マイクロラーニング・ツールの種類と選択のポイント│第4回「マイクロラーニングとは何か?効果的な活用方法や提供ツールを理解する」

「マイクロラーニング」が新しいeラーニング手法として注目されていますが、これをただ単に「短い動画(マイクロコンテンツ)をモバイル端末で録画、再生する」という認識では、その本質的な特徴と効果的な活用方法を理解することはできません。

マイクロラーニングは、「短く」かつ「場所を選ばず」知識やノウハウを伝える手段である、ということを念頭に置きながらコンテンツを提供する必要があるのです。

とはいっても、効果的なコンテンツをマイクロラーニングで作成するにはどうしたら良いのか、お困りの方もいるのではないでしょうか。

この連載記事では、全4回にわたって、マイクロラーニングとマクロラーニング(ILTやeラーニングによる従来型の研修)との違いを明確にした上で、マイクロラーニングを効果的に活用するためのポイントを解説します。

「マイクロラーニングとは何か?その特徴と効果的な活用方法を理解する(全4回)」

第1回:マイクロラーニングとは何か?

第2回:マクロラーニングとマイクロラーニングの違い

第3回:マイクロラーニングが威力を発揮する利用局面

第4回:マイクロラーニング・ツールの種類と選択のポイント

連載第4回の今回の記事では、マイクロラーニングが適している研修内容からマイクロラーニング・ツールの種類と選択のポイントについて詳しく解説します。

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マイクロラーニングとは

マイクロラーニングは、その名称の通り1回分が短時間で少ないボリュームのなか実施する学習スタイルのことを指します。1コンテンツが5分~10分ほどで完結するため、忙しい現代人にとっては「スキマ時間」に「場所を選ばず」受講できるメリットから、近年注目を集めています。

マイクロラーニングが生まれた背景

これまでの企業内研修のスタイルというと、受講者が一堂に会して数時間から一日、もしくは合宿のような形式で数日にわたって行われるものが一般的でした。

しかし、新型コロナウイルスの影響や、テレワークをはじめとした多様な働き方が採用される現代社会において、拘束時間が長く対面での研修は受講者・実施側双方に負担がかかりすぎると感じる企業が増えつつありました。

そこで、インターネット環境と視聴するデバイスさえあれば、短時間の動画コンテンツを視聴して研修を実施する「マイクロラーニング」への効果が期待されています。

また、現在の主要な労働力の中心にある世代は、さまざまなモバイルデバイスが生活の中に溶け込んでいる生活様式のなかで育った人が多い傾向にあります。そのため、情報を取得する手段としてマイクロラーニングのアプローチとは相性が良いとされています。

eラーニングとの違い

eラーニングは「Webラーニング」「オンライン学習」などとも呼ばれる、主に学習管理プログラムを活用した学習形態のことを指します。パソコンやブロードバンド回線が普及し始めた2000年代を境に国内企業においても広がりを見せており、現在もっとも主流な研修スタイルの一つにあげられます。

マイクロラーニングも大枠ではeラーニングの一種であり多くの共通点もありますが、両者におけるもっとも大きな違いは「受講時間の長さ」と言えます。

これまで主流であったeラーニングは1つのコンテンツの長さが40〜60分程度とされていますが、マイクロラーニングでは前述の通り5~10分程度と大きな差が見られます。

また、eラーニングではあらかじめ作成したコンテンツをオンデマンドで配信する方法の他にも、リアルタイムで講義を実施することで、受講者と質疑応答やディスカッションなどの相互コミュニケーションが可能になる形式で行われることもあります。

コンテンツの分量が多くなることで、専門的な内容かつ多彩な配信方法を選択できる点が大きなメリットと言えるでしょう。

マイクロラーニングによる効果

では、マイクロラーニングを取り入れることによって、どのような効果やメリットが期待できるのでしょうか。

場所やシチュエーションを選ばない

マイクロラーニングはコンテンツのボリュームをあえて抑えているため、受講者の視聴環境さえ整えば、自宅や外出先などで気軽に学習できるという大きなメリットがあります。

研修のためにまとまった時間を確保したり、オフィスの一室に集合したりという手間を省けるため、受講に対するハードルが低くなり、気軽に学習が可能になるという特徴も見られます。

そして、リアルタイム形式でなければ受講者が一斉にコンテンツを視聴する必要もないため、例えば移動中に電車の中でスマートフォンから受講する、といった活用方法も期待できます。

受講内容の定着率が上がりやすい

1つのコンテンツがコンパクトであるマイクロラーニングでは、基本的に1コンテンツでポイントを押さえた内容が盛り込まれています。そのため、1回の受講でわかりやすく、かつ簡潔でスマートなアプローチが得意という性質を持っています。

ただ分かりやすいだけではなく、短時間のなかで集中して知識や技術を習得できるため、内容の定着率を上げやすくなることが挙げられます。

また、対面講義では内容の復習をしたい場合はメモに書き留める、もしくは講師に質問するといった踏み込んだアクションが求められます。

一方で、マイクロラーニングでの受講はコンテンツのシークバーを操作するだけで好きなシーンから視聴を再開できるため、反復学習にも最適です。

コンテンツの作成や修正が容易である

コンテンツのボリュームが少ないという性質は、受講者側だけでなく提供側にも恩恵があります。コンスタントにコンテンツ作成が可能である点、さらに完成済みのコンテンツにおいても変更や調整がしやすいという点です。

受講するだけで数十分から1時間程度を必要とするボリュームということは、そのコンテンツの作成にはさらに多くの時間やコストを要するでしょう。

さらに、一度コンテンツが完成したら終わりというわけではなく、法律の改正や新たな技術の台頭などで、情報を修正しなければならない状況も少なくありません。

このような場合、情報を絞ってシンプルな構成に仕上げるマイクロラーニングの特性上、提供側にコンテンツの作成や管理の負担を増やすことなく継続できる環境の構築が可能になります。

3.マイクロラーニングと相性の良い研修内容

ここからは、マイクロラーニングを取り入れることで、より高い学習効果が期待できる研修内容や分野をご紹介します。

新入社員研修

1つ目は、ビジネスマナー講習などが代表的である、新入社員を対象とした研修です。

この段階ではまだ専門的な知識を深く掘り下げる必要がなく、どちらかというと体系的に分かりやすい周知が求められます。そのため、短時間で区切って要点を習得する、マイクロラーニングとの相性が良い分野であると言えます。

名刺交換や電話対応、来客対応などの方法は、文書や画像だけではイメージを掴むことが難しいため、ロールプレイング方式の動画コンテンツなどを組み込むとより効果的です。

各研修の補助

特に管理職や経営層のメンバーは、それぞれが独自のスケジュールを抱えていることが多く、一堂に会することが難しくなるケースも少なくありません。

そこで、よりコンパクトな内容で研修が済ませられるように、あらかじめマイクロラーニングを通して共通認識として周知させておく、という補助的な活用方法があります。

最低限のトピックや認識をあらかじめ各自のタイミングですり合わせておくことで、対面研修でのメリットが大きい内容にフォーカスを充てられます。

自社プロダクトや技術のインプット

自社の製品やサービスについて深く知っておくことは重要ですが、日々取り扱う内容が異なったり、入れ替わりが激しい業種だったりする場合は共有が難しい面もあります。そこで、これらの商品情報やノウハウをマイクロラーニングで学習することにより、基本的なステータス情報をより鮮度の良い内容で学習できるという強みがあります。

また、人材不足の影響によって専門的技術の継承が課題となっている場合でも、社内間で広く共有できることで属人化を防止できるという大きなメリットがあります。

語学研修

語学の習得によるレベルや使用用途は人によって異なりますが、効率よく習得するためには継続的な学習が必要不可欠です。「なかなか時間が取れなくて学習が進まない」という人であっても、1日数分程度であれば続ける気持ちが湧きやすくなるのではないでしょうか。

また、ひたすら暗記して覚える、という方法だけではなく、「リスニング」や「スピーキング」といった聞いたり話したりするアクションを加えたり、クイズ形式で出題するコンテンツを作ることも可能であるため、より効率的に語学の知識を吸収しやすくなります。

マイクロラーニングを運用するためのコツ

では、マイクロラーニングのメリットを最大限に生かせるコンテンツを提供するためには、どのような点を意識すると良いのでしょうか。

それぞれ独立したコンテンツにする

短時間で内容を把握し、定着率を上げるというメリットを生かすには、1つのコンテンツで完結する形が望ましいでしょう。

例えば連載形式になっている場合、途中から見始めてしまうと「どこから見たら良いんだろう」「前回は何を学んだっけ?」というように、内容が頭に入らず他のコンテンツを探す手間が発生することが考えられます。結果的に、短時間で学習できるというマイクロラーニングのメリットが生かせないという結果につながります。

1つのコンテンツ内に学習内容をぎゅっと詰め込むことで、復習や見直しのアクションも実行しやすくなり、定着率の向上につなげられるでしょう。

他の方法と併用する

マイクロラーニングによる学習方法は、「短時間で手軽に」という性質がもっとも大きなメリットになります。そのため裏を返すと、ボリュームの多い内容だったり複雑な内容であったりする情報を伝えるには不向きなプラットフォームと言えるでしょう。マイクロラーニングを導入したらそれだけで研修を進めるのではなく、状況によって学習方法を使い分けることをおすすめします。

例えば、実地研修が必要な内容であると判断した場合、マイクロラーニングの内容と異なる分野で研修を実施したり、ある程度ボリュームが必要な内容にはeラーニングでのコンテンツ提供をしてみたり、それぞれを組み合わせながら双方のメリットとデメリットを補いましょう。

マイクロラーニング用のツールを使用する

マイクロラーニング用のコンテンツを作成するためには、ある程度コンテンツ作成に慣れた人材とそれを作成および提供する環境構築が求められます。自社のみで環境構築を進める場合もありますが、もちろんそれだけコストや人員配置に負担がかかります。

自社での運用が困難という場合は、外部委託サービスを検討する方法が一般的です。ただコンテンツの作成を委託するだけでなく、各社員ごとの習熟度を管理する機能や、確認のためのテストを実行するオプション機能が備えられているサービスなどもあります。コストやオプションなどの内容を比較しながら、自社に最適なツールを導入してみましょう。

マイクロラーニング・ツールに求められる機能

マイクロラーニング・ツールは、マイクロラーニングを実施するためのプラットフォームを提供します。具体的には、どのような機能が備えられているのでしょうか。

マイクロラーニング・ツールの機能機能

マイクロラーニング・ツールの基本機能は、マイクロコンテンツを作成するための動画のアップロードといった従来のeラーニングやLMS(管理)ツールが提供してきた機能とほぼ同等のものになります。一方で、これに加えて講師と受講者のフラットな関係性のもとで継続的なフォローアップを実施したり、多数のマイクロコンテンツをタグ付けなどで整理したりといった従来のeラーニング/LMSツールにはない機能もマイクロラーニング・ツールには必要となります。

しかし、これらの付加的な機能は、IT製品/サービスとしては決して目新しいものではなく、すでに別のカテゴリーの製品サービスとして提供されているものも少なくありません。

マイクロラーニング・ツールに求められる機能3選

このような現状を前提として、マイクロラーニング・ツールに求められる付加的な機能を実現するIT製品・サービスの要素は、以下の3つが挙げられます。

  1. コラボレーション – 企業内SNSなどを利用し、教材の公開、共有を容易にし、社員同士でコミュニティを形成することで、スキルの自然発生的な拡散を可能にする
  2. ナレッジマネジメント – 従来の文書中心のコンテンツの分類・整理、タグ・索引検索によるナレッジ共有に加えて、動画コンテンツの分類・整理、タグ・索引検索を可能にし、マイクロコンテンツの体系化を可能にする
  3. タレントマネジメント – 社員のスキルや過去の経歴と連動し、適切な教材を選択、あるいはレコメンデーションを行うことを可能にする

これらの要素が含まれていることにより、マイクロラーニング・ツールは従来のeラーニング/LMSツールが提供してきた機能とは異なるカテゴリーのIT製品/サービスによって提供されてきた機能を統合したものといえます。

したがって、当初よりマイクロラーニングを目的として新規に開発されたサービスを導入する場合もありますが、従来のeラーニング/LMSツール・ベンダーが既存の製品/サービスに機能を追加することでマイクロラーニング・ツールとしての製品/サービスを提供しているケースも多く見られます。

マイクロラーニング・ツールは、このようなベンダーの出自により機能上の強み/弱みを分類し、この特性を理解することで、自社のニーズに合った製品/サービスの選択することが可能になります。

当初よりマイクロラーニングを目的として新規に開発されたツール

では、出自の異なる2つのツールにはそれぞれどのような特徴が備わっているのでしょうか。 まずマイクロラーニングを前提として開発されたツールは、マイクロラーニングに必要な複数の機能をバランスよく統合することで成立していることが大きな特徴です。

反対に、従来のeラーニング/LMSツールが提供している基本機能については、性能や使い勝手が劣る場合が多いということになります。

そのため、このカテゴリーの製品/サービスの利用が適切なのは、eラーニングや他の学習方法との併用が不要で、マイクロラーニングのみのツール運用で完結できる局面ということになります。

つまり、マイクロラーニングだけでなく、複合的なコンテンツ作成を検討している場合、機能不足と感じる面があらわれることもあるため、運用方法によっては適さないツールであると言えます。

従来のeラーニング/LMSツールにマイクロラーニング機能を付加したもの

一方で、これまでのeラーニングやLSM管理ツールの機能をベースとして、マイクロラーニングの機能を追加している立ち位置のツールも存在します。

従来のeラーニング/LMSツールを提供するベンダーの多くは、既存の製品/サービスにマイクロラーニングに必要な機能を追加してアップデートしたサービスを提供しています。

そのため、このカテゴリーのサービスの利用が適切なのは、マクロラーニングとeラーニングの併用が前提となるコンテンツ作成や実施を必要とする研修となります。

また、このカテゴリーの製品/サービスを利用すると、使用する教材コンテンツ、受講履歴や確認テストの結果データなどがマクロラーニングとeラーニングの双方において一元的に管理できるため、社員一人一人に対するきめ細かい研修管理を可能にします。

例えば、代表的なクラウドLMSのひとつである「AirCourse 」の場合、社員一人一人の受講履歴やレポートが見られるため、進捗管理やテスト結果などの把握が容易になります。

それぞれの習熟度によって内容を少しずつ変化させたり、アプローチ方法を変えたりといった修正も容易に行えるでしょう。

まとめ

マイクロラーニングを実施するためには、マイクロラーニング・ツールの導入を検討しているケースが多いのではないでしょうか。

今回ご紹介したように、どのようなツールを導入すべきなのか、という課題には、マイクロラーニングを活用した研修の運用方法によって最適なものを導入する必要があります。

クラウドサービスなのかオンプレミスサービスなのか、利用人数はどの程度なのか、など企業の利用状況やステータスによってもコストは大きく変化します。

また、もともとLSMツールを導入している場合は、マイクロラーニングの運用と連携できるかを確認する必要もあるでしょう。

マイクロラーニングを効果的に活用するためには、メリット・デメリットの双方を把握する必要があります。ただ研修を実施するだけではなく、どのような方法であれば効率的に人材育成が可能になるのかを考慮することが求められるでしょう。

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ABOUTこの記事をかいた人

ソフトウエアベンダーやコンサルティング会社で20年以上にわたりコンサルティング、企業経営に携わる。現在は、IT企業の新規事業立上げ、事業再編を支援するかたわら、データ分析、人材管理、LMSなどに関する講演・執筆活動を行っている。