働き方改革が産む変化│現場から聞こえたメリット・デメリット

何か新しいものを私たちが受け入れる時、積極的に順応する場合と、旧態依然への慣れを好む場合とがあります。

景気変動や消費者ニーズの多様化など、仕事における観察対象の変化へと適用することは企業活動において肝心です。

今変革が求められているのは、その企業活動のあり方そのものです。

この「働き方改革」の過程にあって、働き手である皆さんや、会社、社会は今後どう影響し合って行くのでしょうか?

改革が進む職場で起こっているプラス、マイナス面どちらも併せて見て参りましょう。

「働き方改革」の概要

「一億総活躍社会」という表現は既に聞き馴染みのあるものかと思います。

今テーマである「働き方改革」が目指すゴールとして、安倍内閣によって掲げられました。

総人口1千億2千万人強(2019年現在)である日本社会の中で、個人一人一人が性別や年齢や、障がいの有無などに関わりなく、様々な人が個性を発揮し、生き甲斐を感じながら働ける社会です。

その実現に向けて、政府と企業がこれまでの労働環境、雇用制度の改革を推進しています。

現場から聞こえたメリット・デメリット

変化があれば、その影響は立場や状況によって良し悪しの両面があります。

国を挙げた「働き方改革」に向け、様々な取り組みが始まったばかりですが、現場で聴く声に耳を傾けてみましょう。

まずはメリットとしては、主に出勤時間が柔軟になったことから派生する生活の快適化に関して、多数聴く事が出来ました。

通勤―通学ラッシュを避け、生産性が向上したという点は個人と会社どちらの立場から見ても評価できます。

特に東京など都市部で長年問題視されていましたが、勤務システムの改革により徐々に緩和されています。

会社間での差こそあれ、家庭と仕事の両立が概ね進んでいます。

理由を同じくして、社外との社員間交流が増加し、異業種間での意見や協業に繋がっているという意見もありました。

これは後に論ずるフリーランスや複業の増加とも関連しています。

複数の知見を共有する組織や個人が今まで以上に実力に応じて働いています。

具体的な協業という実利の点においても貢献がみられます。

注目が年々高まるオープンイノベーションはその最たる例です。

今までにない企業間関係の構築は国際経済に対する一経済圏という観点から見ても好ましいものです。

一方で、デメリットも多岐に渡っています。

会社組織の多様化、拡張化によって、情報管理に係るコスト増加が異口同音に出ました。

在宅勤務やプロジェクトベースの雇用などにより、情報管理に関する契約締結の必要性が生じています。

見方を変えれば、情報漏洩リスクが高まっているとも言えます。

円滑な情報共有を目的として、新たなクラウドソフトやオンラインコミュニケーションツール導入などが進んでいますが、ITリテラシーにおいて社員間格差があり一枚岩にはなっていないという声が特に経営層から聞かれました。

諸刃として見る事が出来ますが、正社員とフリーランスなど業務請負側に共通していた点が、「実力社会の色合いが強くなった」という点でした。

雇用がより流動的になり、業務遂行における個人の価値がより定量的に見られる社会になったという訳です。

“日本的な”雇用として賛否両論を生んでいた転籍や嘱託など、場合によっては不明瞭な雇用に大企業や官庁ではメスが入っています。

複業、フリーランスと“きょうそう”

皆さんの働く現場レベルではどの様な変化が起きていますか、あるいは自ら起こしていますか?

正社員雇用だけでない雇用形態の多様化は「働き方改革」の象徴と言えます。

私の感覚では制度の差こそあれ雇用先を2つ以上持つ複業(以後副業と同義に扱います)、パラレルワーカーを認める企業がここ数カ月で急増している印象です。

中でも最近、体組成計メーカーで知られる株式会社タニタが新たに導入した改革がメディアを賑わせています。

それは、積極的に社内の正社員雇用者を個人事業主として転換し、プロジェクトベースで給与を支払うというものでした。

一般的なフリーランスと同様に複業が認められており、タニタとは別に他の会社や個人から業務を受けることができ、報酬アップの実現が可能になりました。

個人レベルで見ると分かり易いメリットとして考えられています。会社から見れば、社員時と業務内容であっても人件費が増加する可能性を秘めています。

一方で、会社経営の観点では委託業務に対する費用対効果の評価によって、契約の解消が容易になったことが第一に挙げられます。

言い換えれば、固定費としての人件費を柔軟に調整できる仕組みです。

この制度に関しては、良くも悪くも個人の裁量に多くを委ねるものに違いありません。

何事も黎明期には付き物ですが、賛否が拮抗しています。

経営の点とは逆に、働き手から見たデメリットとしては、会社経営の変動によって人件費の削減を目的として、給与を支払う個人の数を容易に調整できる点です。

実力を評価された個人に業務のしわ寄せが発生している例もあり、ところがその個人は支払いの手前、委託業務を受理せざるを得ないという現実的な問題が生まれてしまいます。

正社員への影響も想像に難くありません。

単刀直入に、それは社内政治の変容です。

「終身雇用の健在」の中では、極端に言えば同期社員との競争、会社内での共存が全てでした。

出世街道の歩みを進めるべく、努力が注がれていました。

しかし、フリーランスを始めとして外部労働力の活用が急速に進む今、業務貢献に際しての競争相手は社内だけに留まりません。

今までは、マネージャポジションを社員の中から選別していた会社でも、完全に外部リソースを活用する。

はたまた、逆に優秀なフリーランサーを正社員として契約切り替えを行い、新たにチーム構築する例も、特に成長企業では少なくありません。

“きょうそう”と敢えて平仮名で記しましたが、労働生産性向上に向かって、柔軟な雇用形態、会社組織の拡張をうまく活用して、個人レベルの競争ではなく、社会レベルの共創へと目を向けることが求められています。

社会的要因と実態

現実には雇用する側、雇用される側で様々な意見がありますが、これから私たちが生きている日本の社会、特に経済活動を維持し続ける為には、「働き方改革」が求められています。

その要因としては、3つが挙げられます。

一点目は、労働人口の減少です。

ご承知の通り、少子高齢化が年々進んでおり、2018年時点で全国民の28.1 %が65歳以上と、高齢者の人口割合は過去最高値です。

その上、世界一の長寿国である日本では特に、平均寿命の伸長によって高齢化の最高値は更新されていきます。

東京など都市部で生活をしていると気がつきにくいのですが、地方では統計数値の通り、この少子高齢化の傾向は顕著です。

先日訪れたある地域では、駅から喫茶店、宿泊所、娯楽施設で、会う人皆が高齢者の方々でした。

日本各地で、この様な高齢化が顕著な過疎地域は増加の一途を辿っています。

一方で、東京を始め都市部は過密化が激化し、結婚して子育てという社会循環が機能し辛くなっております。

皮肉にも高齢化社会を後押しする、この不均衡な社会構造を解消すべく、官民挙げて対応策が練られています。

とりわけ、若者の地方生活を支援するIターン・Uターンの取り組みが盛んです。

大企業を辞め地元就職という、これまでの価値観では少なかった選択肢が広がってきています。

「一億総活躍社会」にある生き甲斐の一端を見せる例ではないでしょうか?

二点目は、長時間労働の見直しです。

海外諸国との比較で、日本の就労時間の長さが指摘されています。

時に海外で揶揄される「朝礼に始まり残業を経て、飲み会に終わる」という日本式の仕事観、ステレオタイプは今なお続いています。

過労死など社会的な事件の度に、具体的な制度的改革が国内外から迫られてきました。

関連して、私たち日本人は「時間に対する忠誠心が強い、時に度を超えて強すぎる」と外国人の知人らに指摘されました。

グローバル化の点で見ると、学校教育などを通して染み付いた根強い生活様式すらも世界基準に合わせる努力は避けて通れない。

外国人受け入れが推進される最中、こう考えるのが合理的且つ平和的ではないでしょうか?

三点目は、労働形態、雇用形態の多様化です。

前述の社会構造の変化や、経済活動の持続に対して、これまでの働き方では、雇用を生み出す企業と雇用される個人の両側で限界がきています。

もちろん消極的な事例ばかりではないですが、事実として、大企業による大規模リストラは毎週の様に報道されており、私の周囲でも影響を受ける人たちは増えてきました。

「終身雇用制度の崩壊」という感傷的な表現が如実に現状を表しています。

「働き方改革」に伴う人事部の対応状況

「働き方改革」とそれに伴う制度刷新を牽引する各企業の人事部の状況はどうでしょうか?

企業規模問わず、長時間労働を防ぐ為に業務管理、その記録化が今まで以上に徹底されているように感じます。

卑近な例として、多様な社員契約に則した新しい勤怠管理、給与システムの導入、共通ITツールの整備が頻繁に見られます。

電子化が進み、クラウドソフトへパソコンやスマートフォンなど様々な端末アクセスし、リアルタイムで情報更新、共有が行われています。

日本ではまだ馴染みの薄いフルフレックスと呼ばれる制度をご存知でしょうか?

始業終業時間の規定がなく、社員が会社へ通勤することが少なくなります。

対面での会議機会は当然減ってしまいます。

従って、ITツール上でのコミュニケーションがお互いの業務遂行には何よりも重要です。

懸念すべきは、情報流失など想定外の事態がないとも言い切れません。

安全且つ円滑な情報共有をする為に、導入前にITツール使用に関してルールを明文化しておくことを、私は推奨しています。

人事部が新システム対応などで業務過多になってしまっては本末転倒です。

遠隔で働く社員へのコンプライアンス研修などの教育管理も、手間を掛けずに・・・。でも確実に行わなければなりません。

クラウド型LMSの一つであるAirCourseなら、学習コンテンツの配信は勿論、学習状況なども簡単に行えるので、「働き方改革」の旗振り役である人事部にはこうしたITツールがおススメです。

クラウドLMSのさまざなな機能については、こちらの記事もおススメです。

厚生労働省、制度改革の渦中にあって

「圧倒的な人員不足・・・。」

「残業することが美学・・・。」

「毎日いつ辞めようかと考えている・・・。」

これら全く「働き方改革」とは相容れない問題提起が、改革の中心である厚生労働省から上がってきました。

国会対応等による官僚の残業時間の長さは報道されてはいましたが、「改革若手チーム緊急提言」にあるアンケート内容は深刻で、疑問を禁じえませんでした。

自己矛盾を抱える組織が国民の労働環境改革に取り組むことができるでしょうか?

仮にでも、喫煙者が禁煙を推奨する構図は成り立つでしょうか??

説得力の回復を目指して、提言の検証、実現が急がれます。

まとめ

より多くの個人が、多様な価値観に基づく生き方を実現する上で、どのように働くかの選択は人生の節目節目で迫られます。

長い人生の中で、自分の生き方に合った「働き方」を主体的に調整することができます。

と同時に、会社側に任せていた業務管理、自己評価も日々自身で行わなければなりません。

「一億総活躍社会」の一人として、制度に身を任せて受動的に受け入れるだけでなく、積極的に会社に対して、広くは社会の生産性向上に対して、積極的に働き掛ける姿勢が評価に値すると私は考えています。

ABOUTこの記事をかいた人

林田 かよ

株式会社ソフィアコミュニケーションズ 代表取締役 2006年からコンサルティング会社に所属し、大手自動車メーカーの営業力向上研修、行政施設におけるコールセンター研修、大学でのキャリア教育などを担当。 2008年株式会社ソフィアコミュニケーションズを設立。現在は300名を超える講師コンサルタントを企業や行政に派遣し、企業の成長に貢献している。中小企業庁認定の経営革新等支援機関、TOKYO中小企業活性化プラットフォーム代表機関としても活動。