起されることが多いようです。

指導する者、特に「導く」という所にコーチングの核があります。

よく対比されるのがティーチ(英:teach)です。

ティーチャー(英:teacher)の日本語としては教師や先生が当てはまるように、教師は答えや方法を「教える」という役割だと考えます。

日本と諸外国の学校教育の方法の違いから、コーチ(英:coach)ティーチャー(英:teacher)の日本的意味の捉え方について、これもまた関連する議論の対象ですが、ここでは一旦話を本論へ進めさせてください。

よって、ある一定の正解を「教える」のがティーチングであって、コーチングはそれを相手(聴き手)自らで引き出す、内発的にたどり着くように「導く」ことだとご理解ください。

よって、コーチングは相手(クライアントと呼ばれることが多いです)の話を聴くことが起点にあり、質問や相手の回答の深掘りが求められます。

良いコーチは同時に、良いインタビュアーとして機能します。

重要なことは、内発的な思考、自発性を呼び起こす点にあるからです。

さらに補足しますと、ティーチングにおける正解とは教える側の持つ解であります。

一方、コーチングにおいては、ティーチングにおける解の発見を、必ずしも目的とはしていません。

多くの組織がコーチングになぜ注目しているのか?

コーチングという手法、なぜ人気が今拡がっているのでしょう?

私が考えるに、これは従来型のトップダウン型の組織マネイジメント、言い換えますと「私の言う通りに動け。」という旧来の社員管理や組織形成が見直されていることが大きいことです。

グルーバル化や働き方改革、特に最近では新たに、RPAなどロボットやAIを駆使した経営が進み、社会と市場はより流動的になる中で、価値観は同時に多様化し、上司と部下のtop-bottom(攻め・受け)の関係性が長期的に続くことは、昔とは比較にならない程少なくなっています。

冒頭の「教える」との違いとも関連して、答えや方法も日に日に変化が進むため、トップからの意思決定に全てを委ねることに限界がきていると見ることもできます。

現実問題として、リーダーが「教えていた」唯一解に従うべきかについては慎重に、あるいは懐疑的にならざるを得ません。

当然ながら、パワーハラスメントなど一方的なコミュニケーションによる社内問題は、組織としては避けたいリスクゆえに、コーチングを取り入れた組織改革が進むのは合理的な傾向ではないでしょうか?

社員モチベーションとコーチング

心理学や統計学など最新研究を経営に生かす取り組みは、特にこれら研究分野の“メッカ”であるアメリカで盛んですが、日本企業でも効果的に採用されています。

コーチングも漏れなく、アメリカで1990年頃に発祥した取り組みの一つです。

社員のモチベーション課題は、【雇用の流動化】・【多様化の問題】と切り離すことはできないでしょう。

アメリカや日本だけでなく、世界各地で“終身雇用崩壊”の時代とニュース報道はなされています。

関連して、転職可能性を内に秘める社員が増えていくことは、言うまでもありません。

その中、一人一人の業務に対するモチベーション維持は経営維持・拡大の観点で、より重要視されています。

また、日本もアメリカと同じく、フリーランスやパラレルワーカーのように複数の企業で働く個人も増加の一途です。

モチベーション維持は組織レベルだけに限らず、個人レベルでも問われる自己管理の重要な要素であり、具体策としてコーチングは漏れなく機能していると見ることができます。

他人からの指示や、外部環境など必要に迫られた場合(これを外発的動機付け:extrinsic motivationと呼びます)ではなく、自らの意思決定ややり甲斐を見出した場合(内発的動機付け:intrinsic motivationの方)が高い生産性を発揮します。

「好きこそ物の上手なれ」は科学的に正しいのです。

私の経験談としても、トップダウン型のマネイジメント組織に、頻繁に見られるある種の「根性論」が今なお残る企業においては、社員、特に若年層はみるみる離れていき、転職希望先としても関心を寄せられないという現象があります。

転職口コミウェブサイトの活況もあって、そういった企業は経営や人材採用において、悪循環に陥ってしまっています。

ビジネスシーンで実践してみよう!

コーチングとは、特に専門的なことではなく、実は自然に普段のコミュニケーションの中で生まれています。

意識して実践することで、相手や組織との関係をより円滑に築くことができます。

①オープンクエスチョンで問いを立てる

例えば、同僚や部下が会議に遅れて来ました。開口一番にどう自分なら発するか考えてみてください。

「会議に遅れていいのですか?」や「どうして事前に伝えてくれないのですか?」

という問いはオープン(open:開かれた)とは対極にある、クローズド(closed:閉ざされた)な問いと分類されます。

「質問者が期待する答えは何だろうか?」

という風に、質問者の解を探る、いわば非生産的な方へ思考が狭まって行ってしまいます。

ひょっとすると、これまでに皆さんも一度は自分で言ったり、上司に言われたりしたことがあるかもしれません。

正論の押し付け、お浚いですが、それは極端なティーチングです。

コーチングにおける聴き手視点を失っていますので、言語道断です。

では、オープンクエスチョンとして、発するならばどう問いを立てるでしょう?

私であれば・・・

「優先事項が何かありましたか?」

「会議の目的を再確認しましょう。」

など相手の思考を限定しない、先を見据えた質問提示をします。

仮に、理由なく遅刻してしまい、自責の念に駆られている社員であっても「会議に遅れた分取り返さなければ。」と生産的な方向へ「導く」ことになります。

②セカンドシグナルを情報や指示の前に添える

内発的言動の重要さを述べてきましたが、組織において指示命令を全く無くすことは難しいでしょう。

そこで実践したいのが、セカンドシグナルと呼ばれる手法です。

危険回避など急を要するケースなど例外を除いては、一方的に指示や情報を伝えるだけでは、時に相手としては冷酷に受け取られ、自発性や動機付けを損ねることに繋がりかねません。

指示や命令の直後に、一言思いやりを示す、一見関係のない雑談を添えること。

この少しの気遣いによって、積極的に指示内容に取り組んでくれる可能性が高まります。

③アクノレッジメントで高める自己肯定感

前述の通り、コーチングにおいては自発性や内発性など、相手側の視点で考える大切さを説いています。

ここで挙げるアクノレッジメント (英:acknowledgment)とは相手を承認する、認めることです。

相手の何を承認するかは様々ですが、第一に、「相手の存在をしっかりと認めて挙げる」と言っても、これは人によっては想起しにくいかも知れません。

例えば、誰でも気持ちの良い言葉ではありませんが、特に若年層は・・・

「存在感がない」

「影が薄い」

などとと言われることを強く嫌います。

この現代的な心理不安はSNSなどのネット上での自己表現と相互作用していると分析されています。

社内における直接的なコミュニケーションにおいてもSNSの「いいね!」と同様、気軽に、且つ頻繁に口に出して伝えて合うことを推奨しています。

とは言え、プライベートの連絡先交換を嫌がる社員も少なくありません・・・。

現在では、AirCourseのように社員教育で使われているLMSの中にSNS機能が実装しているものもあります。

プライベートではなく、オフィシャルのものであれば、気軽にログインしてコミュニケーションを促進でき、自己効力感を高められそうですね。

そして習慣的にアクノレッジメント 行うことで、集団としての自己承認、肯定が高まり強固な信頼関係を築くことができます。

まとめ

大企業や成長中小企業の多くでコーチングは採用されています。

それら多くは、業績向上や社員パフォーマンス改善など、経営に対する成果を実感し継続しています。

今回は、基礎的な概要や具体的な方法などをご紹介しました。

英単語が多く、少し聞き慣れない言葉もあったかも知れません。

あるいは、

「日常で自然に行なっていたこと」

「学生時代の部活動で似たことをしてもらっていた」

などあるかも知れません。

コーチングとは、私たちが「思いやり」として大切にしているコミュニケーション、特に言葉や行動を、再現性高く追求するものです。

変化激しい時代にあって、立ち戻ったのは普遍的な価値に違いありません。

ABOUTこの記事をかいた人

林田 かよ

株式会社ソフィアコミュニケーションズ 代表取締役 2006年からコンサルティング会社に所属し、大手自動車メーカーの営業力向上研修、行政施設におけるコールセンター研修、大学でのキャリア教育などを担当。 2008年株式会社ソフィアコミュニケーションズを設立。現在は300名を超える講師コンサルタントを企業や行政に派遣し、企業の成長に貢献している。中小企業庁認定の経営革新等支援機関、TOKYO中小企業活性化プラットフォーム代表機関としても活動。