学習定着率を表すラーニングピラミッド│「社員が互いに教え合う」理想の教育環境は作れるか?第1回

ラーニングピラミッド理論では、「他者に教える」のが最良の学習方法とされていますが、企業内研修の場合には、「社員が互いに教え合う」のが理想の教育環境といえるでしょう。

この記事では、最新のITを活用して、どこまで「社員が互いに教え合う」理想の教育環境が作れるのかを全3回にわたって考察します。

連載第1回の今回は、学習定着率を上げるためには、どのような学習方法が適切かを考える際に広く使われている「ラーニングピラミッド理論」について解説します。

「「社員が互いに教え合う」理想の教育環境は作れるか?(全3回)」

第1回:学習定着率を表すラーニングピラミッド

第2回:Slackとは│メールやLineとの違い

第3回:Slackの限界とその補完方法

ラーニングピラミッドとは?

ラーニングピラミッド理論とは、学習方法平均学習定着率を関係付ける理論で、National Training Labolatory(アメリカ国立訓練研究所、NTL)の研究を端緒として発展しました。

ラーニングピラミッド理論では、7段階の学習方法とそれらの平均学習定着率をピラミッド型の図形で表現したものを「ラーニングピラミッド」と呼んでいます。

7段階の学習方法から構成されるラーニングピラミッドでは、ピラミッドの下に行くほど定着率が高いとされている

定着率を上げる7段階

ラーニングピラミッドでは、ピラミッドの下に行くほど定着率が高いとされていますが、各段階の詳細は次の通りです。

カッコ内の数値が定着率をあらわしています。

講義(5%)

一般的には、学校の授業やセミナーなどに出席している状態を指します。

企業内研修では、ILT(講師つきの集合研修)が該当します。

ラーニングピラミッド理論では、ただ席に座って講師の話を聞くだけでは、よほど興味のある内容でない限り講義内容のほとんどを忘れてしまうとされています。

読書(10%)

一般的は、決められた参考書・課題図書などを読むことを指します。

企業内研修では、会社から指定された書籍、もしくは社員が自分で選択した書籍を読むことが該当します。

自発的学習のために講義以外の時間を確保している点において、ITLよりは能動的だといえますが、ラーニングピラミッド理論では、単に書籍を読むだけでは知識があまり定着しないとされています。

視聴覚(20%)

一般的には、参考書の付録DVDや学習内容に関連したテレビ・ラジオ番組などを視聴することを指します。

企業内研修では、eラーニングもこれに該当します。

書籍と比較すると、動画・音声はより大きなインパクトを脳に与えるため、ラーニングピラミッド理論では、ある程度の知識の定着が期待できるとされています。

デモンストレーション(30%)

一般的には「先生が行う実験を見る」「工場見学に行く」などの行為を指します。

企業内教育では、ILT内で行われる講師による実演が該当します。

最近では、マイクロラーニングで用いられる現場での実務風景を撮影した動画の視聴もこれに含まれます。

実務に即した内容であれば、受講者の感覚に直接訴えかけられるので、ラーニングピラミッド理論では、標準的な内容の講義や読書よりもインパクトが大きく記憶に残りやすいとされています。

グループ討論(50%)

一般的には、グループ内で自由に意見を交換しあうディスカッションや、あらかじめ決められた順番・内容・役割に従って発言するディベートなどを指します。

企業内教育においては、ILTの受講後に講義のテーマに沿って受講者がディスカンションを行うワークショップなどが該当します。

リアルタイムの会話で意見を交換するには、頭の中で筋道立てて考えを整理することと自分の口で意見を伝えることが必要となります。

そのため、ラーニングピラミッド理論では、ただ見るだけ・聞くだけよりもさらに能動的な段階として、知識の定着率が高いとされています。

自ら体験する(75%)

一般的には、体育・美術・家庭科などの実技科目において、実際に自分の手や体を動かして感覚をつかむことや、現場に出向いて自分で調査・研究を行うフィールドワークのことを指します。企業内教育においては、新入社員の集合研修後に現場に配属されて最初に行われるOJTなどが該当します。これはデモンストレーションを自ら能動的に行うことになりますから、ラーニングピラミッド理論では、知識の定着率がきわめて高いとされています。

他者に教える(90%)

一般的には、与えられた研究課題に対する結果を他者の前で発表することを指します。

企業内教育においては、直接的には一般教育と同じような研究発表が該当しますが、企業内の場合、通常業務の過程で、新入社員、後輩、同僚に自分が所有する知識や経験を伝える機会は数多く発生するため、間接的には、この段階の学習機会を得る可能性が高いといえます。

物事を他人に教えるためには、自分でしっかりと内容を理解していなければならないため、ラーニングピラミッド理論では、もっとも知識の定着率が高い段階とされています。

企業内教育における最良の環境とは

ラーニングピラミッド理論には、数多くの批判があり、特に具体的な定着率の数字については、多くの疑問が投げかけられています。

しかし、ラーニングピラミッド理論の本質は、能動的な学習になるほど学習定着率が上がるという考え方であり、この点については、いまだに高い支持を得ています。

そういう意味で、最終段階の「他者に教える」が、90%という数字は別にしても、きわめて学習効果の高い教育形態であることを疑う余地はありません。

企業においては、通常業務の過程で、新入社員、後輩、同僚、時には上司に対しても、自分が所有する知識や経験を伝える機会が発生しますので、従来、企業内研修における研修形態としては認識されてこなかった「他者に教える」機会を促進することが、企業内研修の高度化につながるのではないでしょうか。

さらにいえば、企業内で発生する「他者に教える」場面では、「教える側」と「教わる側」は、都度入れ替わる可能性があります。

その意味で、企業研修における最良の教育環境とは、ラーニングピラミッドで最良とされている「他者に教える」を超えた「社員が互いに教え合う」であるといえます。

まとめ

ラーニングピラミッド理論とは、学習方法と平均学習定着率を関係付ける理論で、段階の学習方法とそれらの平均学習定着率をピラミッド型の図形で表現したものを「ラーニングピラミッド」と呼びます。

ラーニングピラミッドでは、ピラミッドの下に行くほど定着率が高いとされており、もっとも定着率の高い学習方法が「他者に教える」ことであるとされています。

ラーニングピラミッド理論には、数多くの批判がありますが、ラーニングピラミッド理論の本質は、能動的な学習になるほど学習定着率が上がるという考え方であり、この点については、いまだに高い支持を得ています。

そういう意味で、最終段階の「他者に教える」が、きわめて学習効果の高い教育形態であることを疑う余地はありません。

企業内で発生する「他者に教える」場面では、「教える側」と「教わる側」は、都度入れ替わる可能性があります。その意味で、企業研修における最良の教育環境とは、ラーニングピラミッドで最良とされている「他者に教える」を超えた「社員が互いに教え合う」であるといえます。

次回は、最新のITを活用して、どこまで「社員が互いに教え合う」理想の教育環境が作れるのかをSlackを例にし「第2回:Slackとは│メールやLineとの違い」と題しまして検証します。

「「社員が互いに教え合う」理想の教育環境は作れるか?(全3回)」

第1回:学習定着率を表すラーニングピラミッド

第2回:Slackとは│メールやLineとの違い

第3回:Slackの限界とその補完方法

 

 

ABOUTこの記事をかいた人

平井 明夫

ソフトウエアベンダーやコンサルティング会社で20年以上にわたりコンサルティング、企業経営に携わる。現在は、IT企業の新規事業立上げ、事業再編を支援するかたわら、データ分析、人材管理、LMSなどに関する講演・執筆活動を行っている。