SNSを利用したコミュニティによる学習方法であるソーシャルラーニングが、新しい企業内研修形態として注目されています。
しかし、TwitterやLINEといったパブリックSNSの使用は、セキュリティやコンプライアンスの面で問題があります。
また、SNSにもそれぞれ特徴があり、ソーシャルラーニングに必要な機能を全て持っているとは限りません。
この記事では、企業内研修形態としてのソーシャルラーニングの特徴と、それを実現するためのITインフラについて全3回にわたって解説します。
第1回:ソーシャルラーニングとは何か?(本記事)
第2回:ソーシャルラーニングのためのITインフラ
第3回:理想のソーシャルラーニング環境に近づける方法
連載第1回の今回は、ソーシャルラーニングの特徴と期待される効果について解説します。
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フォーマルラーニングとインフォーマルラーニング
ソーシャルラーニングは、SNSを利用した学習方法ですが、インフォーマルラーニングと呼ばれるコミュニティによる学習形態の中の一つでもあります。
集合研修やセミナーといった決められた内容を決められた方法で学習する研修形態をフォーマルラーニングと呼ぶのに対して、特に学習の場として設定されていない日常的な場の中で、定められていない内容を偶発的に学んでいく学習形態をインフォーマルラーニングと呼びます。
フォーマルラーニングでは、講師やインストラクターが教える側、受講者が教えられる側というように固定的な関係であるのに対して、インフォーマルラーニングでは、先輩や同僚とコミュニティを形成して、互いに教え合うフラットな関係になります。
フォーマルラーニングでは、組織が従業員に伝えたい内容、能力開発したい内容をあらかじめ設計して学習させるため、受講者の意識が、上からの要請や指導で受けるという受動的で消極的なものになりがちです。
これに対して、インフォーマルラーニングでは、ただコミュニティに参加するだけではなく、「聞く」、「教える」といった積極性が要求されるため、参加者の意識が能動的なものになりやすいといえます。
以上のようなフォーマルラーニングとの違いだけではなく、インフォーマルラーニングには、「気づき」による学習意欲の向上、「教える」ことによる学習内容の定着化といった特徴があります。
インフォーマルラーニングでは、コミュニティ内での何げない会話から、学びたいと意図した以上の、思わぬ気づきや発見が得られたりすることがあり、この偶発的な「学び」には、学習対象への興味を増加させる、学習全般に対する意欲を向上させる効果があるといわれています。
また、学習方法と平均学習定着率を関係付けるラーニングピラミッド理論によると、「他者に教える」ためには、自分でしっかりと内容を理解していなければならないため、7段階ある学習方法の中でもっとも知識の定着率が高い段階とされています。
ソーシャルラーニングの特徴と期待される効果
ソーシャルラーニングとは、TwitterやLineといったSNSをツールとして活用する学習方法のことで、SNSでのやりとりを通じて行うため、職場の人間関係に限定されず、業務上の接点がない人、全く面識のない人でも、同じSNSに参加する人なら、誰とでも学び合うことが可能な学習形態です。
ソーシャルラーニングは、インフォーマルラーニングに分類される学習形態ですが、コミュニティの範囲が同じオフィスにいる先輩や同僚に限定される従来のインフォーマルラーニングよりも、学びの幅や可能性は圧倒的に大きなものになります。
このような特徴を持つソーシャルラーニングに期待される効果としては、以下のようなものがあります。
- 集合研修やeラーニングで発生した疑問点を、SNSで質問し、解決することで、受講した研修の効果を高めることができる。
- コミュニティにさまざまな分野のエキスパートが参加することで、最先端の知識や最新情報に触れることができる。
- 業務の上でわからないことについて誰かがSNSで質問し、大勢の人から知見やノウハウが寄せられると、それらを会社全体で共有できるナレッジとして蓄積することができる。
- 直面している課題をSNSで投げかけ、同じ課題意識を持つコミュニティメンバーを集めて議論をしたり、新しい企画を投稿して、実現性や問題点について意見や評価をもらったりすることで、企業内でのイノベーション創出につながる。
まとめ
ソーシャルラーニングは、インフォーマルラーニングが持つ特徴に加えて、SNSでのやりとりを通じて行うため、職場の人間関係に限定されず、業務上の接点がない人、全く面識のない人でも、学び合うことができるという特徴をもっています。
ソーシャルラーニングには、集合研修やeラーニングで発生した疑問点の解決、最先端の知識や最新情報に触れることができる、寄せられた知見やノウハウの共有とナレッジとしての蓄積、企業内でのイノベーション創出といった効果が期待されます。
次回は、ソーシャルラーニングを実現するためのITインフラについて解説します。
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