コーチング研修とは｜受講の目的や研修の選び方、ポイントを解説

コーチングとは、相手が自ら考え、行動することを促すコミュニケーションスキルです。

研修を通じてコーチングスキルを身につけることで、社員の育成や組織力の向上といった効果が期待されます。

本記事では、コーチング研修の概要から受講目的、研修の選び方、効果的な受講方法まで、詳しく解説していきます。

コーチング研修とは

コーチング研修とは、従業員の潜在能力を引き出し、目標達成や課題解決に自ら取り組める人材を育成するための研修です。

企業では、従業員が主体性を持って働けるようにサポートすることを目的としてコーチングを取り入れています。

コーチング研修は、特にリーダーや管理職のような人材育成を行う立場の人にとって重要なスキル習得の場となります。

研修を通して、ビジネスシーンで活用できるコーチングスキルを身につけることができます。

そもそもコーチングとは

コーチングとは、目標達成をサポートするためのコミュニケーション手法です。

コーチは、相手に助言や指示を与えるのではなく、質問を通じて自己認識を深めさせ、自発的な行動を促します。

コーチングの特徴として下記が挙げられます。

コーチングは、ティーチングのように知識やスキルを一方的に教えるのではなく、相手の内面にある答えを引き出し、成長を促す手法と言えるでしょう。

コーチは、相手のモチベーションを高め、目標達成に必要なスキルや能力を開発するために、継続的な対話と支援を行います。

効果的なコーチングを行うためには、コーチは傾聴力、共感力、質問力などのコミュニケーションスキルに加え、相手の状況や課題を的確に把握する観察力も必要になります。

コーチングとティーチングの違い

コーチングとティーチングは、人材育成の手法としてどちらも重要ですが、そのアプローチは大きく異なります。それぞれの違いを理解することで、状況に応じて適切な手法を選択できるようになります。

コーチングは、対話を通じて相手が自ら答えを導き出せるように支援する手法です。一方、ティーチングは指導者が持つ知識やノウハウを相手に伝える手法です。

これらの違いを表にまとめると以下のようになります。

コーチングは、相手に適切な質問を投げかけることで、思考を促し、自ら解決策を見つける手助けをします。目指すのは、相手が主体的に行動し、成長していくことです。

一方、ティーチングは、指導者が一方的に情報を伝達することで、効率的に知識やスキルを習得させることを目的とします。

このように、コーチングとティーチングはそれぞれ異なる特徴を持つため、育成対象者の状況や育成目標に合わせて使い分けることが重要です。

若手教育にコーチングを取り入れる重要性

近年のビジネス環境は、変化のスピードが速く、従来のティーチング型の研修だけでは、若手社員の育成に限界があります。

指示された業務をこなすだけでなく、自ら考え、行動し、変化に柔軟に対応できる人材育成が急務となっているのです。そこで、コーチングの手法を取り入れる重要性が高まっています。

コーチングを若手教育に取り入れることで、以下の効果が期待できます。

• 自主性の向上
• モチベーションの向上
• 問題解決能力の向上
• コミュニケーション能力の向上

変化の激しい時代において、若手社員が自律的に成長し、組織に貢献するためにはコーチングが不可欠となってきているのです。

コーチング研修を受講する目的・ねらい

コーチング研修の受講を通して得られる効果は、職種や業種を問わず、幅広い分野で活かせるスキル習得に繋がります。

研修によって得られたコーチングスキルは、周囲の人々の能力を最大限に引き出し、より大きな成果を生み出すための原動力となるでしょう。

コーチング研修は、部下を持つマネジメント層だけでなく、後輩や新入社員を指導する立場の人、プロジェクトチームを率いるリーダーなど、様々な役割を担う人にとって重要なスキルです。

具体的に、コーチング研修を受講する目的・ねらいは以下の通りです。

• 自主性の向上
• モチベーションアップ
• マネジメント力の向上
• 組織力の向上
• 部下育成の質向上

自主性の向上

従業員の自主性を高めることは、組織全体の成長を促す上で重要な要素です。従来の「やらなければならない」という考え方ではなく、「これをやりたい」という意欲に基づく行動を促進することで、パフォーマンスの向上や新たなアイデアの創出に繋がります。

脳科学の観点からも、脳は自発的な行動を好むようにできています。「自分で選んでいる」という感覚を持つことで、脳内ではドーパミンが分泌され、やる気やモチベーションの向上に繋がります。

自主性を高めるためには、以下のポイントが重要です。

これらのポイントを踏まえることで、従業員一人一人が「Want to」の精神で仕事に取り組み、組織全体の成長に貢献するような主体的な行動を促すことができます。

モチベーションアップ

コーチング研修によって、部下のモチベーションを向上させることが期待できます。

研修を通して、部下のモチベーションを高めるための具体的な方法を学ぶことで、より効果的な育成に繋げることが可能です。

部下のモチベーションを高めるには、以下の3つのポイントが重要です。

例えば、目標達成で得られるメリットを質問したり、アイディアを具体的に言語化させたりすることで、部下は成功イメージを描きやすくなり、モチベーションが向上します。

また、育成者が部下の話を真剣に聞き、一緒に考え、成長をサポートする姿勢を示すことで、部下は安心して業務に取り組むことができ、モチベーション高く行動できるようになります。

これらの方法を実践することで、部下は「自身の成長を期待されている」と感じ、仕事へのモチベーションを高めることができるでしょう。

マネジメント力の向上

マネジメントの役割を担うには、まずチームを率いるリーダーシップが求められます。リーダーシップとは、単に指示を出すことではなく、メンバーの自主性を尊重し、個々の能力を最大限に引き出すことです。

これらの要素をバランス良く向上させることで、効果的なマネジメントを実現し、組織全体の成果向上に貢献できます。

組織力の向上

組織において、メンバー間のコミュニケーションが円滑に進み、個々の能力が最大限に発揮される状態は、組織全体の生産性向上に直結します。コーチングは、まさにその状態を作り出すための有効な手段です。

コーチング研修を通じて、管理職やリーダー層がコーチングスキルを習得することで、部下との信頼関係構築に大きな変化が生まれます。

部下の自主性を尊重し、「傾聴」と「問い」によって彼らの潜在能力を引き出すことで、モチベーション向上だけでなく、主体的な行動を促すことができます。

組織全体のモチベーション向上と、個々の能力が最大限に発揮される環境が整うことで、組織全体の結束力が高まり、更なる成長へと繋がぎます。

研修を通して、組織風土の改革を促し、パフォーマンス向上に繋がる組織作りを目指しましょう。

部下育成の質向上

部下育成は、企業の成長を支える上で重要な要素です。しかし、経験や感覚だけに頼った従来型のOJTでは、育成の質にばらつきが生じやすいという課題があります。

そこで、部下育成研修を通して、質の高い育成を実現するためのポイントを解説します。

これらのポイントを踏まえることで、部下育成研修の効果を最大化し、組織全体の成長に繋げることが可能となります。研修では、以下の内容を学ぶことが有効です。

• 部下の褒め方・叱り方
• 部下に対する心理的安全性について
• コーチングスキルについて
• ティーチングスキルについて
• SL理論について

これらのスキルを習得することで、部下育成の質を向上させ、組織全体の成長に貢献することができます。

関連記事：部下育成で大切なこと｜タイプ別の指導法や必要な心構え、スキルを解説

コーチング研修の内容例

コーチング研修では、コーチングの基本的な知識やスキルを実践的に学ぶためのプログラムが提供されます。研修内容の例としては、以下の様なものがあります。

研修は、講義形式だけでなく、ロールプレイングやグループワークなどの実践的な演習を通して、コーチングスキルを身につけるためのトレーニングを行います。

演習では、参加者同士がコーチ役とクライアント役に分かれて、具体的な場面を想定したコーチングの実践練習を行います。

例えば、「質問型対話・評価型対話の体験」というテーマの演習では、数分間の対話を複数回行い、質問に重点を置いた対話と、評価に重点を置いた対話の違いを体感します。

「問題解決コーチング」の演習では、グループメンバーに対して、コーチングのステップを意識しながら、問題解決を支援するコーチングを体験します。

これらの演習を通して、受講者はコーチングスキルを向上させ、実際の業務で効果的に活用できるようになることを目指します。

コーチング研修の選び方

コーチング研修は、様々な観点から比較検討することで、自社に最適な研修を選ぶことができます。研修を選ぶ際のポイントとして、以下の項目を考慮しましょう。

• プログラムの内容
• 費用
• 受講方法
• 受講時間
• 対象の階層

プログラムの内容

コーチング研修では、効果的なコーチングスキルを習得するために、講義と実践的な演習を組み合わせて行います。

例えば、午前はコーチングの基本知識や流れ、コーチに求められる姿勢について学びます。午後は効果的な質問技法を学び、様々な演習を通じて実践力を高めます。

午前中の研修では、まずコーチングの基本知識として、コーチングの定義や活きる場面、効果について学びます。次に、コーチングの一連の流れと各ステップのポイントを理解し、ロールプレイング形式の演習で体験的に学びます。

最後に、コーチングに求められる姿勢や人間成長のメカニズムについて学びます。

午後の研修では、効果的な質問技法を学び、より実践的な演習を行います。午前中に学んだ知識や技法を活用し、部下の問題解決を支援するコーチング演習を行います。

演習では、コーチ役、部下役、観察役に分かれ、それぞれ異なる視点からコーチングのプロセスを体験します。さらに、目標達成に向けたコーチング演習も行います。グループを課に見立て、上司役と部下役に分かれてコーチングを実践します。

これらの演習を通して、多様な状況下でのコーチングスキルを磨きます。

研修全体を通して、参加者はコーチングスキルを体系的に学ぶとともに、実践的な演習を通じてスキルを定着させることができます。

費用

コーチング研修にかかる費用は、研修内容、研修時間、講師の有無、そして研修の実施方法などによって大きく変動します。研修導入にあたっては、予算との兼ね合いも重要な要素となるため、事前にしっかりと費用を確認しておきましょう。

研修費用の一例として、公開講座の場合、3時間程度の研修であれば15,000円、1日研修であれば50,000円程度が相場です。自社に講師を派遣してもらう形式の場合、半日研修で100,000円、1日研修で150,000円程度が相場となります。

研修形態別の費用相場をまとめると以下の通りです。

費用はあくまで相場であり、研修会社や講師の経験、専門性などによって異なる点に注意が必要です。複数の研修会社に見積もりを依頼し、内容と費用を比較検討することで、自社に最適な研修を選択できるでしょう。

また、研修内容のカスタマイズなど、追加のオプションによって費用が変動する可能性もあるため、事前に詳細を確認することが重要です。

受講方法

コーチング研修の受講方法は、大きく分けて「集合研修」、「オンライン研修」、「個別指導」の3つの種類があります。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自社に合った受講方法を選択することが重要です。

例えば、新入社員研修のように基礎を学ぶ目的であれば、集合研修が適しています。一方、管理職向けの研修で個々の課題に合わせてスキルアップを目指したい場合は、個別指導が効果的です。

また、近年ではオンライン研修も普及しており、場所や時間にとらわれずに受講できるというメリットがあります。それぞれのメリット・デメリットを比較検討し、最適な方法を選びましょう。

受講時間

コーチング研修の受講時間は、研修の目的や内容、受講者のレベルによって大きく異なります。短いものでは数時間から、長いものでは数ヶ月に及ぶものまであります。

研修を選ぶ際には、自分のスケジュールや研修の内容、費用などを考慮して、最適なものを選ぶようにしましょう。

例えば、コーチングの基本的なスキルを学ぶための研修であれば、数時間から1日程度のものが一般的です。より高度なスキルを身につけるための研修であれば、数日間から数週間かかるものもあります。

また、個別のコーチングセッションが含まれている研修の場合、セッションの回数や時間によって受講期間が変動します。

研修によっては、eラーニングやオンライン学習などを組み合わせたものもあります。これらの研修は、自分のペースで学習を進めることができるため、忙しい方にもおすすめです。

対象の階層

コーチング研修は、企業における階層ごとに異なる目的や内容で実施されます。対象となる主な階層は以下の通りです。

新入社員研修では、学生から社会人への意識転換を促し、基本的なビジネスマナーを習得させることが目的です。

若手社員研修では、実践的なビジネススキルや後輩指導のためのスキルを学びます。

中堅社員研修では、チームリーダーとして必要なリーダーシップや、自身をマネジメントするスキルを習得します。

そして、管理職研修では、組織全体のマネジメントや、企業のリスク管理といった高度なスキルを身につけることを目的とします。

このように、各階層の研修は、それぞれの役割と責任に応じた内容で設計されています。

関連記事：階層別研修とは｜目的や内容、カリキュラム設計のポイントを解説

コーチング研修の効果を最大化するポイント

コーチング研修の効果を最大化するためには、事前の準備と受講後のフォローが重要です。具体的には、以下の3つのポイントを意識しましょう。

受講目的を明確にする

コーチング研修を受講する目的を明確にすることは、研修の効果を最大化するために非常に重要です。目的が曖昧なまま研修を受講すると、得られる成果も少なくなってしまいます。

研修で何を学びたいのか、どのようなスキルを習得したいのか、研修を通じてどのような変化を期待するのか、を具体的に考えてみましょう。

例えば、以下のように目的を分類し、それぞれに具体的な内容を落とし込んでいくと、研修選びの軸も明確になります。

このように、目的を具体的に設定することで、研修内容との適合性を判断しやすくなり、自分に最適な研修を選ぶことができます。

また、研修中に自身の成長を測る指標にもなります。研修後も、設定した目的を振り返ることで、学んだことを実践に移し、効果的に活用することに繋がります。

アウトプットできる場を設ける

コーチング研修で学んだ内容をより効果的にするためには、学んだことを実践し、アウトプットできる場を設けることが重要です。

研修で得た知識やスキルを「知っている」だけでは、実際の業務で活用することはできません。研修後に、学んだことを実践する機会を設け、アウトプットすることで、初めて自分のものとなります。

実践の場としては、以下のようなものが考えられます。

これらの実践の場を設けることで、コーチングスキルを向上させ、研修の効果を高めることができます。

特にロールプレイングは、実際の業務に近い状況を想定して行うため、実践的なスキルを身につける上で効果的です。

OJTは、実際の業務を通して学ぶことができるため、より実践的なスキルを身につけることができます。

メンタリングは、経験豊富な社員から指導を受けることができるため、より高度なスキルを身につけることができます。

自己学習は、研修で学んだ内容を復習し、自分の業務に活かす方法を考えることができるため、研修の効果を高めることができます。

振り返りができる受講手段を選ぶ

コーチング研修の効果を高めるためには、学んだ内容を振り返り、実践で活用していくことが重要です。そのため、振り返りがしやすい受講手段を選ぶようにしましょう。

研修には、集合研修、eラーニング、動画学習、コーチング型研修など様々な種類があります。

それぞれの研修形態の特徴を理解し、振り返りのしやすさの観点から、最適な受講手段を選びましょう。

このように、研修形態によって振り返りのしやすさが異なります。研修内容だけでなく、振り返りのしやすさも考慮して受講手段を選ぶようにしましょう。

例えば、eラーニングであれば、学習プラットフォーム上にメモ機能や振り返り用のワークシートが用意されている場合もあります。

動画学習であれば、繰り返し視聴することで、重要なポイントを再確認することができます。

また、コーチング型の研修であれば、コーチからフィードバックをもらうことで、自分の強みや弱みを客観的に把握し、今後の学習につなげることができます。

自身の学習スタイルや研修の目的に合わせて、振り返りがしやすい受講手段を選び、研修の効果を最大化しましょう。

まとめ

コーチング研修は、個人と組織の成長を促すための効果的な手段です。研修を通して、個人が持つ潜在能力を引き出し、目標達成を支援することで、組織全体の活性化を図ることができます。

コーチング研修は、単にスキルを学ぶだけでなく、マインドセットの変化にも繋がります。研修で得た知識やスキルを、実際の業務で実践し、継続的に振り返りを行うことで、より効果的な成果が得られます。

研修選びの際には、プログラムの内容、費用、受講方法、時間、対象階層などを考慮し、自社に最適な研修を選びましょう。

また、研修の効果を最大化するためには、受講目的を明確にし、研修で得た学びをアウトプットできる場を設けることが重要です。研修後の振り返りも忘れずに行い、継続的な学習を心がけましょう。