健康経営の取り組み|基本ステップと具体的な企業事例、成功メソッドを解説

健康経営の取り組みを始めようと考えるものの「どのような手順で行えばよいか分からない」「どうすれば取り組みが成功するのか」といった不安や疑問をお持ちの企業様も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、健康経営の取り組みについて、基本ステップから成功に導くためのメソッド、具体的な企業事例について解説します。

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目次

健康経営の取り組みに必要な基本情報

健康経営の取り組みについて理解する前に、おさえておくべき基本情報をまとめます。

そもそも健康経営とは

経済産業省の定義に基づくと、健康経営とは「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」です。より分かりやすくするならば「病気になるリスクを下げつつ、元気で生産性が高い組織をつくる経営」と表現できます。

従業員の心身における健康状態を配慮し、職場環境や労働条件等の改善に務めれば、組織全体のパフォーマンス向上ひいては業績向上につながるというスタンスです。

元々は1992年にアメリカの心理学者ロバート・H・ローゼンが自らの著書にて提唱した概念が起源です。日本では2010年代から広まりをみせています。

健康経営のメリット

健康経営の取り組みを通して従業員の心身における健康が増進されることで、主に以下4つのメリットを得られます。

生産性の向上

従業員の心身における健康が増進されれば労働意欲が高まり、積極的に業務を行うことで生産性の向上につながります。

企業イメージの向上

健康経営に取り組むことで、企業イメージを向上することが可能です。「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」の認定を取得できれば、客観的な証明を得ることでより信頼度が高まり、さらなるイメージ向上につながります。結果として、売上アップや採用での応募数アップなども期待できるでしょう。

離職リスクの低減

健康経営により、従業員の心身における健康状態が高まれば、離職リスクは低減します。心身の健康不良を理由に退職まで至ってしまうケースを防ぐことが可能です。また健康経営に取り組む企業姿勢が社内からも評価され、従業員のエンゲージメント向上も期待できます。

保険料負担の低減

健康経営によって「従業員が病院に頼らなくて済む状態」をつくることができれば、企業の保険料負担の低減につながります。

健康経営のメリットについての詳細は、以下の記事をご覧ください
健康経営のメリットは?デメリットや実現すべき企業の特徴を解説

健康経営の取り組み|基本ステップ

健康経営の取り組みについて、基本的なステップを紹介します。自社で具体的な施策をスタートさせる際の参考としてください。

1. 目的などの基本情報をまとめる

まずは、自社が「なぜ健康経営に取り組むのか」などの基本情報を整理しましょう。具体的には以下を明確にしてまとめておくことで、社内への実施表明をスムーズに行えます。

背景:なぜ自社が健康経営に取り組むのか
目的:何を目指して健康経営に取り組むのか
体制:プロジェクトチーム等の発足について
予定:今後どのように展開・推進をしていくのか

また体制や予定については、可能な限り詳細を明らかにしておくのが理想ですが、この時点で詳細まで決定しようとすると「なかなかスタートを切れない」となりがちです。

体制については「どの部署が主体となるか、プロジェクトチーム発足をするか否か」まで、予定についても「例えばこうした取り組みを実施予定」を提示できる程度で十分でしょう。

2. 健康経営の実施を表明する

次に社内へ「健康経営に取り組むこと」を表明します。表明する際には、1でまとめた基本情報をあわせて提示することで、社内の理解と協力を得やすくなります。

表明は全体会議や全体朝礼など全従業員が一堂に会する場で、社長など組織のトップによる宣言を行うことが望ましいでしょう。取り組みへの本気度や真剣さがより伝わりやすくなります。その直後にも、社内報や社内告知などを介してあらためて案内をして事前の周知を徹底します。

3. 取り組み体制を整える

健康経営の取り組みを展開・推進するための体制を整えます。具体的には、プロジェクトチームの発足や、人事部や総務部など特定の部署を主担当に任命するなど、取り組み主体を確立します。

主担当を任命して「健康経営アドバイザー」を取得させるのも有効です。従業員による取得が難しい場合は、外部から招く手段もあります。なお外部から招く場合は、健康経営アドバイザーの上位資格にあたる「健康経営エキスパートアドバイザー」への依頼をおすすめします。

理由としては、健康経営エキスパートアドバイザーは、中小企業診断士や管理栄養士など、経営・労務・医療・保健に関する資格を併せて有しており、より多角的にアドバイスを受けることが可能なためです。

また健康経営は全社的な取り組みとなるため、全体会議や役員会など全社に影響を及ぼす場でも議題として取り上げ、進捗管理や軌道修正を行える体制を整えておきましょう。

4. 課題を分析して明確化する

具体的に自社が取り組むべき課題は何かを、分析して明確化します。分析対象としては、健康診断やストレスチェックの結果、残業時間(労働時間)、休職者数や離職者数の推移などです。

各データを集めて、自社が優先して取り組むべき課題を特定しましょう。詳細に分析した結果、例えば「企画部の残業時間が極端に多い」「営業部の健康診断受診率が相対的に低い」のような特定の部署に顕著に表れている課題を発見できるケースもあります。

5. 計画を作成・実行する

4で明らかになった課題に対して、具体的な取り組みを計画・実行します。

健康経営の取り組みは、例えばメタボ対策における体重の推移や、体調不良による欠勤の低減など短期間での効果測定が困難なものが多いのが実状です。ゆえに半年単位や年単位での長期にわたる計画が必要となるケースもある点は理解しておきましょう。

そこで、先に健康改善の啓蒙ポスター掲示のような「少ない負担で可能な取り組み」をスタートさせ、健康経営の基礎固めを同時に進めていくのがおすすめです。浸透と定着に時間がかかりがちという健康経営のデメリットへの対処にもなります。

6. 取り組みを評価・改善する

健康経営の取り組みが実行されたら、定期的に評価および改善を行いましょう。5でも述べた通り、健康経営の取り組みは比較的長期に及ぶものが多いため、定期的な評価と改善が必要です。1ヶ月に一度など定期的に評価を行うタイミングを決めておき、最終ゴールから逆算して必要であればテコ入れや改善を行いましょう。

また途中経過を社内に共有することで、啓蒙および参画意識の向上につながります。

健康経営の取り組みを成功させる「CHANGE」メソッド

健康経営の取り組みにおける重要ポイントをまとめた「CHANGE」メソッドを紹介します。先の基本ステップと併せて、自社の経営の取り組みを成功に導きましょう。なお「CHANGE」は以下の6項目の頭文字を表しています。

Concept:コンセプトを定める
Hold:目標や体制を経営と握る
Analyze:現状を多角的に分析する
Network:自社の枠を超えた協力体制ネットワークをつくる
Goal:細かく目標値を定めてステップバイステップで進める
Enjoy:楽しめる施策・広報を心がけ気持ちを盛り上げる

それでは、以下でそれぞれを具体的に説明します。

Concept:コンセプトを定める

コンセプトなくしては、筋の通った取り組みはできません。健康経営の取り組みについて考える際は、自社における企業理念やビジョン、戦略、状況に基づきましょう。

健康経営に取り組む際、他社の取り組みをそのまま自社で行うというケースも見受けられます。ただ本来は、企業の理念やビジョン、戦略、状況によってコンセプトは異なります。参考にする際は、自社が抱える課題解決につながる取り組みかをしっかりと見極めることが不可欠です。

コンセプトを明確化できるフレームワーク「HAVE」

コンセプトを明確する際に役立つフレームワーク「HAVE」を紹介します。自社に当てはめて以下の空欄を埋めるだけでコンセプトを明確化できますので、ぜひご活用ください。

Horror(ホラーストーリー):このままでは、自社に「   」のリスクがある
Aim(目指す方向性):そこで、健康経営を通じて「   」を目指す
Vision(到達したい状態):そして、将来的に「   」の状態になりたい
Example(取り組み例):そのために、例えば「   」に取り組む

コンセプトと実施施策の具体例

実際にどのようなコンセプトを掲げて取り組めば良いかの参考として、具体的な他社事例を紹介します。

IT系A社「優秀人材の確保・定着」

  • 長時間労働の是正、残業削減、有給休暇の取得推進
  • 就活市場への発信、ホームページへの掲載

食品系B社「顧客への健康企業ブランドの認知向上」

  • 健康優良法人の認定取得
  • 健康情報発信、健康ブランドのメディア発信、コマーシャルの展開

金融系C社「組織における生産性向上」

  • コンディションアップのスキルセミナー開催
  • 業務プロセ瀬宇野改革、仕事の見直し

Hold:目標や体制を経営と握る

健康経営の取り組みを成功に導くためには、持続的に取り組みが進むよう目標や体制を「経営と握る」ことが重要です。具体的には以下の3点を行うことです。

  • 経営層に本腰を入れてもらう
  • 管理職層の関心を高めて各部署への影響力を発揮してもらう
  • 現場(各従業員)の協力と共感を醸成する

健康経営の取り組みのほとんどは、すぐに効果がでるものではありません。そのため、経営層からしっかりと巻き込み、中間管理者層を通じて、現場の協力を持続的に得られる体制を確立することが必要なのです。

理解・協力を得るために大切なのは目標と指標

経営層や管理職層の巻き込み、ひいては全社の理解と協力を得るためには、具体的な目標や指標の明示が重要です。例えば以下のような意義や必要性を理解しやすい目標・指標を示すことで、全員が「自分ごと」として協力できる状態にしましょう。

生産性向上

  • 不健康による生産性低下の抑制
  • 病欠や休職率の低下

ブランド向上

  • 株価向上
  • 自社のブランドイメージ向上

人材確保

  • エンゲージメント向上による離職率低下
  • 新卒採用時のエントリー数増加

より効果的な推進体制

健康経営の取り組みをよりスムーズに進めるために、以下のような役割を設けて推進体制を整える企業も増えています。

  • CHO(Chief Health Officer/健康管理最高責任者)

組織が従業員の健康増進に向けて取り組むための最高責任者。健康経営の広がりを背景に従業員の健康状態を経営課題の一つと捉え、健康経営の担当役員として経営層にCHOを迎え入れるケースが増えています。

  • CHO室、健康推進室

CHO直属の部署。実働部隊として、健康データの収集や分析、取り組みの企画、関係部署との折衝などを担います。

  • 職場推進リーダー

各部署毎に1名ずつ任命します。CHOおよびCHO室が打ち出した健康経営の取り組みを、各部署内へ浸透させる役割を担います。部長や課長クラスなど部署に影響力をもつ人員を任命する。

Analyze:現状を多角的に調査・分析する

健康経営に取り組むにあたり、まずは現状を正確かつ多角的に調査・分析する必要があります。具体的には「実態調査」を行います。ここでは実態調査および分析の対象と、実態調査を行う際の注意点について説明します。

実態調査および分析の対象

健康経営の推進に必要な実態調査および分析の対象は、大きく次の2つに分かれます。

生活健康度:食習慣・運動習慣・睡眠時間・喫煙の有無など
労働健康度:労働時間・休暇取得率・満足度など

こうした指標の調査・分析を通じて現状を把握した上で、以下のような結果指標の改善につながる取り組みを企画する際の根拠として用いるのです。

結果指標:健診結果・ストレスチェックの結果・離職率・休職率・医療費など

実態調査における注意点

健康経営の取り組み前に欠かせない実態調査ですが、調査時の注意点もあります。具体的には以下の通りですので、実態調査を行う際には留意してください。

  • 健康経営の目的と関係ない内容を調査しない
  • 統計分析ができない調査(自由コメントばかりなど)を行わない
  • 内容が複雑で回答の手間がかかる調査にしない
  • 個人情報やセンシティブ情報のような法令にふれるような調査をしない

Network:自社の枠を超えた協力体制ネットワークを活用する

健康経営の取り組みを成功させるためには、社内の協力体制を整えることはもちろんですが、社外ネットワークの活用も非常に有効です。具体的には、以下の通りです。

【健康経営の取り組みを成功させるための社外ネットワーク】
官公庁・地方自治体・商工会議所・業界団体や協会・健康サービス事業者

例えば官公庁であれば、健康経営を推進する経済産業省、働き方改革を推進する厚生労働省などであり、様々な支援施策が打ち出されています。関連の業界団体や協会がある場合は、関係性を活かして健康経営の取り組み事例の共有や協力・アドバイスの要請なども可能です。また健康経営の支援を行う事業者もいます。

この他に社外ネットワークをさらに広める手段として、健康経営に関する公開セミナーへの参加、異業種交流会、健康経営に関する企業展示会などもあります。重要なのは「ただ参加するのではなく、頼れる人を見つけに行く」という意識で望むことです。

Goal:細かく目標値を定めてステップバイステップで進める

健康経営は長期にわたり取り組む場合が多いため、細かく目標値を定めてステップバイステップで進めることが大切です。

達成目標ステップを定めて、こまめに達成感を味わうことでモチベーションの維持や、取り組み方の見直しや軌道修正を行うことができます。最終目的以外のゴールを定めず闇雲に取り組むのではなく、一旦は「小規模の取り組みとその検証」をゴールとする方法がおすすめです。

Enjoy:楽しめる施策・広報を心がけ気持ちを盛り上げる

健康経営の取り組みの成功は、従業員それぞれが興味・関心をもてるか否かにかかっています。社内には健康への関心がもともと高い人がいれば、反対にほとんど興味がない人もいます。こうしたメンバーが一緒になって楽しめる取り組みにするために、以下のような工夫を行うと良いでしょう。

  • 「健康+仕事術」や「健康+交流会」のように、健康に関心がなくてもう一方のテーマに関心をもってもらえる施策を企画する
  • 競争やゲーム感覚を取り入れる(例:歩数が多い部署や個人にインセンティブを与える)
  • そもそも「健康」という言葉を用いず、元気やイキイキのようなポジティブなキーワードに置き換えて発信する
  • 健康経営の取り組みについて情報発信する際にも「思わず読みたくなる発信」を心がける

健康経営の取り組み|具体例

健康経営の取り組みについて、具体例を紹介します。以下は、経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」のガイドラインで推奨されている取り組みを中心に紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

定期検診の受診率を100%にする

定期検診の受診は、従業員の健康課題を把握し、健康経営への取り組みを始めるための第一歩です。例えば、定期検診を業務命令として業務時間内に受診させることで、受診率100%を目指しましょう。

再診を促す

定期検診を「受けるだけ」にならないように、要精密検査や要治療の診断を受けた従業員に対して、再診を促します。例えば、再診した際の出勤認定や有給休暇の特別付与などを行う方法があります。

50人未満の事業場においてもストレスチェックを実施

労働安全衛生法上では、労働者50人未満の事業場においてストレスチェック実施は「努力義務」ですが、健康経営の課題を把握するためにもストレスチェックは欠かせません。

健康増進や過重労働防止にむけて数値目標を設定する

自社の健康課題に基づき、改善に向けた目標を設定します。

  • 今年度の精密検査の受診率を100%にする
  • 禁煙プログラムへの参加者を昨年比で20%増加させる
  • 有給休暇取得日数を年平均で3日増やす

従業員に向けてセミナーなど健康教育の機会を提供する

健康経営の推進には、当事者である従業員の健康への関心度や知識の向上が必要です。例えば社内セミナーや外部講師を招いての啓蒙セミナー開催などが挙げられます。

  • 従業員向けの禁煙セミナー
  • 管理職向けのメンタルヘルスケア講習
  • 保険者が派遣する講師による食生活改善講座
  • 健康知識に関する検定の受講推進

ただ業務が忙しいなかで、手間と時間を要する取り組みは容易ではないでしょう。場合によっては従業員の負担増加により、健康経営に逆行する結果になりかねません。

そこで有効なのが、パソコンやスマートフォン等とインターネットを利用して教育、学習、研修を行えるeラーニングです。ネット環境さえあればいつでもどこでも受講可能なため、受講者側は空き時間などを活用できます。開催側も受講案内のみで、研修のために参加者全員のスケジュール調整を行う必要もありません。

eラーニングを選定する際は、健康や健康経営に関するテーマも含まれているか、もしくは、自社オリジナルの研修用コンテンツ(動画やチェックテスト等)を作成可能かを確認しましょう。

eラーニング活用について詳細を知りたい方は以下の資料をご確認ください。
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労働時間や休暇日数の見直し

従業員が充実した仕事とプライベートの時間を送るための環境づくりは、モチベーション向上につながります。特に「長時間労働」は心身の健康を損なうリスクがあるため、事実が確認できる場合は重点的に取り組みを実施し、「ワークライフバランス」の適正化を図りましょう。

  • 定時消灯日の設定
  • ノー残業デーの設定
  • 超過勤務時間の削減を管理職の評価項目に設定
  • 超過勤務時間が80時間を越える従業員に対して産業医による面接指導を受けさせる
  • 退勤から出勤まで最低でも8時間のインターバルを取る

社内コミュニケーション促進策の実施

従業員が前向きな気持ちで仕事に励むためには、職場の明るい雰囲気や従業員同士のコミュニケーションは欠かせません。例えば以下のような取り組みによって社内コミュニケーションの活性化を後押ししましょう。

  • フリーアドレス導入
  • 心身の健康増進を目的とした旅行(ヘルスツーリズム)の実施
  • 社内歩数競争の実施

治療と仕事の両立支援

病気の治療が必要な従業員に対して、自社の意識改革や受け入れ体制を整え、治療と仕事を支援しましょう。

  • 傷病をかかえる従業員とその上司や同僚が相談できる専用窓口を設置する
  • 入院治療や通院のために傷病休暇を取得できる制度を整える

保健指導を実施する

健康診断などの結果を受けて健康の保持に努める必要がある従業員に対して、医師または保険師による保険指導の機会を提供します。

特定保健指導の実施機会を提供する際は、保健指導の時間を出勤認定もしくは特別休暇に認定します。また、部署内の協力を仰ぎ、保健指導を受ける時間を設けるために勤務シフトの時間調整も行いましょう。

食生活改善を行う

生活習慣病の原因のひとつに乱れた食生活が挙げられます。組織として以下のような取り組みを実施することで、従業員の健康増進を実現させましょう。

  • 野菜摂取量の増加のため、健康に配慮した仕出し弁当の利用促進や社内食堂のメニュー提案
  • 従業員の健康意識を高めるために、社内食堂のメニューに栄養素やカロリーを明記
  • 自販機のラインナップを低糖や低カロリーのものに変更

職場での運動機会を提供する

運動不足に悩む従業員は少なくありません。組織として従業員がハツラツと体を動かせる機会を提供することも、健康経営を成功させるための取り組みとして有効です。

  • 徒歩や自転車で通勤できる環境の整備
  • 毎朝ラジオ体操を実施
  • 心身のリフレッシュのためにストレッチや実施
  • フィットネス利用料の補助

感染症を予防する

複数の従業員に感染症が蔓延した場合、業務に支障が生じます。日頃から感染症を予防する取り組みを実施しましょう。

  • 予防接種を受ける時間の出勤認定
  • 予防接種場所の提供
  • アルコール消毒液やマスクの配布

メンタル不調者に対応できる体制を整える

いわゆる「心の健康」は健康経営においても非常に大切なテーマです。メンタル不調者が出ないようにする予防も重要ですが、万一発生した場合の体制も整える必要があります。

  • 対象者には定期的な医療関係者(第三者)による面談を実施
  • 対象者の復帰時は、医師の意見をふまえて支援する
  • 対象者へは、短時間勤務や業務制限などの配慮を行う
  • 外部の相談窓口と契約して利用を促す

健康経営の取り組み|具体的な企業事例

健康経営の取り組みについて、企業事例を紹介します。健康経営は自社の健康課題に対する取り組み実施が基本のため、他社事例をそのまま流用することは推奨できません。ただ自社と背景が似ている場合や、発想のヒントを得るには有効なため、ぜひ参考にしてください。

株式会社日本エー・エム・シー

株式会社日本エー・エム・シーは、残業上限の法制度化や人材確保を見据えた経営改革のために、経営トップの決断により優良法人認定レベルを目指して健康経営の取り組みを開始。各事業所(工場)の衛生管理者を健康づくり担当者に任命し、産業医や協会けんぽからのサポートも受けて、取り組み体制を整えました。

主な取り組み

  • 毎日朝礼時に「腰痛体操」と「従業員の健康状態の確認と報告」を徹底して実施
  • 定期健診の結果で要再検査となった従業員の受診を勧奨
  • 健康づくり担当者が健康経営アドバイザーを取得し、健康経営の各取り組みを推進

また、健康経営に関連させて「ダイバーシティ推進」「働き方改革」へも取り組み、社外へもPRすることで企業価値の向上に役立っています。

ベンダ工業株式会社

ベンダ工業株式会社は、複数の社員が重病により休職や退職に至ってしまったため、健康経営への取り組みを開始。社内の主管部門・総務部に日頃から健康意識の高い推進担当者を選出して推進体制を整えました。

主な取り組み

  • インフルエンザ感染予防として産業医による社内での予防接種を実施、
  • 予防接種の日程が合わない場合は個人で病院で接種とするが、自己負担額を1,000円とし超過分は会社が負担
  • 有給休暇の取得や長時間労働について、安全衛生委員会や働き方改革委員会で状況報告と対策を立案
  • 管理監督者へ残業時間の状況および有給休暇取得日数を報告および是正勧告
  • 長時間労働者にはセルフチェックを実施し、必要に応じて産業医との面談を促進

上記の結果として、休職者の減少や、身体の不調が原因での退職者がいなくなり、組織としての生産性向上まで実現できています。

株式会社エコワスプラント

株式会社エコワスプラントは、働き盛りの従業員が突然死するという痛ましい出来事を経験。健康の大切さを痛感するとともに、経営者自身が若い頃に仕事に没頭しすぎて家庭をおろそかにした後悔から、従業員が健康でプライベートも充実できるよう健康経営を開始しました。

主な取り組み

  • 毎月の安全衛生委員会と各部門会議で勤務時間の共有
  • 生活習慣の改善に向けた研修を実施
  • 残業を事前承認制に変更するなど、時間外労働削減を推進
  • 有給休暇の計画的な取得を促進(3年間で50%から77%まで向上)
  • 2㎞以上の距離を徒歩または自転車で通勤する従業員に「エコ通勤手当」を支給
  • 職場活性化と人間関係構築のため「グッドジョブサンクスカード」を採用し、多くもらった人と多く渡した人を表彰

上記の取り組みを行った結果、従業員の病欠が減り生産性が向上します。さらに離職率も低下し、新卒の応募者数も増加しました。

まとめ

健康経営の取り組みについて、基本ステップから成功に導くためのメソッド、具体例の紹介、他社の事例について解説しました。

そもそも健康経営とは「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」です。取り組みを実践することで「生産性の向上」「企業イメージの向上」「離職リスクの低減」「保険料負担の低減」等のメリットを得られます。

健康経営に取り組む際は、

  1. 目的などの基本情報をまとめる
  2. 健康経営の実施を表明する
  3. 取り組み体制を整える
  4. 課題を分析して明確化する
  5. 計画を作成・実行する
  6. 取り組みを評価・改善する

という6つの基本ステップに沿って行いましょう。

また健康経営の取り組みを成功させるための「CHANGE」メソッドを紹介しました。「Concept:コンセプトを定める」「Hold:目標や体制を経営と握る」など健康経営の取り組みにおいて特に重要となるポイントが凝縮されているため、活用することで取り組みの精度を高めることが可能です。

そして本記事で取り上げた健康経営の取り組みの具体例は、経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」のガイドラインで推奨されている取り組みを中心に、13もの事例を紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

最後に各社が行った健康経営の取り組みを3つ紹介しました。いずれの取り組みも一定の成果を得ているため、自社と背景が似ている場合の参考や企画のヒントとしてご活用ください。