コンセプチュアルスキルとは?スキルの高め方や重要性について徹底解説

現代社会において私たちが直面する課題は日々複雑化しており、技術スキルだけではなくコンセプチュアルスキルが求められる時代が到来しています。

コンセプチュアルスキルとは、あらゆる事象の本質を理解して判断するための能力です。各事象に共通する点を見抜くという側面から「概念化力」と表される場合もあり、組織に対して課題解決やリスク回避、イノベーション等をもたらすため重要な能力と言えます。

ただコンセプチュアルスキルは、ロジカルシンキングや多面的視野、俯瞰力など複数な要素で構成されているため具体的にイメージしにくく、「結局どんなスキルかわからない」「自分が身に付けたり高めたりする方法がわからない」と考えてしまう方もいるのではないでしょうか。

本記事では、コンセプチュアルスキルの定義からや高めることの重要性、具体的な構成要素コンセプチュアルスキルが高い人の特徴、高める方法までわかりやすく解説していますので、スキル習得の参考にしてください。

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コンセプチュアルスキルとは

コンセプチュアルスキルとは、あらゆる事象の本質を理解して判断するための能力です。各事象に共通する点を見抜くという側面から「概念化力」と表される場合もあります。

組織が事業を行えば、当然のごとく環境や市場の変化、業務上でのトラブルなど対処すべき様々な事象が発生します。こうした事象を目の前にした際、未体験の事態であっても冷静な分析により本質をとらえて最適な判断を下すスキルです。

わかりやすく表現すれば「何事に対しても、大切な部分をすぐに見抜き、正しく判断できるスキル」といえるでしょう。

またロジカルシンキングや多面的視野、俯瞰力など複数の要素で構成される複合的なスキルであることも特徴です。

コンセプチュアルスキルは「カッツモデル」の要素の1つ

コンセプチュアルスキルは、もともと「カッツモデル」というモデル図の要素でした。

カッツモデルとは、役職ごとに求められるスキルの割合を示したモデル図です。1950年代に経済学者のロバート・L・カッツ氏により提唱されて以降、人材育成や組織開発の指針として活用され続けています。

以下はカッツモデルを図で表したものです。

図1:カッツモデル(3つの階層と3つのスキル)

図1の通り、3つの階層(トップマネジメント・ミドルマネジメント・ロワーマネジメント)と3つのスキル(コンセプチュアルスキル・ヒューマンスキル・テクニカルスキル)で構成されています。

左側で縦に並ぶ3つの階層は、上層にあがるにつれて役職が高くなります。各階層(役職)における3つのスキルの割合により「階層ごとにどのスキルを重視すべきか」を把握できるのです。

カッツモデルでは、コンセプチュアルスキルはトップマネジメント層(会長・社長・副社長などの経営者層)において重視すべきスキルとされています。

カッツモデルの詳細については、こちらの記事をご覧ください。

カッツモデルとは?育成や評価への活用から最新の傾向まで解説

全員にコンセプチュアルを求めるドラッカーモデル

カッツモデルを基に、経済学者のピーター・ドラッカー氏が提唱したのが以下のドラッカーモデルです。

図2:ドラッカーモデル

ドラッカーモデルでは、どの階層に対しても、コンセプチュアルスキルが一定の割合で設定されています。また、ロワーマネジメント層の下に一般社員層にあたる「ナレッジワーカー」も設定してあるのも特徴です。

昨今、グローバル化・SNSなどを含むインターネット普及・不確実で予測しがたい「VUCA(ブーカ)時代」の到来などを背景に、企業活動に迅速さや現場社員の主体性が求められています。さらに、労働者人口減や管理者不足といった背景もあり、社員一人ひとりの状況に応じた判断と行動がより重視される傾向にあります。

ドラッカーモデルは、全ての階層が「コンセプチュアルスキル」を身につけ、それぞれの現場で生じる様々な事象に対しても、迅速かつ柔軟な対応を可能にする必要性を示しています。

コンセプチュアルスキルの重要性

前述したとおり、コンセプチュアルスキルは「何事に対しても、大切な部分をすぐに見抜き、正しく判断できるスキル」です。

このスキルが備わっていないと、業務上未体験の事態に対して冷静な分析ができず、最適な判断を下せないため、トラブル対応や課題の解決につなげられません。

しかし、コンセプチュアルスキルを高めることができれば、以下のような行動ができるようになります。

  • 課題を本質的に解決できる
  • 組織にイノベーションをもたらせる
  • 経営方針や組織目標が浸透する
  • 各社員のパフォーマンスを引き出せる
  • リスクを避けられる

現代は「VUCA時代」ともよばれ、物事の先行きが見通しづらく、常に何らかのリスクを想定して行動しなければなりません。企業としては行き当たりばったりの施策を実行することは許されず、BCP(事業継続計画)などのマクロな視点を考慮した事業戦略が求められています。

そのような外部環境に常にさらされている今日の企業において、企業の存続を決めるのは社員一人ひとりです。より多くの社員がコンセプチュアルスキルを身に付けることの重要性は日々高まっているといえるでしょう。

コンセプチュアルスキルの構成要素一覧

コンセプチュアルスキルは以下のような要素で構成されます。

要素概要
ロジカルシンキング(論理的思考)物事の結果と原因を明確にとらえ、両者のつながりを考える思考法です。様々な事象を結果と原因に分解・整理して、本質を見極めるのに役立ちます。
クリエイティブシンキング(水平思考)前提を設けず水平方向に発想を広げる思考法です。ラテラルシンキングと表される場合もあります。固定観念や既存の手法にとらわれず自由に考えることで、新しい発想につなげます。
クリティカルシンキング(批判的思考)物事の本質を見極めるためにあえて疑いをもって考える思考法です。本質を見極めて改善やリスク回避につなげることを目的としています。「本当にこの方法でよいのか」や「もっと効率的・効果的な方法があるのではないか」など、あえて疑いをもつことでより良い結果に導きます。
多面的視野ひとつの物事や課題に対して複数のアプローチを行う能力です。多面的視野があると、行き詰った状況に対する打開策や、異なる角度からの解決策などを導き出すことができます。
柔軟性想定外の事態に対して臨機応変に対応することです。事業および業務において想定外やイレギュラーは避けられません。どのような事態であっても、冷静な状況把握と状況に応じた判断が求められます。
受容性自分のものとは異なる意見や価値観を受け入れることです。社内会議で意見の対立が生じた際でも、相手の意見に耳を傾けることで、より良い結論を導き出すことができます。グローバル化やジェンダーに関する考え方など多様性がより重視される昨今の傾向からみても、重要な能力といえるでしょう。
知的好奇心自らが知らないことに対して関心をもち、知識を得るための姿勢のことです。知的好奇心をもてば知識量を能動的に増やすため、必要に応じて適切な判断や新しい提案を行える確率が高まります。
探求心物事をより深く理解するために調査や分析を行うための姿勢のことです。物事の成り立ちや背景など、表面的な情報のみでは分からない内容を知ることで、新たな発想や提案につながります。
応用力得た知識や経験を他の事象でも活用する能力です。応用力が高ければ、経験していない事態であっても過去の経験から得た知見を活かして対処できます。
俯瞰力物事の全体像を把握する能力です。自分や自社が置かれている状況や周囲の状況、今後の見通しなどを広い視野でとらえます。今後の方向性を決める際や、イレギュラーに対処する際に必要となります。

コンセプチュアルスキルが高い人の特徴

コンセプチュアルスキルの構成要素は多岐にわたります。そのため、どのような状態であればコンセプチュアルスキルを発揮できているといえるのかがイメージしにくいでしょう。

そこで、コンセプチュアルスキルが高い人の特徴を紹介します。あくまで傾向ですので、自己チェックやイメージするための参考までとしてください。

※当てはまる項目が多いほど、コンセプチュアルスキルが高い傾向にあります

  • 常に目的思考で考えている
  • 物事を全体と詳細の両面で捉えている
  • データや根拠を重視する
  • 良いアイデアを次々に提案する
  • 議論が行き詰った時に新しい視点や切り口を示す
  • 相手の話をうのみにしない
  • 決めつけや思い込みがない
  • 口頭で相手を納得させるのが上手い
  • 話の要約と例え話がどちらも上手い
  • トラブルに動じず冷静に解決にあたる

コンセプチュアルスキルの高め方

コンセプチュアルスキルは、課題解決やイノベーション、リスク回避などに大いに役立ちます。では、コンセプチュアルスキルはどのように高められるのでしょうか。

ここでは、個人のコンセプチュアルスキルを高めるための考え方と、社員のコンセプチュアルスキルを高めるための育成手法をそれぞれ紹介します。

抽象化して考える

抽象化とは、複数の対象に共通する要素を、抜き出し概念として捉えることです。わかりやすく表現すると「共通する情報をひとくくりにすること」です。例えば「キャベツが1玉、トマトが2個、ナスが3本ある」こうした状況を抽象化すると「複数の野菜がある」とひとくくりで捉えることができます。

抽象化することで、以下のようなメリットがあります。

  • 全体や目的が把握できる
  • 共通する本質的な要素が分かる
  • ポイントが絞り込まれ考えやすくなる

抽象化して考えるためのポイントは、以下の通りです。

  • バラバラな情報はまず書き出す
  • 様々な情報の共通点を探すクセをつける
  • 共通点をみつけたらひとくくりのグループにする
  • 「要するに」という言葉を使う

全体で「モレ・ダブり」が無いかを考える

モレがなく、ダブりもない」という意味を示すMECE(ミーシー)という言葉をご存知でしょうか。Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive(互いに排他的かつ共に網羅的)という言葉の頭文字をとって表しています。わかりやすく以下の具体例で示します。

具体例:日本をMECE(ミーシー)で表すと

〇:北海道・本州・四国・九州 →モレもダブりもなくMECEである
✕:北海道・本州・九州 →四国がモレているためMECEでない
✕:北海道・本州・東京・四国・九州 →本州と東京がダブりのためMECEでない
✕:北海道・四国・九州・福岡 →本州がなくモレ、九州と福岡がダブりでMECEでない
※沖縄は九州に含みます

コンセプチュアルスキルを高めるためには、考える対象がモレもダブりもなくMECEな状態かを意識することが大切です。これにより本質の見極めと判断が可能となるのです。

思考の深堀りをする

思考の深堀りとは、「So What(だから何なのか)?」と「Why So(なぜそう言えるのか)?」という2点の問いかけを繰り返して課題の根本的な原因を探り、解決に導くための手法です。

表層的な課題に対して繰り返し思考の深堀りをすることで、見えなかった潜在的・本質的な解決策が発見できるため、ビジネスシーンでは将来の戦略や今後の取り組み、売上向上施策の検討などで活用可能となります。

普段から新聞やテレビなどで情報をインプットする際に、思考の深堀りをしながらのインプットを習慣化することで、自然と身に付きます。

「そもそも」を考える

「そもそも」は、本来の目的(本質)に立ち返るキーワードです。「そもそも」を考え言葉として使うことは、本質を捉えるコンセプチュアルスキルを高めるのに有効です。

複数で議論する際には、気付かない間に論点がズレてしまうことが起こりがちです。気付けば、末節である細かな内容の議論で白熱してしまうような場面を経験したことがあるのではないでしょうか。個人で考える際も、本来考えるべき課題から派生していき、気付けば全く関係のないことを思案していたというケースも少なくありません。

こうした論点や思考のズレを解消して、本来の目的(本質)に立ち返るための手段が「そもそも」を考えることなのです。会議の場や思案する際、状況が停滞したり思考が行き詰ったら「そもそも」と切り出して突破口を見つけましょう。

言葉の定義を明確にする

コンセプチュアルスキルを高めるためには、言葉の定義を明確にする意識が大切です。対象とする言葉の定義が曖昧なままだと、思考が広がらない、相手との話がかみ合わない、結果として本質の理解や正しい判断に至らないといったデメリットが生じます。

個人での思案中に理解が曖昧な言葉に直面した際はすぐに調べること、相手が使う言葉に違和感を感じた際はどのような定義でその言葉を用いているかを確認することが大切です。

物事を考える際は言葉の定義を明確にすることを心がけ、コンセプチュアルスキルの向上につなげましょう。

具体化して考える

具体化とは、抽象的な事柄を詳細な情報により特定することです。わかりやすく表現すると「情報を細かくはっきりさせること」です。例えば「複数の野菜がある」という状況を具体化すると「キャベツが1玉、トマトが2個、ナスが3本ある」となります。

具体化して捉えることで、以下のようなメリットがあります。

  • 細かい情報、プロセスを理解できる
  • 各パーツの構成要素が分かる
  • 詳細情報が多く特定しやすい

具体化して考えるためのポイントは、以下の通りです。

  • 5W1H(いつ・どこで・だれが・何を・なぜ・どのように)で表す
  • 情景や手順まではっきりイメージする
  • 「例えば」という言葉を使う

コンセプチュアルスキルの研修・トレーニング方法

コンセプチュアルスキルは、マネジメント層に限らず全社員が身につける必要があります。そこで、以下では社員のコンセプチュアルスキルを高めるための育成手法を紹介します。

OFF-JTでインプットを行う

OFF-JT(Off The Job Training)とは、職場や通常業務から離れて特別な時間や環境において行う教育や訓練のことです。

具体的には、外部研修への参加や、社内外の講師による集合型研修の実施などが挙げられます。体系的な学習を行えるため知識・スキルを整理しながら身につけられる点がメリットです。

コンセプチュアルスキルはロジカルシンキングや多面的視野など、思考法や心構えに関する内容が多く、実務経験のみで習得するのは容易ではありません。そこで、体系的な学習でインプットに集中できるOFF-JTでの補完が有効といえるでしょう。

またコンセプチュアルスキルの場合、OFF-JTのなかでも集合型研修がおすすめです。集合研修であれば、落ち着いた環境下でコンセプチュアルスキルについて正しく理解する機会を得られ、グループワークまで行えるのが利点です。

ただし、コンセプチュアルスキルは構成要素が多岐にわたるため、各テーマごとに研修を行うと、開催側および受講側の負担が増してしまうのが難点です。

OJTで身につける

OJT(On-the-Job Training)とは、職場での実務経験を通じて知識やスキルを習得する育成方法です。主に新人を対象として、同じ部署の上司や先輩がトレーナー(育成担当者)となり育成を行います。

トレーナーと育成対象者のどちらであっても、OJTを通じてコンセプチュアルスキルを向上させることは可能です。

ただし、いずれにしてもトレーナーが、コンセプチュアルスキルについて一定の理解を得ていることが求められます。実務のなかでトレーナーが、育成対象者にコンセプチュアルスキルを用いて考える機会を与え、指導によって自らのスキルをも向上させるためです。

またコンセプチュアルスキルは複合的なスキルのため、指導の難易度は高めです。状況に応じて、コンセプチュアルスキルという全体の枠組みを教えた上で、ロジカルシンキング・クリティカルシンキング・多面的視野など個々のテーマに細分化して指導するのが良いでしょう。

OJTについての詳細は、こちらの記事をご参照ください。

OJT制度とは?構築時の注意点と効果を高める方法を解説

日常業務で意識的に磨く

コンセプチュアルスキルは考え方や心構えがベースのため、意識さえ持てば日常業務を通じて高めていくことも可能です。

ただし、前提として集合型研修等を通じて、コンセプチュアルスキルの概念や構成要素などの基本を理解しておく必要があります。その上で、業務の様々な場面でコンセプチュアルスキルを発揮できるよう努めます。

会議やミーティングの場で「コンセプチュアルスキルを用いて考えること」をルールやスローガンにするのも良いでしょう。

人事評価制度でスキルの習得を喚起する

人事評価制度とは、各社員の「業績・能力・勤務態度や意欲」などを客観的指標により評価するための制度です。等級制度や報酬制度とあわせて用いることで、各社員の給与や賞与、昇格を決定します。

評価項目にコンセプチュアルスキルに関する項目を設けることで「コンセプチュアルスキルが求められており、評価にも影響すること」を理解でき、能動的なスキルの習得と発揮につながるのです。

人事評価制度や評価項目についての詳細はこちらの記事をご覧ください。

人事評価の項目とサンプル|目的や基準、実施手順を解説

eラーニングで学ぶ

コンセプチュアルスキルは、構成要素が多岐にわたるため、各テーマごとに研修を行うとなると、開催側および受講側の負担が増してしまうのが難点でした。そこで有効なのが、eラーニングです。

eラーニングとは、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器とインターネットを利用して教育、学習、研修を行うことです。

eラーニングはネット環境さえあればいつでもどこでも受講できるため、受講者側は空き時間などを活用できます。開催側も受講案内のみで、研修のために参加者全員のスケジュール調整を行う必要もありません。他の手法と比較して、管理者側・受講者側の双方とも負担が少ない点がメリットです。

実施する負担の少なさから、コンセプチュアルスキルのように学ぶべき内容が多岐にわたるテーマと特に相性が良いといえます。「忙しくて研修を行えない」といった課題の解決策となるでしょう。

eラーニング活用について詳細を知りたい方は以下の資料をご確認ください。

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まとめ

コンセプチュアルスキルについて、定義や重要性、具体的な構成要素コンセプチュアルスキルが高い人の特徴、高め方までを解説しました。

コンセプチュアルスキルは、あらゆる事象の本質を理解して判断するための能力で、「何事に対しても、大切な部分をすぐに見抜き、正しく判断できるスキル」ともいえます。

これまでは、主にトップマネジメント層に必要とされるスキルでしたが、不確実で予測しがたいVUCA時代といわれる昨今においては、役職や立場に関係なく一般社員まで含むすべての層にコンセプチュアルスキルが求められる傾向にあります。

コンセプチュアルスキルを高めて本質を見抜く力を身に付け、人材育成や組織開発に貢献し、業務の効率化と生産性の向上を目指しましょう。

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