ハラスメントは今や社会問題となっており、人事担当者からもお悩みのお声をよく伺います。
そのため、多くの企業がハラスメント防止を目的とした教育を行っているものの、非効率を感じているケースが少なくありません。ハラスメント教育は一般従業員と管理職それぞれに行う必要があり、新任管理職の登用や中途入社のたびに研修を実施しなくてはなりません。
そこでおすすめの教育手法がeラーニングです。
本記事ではハラスメント教育の必要性からeラーニングで行う場合のメリット・デメリット、実施時のポイントまで詳しく解説しています。ぜひ最後までご覧ください。
ハラスメント教育が必要な理由
ご存じの方がほとんどかもしれませんが、ハラスメント教育が求められる理由を確認しておきます。
「ハラスメント」のいま
「ハラスメント」に端を発した事件・事故のニュースを見聞きしない日はありません。
先日も毎日新聞社のニュースサイトで「ハラスメント」をキーワードに過去1年分の記事を検索したところ、約500件がヒットしました。 「過労死」「自死」といった、思わず目を覆いたくなるような文字が、相変わらず日々の紙面を賑わせています。
一方、「アフター・コロナ」「ウイズ・コロナ」の時代を迎え、非接触化の進展がハラスメントの低減に寄与するかとの期待もあった中、実際にはテレワークでのセクハラやパワハラが、「リモートハラスメント」として問題になっているケースも多々あります。
東京都では相談窓口を開く など、この問題の根深さを感じずにはいられません。
政府もこの状況を脱すべく、2019年5月、職場における「いじめ・嫌がらせ」を防止するための、いわゆる「パワハラ防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)」が成立し、2020年6月に施行されました。そして2022年4月には中小企業も対象になります。
時代とともに拡大・多様化する「ハラスメント」の概念
では、「ハラスメント」と認識されているものはどれだけあるでしょうか?
法律で規制されているものは次の4つです。
- パワーハラスメント(パワハラ)
- セクシャルハラスメント(セクハラ)
- マタニティハラスメント(マタハラ)
父親の場合は、パタニティハラスメント(パタハラ) - 育児や介護に関するハラスメント(ケアハラ※)
※子供のケア、高齢者のケアに関するハラスメント
これからハラスメント教育を始められる企業においては、上記法律で定められている規制を元に、自社が抱えるハラスメントにおける課題を明らかにした上で優先順位を付け、絞り込むことが肝要と言えそうです。
ハラスメント教育の実施方法
「ハラスメント教育」の枠組みとそれ以外の教育研修とで、特別大きな違いがあるわけではありません。
ここではいわゆる「インストラクショナルデザイン」「ADDIEモデル」を用いて考えてみることにします。
インストラクショナルデザイン(Instructional Design)とは
元々は第二次世界大戦時のアメリカ軍の訓練モデルが元となっており、1980年代からは企業教育における人材育成メソッドとして広く取り入れられるようになりました。
教育が必要とされる様々なシーンにおいて、学習者の高い習熟と行動変容を目標として、より効果的・効率的で魅力的な学習環境を設計・開発するための、システム的な教授方法・ガイドラインのことを言います。
略してIDと呼ばれることもあります。
ADDIEモデルとは
このIDを推進する上で全体の流れを設計する際に用いる「IDプロセスモデル」のひとつに、研修を5つのステップに則って設計する「ADDIEモデル」があります。
通常、業績向上や、業績目標の達成ために、PDCAサイクルを回しながら業務を改善していく、というように、教育という枠組みの中で、よりよい教育を行っていくためにADDIEモデルを使用します。

1. Analysis(分析)
あるべき姿と自社の現状とを勘案し、5W2Hで検討します。
例えば自社として初めてハラスメント教育に取り組む場合で考えると、
- When(いつ?) :20○○年○月末までに
- Where(どこで?) :全社・全拠点で
- Who(誰が?) :全社員が
- What(何を?) :自社におけるハラスメント事案○件以内
- Why(なぜ?) :ハラスメント被害者(加害者)を撲滅するため
- How(どうやって?) :ハラスメント教育実施により
- How much(いくらで?):○,○○○千円以内
といった軸で、目的や目標を定義していきます。
2. Design(設計)
もし自社として初めて「(○○)ハラスメント教育」を実施される場合、
例えば、
- トップマネジメントからのメッセージ
- (○○)ハラスメントとは何か?
- 職場の(○○)ハラスメントについて考える(個人ワーク)
- 資料説明
- 職場の(○○)ハラスメントについて考える(グループワーク)
- 職場の(○○)ハラスメントについて考える(共有・解説)
- 「(○○)ハラスメント・コール」等、当社のルール
- クロージング
といった内容を全社で共通認識化することが求められます。
一方、これまでの経験やノウハウをお持ちの企業でしたら、
- 階層別(経営者~管理監督者~一般社員、協力会社等自社の看板で仕事をしていただいている方々)、
- 職能別(管理部門、営業部門、技術開発部門、生産部門、等)、
- 職場別(部、室・課・グループ、等)
といった切り口で、それぞれの時宜に合ったテーマ(「パワーハラスメント」「セクシャルハラスメント」等)を適切と思しき提供方法(対面、オンライン、eラーニング等)とを勘案し策定します。
3. Development(開発)
上記②で設計した提供方法に基づき、道具立てを進めていきます。
まずは講師をいつ、どなたに、どんなかたち(コンテンツ作成を含むか、共通コンテンツの講師持ち回りか、等)でお願いするか。また従来からの対面式やオンラインによる形態であれば、講義や配布資料、演習用問題・解答用紙、アンケート用紙の作成をしていきます。
またeラーニングに代表されるオンデマンドの形態であれば、講義等の編集作業が加わることもあります。
4. Implementation(実施)
上記③を具体的に実施していきます。実施の流れは他の教育研修と同様です。
対象者の選定 → 受講案内 → 実施 → アンケート
5. Evaluation(評価)
上記④で受講者より取った実施後アンケート、講師やオブザーバー参加したスタッフからの所感により短期的な実施後評価を行います。
さらにこの教育による行動変容の状況を数か月から1年程度モニターし、ADDIEモデルに反映します。
eラーニングでハラスメント教育を行う4つのメリット
前章でご説明した実施のポイントを踏まえて、eラーニングでハラスメント教育を行うメリットを4つご紹介します。
1. 時間や場所を問わず学習できる
eラーニングの最大のメリットは、時間や場所を問わずに受講者の都合のよいタイミングで学習に取り組めることです。
現在ではスマートフォンのようなモバイル端末を用いたeラーニングが主流になってきているため、まさに「学習の場所を選ばない」時代となっています。
2. 教育の質が均一である(講師に左右されない)
eラーニングでは、同じ学習教材を用いる限り、教育の質が均一といえます。対面型学習では、デメリットとして教育の質が講師の質に左右される点が挙げられます。eラーニングなら、そのような心配がありません。
また、教材などの改変が容易なため、常に最新の学習教材を提供できることも大きなメリットといえます。
3. 学習の進捗状況やフィードバックを一元管理できる
eラーニングにはLMS(Learning Management System)と呼ばれる学習管理システムが実装されています。
進捗状況やテスト結果などがプログラムで自動的に処理することもできます。
手入力や紙ベースでの管理が不要となり、簡単で効率な一元管理を実現できるのが魅力です。
4. コスト削減と量・質的向上との両立が出来る
日々の定型業務や他研修の運営と兼任であることが多い研修事務局担当者にとって、とく新規教育、さらに多種多様かつ対象も多岐にわたる「ハラスメント」研修教育企画と運営には、相当の負荷が掛かります。
eラーニング化によりこれらの負担が大幅に削減出来、ADDIEモデルにおけるEvaluation(評価)~Analysis(分析)~Design(設計)に注力することで、コスト削減と量・質的向上との両立が可能となります。
eラーニングによる学習のデメリットと気を付けるべきポイント
もちろんメリットだけでなくデメリットも存在するため、しっかりと理解したうえで、ご紹介するポイントを参考にしてみてください。
eラーニングによる学習のデメリット
1. モチベーション維持が難しい
eラーニングは受講者が「やりたいときに、やりたいだけできる」というメリットがある一方で、進め方が個人のモチベーションに依存している部分があります。
モチベーション維持は、eラーニングの課題といえるでしょう。
2. eラーニング学習教材を製作する手間やコストがかかりやすい
会社独自の重要なノウハウ等は、自社でコンテンツを作っていく必要があります。
しかし、日々のルーチンワークや他の研修等に忙殺される研修担当者にとって大きな負担となります。
一般的な知識やスキルは既製コンテンツを上手く活用するのが得策です。
eラーニングを活用したハラスメント教育を実施する際のポイント
デメリットを解消するためのポイントをご紹介します。
ポイント1 自走できるeラーニングシステムを選定する
eラーニングシステムには様々な種類があります。
中には、コンテンツを登録するのに、都度ベンダーに依頼しないとアップロード出来ないシステムがあり、これでは更新の度に手間がかかり、多忙極まる担当者の「足かせ」となる懸念があります。
「使いやすさ」と「自走できるか」を軸に実際のシステムを体験してみるのがおすすめです。
ポイント2 既製コンテンツの活用
こちらも上述の通り、会社独自の重要なノウハウ等は、自社でコンテンツを作っていく必要があります。
一方、それ以外の一般的な内容に関する教材は、ベンダーによる豊富な既成のコンテンツがありますので、その利用が得策と言えます。コスト・手間・クオリティなどの面でメリットが期待出来ます。
ポイント3 マイクロラーニング
eラーニングにおける実際の受講シーンは、業務のスキマ時間に行われることがほとんどかと思います。
「マイクロラーニング」という、5分~15分といった短時間で学習する方法が注目されています。
eラーニングと相性がよく、スキマ学習にも向いているため、忙しい部署の社員でも受講が可能です。
ポイント4 能動的学習環境の構築
講義一辺倒の内容は、いわゆる「受け身学習」の状態になります。
研修効果も自ずと期待出来なくなりますので、テストやワークを織り交ぜ、能動的な受講環境を構築してください。
まとめ
「ハラスメント教育」をとくに全社で初めて取り組まれる場合において、eラーニングは、一斉かつ同一品質での研修が可能となる強力な武器となります。
またシステムの機能やコスト・手間・クオリティなども従来に比べ大幅に改善されてきています。
KIYOラーニングが提供するAirCourseであれば、受け放題の既製コンテンツとしてハラスメント教育に使えるコンテンツが揃っています。
コンテンツ例
- 30分で学ぶ 「しない・させない」ためのパワーハラスメント研修
- 30分で学ぶ 「しない・させない」ためのセクシュアルハラスメント研修
- 管理職のためのパワーハラスメント防止研修【パワハラ防止法対応】
- 一般社員のためのパワーハラスメント防止研修【パワハラ防止法対応】
- ハラスメント防止研修_②モラルハラスメント
受け放題のコンテンツリストは以下よりダウンロードできますので、ご興味が少しでもございましたらぜひご覧ください。
またAirCourseでは自社のオリジナルコースもカンタンに作成可能です。
システムを無料でおためし体験もできますので、実際に「使いやすさ」を確かめてみてください。
ハラスメント教育にeラーニングを活用し、育成の質・効率をともに向上させましょう。