1on1ミーティングは、上司と部下の信頼関係を築き、部下の成長と組織の生産性向上を図るための重要な施策です。しかし、効果的な1on1の実施には、上司の面談スキルが大きく影響します。そのため、1on1の成果を高めるために、1on1研修の実施が不可欠です。
効果的に1on1研修を実施することで、「1on1ミーティングの成果が出ない」「上司によって成果にばらつきがある」といった課題を解決することができます。
そこで本記事では、1on1研修の概要や効果、具体的な実施手法について解説します。1on1研修を実施すべき企業の特徴も紹介しているので、自社がその特徴に当てはまるかどうかもチェックしてみてください。
目次
1on1研修とは
1on1研修とは、上司が部下との1on1ミーティングを効果的に実施するための知識とスキルを習得することを目的とした研修です。
1on1ミーティングでは、上司が部下に単に指示を与えるのではなく、部下自身が問題解決の糸口を見出せるようサポートすることが重要ですが、そのためには、傾聴力や質問力、フィードバックの与え方など、コーチングに関わる知識と技能を身につける必要があります。
1on1研修を通じてこれらのノウハウを身につけることによって、1on1ミーティングの効果を高めることにつながるでしょう。
1on1ミーティングとは
1on1ミーティングとは、その名の通り、一対一で行われる研修やコーチングのことを指します。主に上司と部下、または指導者と学習者が一対一で行うこの形式は、より深く具体的な内容を学ぶのに適しています。
1on1ミーティングは、特定のスキルを伸ばすためだけでなく、自己啓発やキャリア開発のためのフィードバックを提供する機会でもあります。対話型でありながらも個々のニーズに対応するため、参加者が自分自身の成長を実感しやすいです。
この1on1ミーティングでは、確実に双方向のコミュニケーションが行われます。こうした対話を通じて、参加者は自分の課題や目標について深く理解する機会を得ます。また、指導者は参加者の成長を直接観察し、適切なフィードバックやアドバイスを提供できます。
これらの理由から、1on1ミーティングは個々の成長と組織全体のパフォーマンス向上に貢献します。次の章では、具体的にどんな効果が期待できるかについて詳しく説明します。
1on1研修の目的
1on1ミーティングの目的を達成しやすくする
1on1研修は、1on1ミーティングの目的を達成しやすくします。1on1ミーティングの目的は、具体的には以下の通りです。
1on1ミーティングの目的
- 社員のパフォーマンス向上
- 社員のモチベーション向上
- 社員のエンゲージメント向上
- 上司と部下のコミュニケーション円滑化
上司のスキルアップ
受講した上司のスキルアップを図ることも1on1研修の目的です。1on1研修のなかで学んだ各スキルは、1on1ミーティング以外の場でも役立つでしょう。具体的には以下のようなスキルの習得を目指します。
- コーチングスキル
- 傾聴力
- 質問力
- ロジカルシンキング(論理的思考)
- クリエイティブシンキング(水平思考)
- クリティカルシンキング(批判的思考)
コーチングスキル
コーチングとは、コーチとクライアントが対話を行うなかで、クライアントが目標達成に向けて主体的に行動することを支援するプロセスのことです。主導権を握るのはクライアントで、「答えはクライアントの中にある」と考えます。
内発的な行動を引き出すことができるコーチングは、部下の主体性を引き出したり、信頼関係を構築したりする際に効果的なため、コーチとなる上司が身につけたいスキルの1つとなっています。
傾聴力・質問力
大前提として、1on1の目的は以下の3点です。
- 部下の成長促進
- 上司と部下の信頼関係の構築
- 組織力の強化
部下が「話を聞いてもらえている」と安心でき、本音で話せる場や雰囲気を作るために、上司には傾聴力・質問力が求められます。
例えば、部下が話している間はうなずきや相づちを挟んだり、必要に応じて「どんな悩みがあるのか?」「何を一番解決したいと思っているのか?」など、ポイントとなる課題を見極めて問いかけることも効果的でしょう。
1on1ミーティングによって得られる効果
1on1ミーティングは、効果的な人材育成と高いパフォーマンス向上に寄与します。その中でも特に注目すべき3つの効果をご紹介します。
まず一つ目は、個々人の能力開発です。1on1ミーティングでは、個々の社員と深く関わることで、その強みや弱み、能力をより詳しく把握できます。そのため1o1ミーティングで得られた情報は、各社員に合った育成計画の作成に役立てることができるのです。
二つ目は、コミュニケーションの活性化です。1on1ミーティングは、上司と部下が直接会話を行う機会を設けることで、相互理解を深めるための良い環境を提供します。そのため、社員同士のコミュニケーション不足に課題を感じている企業は、ぜひとも導入すべきです。
最後に、社員満足度の向上です。1on1ミーティングは、社員一人ひとりが自身の意見や悩みを話し、それを理解してもらえる場を提供します。これにより、社員が職場で働く満足度を高め、離職率の低減に寄与することが期待できます。
以上の3つの効果は、1on1ミーティングを通じて得られる主要な利点といえます。これらを踏まえて、1on1ミーティングを適切に設計・実施することで、組織全体の生産性向上につなげることができます。
1on1ミーティングが抱える課題
1on1ミーティングは、その特性から非常に効果的な研修手法ですが、一方でいくつかの課題も抱えています。
まず一つ目の課題として、個々のミーティングの質が教える側のスキルに大きく依存する点が挙げられます。そのため、導入にあたっては、1on1研修を実施して教える側のミーティングスキルを十分に高めることが大切です。
次に、二つ目の課題として、時間管理が難しい点が挙げられます。1on1ミーティングは全員と行うため、参加者が多い場合は時間を確保することが難しくなります。したがって、短期的に成果をあげたい課題に対しては、あまり向かない育成手法と言えるでしょう。
最後に、三つ目の課題として、成果の可視化が難しいという点があります。1on1ミーティングでは直接的なスキルアップだけでなく、コミュニケーション能力の向上や信頼関係の構築を目指すため、成果を数値化しにくいのが特徴です。
以上が1on1ミーティングが抱える主な課題となります。1on1ミーティングを導入する際には、これらの課題を把握しておきましょう。
1on1研修を実施すべき企業の特徴
組織内において以下のような特徴がみられる場合、1on1研修を実施すべき状況といえます。
1on1ミーティングの成果がみられない
既に1on1ミーティングを実施しているにも関わらず、社員パフォーマンスやモチベーションの向上がみられない場合は、1on1研修の実施を検討する必要があります。
また社員のエンゲージメントが高まらず、社員の離職率に改善がみられない場合などにおいても1on1ミーティングが十分に機能していない可能性を考慮しましょう。
上司が目的や主旨を理解していない
上司が1on1ミーティングの目的や主旨を十分に理解しないまま、1on1ミーティングを行っている様子が見受けられる場合にも1on1研修の実施が必要です。
例えば、定期的に1on1ミーティングを行っているものの、毎回の内容が上司から部下への一方的なアドバイスや指導に終始するケースは少なくありません。こうしたケースに対しては、1on1研修を通じて「部下の主体性を重視する姿勢」の大切さについて理解する必要があるのです。
上司によってバラつきがある
1on1ミーティングを実施する上司間で、進め方や内容にバラつきがみられる場合も1on1研修の実施が欠かせません。例えば、ある上司は部下の悩みごとを丁寧にヒアリングしながら進める一方で、別の上司は自身が部下に対して望む改善事項を伝える場としているなど、上司ごとに対応が明らかに異なる場合が当てはまります。
こうしたバラつきが生じている状態では、部下に戸惑いが生じるだけでなく、組織としての人材育成方針にも支障をきたしかねません。1on1研修を通じてあらためて、一定の統一感をもった1on1ミーティングの実施を実現しましょう。
上司が不安を抱えている
1on1ミーティングを実施する上司が不安を抱えている場合も1on1研修の実施を推奨します。以下では1on1ミーティングで上司が抱きがちな不安を紹介します。
1on1ミーティングで何を話すべきか分からない
1on1ミーティングの時間を設けたにもかかわらず「何を話すべきか分からない」と不安を抱くケースがあります。
本来ならば、同様の悩みをもった部下をフォローしながら1on1ミーティングを勧めて行くのが上司に求められる役割です。1on1研修を通じて、各上司が効果的な1on1ミーティングを推進できるようにしましょう。
部下の気持ちがよく分からない
1on1ミーティングを実施しても「部下の気持ちがよく分からない」という状態に陥ることがあります。
こうした場合は、ヒアリングの方法や傾聴力に課題をかかえているのかも知れません。1on1研修によって必要な知識とスキルを習得しましょう。
部下に的確なアドバイスができるようになりたい
1o1ミーティングで部下の提示した悩みや課題に対して「アドバイスをうまく行えているか不安」「より的確なアドバイスを行いたい」などと考える上司も多いのではないでしょうか。
こうしたケースにおいても、1on1研修を通じて1on1ミーティングの目的や進め方、重要ポイントを理解することで、的確なアドバイスを行えるようになるのです。
1on1研修の実施手法
1on1研修の主な実施手法を4つ紹介します。各手法から自社の状況にあった手法を選択してください。
なお各手法の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
集合型研修
会議室などに受講者を集めて実施します。社内で講師を用意するケースと、社外の講師に依頼するケースがあります。対面のためロールプレイングやグループディスカッションを行いやすいメリットがある一方で、関係各位のスケジュール調整が必要な点はデメリットです。
オンライン研修
Web会議用ツールなどを用いて実施します。集合型研修と同様に社内で講師を擁立するケースと、社外の講師に依頼するケースがあります。出先からでも参加可能なためスケジュールを調整しやすいメリットがある反面、画面越しのためロールプレイングやグループディスカッションを行いにくいデメリットがあります。
eラーニング
パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器とインターネットを利用して教育、学習、研修を行うことです。ネット環境さえあればどこでも受講(動画講座を視聴)できる点や開催側の負担も少ない点はメリットですが、動画講座は一方通行のためその場での質疑応答は不可能な点はデメリットといえるでしょう。
外部研修へ派遣
外部で開催される研修に対象の社員を参加させます。社内の負担が少ない点や他社の社員と交流の機会をもてる点はメリットですが、研修後のフォローや経過確認を行いにくい点はデメリットです。
まとめ
1on1研修は、上司が効果的な1on1ミーティングを実施するために必要不可欠な施策です。1on1研修を通じて、上司は1on1ミーティングの意義を理解し、部下の成長と組織の生産性向上につなげるためのスキルを習得することができます。
1on1ミーティングの成果が出ていない、上司によって質にばらつきがあるといった課題を抱える企業は、1on1研修の実施を検討すべきです。実施手法に関しては、集合型研修やオンライン研修、eラーニングなど、様々な選択肢があるので、自社の状況に合った手法を選択すると良いでしょう。
1on1ミーティングは企業の成長に不可欠な取り組みです。その効果を発揮するためにも、本記事の内容を参考に、1on1研修の導入・見直しを行なってみてはいかがでしょうか。