DX推進人材の育成における課題と研修担当者の果たすべき役割 │第3回「研修担当者の果たすべき役割」

多くの企業でDXが検討、実施されている中でDXを推進するための人材育成の必要性が声高に叫ばれていますが、具体的に研修担当者が果たすべき役割は明確になっていません。

この記事では、IPAの調査結果(※)をもとにDX推進における課題を総括するとともに、その課題解決のために研修担当者が果たすべき役割を全3回にわたって解説します。

※「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」2019年5月17日

「DX推進人材の育成における課題と研修担当者の果たすべき役割(全3回)」

第1回「DXの現状」

第2回「DX推進人材の現状と課題

第3回「研修担当者の果たすべき役割」

連載第3回の今回は、研修担当者の果たすべき役割について解説します。

DX推進人材のスキルモデルと研修体系の作成

DXを担うコア人材の育成において、研修担当者は具体的にどのような役割を果たすべきなのでしょうか。

研修担当者が最初に取り組むべき活動は、DX推進人材のスキルモデルの作成になります。

やみくもにDX推進人材の育成を標榜しても、具体的な人物像が定義されていなければ、効果的な人材育成はできません。

自社のDX推進にどのような人材が必要なのかを分析し、定義する作業は極めて重要ですが、まったくの白紙状態から開始するのも非効率的です。

前述のIPA調査で定義されていた6つの職種のような標準モデルをベースに、自社のビジネス、組織、DXのゴールを加味して作成するのが現実的といえます。

IPA調査のレポートには、調査用に定義された6つの職種と、以前からIPAで作成、公開されているIT技術者向けのスキル標準ITSS+とのマッピングが掲載されています。

出典:「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」

これによると、UXデザイナー以外の職種については、多くの部分がITSS+で定義済のスキルモデルが適用できるとされています。

スキルモデルの作成と並行して必要となるのが、研修体系の整備です。もちろんすべてのスキルを研修で習得することはできませんが、標準的な知識を効率的に習得するためには、外部から調達可能なコンテンツを調査、体系化した上で不足する部分をどのように補っていくかどうかを検討しなければなりません。

幸いDXがトレンドとなって以来、多くの研修コンテンツがDX向けに編集され受講可能になっており、このようなDX向けコンテンツをひととおり調査するだけでも、歩いて井戸の体系化は可能だと思われます。

一般社員の危機感の醸成とリテラシー向上のための全社員研修の実施

IPA調査の結果から、DXを担うコア人材の育成だけではなく、一般社員に対する啓蒙、教育活動も重要であることがわかりましたが、この活動においては、研修担当者は主導的な役割を果たすことができます。

全社員にDXの意義を理解させ、必要なリテラシーの向上を促すためには、標準化されたコンテンツを短期間に全ての社員にもれなく受講させる必要があります。

その実現には、標準コンテンツの準備と、全社員を対象とした研修管理の仕組みを構築する必要がありますが、このような作業は、まさに研修担当者が主導的に果たすべき役割といえます。

標準コンテンツの準備としては、DX推進人材向けの研修と同様に、外部から調達可能なコンテンツを調査した上で、自社独自に補完すべき内容を検討するという流れになります。

最近では、eラーニングを主体としたDXの啓蒙とリテラシー向上のための研修コンテンツ がいくつか提供され始めていますので、このようなコンテンツを比較し、自社に必要な内容にあったものを選ぶことができます。

全社員を対象とした研修管理の仕組みとしては、クラウド・サービスとして利用可能な最新のLMSを利用するのが良いでしょう。

最新のLMSは、クラウド・サービスとして利用できるため、短期間、低コストでの導入が可能であるだけではなく、スマートフォンでの利用を想定したUXや受講申請・承認などの業務フローも処理ができるため、Excelなどを使った手作業での管理と比較すると、全社員を対象とした研修をはるかに効率的に管理することができます。

全社員向け研修の管理に役立つLMSの機能については、既出記事『「コンプライアンス研修ってどうやるの?」第3回コンプライアンス研修に最新LMSを徹底的に活用する方法(1)』 で詳しく解説されていますので、こちらもぜひご一読ください。

多様な研修形態を迅速に提供するためのインフラ整備

DXを推進することで、ビジネスが変革される過程では、研修をいろいろな形態で臨機応変に実施する必要が出てきます。

例えば、新規ビジネスを立ち上げた場合、新しい事業組織は、核となるDX推進人材だけではなく、異なるビジネスモデルを持つ複数の部署からの異動者や中途採用者の寄せ集めとなります。

このような組織で迅速にビジネスを立ち上げるためには、ILT、eラーニングやOJTといった従来の研修形態はもちろん、ハイブリッド研修マイクロラーニングといった新しい研修形態を併用することが求められます。

ハイブリッド研修とは、研修の内容を確実に定着化させるための「研修転移」と呼ばれる考え方を実現するための研修形態です。

ハイブリッド研修は、元来ILTの実施効率を上げるためにeラーニングを組み合わせることを意味していましたが、最新のハイブリッド研修は、前述のLMSやSNSといった最新のITと、コンサルティング、講師派遣といった外部のリソースを活用することで「研修転移」の実現を可能にする複合的な研修形態を意味するようになっています。

「研修転移」については、既出記事『研修を「やりっぱなし」から「役に立つ」に変えるには? 第2回学習を行動に活かす【研修転移】 』で、「ハイブリッド研修」については、同じく『研修を「やりっぱなし」から「役に立つ」に変えるには? 第3回ハイブリッド研修のすすめ 』で詳しく解説されていますので、こちらもぜひご一読ください。

マイクロラーニングとは、従来の研修方法では効果が上がりにくいとされてきたOJTや専門性の高い研修において、いかにして効果的に学習させるかという課題を解決するために登場した新しい研修方法論で、以下の3つの特徴を持っています。

  • 教師と生徒の関係性がフラットであり、継続的にフォローが受けられること
  • 細かい教材コンテンツを多数制作した上で、タグ付けなどを用いて整備すること
  • 個人ごとに異なるスキルギャップを埋めるために適切な教材コンテンツを提供すること

「マイクロラーニング」については、既出記事『マイクロラーニングとは何か?その特徴と効果的な活用方法を理解する(第1回)マイクロラーニングとは何か?』で詳しく解説されていますので、こちらもぜひご一読ください。

ハイブリッド研修やマイクロラーニングといった新しい研修形態での研修を実施するためには、インフラ整備が必要です。例えば、マイクロラーニングを実現するためには、基本となるeラーニング/LMSの機能に加えて、以下の3つの機能を提供する必要があります。

  • コラボレーション – 企業内SNSなどを利用し、教材の公開、共有を容易にし、社員同士でコミュニティを形成することで、スキルの自然発生的な拡散を可能にする
  • ナレッジマネジメント – 従来の文書中心のコンテンツの分類・整理、タグ・索引検索によるナレッジ共有に加えて、動画コンテンツの分類・整理、タグ・索引検索を可能にし、マイクロコンテンツの体系化を可能にする
  • タレントマネジメント – 社員のスキルや過去の経歴と連動し、適切な教材を選択、あるいはレコメンデーションを行うことを可能にする

これらの機能は、それぞれに特化したパッケージ製品/クラウド・サービスとして提供されていますが、従来のeラーニング/LMSツール・ベンダーが既存の製品/サービスに機能追加することでマイクロラーニング・ツールとしての製品/サービスを提供しているケースも多く見られます。

DXにともなうビジネス変革は、急激な組織変更、頻繁な人事異動や多数の中途採用を伴うため、短期間に多数社員におけるスキルミスマッチを発生させます。

このような状況に対応するためには、企業内研修も従来のあり方を根本的に見直す必要があります。

DXを推進する企業の研修担当者は、自社の研修インフラの現状を把握した上で、DXの推進プランに合わせた研修インフラの更新、拡張の計画を立案し、DXの一環として企業内研修の変革を主導しなければなりません。

まとめ

DXを担うコア人材の育成において、研修担当者の果たすべき役割は3つあります。

第1の役割は、DX推進人材のスキルモデルと研修体系の作成です。

スキルモデルとしてDX推進人材の具体的な人物像が定義することで、はじめて効果的な人材育成が可能になります。まったくの白紙からスキルモデルを作成するのが難しい企業は、より現実的な方法として、IPA調査で定義されていた6つの職種のような標準モデルをベースに、自社のビジネス、組織、DXのゴールを加味して作成するのもよいでしょう。

スキルモデルの作成と並行して、標準的な知識を効率的に習得するための研修体系を作成することも重要です。

こちらも外部から調達可能なコンテンツを調査、体系化ことから始めるのが現実的な方法といえるでしょう。

第2の役割は、一般社員の危機感の醸成とリテラシー向上のための全社員研修の実施です。

全社員にDXの意義を理解させ、必要なリテラシーの向上を促すためには、標準化されたコンテンツを短期間に全ての社員にもれなく受講させる必要がありますが、そのためには、標準コンテンツの準備と、全社員を対象とした研修管理の仕組みを構築しなければなりません。

eラーニングを主体としたDXの啓蒙とリテラシー向上のための研修コンテンツが、いくつかのベンダーから提供され始めていますので、これを主体に標準コンテンツの準備を進めるのがよいでしょう。

一方、全社員を対象とした研修管理の仕組みとしては、クラウド・サービスとして利用可能な最新のLMSを利用するのが良いでしょう。

第3の役割は、多様な研修形態を迅速に提供するためのインフラ整備です。

DXにともなうビジネス変革は、急激な組織変更、頻繁な人事異動や多数の中途採用を伴うため、短期間に多数社員におけるスキルミスマッチを発生させます。

このような状況に対応するためには、企業内研修も従来のあり方を根本的に見直す必要があります。具体的には、ILT、eラーニングやOJTといった従来の研修形態はもちろん、ハイブリッド研修やマイクロラーニングといった新しい研修形態を併用することが求められるため、従来の研修インフラでは対応できないことが明らかです。

DXを推進する企業の研修担当者は、自社の研修インフラの現状を把握した上で、DXの推進プランに合わせた研修インフラの更新、拡張の計画を立案し、DXの一環として企業内研修の変革を主導しなければなりません。

「DX推進人材の育成における課題と研修担当者の果たすべき役割(全3回)」

第1回「DXの現状」

第2回「DX推進人材の現状と課題

第3回「研修担当者の果たすべき役割」

ABOUTこの記事をかいた人

平井 明夫

ソフトウエアベンダーやコンサルティング会社で20年以上にわたりコンサルティング、企業経営に携わる。現在は、IT企業の新規事業立上げ、事業再編を支援するかたわら、データ分析、人材管理、LMSなどに関する講演・執筆活動を行っている。