テレワークに求められる環境整備とは?

いまさら聞けない!『テレワーク導入』よくある課題と解決策」でもご紹介しておりますが、各社テレワークに取り組みた気持ちはありつつも様々な課題が障害となり、導入に踏み込めないという企業さまも多いのではないでしょうか?

そこで今回はテレワークを行う際に求められる環境整備に焦点を当て、

1.通信に関する環境整備
2.業務に関する環境整備
3.空間に関する環境整備

の3つの切り口から考えていきます。
それぞれにおいて必要とされるのはどのような施策でしょうか。

1.通信に関する環境整備

テレワークを実現させるためには、多くの場合、インターネットへの接続が大前提となります。

昨今では街中にも多くの無料wi-fiが飛び交っており、どこでも当たり前にインターネットに接続することが可能です。しかしその一方で、自宅でのwi-fi環境はどうかと言うと、実は仕事に適していない環境であることも少なくありません。

まず当然一番最初に懸念されるのが「セキュリティ」です。

この観点から考えると、公衆無線LANでの接続は好ましくありません(もちろん全ての公衆無線LANが危険ではありませんが、リテラシーが高くない状態でやみくもに使用するのは危険です)。

そのためプライベートな通信環境下でテレワークをすべきですが、ここにも問題が隠されています。

特に若年層では、プライベートではPCを使わないという人も多く、スマートフォンの大容量通信プランでネット環境をまかなっている人も少なくありません。

しかしテレワーク下ではビデオ会議などの回数も多く、日常生活で使う通信量を大きく上回ります。そのため速度制限などにより仕事に十分な環境が整わないという問題も発生しています。

このような状況を回避するためには、会社として一定水準の通信環境を提供することは避けられないでしょう。

2.業務に関する環境整備

業務に関する環境整備はどの企業でも重点的にケアされているポイントですが、多くの企業で紙とハンコ文化の脱却ができていない様子です。

これまでの慣習で、多くの資料を紙でやり取りしたり、押印による承認の文化を行っており、この点がボトルネックになっています。

2021年時点で多くのクラウドサービスや電子契約サービスが存在しており、方法論としては問題なく解決することが可能です。それにも拘わらず、このようなサービスの導入が進まないのはなぜなのでしょうか。

その理由は主に以下のとおりです。

1.コストがかかるため

各種のクラウドサービスや電子契約サービスを導入すると、当然ながら少なからずコストがかかります(サービス提供者も事業者なので止むをえません)。

そのため先立つものがないと導入できないのは事実です。
しかし考え方や導入方法次第で必ずしも不可能とは限りません。

まず経費精算や社内での承認などは、グループウェアや勤怠管理システムに標準搭載されているケースが多々あります。現在コストをかけているシステムを置き換える等、見直しを行うことで実現の可能性が広がります

また電子契約については印紙代がかからないというメリットがあります。
なので年間の印紙代、月間に発行する契約書の枚数、契約書の保管にかかっているコストを改めて見直し、電子契約サービス利用時のコストと比較することがお勧めです。

このように見方を変えることで、導入の可能性は十分に広がると考えられます。

2.法的に有効なのか心配

この点に関しては非常に多くの方が心配される点であると思います。
契約書を作成しても法的な効力が弱ければそれは本末転倒です。

しかしこれは単純に「知らない」だけと言えます。2001年に電子署名法が施行され、電子署名は紙の署名、捺印と同等に通用すると定められており、現在その基準に準拠したサービスがいくつも存在しています。

ぜひ各社のサービスを比較検討して自社にあったサービスを検討していただきたいところです。

3.いままで使ったことがないから

何とも日本人らしい理由だなと思う一方で、実はこの理由はかなり大きいのではないかと推測しています。たしかにこれまで使っていなかったサービスの導入は、金銭的にも時間的にもコストがかかります。

加えて今までの手法を変更するのに抵抗感があるのも十分に理解できます。

しかしながら現在の状況は、これまでに類を見ないほど大きな変革期であると言えます。ここをチャンスと捉えて変化を受け入れ、さらなる進化を目指すべきではないでしょうか。その意識改革こそが経営層ならびに人事の腕の見せ所と言えるかもしれません。

3.空間に関する環境整備

そして最後にご紹介したいのは、ワークスペースに関する問題です。言われればなるほどと思う反面、十分に手が回っていないのが実情ではないでしょうか。

言い始めればキリがないですし、各々の工夫で解決すべき点も多々あると思います。しかしその中でも、あえてピックアップしたいのが椅子とテーブルの問題です。

ご家族がいる世帯であれば、ダイニングテーブルがあることも多いので問題がないかもしれませんが、一人暮らしの若年層であれば住まいがワンルームという事も珍しくなく、ダイニングテーブルが無いというケースも多いと思われます。この場合、ローテーブルやソファなどで仕事をしていることが多く、人によってはベッドで業務を行うというケースも。

現時点では大きな問題になっていないかもしれませんが、このままでは身体に支障をきたすケースも容易に予想されます。さらにはオン・オフの切り替えやモチベーションという観点においてもあまり良い影響を及ぼすとは考えられません。

このような状況に対して「テレワーク手当」なる手当を支給している企業も登場しました。

業務を行う最低限のものは支給・貸与されますが、それ以上の自宅で仕事ができる環境整備については、自身の状況に合わせて整備するようにという意図だそうです。

手当の支給が必ずしもベストアンサーではないと思います。しかしこのままテレワークが続く以上は、空間に関する環境整備に対しても何かしらのケアを行う事が、企業に求められるのではないでしょうか。

まとめ

テレワーク下でこれまでと同等かそれ以上の成果を上げるためには、様々な環境の整備が必要不可欠です。

従業員各々の状況をできる限り正確に把握し、自身で解決できる問題と、会社が介入して解決していく問題とを見極めることが重要です。

またテレワークの環境整備においては、これまでの常識や慣習、通例が推進を阻害しているケースが散見されます。

まずは「常識が通用しなくなった危機的状況」というマインドから脱却し「飛躍のために変革するチャンス」と捉える意識改革を行い、フラットな目線で問題を抽出する必要があります。

その上で自社にとって最も合理的な経営判断を行うことで、テレワークの環境整備は飛躍的に進んで行くはずです。

■テレワークの環境整備のトピックス
1.適切なインターネット環境の整備を行う
2.業務に関する環境整備は、あらゆる選択肢を模索する
3.空間に関する環境整備は忘れがちだが後から問題が顕在化する可能性あり
4.環境整備はこれまでの常識や慣例を捨てて改革を検討することも重要

ABOUTこの記事をかいた人

大学卒業後、人材系コンサルティング会社に就職し、従業員数10,000名を超える大企業から15名程度の中小企業までの採用に係るコンサルティングを歴任。その後、2011年に自ら考えられる人材を育てたいという想いを元に一念発起し、粋なり株式会社を創設する。自社コンテンツ「神保町大学」「就職課」などを立ち上げ、就職支援分野では多くの大学生を社会に送り出し、内定率100%、3年以内離職率5%未満の実績を持つ。