eラーニングに活用できる「人材開発支援助成金」とは?条件や申請方法

昨今「リスキリング」という言葉が流行し、多くの企業で社内教育の充実や従業員のスキルアップを図る動きが加速しています。その中でも、個人のペースで進められるeラーニングを活用した学習・研修が主流になりつつあります。

しかし、eラーニング導入時にネックとなるのが導入にかかる費用です。月額200円/人などの安価なサービスもありますが、受講人数が多くなればなるほど、費用負担が重くなりがちです。

そこで活用したいのが厚生労働省が支給する「人材開発支援助成金」です。助成金を活用することで、自社負担のコストを抑えながら、従業員のスキルアップを実現できます。また、eラーニングに活用できる助成金・補助金は、他にも「IT導入補助金」や「事業外スキルアップ助成金」といった制度が活用でき、負担を減らすために併せて検討するとよいでしょう。

本記事では、「人材開発支援助成金」をはじめとしたeラーニングの導入に活用できる助成金の申請条件や申請方法、受給の流れなど詳しく解説していきます。助成金によって申請の条件やeラーニングシステムの選び方が異なるなど注意すべき点もあるので、ぜひ申請の手助けにされてください。

※本記事は2024年7月時点の情報です。
※記事内の表示価格は特に記載がない限り税込です。

【2024年8月】eラーニング導入に使える助成金・補助金

eラーニング導入に使える助成金・補助金には「人材開発支援助成金」、「IT導入補助金」、「事業外スキルアップ助成金(東京都)」の3つがあり、「人材開発支援助成金」は目的や内容によって3つのコースがあります。

▼eラーニングに活用できる主な3つの助成金

助成金の名称助成額補足
人材開発支援助成金人材育成支援コース45%~70%(割増支給条件あり)
人への投資促進コース中小企業:60%大企業:45%(割増支給条件あり)サブスクリプション型eラーニングで申請可能
事業展開等リスキリング支援コース中小企業:75%+賃金助成大企業:60%+賃金助成新たな事業展開をする場合など
IT導入補助金(通常枠)導入経費の2分の1以内登録されているツールである必要がある
事業外スキルアップ助成金(東京都)小規模企業者:3分の2中小企業:2分の1他の助成金との併用はできない

それぞれ助成額はもちろん、対象となるeラーニングの種類、受け取れる企業の要件も変わるため、正しく内容を理解することが大切です。なお、本記事では参考として、同額の料金でeラーニングを利用する場合の補助額のサンプルを示しております。

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人材開発支援助成金のうち、『人への投資促進コース』の支給要件に対応しており、利用料金最大60%の助成が受けられます。助成金を活用したeラーニングで、従業員のキャリア形成を促進しましょう。
*助成金申請受領をお約束するものではございません。

 

「人材開発支援助成金」の申請について

「人材開発支援助成金」は、厚生労働省が提供する助成金制度です。主に、企業が従業員の能力開発や人材育成を行う際の経費の一部を助成することで、労働者のスキルアップや職場の生産性向上を支援することを目的としています。

財源が雇用保険であることから、「雇用保険適用事業所であること」「労働者が雇用保険被保険者であること」が前提となり、企業規模によっても受給額が異なります。

人材開発支援助成金には以下の6つのコースがあり、事業内容や実施したい研修内容によってコースを選択できます。eラーニングの導入で申請できるのは「人材育成支援コース」「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」の3つです。

  1. 人材育成支援コース
  2. 教育訓練休暇等付与コース
  3. 人への投資促進コース
  4. 事業展開等リスキリングコース
  5. 建設労働者認定訓練コース
  6. 建設労働者技能実習コース

※厚生労働省の資料における「OFF-JT」の一部に、eラーニングが含まれています。
※本助成金における「OFF-JT」の定義は、事業活動と切り離して座学などにより行う訓練のことをいいます。

eラーニング導入に活用できる3つのコースについて、それぞれ申請条件や助成額、活用例を見ていきましょう。

(1)人材育成支援コース

人材開発支援助成金の「人材育成支援コース」は、企業が、自社が雇用する従業員に対して、「職務に関連した知識・技能」を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合に、その訓練費用などを助成する制度です。

人材育成支援コースの中には、OFF-JT(eラーニングが該当)の実施だけで助成されるものと、OJTと組み合わせて実施すると助成されるものがあります。

▼人材育成支援コースの3つの区分

① 人材育成訓練eラーニングの実施のみで助成を受けられる
② 認定実習併用職業訓eラーニング+OJTを組み合わせた実施が必要
③ 有期実習型訓練

以下では、eラーニングの実施だけで助成を受けられる「人材育成訓練」について解説します。

申請要件

「人材育成訓練」区分は以下の要件を定めており、これらを満たしていればeラーニング(OFF-JT)の実施のみで助成金の申請が可能です。

  • eラーニングや通信制など、座学(OFF-JT)で実施される訓練であること
  • 実際に学習する時間数が、10時間以上であること
  • 1訓練あたりの経費が分からない定額制サービスによるものではないこと
  • 広く国民の職業に必要な知識及び技能の習得を図ることを目的としたものであり、特定の事業主に対して提供することを目的としたものではないこと

注意すべきは、学習時間に関わらず、定額制のサブスクリプション型のeラーニングだと、対象にならない点です。訓練に使用するパソコンやソフトウェア等にかかる経費も、1訓練当たりの経費が不明確なため対象外となります。

また、特定の企業だけで活かせる限定的な講習(食品衛生責任者講習など)は対象外となります。

助成額

人材育成支援コースでは経費助成(経費に対する助成)のみ支給を受けることができます。

経費助成
(通常)
経費助成
(賃金要件等を満たす場合)
正社員45%60%
有期契約労働者60%75%
有期契約労働者→正規雇用労働者へ転換した場合70%100%

※経費助成には、部外講師への謝金・手当・旅費、施設・設備の借上費、教材の購入費、訓練コースの開発費が該当します
※賃金要件を満たした場合は、支給決定後に追加で支給申請が必要です

「賃金要件等を満たす場合」とは、下記の(1)(2)いずれかに該当している場合をいいます。

(1)訓練修了後に行う訓練受講者に係る賃金改定前後の賃金を比較して、5%以上上昇している場合
(2)資格等手当の支払を就業規則等に規定した上で、訓練修了後に訓練受講者に対して当該手当を支払い、かつ、当該手当の支払い前後の賃金を比較して3%以上上昇している場合

たとえば、従業員数100名の中小企業が「人材育成支援コース」の助成金を活用したケースを見てみましょう。

中小企業に該当する企業が、従業員数100名(いずれも正社員)に対して本助成金の対象となるeラーニングを受講させ、その受講料合計が501,600円(税込)だったとします。

その場合、助成額は受講料合計の45%となり、225,720円(=501,600円×45%)となります。

申請から支給決定までの流れ

人材育成支援コースの利用には、事前と終了後の2回、申請が必要になります。また、支給申請の提出後には審査が行われるため、支給までに時間がかかります。

  1. 開始1か月前までに訓練計画の提出
  2. 訓練の実施
  3. 訓練に係る費用の支払いを完了
  4. 終了日の翌日から2か月以内に支給申請書を提出
  5. 支給審査の上、支給・不支給を決定

(2)人への投資促進コース

人材開発支援助成金の「人への投資促進コース」は、従業員への投資を加速するために、人材育成支援コースを補うように設けられた制度です。

前述の「人材育成支援コース」では1訓練あたりの対象経費が明確でなければ助成金を受け取れず、定額制サービスは申請の対象外ですが、本コースの「サブスクリプション(定額制訓練)」区分で申請することで、定額受け放題研修サービス(定額制サービス)のeラーニングコンテンツ受講でも助成金を受け取ることが可能です。

▼人材開発支援助成金「人への投資促進コース」の5つの区分

(1)デジタル/成長分野(高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練)
(2)IT分野未経験(情報技術分野認定実習併用職業訓練)
(3)サブスクリプション(定額制訓練)※eラーニングはこちらで申請
(4)自発的能力開発(自発的職業能力開発訓練)
(5)教育訓練休暇(長期教育訓練休暇等制度)

申請要件

サブスクリプション型のeラーニングで助成を受ける場合、以下の条件をクリアする必要があります。

  • 定額受け放題研修サービス(サブスクリプション)を利用していること
  • 業務上の義務があり、労働時間に実施される訓練であること
  • 職務に関連した専門的な知識・技能の習得が目的であること
  • 上記に該当する受講時間が、合計10時間以上であること

「10時間以上の受講時間」の内容は、職務に関連した学習コンテンツでなければなりません。例えば定額制サービスに、職務に関連した学習コンテンツの他に趣味・教養コンテンツが含まれる場合、趣味・教養コンテンツの学習時間は除外して計算します。

助成額

「人への投資促進コース」で助成金を支給する場合の助成額は以下のとおりです。

▼助成率・助成額等

経費助成
(通常)
経費助成
(賃金要件等を満たす場合)
中小企業60%75%
大企業45%60%

※経費助成には、部外講師への謝金・手当・旅費、施設・設備の借上費、教材の購入費、訓練コースの開発費が該当します。
※賃金要件を満たした場合は、支給決定後に追加で支給申請が必要です。

「賃金要件等を満たす場合」とは、下記の(1)(2)いずれかに該当している場合をいいます。

(1)訓練修了後に行う訓練受講者に係る賃金改定前後の賃金を比較して5%以上上昇している場合
(2)資格等手当の支払を就業規則等に規定した上で、訓練修了後に訓練受講者に対して当該手当を支払い、かつ、当該手当の支払い前後の賃金を比較して3%以上上昇している場合

例えば、中小企業に該当する企業が、定額制eラーニングサービスを利用した場合を見てみましょう。

中小企業に該当する企業が、従業員数100名(正社員)に対して本助成金の対象となるeラーニングを受講させ、その受講料合計が501,600円(税込)だったとします。

「人への投資促進コース」の「定額制訓練」で申請・受給が認められた場合には、利用料の60%(中小企業の助成率)を経費助成として受けられるため、助成額は300,960円(=501,600円×60%)となります。

申請から支給決定までの流れ

「人への投資促進コース」の利用には、開始1ヶ月前までの訓練計画の提出と、訓練終了後の計2回、申請が必要になります。また、支給申請の提出後には審査が行われるため、支給までに時間がかかります。

  1. 開始1か月前までに訓練計画の提出
  2. 訓練の実施
  3. 訓練に係る費用の支払いを完了
  4. 終了日の翌日から2か月以内に支給申請書を提出
  5. 支給審査の上、支給・不支給を決定

eラーニングシステム『AirCourse』なら、
「人への投資促進コース」の支給要件に対応

AirCourse』は、950コース5,500本以上の動画研修が受け放題のサブスクリプション型eラーニングシステム(LMS)です。1,000人以上規模の上場企業から、スタートアップ、ベンチャー企業まで、これまで740社以上で利用されています。

定額制サービスも対象となる「人への投資促進コース」であれば、利用料に対する45〜60%の助成が受けられます。助成金を活用したeラーニングで、従業員のキャリア形成を促進しましょう。
*助成金申請受領をお約束するものではございません。

(3)事業展開等リスキリング支援コース

「事業展開等リスキリング支援コース」は、人材開発支援助成金の中でも、新規事業の立ち上げや新製品の製造など新たな事業展開をする場合の知識・技能習得に対して、その訓練経費や賃金の一部などを助成する制度です。

業務効率化や脱炭素化に取り組むために「デジタル化・DX化」や「グリーン化・カーボンニュートラル化」に対応した人材育成を目的とした場合も助成対象となります。

申請要件

人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」の助成を受けるためには、以下の訓練内容であることが必要です。

  • 実訓練時間数が10時間以上であること
  • OFF-JT(企業の事業活動と区別して行われる訓練)であること
  • 次の(1)または(2)のいずれか に当てはまる訓練であること
    • (1)事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識・技能の習得をさせるための訓練
    • (2)事業展開は行わないが、企業のデジタル化やDX化、グリーン・カーボンニュートラル化を進める場合に、必要となる専門的な知識・技能を習得させるための訓練

事業展開を行うにあたって助成金を受給する場合には、3年以内に実施予定のもの(または6か月以内に実施したもの)でなければなりません。

助成金申請時に事業展開についての計画書を提出する必要があるので、準備が必要です。

助成額

人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」で支給される助成額は「経費助成」と「賃金助成」があり、合算した金額が支給されます。

経費助成賃金助成
(1人1時間当たり)
中小企業受講料総額の75%1時間あたり960円/人
大企業受講料総額の60%1時間あたり480円/人

※経費助成とは、研修費用について助成される金額です。
※賃金助成とは、研修時間における賃金について助成される金額を指します。所定労働時間内の受講が支給対象となるため、所定労働時間外に受講した場合には支給されません。
※別途、経費助成の限度額(最大40万円)や、賃金助成の限度時間(1人1訓練あたり最大1,200時間)、1事業所が人材開発支援助成金から1年度に受給できる限度額(最大1億円)が設定されています。

eラーニングを受講して、人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」で助成金の支給を受ける場合を見てみましょう。

例えば、中小企業に該当する企業が、従業員数100名に対して、本助成金の対象となるeラーニングを1人16時間受講させた場合を考えます。

受講料の合計が501,600円(税込)だった場合、

(1)経費助成=501,600円×75%=376,200円

(2)賃金助成=960円×16時間×100人=1,536,000円

総支給額は、(1)376,200円+(2)1,536,000円=1,912,200円(約191万円)となります。

申請から支給決定までの流れ

事業展開等リスキリング支援コースの利用には、事前と終了後の2回、申請が必要になります。また、支給申請の提出後には審査が行われるため、支給までに時間がかかります。

  1. 開始1か月前までに制度導入・適用計画の提出
  2. 訓練の実施
  3. 訓練に係る費用の支払いを完了
  4. 終了日の翌日から2か月以内に支給申請書を提出
  5. 支給審査の上、支給・不支給を決定

「IT導入補助金」の申請について

「人材開発支援助成金」の他にも、eラーニングを活用した助成金・補助金の制度があります。活用できる条件や金額は異なりますが、「人材開発支援助成金」と同時に支給を検討したい制度についても解説していきます。

「IT導入補助金」は、中小企業や小規模な事業者の労働生産性の向上を目的(※)として、ITツールの導入にかかった経費などを支援する補助金です。

※基本的には小規模や中規模な企業が対象ですが、大企業が補助を受けられる項目も一部存在します。

「IT導入補助金」には5つの枠がありますが、eラーニング受講費用に対する助成を受ける場合には、「通常枠」を使います。

5つの枠概要
通常枠自社の課題にあったITツールを導入し、業務効率化・売上アップをサポート
インボイス枠(インボイス対応類型)インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、PC・ハードウェア等を導入し労働生産性の向上をサポート
インボイス枠(電子取引類型)サイバー攻撃の増加に伴う潜在的なリスクに対処するため、サイバーインシデントに関する様々なリスク低減策を支援
セキュリティ対策推進枠サイバー攻撃の増加に伴う潜在的なリスクに対処するため、サイバーインシデントに関する様々なリスク低減策を支援
複数社連携IT導入枠業務上つながりのある「サプライチェーン」や、特定の商圏で事業を営む「商業集積地」に属する複数の中小企業・小規模事業者のみなさまが連携してITツールを導入し、生産性の向上を図る取り組みを支援

対象のeラーニングシステム

eラーニング受講費にかかる経費について、この「IT導入補助金」で補助金を支給するためには、eラーニングシステムが補助金の対象となるITツールに指定されていなければなりません。そのため、まずは利用予定のシステムがIT導入補助金の対象ツールなのかを事前に確認しましょう。対象ツールはIT導入補助金公式サイト内で確認できます。

対象企業

IT導入補助金の対象となる「中小企業」または「小規模事業者」は、業種分類ごとに資本金・従業員数の定義が決められています。

例えば、製造業・建設業・運輸業の場合は、資本金3億円以下または従業員数300人以下の企業が中小企業に該当します。

▼中小企業の一例

業種分類・組織形態資本金常時使用する従業員数
製造業・建設業・運輸業3億円300人
卸売業1億円100人
サービス業5,000万円100人
小売業5,000万円50人
旅館業5,000万円200人

※資本金もしくは従業員のうちどちらか一方の条件を満たせば補助金対象企業となります。

▼小規模事業者の一例

業種・組織形態常時使用する従業員数
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

ここでは一部の業種分類のみ掲載したので、詳しい定義については、「IT導入補助金2024」公式サイト内の「補助対象者」をご覧ください。

申請要件

IT導入補助金の支給を受けるためには、次のすべての要件が必要となります。

  • 「gBizIDプライム」のアカウントを取得していること
  • 「SECURITY ACTION宣言」を実施していること
  • 「みらデジ経営チェック」を実施していること
  • IT導入補助金が定める「中小企業」または「小規模事業者」に該当していること(※)

※インボイス枠(電子取引類型)は、中小企業・小規模事業者と受発注の取引を行っている事業者が対象となり、大企業も対象に含まれます

gBizIDプライム」とは、法人・個人事業主向け共通認証システムの3種類のアカウントのうち、書類郵送申請が必要な最上位アカウントです。書類郵送申請を行ったあとに審査があり、アカウント発行まで約1週間かかります。

「SECURITY ACTION宣言」は、企業が自ら情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。SECURITY ACTION公式サイトから取組目標についての自己宣言を決めて申し込む必要があり、自己宣言ID取得まで即日〜1週間程度かかります。

「みらデジ経営チェック」は「みらデジポータルサイト」から新規利用登録を行うことで利用でき、同地域・同業種と比較した場合の自社の課題やデジタル化状況、最適な解決方法を知ることができます。利用にはgBizIDの連携が必要となり、実施有無はgBizIDアカウントに紐づけられます。

これらの登録が完了後、IT導入補助金の申請が可能となります。

申請から支給決定までの流れ

IT導入補助金の利用には、「gBizIDプライム」アカウントの取得、「SECURITY ACTION」宣言・「みらデジ経営チェック」を実施し、交付申請を行います。支給申請の提出後に審査が行われるため、支給までに時間がかかります。

  1. 「gBizIDプライム」アカウントの取得
  2. 「SECURITY ACTION」宣言の実施
  3. 「みらデジ経営チェック」の実施
  4. IT導入支援事業者とともに交付申請
  5. 交付審査の上、交付を決定
  6. ITツールの発注・契約・支払い
  7. 事業実績報告の提出
  8. 補助金交付
  9. 事業実施効果報告

補助額

IT導入補助金(通常枠)の補助率は、導入経費の2分の1以内となります。プロセス数の要件により補助額の上限が変わります。

  • 1プロセス以上の場合で、5万円以上150万円未満
  • 4プロセス以上の場合で、150万円以上450万円未満

プロセスとは、業務工程や業務種別のことで、以下7つの種類に分かれています。

(1)顧客対応・販売支援
(2)決済・債権債務・資金回収管理
(3)供給・在庫・物流
(4)会計・財務・経営
(5)総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム
(6)その他業務固有のプロセス
(7)汎用・自動化・分析ツール(特定の業務プロセスに付随しないソフトウェア)

補助対象となるのは、ソフトウエア購入費やクラウド利用料(最大2年分)の他、機能拡張やデータ連携、セキュリティなどのオプション費用、導入コンサルティングや導入設定、導入研修、保守サポートの費用も含まれます。

中小企業に該当する企業が、従業員数100名に対してeラーニングを受講させ、その受講料合計が501,600円(税込)だった場合を考えてみましょう。

この場合、受講費合計である501,600円の2分の1にあたる250,800円が補助額として支給されます。

(東京のみ)事業外スキルアップ助成金

東京都が中小企業や小規模企業者を対象に独自に支給している「事業外スキルアップ助成金」も、eラーニング受講費用などに活用できます。
助成が決定すれば「助成対象経費の半分、または3分の2」の金額を受け取れるため、上手に活用したい助成金です。

都内に本社または主たる事業所がある企業は、以下の申請要件や支給要件などを確認してください。

対象企業

東京都の「事業外スキルアップ助成金」の申請要件は以下です。

  • 都内に本社または主たる事業所(支店・営業所など)があること
  • 都税の未納付がないこと
  • 過去5年間に重大な法令違反等がないこと
  • 暴力団に該当しないこと
  • 中小企業または小規模企業者に該当すること など

申請要件にある「中小企業」「小規模企業者」の定義は下記の通りで、これらに加えて、「みなし大企業」でないことが条件となります。

▼中小企業:資本金の額と従業員数のどちらかを満たす企業(いずれか一方で可)

業種分類資本金の額(または出資総額)常時使用する従業員数
小売業・飲食業5,000万円以下50人以下
サービス業100人以下
卸売業1億円以下
その他の業種3億円以下300人以下

▼小規模企業者

業種分類常時使用する従業員数
小売業・飲食業5人以下
サービス業
卸売業
その他の業種20人以下

みなし大企業とは、次のいずれかに該当する場合をいいます。

・大企業(中小企業者以外の者)が単独で発行済株式総数又は出資総額の2分の1以上を所有又は出資している。
・大企業が複数で発行済株式総数又は出資総額の3分の2以上を所有又は出資している。
・役員総数の2分の1以上を大企業の役員又は職員が兼務している。
・その他大企業が実質的に経営を支配する力を有していると考えられる。

引用元:事業外スキルアップ助成金 | 東京しごと財団 雇用環境整備課

助成対象となる研修の要件

東京都の「事業外スキルアップ助成金」の助成対象となるeラーニング研修は、以下の要件を満たしている必要があります。

  • 受講にかかわる経費が「受講者1人1研修単位」であらかじめ定められていること
  • 受講者の職務に必要な専門的な技能・知識の習得・向上、専門的な資格の取得を目的とする研修であること
  • 通常の業務と区別できるOFF-JTであること
  • 研修に要する経費の全額を、申請企業などが負担していること
  • 業務命令として労働時間内に研修を行い、所定の賃金を支払っていること
  • 助成を受けようとする研修について国または地方公共団体から助成を受けておらず、今後受ける予定もないこと
  • eラーニングの場合、標準学習時間数が3時間以上10時間未満であること

注意点としては、広く公開されている研修でなければならず、従業員向けに作られた研修は対象外となる点です。また、他の助成金を受け取っている場合には、重複して受け取ることはできません。

助成額・助成限度額

東京都「事業外スキルアップ助成金」の助成額は、区分によって以下のように定められています。

▼東京都「事業外スキルアップ助成金」の助成額

申請企業の区分助成額
小規模企業者助成対象経費の3分の2
(助成対象受講者1人1研修につき、上限25,000円)
中小企業助成対象経費の2分の1
(助成対象受講者1人1研修につき、上限25,000円)
非正規雇用労働者受講加算(※)助成対象経費の3分の2
(助成対象受講者1人1研修につき、上限25,000円)

※中小企業の中で非正規雇用労働者が助成対象受講者全体の2割以上を占める場合には「非正規雇用労働者受講加算」が適用されます

なお、助成限度額は、事業外スキルアップ助成金と併設されている「事業内スキルアップ助成金」と合わせて1申請企業あたり150万円が上限ですが、上限額に達するまで複数回の申請が可能となっています。

例えば、中小企業(業種分類:その他)に該当する企業を想定します。

この企業が、従業員数100名に対して、本助成金対象となるeラーニング研修を1人8時間受講させ、受講にかかる費用が合計456,000円(税別)だった場合、助成額は、228,000円(=456,000円×50%)となります。(1人あたり2,280円換算)

申請から支給決定までの流れ

事業外スキルアップ助成金の利用には、事前と終了後の2回、申請が必要になります。また、支給申請の提出後には審査が行われるため、支給までに時間がかかります。

  1. 開始1か月前までに交付申請書の提出
  2. 研修の実施
  3. 訓練に係る費用の支払いを完了
  4. 終了日後2か月以内に実績報告書を提出
  5. 支給審査の上、支給・不支給を決定
  6. 助成金請求

助成金・補助金申請の注意点

本記事で述べた助成金・補助金を活用することで研修・訓練にかかる費用の負担を軽減させることができます。

しかしながら、助成金を申請する上ではいくつかの注意点が存在します。要件を満たし助成金を受け取るためにも、注意点について事前に理解しておきましょう。

事業規模や雇用形態によって支給額が変動する

同じ助成金の同じコースであっても、事業規模や従業員の雇用形態によって助成される金額や割合が変動します。

例えば、人材開発支援助成金の人材育成支援コースを活用して、eラーニング受講費用に対する助成を受ける場合の経費助成割合は、「正社員なら45%」「有期契約労働者なら60%」「有期契約から正規雇用に転換した場合は70%」と、雇用形態によって細かく定められています。

また、人材開発支援助成金「人への投資促進コース」を活用する場合の経費助成は、中小企業なら60%、大企業なら45%となっており、さらに細かい賃金要件を満たす場合は15%上乗せとなっています。

状況によって支給される割合や支給金額が変動するため、「いくら助成金がもらえるのか」は条件に照らし合わせた判断が必要です。

自力での申請には労力がかかる

人材開発支援助成金のコースごとの支給内容の違いや要件、支給金額などは複雑な内容で、企業が自力で申請するには非常に大きな労力がかかります。

「6つのコースがあるうち、どのコースを選択すればいいのか?」「どの区分に該当するのか?」「対象となる訓練はどこまでを含めるのか?」など判断が難しいポイントがたくさんあります。

さらに、申請時に作成して提出しなければならない「訓練計画」の書き方も難解であり、申請書類を作成するだけでも大変なリソースを割くことになりかねません。

間違いのないよう申請するには人材開発支援助成金についてのPDF資料を読み込む必要がありますが、この資料は全44ページと膨大です。申請にあたって専任の担当者をつけて対応するか、助成金に強い社会保険労務士のサポートを受けることをおすすめします。

100%支給されるとは限らない

正しい内容で申請をしても、必ず助成金が支給されるとは限らない点に注意が必要です。

人材開発支援助成金の場合、申請後に訓練を実施し、訓練が終了した後に「支給申請書」を提出し、その段階で初めて支給審査が行われ、審査を経て「助成金が支給されるか、不支給となるか」が決定されます。

書類の不備や支給要件の見逃しがある場合、支給されないケースもあるため、申請には細心の注意が必要です。少しでもリスクを抑えたい場合は、社会保険労務士のサポートを受けることをおすすめします。

助成金活用を考えたeラーニングシステムを選ぶポイント

助成金の要件を満たすためにeラーニングシステムの選定は重要です。助成金活用を考えたシステムの選び方について解説します。

eラーニングシステムの要件を正しく把握する

まずは支給を受けたい助成金・補助金に対して、どのようなeラーニングシステムの要件が設定されているかを把握することが大切です。要件を満たさないeラーニングシステムを選んでしまうと、当然ながら助成金を1円も受け取ることができません。

例えば「IT導入補助金」の支給を受けるためには、補助金の対象となるITツールの中からeラーニングシステムを選ぶ必要があります。リストに載っていないツールを使って申請しても、不支給となります。

「人材開発支援助成金」であれば対象ツールの指定がなくより多くのeラーニングシステムが適用要件をクリアしていますが、「定額制サービスによるものではない」といった条件もあるため注意が必要です。
導入したいeラーニングシステムが助成金の対象になるかどうか判断が難しい場合には、導入前にベンダー(システム提供会社)に問い合わせてみるのが確実です。

eラーニングシステム『AirCourse』なら、
「人への投資促進コース」の支給要件に対応

AirCourse』は、950コース5,500本以上の動画研修が受け放題のサブスクリプション型eラーニングシステム(LMS)です。1,000人以上規模の上場企業から、スタートアップ、ベンチャー企業まで、これまで740社以上で利用されています。

定額制サービスも対象となる「人への投資促進コース」であれば、利用料に対する45〜60%の助成が受けられます。助成金を活用したeラーニングで、従業員のキャリア形成を促進しましょう。
*助成金申請受領をお約束するものではございません。

導入形態による価格の違いを把握しておく

もう一つ、eラーニングシステムを比較する際には、導入形態(オンプレミス型か、クラウド型か)による価格の違いを把握しておくことも大切です。それぞれ初期費用や月額費用が異なり、助成額も変わってくるためです。

オンプレミス型クラウド型
概要自社サーバーでコンテンツを管理・運用する形態インターネット上のサービスを利用する形態(現在の主流)
学習場所自社内のみネット環境があればどこでもできる
初期費用100万円〜500万円程度0円〜20万円程度
維持費用不定期で3万円〜10万円程度のメンテナンス費用がかかる1ユーザーあたり月200円〜月1,000円程度

以前は自社サーバーで運用する「オンプレミス型」のeラーニングが一般的でしたが、現在では安価に導入できる「クラウド型」が主流となっています。

いくら助成金が適用できても高額なeラーニングシステムを選んでしまうと、高くつく場合もあります。また、自社負担で全額支払った後に、助成額があとから受給される仕組みのため、先立つお金も必要です。
助成金の割合や金額だけでなく、eラーニングシステムの価格がいくらで、助成金を活用すると「実質いくらになるのか」を事前に把握しておくことが大切です。

よくある質問

Q. 人材開発支援助成金の上限額はいくらですか?

eラーニングを実施した場合の人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の上限額は以下のように定められています。

<標準学習時間が設定されている場合>

eラーニングの標準学習時間が設定されている場合の経費助成の限度額(1人あたり)は、企業規模と実学習時間に応じて決まります。

実学習時間が
10時間以上100時間未満
実学習時間が
100時間以上200時間未満
実学習時間が
200時間以上
中小企業15万円30万円50万円
大企業10万円20万円30万円

<標準学習時間の設定がなく、標準学習期間のみ設定されている場合>

eラーニングシステムを使った学習で、標準学習期間のみ設定されている場合には、上記の表の「10時間以上100時間未満」の区分が適用されます。

つまり、中小企業の場合の経費助成の上限額は30万円(1人あたり)、大企業の場合は20万円(1人あたり)となります。

Q. eラーニングと研修の違いは何ですか?

eラーニングとは、パソコンやタブレットなど情報通信技術を活用した遠隔講習のことであり、訓練の受講管理のためのシステム(LMS)などにより、訓練の進捗管理が行えるものをいいます。

eラーニングは、事業活動と切り離して座学などで行う訓練「OFF-JT(OFF the Job Training)」の一部に該当します。

一方で「研修」はとても広い意味を持つ言葉であり、eラーニングのような「OFF-JT」と、「OJT(On the Job Training)」も両方含んだものをいいます。

eラーニングが助成金の対象になるかどうかは、各助成金や補助金の制度、コース概要によって異なるので、制度資料をしっかり確認することをおすすめします。

Q. 助成金は必ず受け取れますか?

支給対象は厚生労働省が定める要件が細かく定められています。

提出書類の不備があると受給できませんので、対象となる事業主、労働者、訓練内容、経費について、詳しくは厚生労働省「人材開発支援助成金」の案内ページをご覧ください。

まとめ

本記事では、eラーニングの受講費用に活用できる「人材開発支援助成金」について詳しく解説しました。eラーニング導入時に活用できる「人材開発支援助成金」の3つのコースそれぞれの助成金額や受給要件、活用例をイメージできたのではないでしょうか。

今回説明した通り、eラーニングに活用できる助成金・補助金は、「人材開発支援助成金」のほかに「IT導入補助金」「事業外スキルアップ助成金(東京都)」もあります。

各制度によって手続きの煩雑さや要件の厳しさなども異なるため、どの助成金を申請するか慎重に検討することをおすすめします。

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*助成金申請受領をお約束するものではございません。