ラーニングエクスペリエンスデザインという言葉がよく聞かれるようになりました。人材不足が問題となる一方で、企業が成長していくには人材育成および社員教育の重要性が見直されています。さらにコロナ禍以降オンライン化が進み、一人ひとりの社員の質がより重視される時代といえます。
そこで本記事では、ラーニングエクスペリエンスデザインの手順や具体例を知ることで、企業全体の成果を高めていく方法について紹介します。
目次
ラーニングエクスペリエンスデザインとは
ラーニングエクスペリエンスデザイン(Learning eXperience Desgin)とは「LDX」と略され、人材育成、社員教育の面で注目されている言葉です。「学習体験をデザインする」という意味を持ち、学習者が学習成果を挙げられるように学習体験のプロセスを作り上げることを意味します。
特徴として、学習者を中心に据えて考えること、目標・成果志向で考えることが注目すべき点といえます。
そもそもラーニングエクスペリエンスとは
そもそも「ラーニングエクスペリエンス」とは、「学習体験」という意味です。単なる学習だけではなく、ラーニングエクスペリエンス(学習体験)を重要視するのが特徴です。
企業においては、従業員が体験を通して学ぶことを意味します。いわゆる座学での研修だけでなく、様々な学習体験を通して一人一人が成長することを考えるものです。
ラーニングエクスペリエンスプラットフォームとの違い
類似した言葉として「ラーニングエクスペリエンスプラットフォーム(Learning eXperience Platform)」が存在しています。「LXP」と略されますが、ラーニングエクスペリエンスデザインとは内容が異なります。
「ラーニングエクスペリエンスデザイン(Learning eXperience Desgin)」は、人材研修関連で使われることが多く、「ラーニングエクスペリエンスプラットフォーム(Learning eXperience Platform)」はシステム関係で使われるのが違いです。
具体的には「ラーニングエクスペリエンスデザイン」は、何ができるのか、どんなことが行えるのかといった目標に向かって、どういう学習体験をデザインしていくべきかを考えます。一方「ラーニングエクスペリエンスプラットフォーム」は、企業の従業員に対してキャリアやスキルを磨くための様々な学習の機会などを提供していくシステムを考えます。長期的な視点があるのが特徴といえるでしょう。
ラーニングエクスペリエンスデザインの目的
ラーニングエクスペリエンスデザインの目的について紹介します。目標や現場での成果を挙げるために、学習者一人一人が体験から学べるようにデザインするのが目的です。
座学の集合型研修だけでなく、従業員一人ひとりの成長を目的として作られているのが特徴と言えます。それぞれの成長や成果を目標に、それを達成するための学習体験を組み合わせながらデザインすることを目的としています。
ラーニングエクスペリエンスデザインの手順
ラーニングエクスペリエンスデザインを行うための具体的な手順を紹介します。次の手順でデザインしていくことで、失敗のリスクを下げつつ成果を達成できるでしょう。
1.学習体験の目標をたてる
まず、学習者、従業員一人一人の学習体験の目標をたてることが大切です。何らかの課題に対して学習体験の目標をたてていきます。まずはどんな課題がそれぞれにあるのかを考えることが大切です。
企業側としてもどのように従業員一人ひとりになってほしいのか、課題を考えることが必要です。
2.学習対象者を調査する
学習対象者がどんな立場でどんな問題を抱えているのかなどを調査することも大切です。どのような目標、成果を掲げているのかは、年代や経歴、職業、スキルなどによっても変わります。それらを調査しながら行います。
3.学習体験を具体的にデザインする
次に具体的に学習対象者が成果を達成するために、必要な体験を設計していきます。課題を解決するために、様々な体験を入れるように考えることが大切です。
学習体験のコンセプトを決めて、様々な研修や学習手法、学習ツールなどを、組み合わせてデザインしていきます。例えば集合型研修、オンライン研修などといった研修やeラーニングなど学習ツールを組み込んでいきます。
4.学習体験を試作する
学習体験を一度デザインしてプロトタイプを作ったら、実際に試作します。様々な学習体験プログラムを組み合わせた場合、試作の上でテストを重ねて改善していくことが必要です。
5.学習体験を実際にテストする
実際にその学習体験をテストし、個人が成果を挙げることができるかを検証することも大切です。問題がある学習体験プログラムがないことや、取り組みにくいものや成果が挙がらないものがないのかを検証します。
6.完成したものを育成施策として採用する
こうした手順を踏むことで、実際に成果に繋がるような学習体験を、人材育成、社員教育の施策として採用することが可能です。効果的なラーニングエクスペリエンスデザインをいろいろと考えていくと良いでしょう。
ラーニングエクスペリエンスの構成要素
ラーニングエクスペリエンスの構成要素を紹介します。これらの様々な学習体験を組み合わせながら、効果のあるデザインをして考えていくと良いでしょう。そのために、それぞれの学習体験の特徴を知っておくのがおすすめです。
集合型研修(座学研修)
座学で行われる集合型研修はこれまでも多く行われてきたものです。オンライン化も進んでいますので、座学を行う場合は、より個別な目標や課題に対する研修を行っていくことを考えることも必要です。
オンライン研修
オンライン研修では、ZoomやTeamsなどのWeb会議システムを通じて、様々な研修機会を提供できるようになりましたので、必要に応じて多くの学習体験の機会を提供できるでしょう。
eラーニング
多く行われるのが危機管理、セキュリティに関するeラーニングです。その他、テレワークによって、様々な人材育成、社員教育がeラーニングで盛んに行われるようになっています。いつでもどこでも受けられるのがメリットですので、積極的に組み込むと良いでしょう。
eラーニングの活用方法について、さらに詳細を知りたい方は以下の資料をご確認ください。
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OJT
主に新人を対象とするOJTは、同じ部署の上司や先輩から実務の知識やスキルを学ぶことができるため、テレワークの企業などでは特におすすめです。直接、実践に役立つ情報が得られて有益な学習体験となります。
社内報
テレワークではコミュニケーション不足となりがちですので、社内報では、掲示板的な内容を提示していくことで情報を共有していくのも良い方法です。従業員の知識やスキルアップのための情報を共有し、意見交換できるようにするのもおすすめです。
ラーニングエクスペリエンスデザインの具体例
ラーニングエクスペリエンスデザインでは、これまでご紹介した様々な学習体験を組み合わせるのが効果的です。どのような組み合わせが行われているのか、多く活用されている具体例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
集合型研修+eラーニング
これまで実施していた集合型研修に追加するかたちでeラーニングを導入すれば良いため、集合型研修とeラーニングは組み合わせやすくおすすめです。eラーニングは、運営側も受講側もあまり負担にならずに取り入れやすい学習体験として組み込みやすい点もメリットといえます。
集合型研修をした後にeラーニングでフォロー学習を行うことで、従業員一人ひとりへの研修成果の確認が可能です。また、先にeラーニングで予習してから集合型研修をすることで、研修の習得度向上を図れます。
オンライン研修+eラーニング
オンライン研修+eラーニングでは、すべての研修がオンラインで完結するのがメリットです。いつでもどこでもオンラインで研修が受けられ、受講率の向上を見込めます。
またオンライン研修にすることで、会場の準備も必要なくなり、気軽に行えるようになります。講師も社内外問わずに依頼できるメリットもあります。
集合型研修+OJT
集合型研修+OJTでは、集合型研修で全体的な研修を行い、ある程度の知識を習得した上でOJTに望むため、OJTでより実践的な知識やスキルを身につけることが可能です。
また、個別の目的がある場合、例えばキャンペーンや企画について細かくフォローしたい場合などに、この組み合わせにするのも良いでしょう。
オンライン研修+OJT
オンライン研修+OJTでは、オンライン研修で伝わらない実務的なことをOJTで個別に伝えていくことができます。OJTを実施する前に体系的な知識を身につけたいが、集合型研修の開催は業務上で困難といった場合には有効な組み合わせです。
OJT+eラーニング
OJTを効果的なものにするために、eラーニングを活用するのも良い方法です。eラーニングは予習・復習を行いやすいため、OJTでの学びをサポートする用途でも活用可能です。
OJTの内容をまとめた動画マニュアルを作成・配信しておけば、いつでも見られます。業務上で迷いや不明点が発生した場合などに、いつでも自ら確認できるメリットは大きいでしょう。
まとめ
ラーニングエクスペリエンスデザインについて、人材育成および社員教育に大切な学習体験のデザイン方法や具体例を紹介しました。
集合型研修だけでなく、様々な学習体験を組み合わせることが人材育成および社員教育にとって有効です。特に、テレワークの普及によりオンラインでの仕事が増えたことを受け、研修方法も見直していく必要があるでしょう。
ラーニングエクスペリエンスデザインを実践し、eラーニングやオンライン研修などを積極的に取り入れることで、従業員一人ひとりの目標達成、ひいては企業全体の成果向上につなげていくことが大切です。