人材のスキルや知識の向上、企業全体の効率化や生産性向上に大きな影響を与える「人材育成」は、現代のビジネス社会において非常に重要です。
特に、優れた人材を育成することは業務の効率化を図るだけでなく、社員のモチベーションやエンゲージメントの向上、さらには企業文化の発展にもつながります。
しかしながら、
- 自社でも人材育成をしたいものの、何から始めればよいのかわからない
- 効果的な育成手法が見つからず、人材育成を始められない
などといった悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか?
本記事では、人材育成に成功した企業の事例を10社紹介し、成功企業に共通するポイントや人材育成の王道ステップを解説していきます。
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人材育成を成功に導くためには、育成過程の注力ポイントを知り、必要な成果に向けて適切なステップと育成スキームを選択することが重要です。
KIYOラーニングでは、「人材育成で大切な8つのこと」を仕組みでカバーできる『デジタル時代の人材育成モデル』をお届けしています。
社員が成長し、最終的に成果をあげるまでに必要な施策とその流れをモデル化したものになりますので、自社の状況と照らし合わせて育成方法を検討したい方はぜひご活用ください。
目次
人材育成の成功事例10選
効果的な人材育成で成功している企業は、どのような手法を採用しているのでしょうか。ここでは、代表的な人材育成の成功事例を10社紹介していきます。
自社にどのような手法を取り入れるべきか、またどのように人材育成を進めるべきかのヒントを見つけていただければと思います。
株式会社浅野製版所
課題 | 育成手法 | 結果 |
---|---|---|
教育レベルがばらついており、新入社員が即戦力化できていなかった。 | 社外研修、全社員研修、管理職研修、リーダー研修 | 若手社員の即戦力化が進み、教育レベルの均一化が進み、個々の特性を活かしたキャリア形成が可能に。 |
株式会社浅野製版所は、新聞や雑誌などの広告原稿をより美しく、より効果的に表現するためのDTP・デザイン・印刷などのサービスを提供している企業です。広告業界の幅広い分野をサポートしています。
株式会社浅野製版所では、若手社員の教育情報を共有するきめ細やかなフォロー体制を確立しています。
具体的な取り組み例は、以下のとおりです。
- 内定時、面接所見と適性検査結果を若手社員本人に開示
- 誰がどのように教育を実施すれば即戦力化できるかをヒアリングと適性検査で分析し、最適な若手社員と育成担当者を配置
- 育成担当者向け教育の実施
- ライフプランやキャリア形成を含めた「働くということ」の意識づけをしたうえでの部署研修を実施
- 新入社員の報告・成長記録を人事部門がすべて管理
人事(部長)、配属部署、関連部署、管理職、教育担当者が連携することで教育レベルのばらつきを抑え、個人の特性を活かした効果的なキャリア形成を行っています。
株式会社エイワ
課題 | 育成手法 | 結果 |
---|---|---|
新入社員に対して統一された品質管理の教育が不足しており、若手社員の事業理解やものづくりに対する考え方の統一ができていなかった。 | 新入社員教育プログラム | 「図解でわかる会社の教科書 品質管理」を使った外部講師と部門長による統一教育が実施され、若手社員が企業の価値や品質管理の重要性を理解し、ものづくり企業としての一員として成長。 |
株式会社エイワは、建築設計施工やFRP製品(タンク、角槽、トラフ、覆蓋、その他)、コバルト合金他各種合金の製造販売を行う企業です。若手社員の育成として、新入社員教育プログラムを実施しています。
「図解でわかる会社の教科書 品質管理」をテキストにして外部講師と各部門長が講師になり、教育を実施しました。
品質管理の手法を軸に、会社事業の価値や意義、製品価値、企業人としての考え方や態度、品質管理、生産管理の手法など、統一した教育を行い、ものづくり企業の一員として若手社員を育成しています。
日研総業株式会社
課題 | 育成手法 | 結果 |
---|---|---|
リーダーや管理者といった社内の中核となる層の資格保有率が低かった。 | 中核人材育成研修、派遣常駐管理者研修、キャリアアップ支援 | 働きながら研修を受けられる環境が整備され、QC検定や機械保全技能士などの資格取得支援が実施され、スタッフのキャリアアップが実現。 |
業務請負や人材派遣・人材紹介、メディカルケア事業などを展開する日研総業株式会社では、人材育成で社内中核人材育成研修をはじめ、資格取得支援に注力したところ、働きながらの能力向上を実現しました。
具体的には全国の研修センターおよび本社研修室での中核人材育成研修(リーダー・管理者)や派遣常駐管理者研修などの研修を実施。忙しい中でも研修を受けられる環境を整え、スキルアップ支援を行っています。
また、スキルアップを希望するスタッフを募り、スクリーニングを行い、受験費用を援助。QC検定・自主保全士、機械保全技能士、第二種電気工事士、第1種衛生管理者などを対象に、個人のキャリアアップ支援として人材育成を図っています。
株式会社LIXIL シニアライフカンパニー
課題 | 育成手法 | 結果 |
---|---|---|
「現場の意見が経営層に伝わっていない」「評価基準が明確でない」という意見が多く、社員の満足度が低かった。 | 現場主導での人材発掘・育成(ツールの導入やスキルアップ支援) | 「やらされる側」から「主導する側」に回ることにより、人材育成に対する現場の意識が変化し、ツールの導入やスキルアップ支援のカリキュラム作成、ジョブローテーションの採用が実現。 |
株式会社LIXILシニアライフカンパニーは、介護が必要な高齢者やご家族のニーズにあわせて、老人ホームを自社・他社問わずに紹介、自宅リフォームや売却相談などを行っています。
従来は経営陣や人事が主導して育成方針を作成していましたが、「現場の意見が経営層に伝わっていない」「評価基準が明確でない」という意見が多く、社員の満足度が低いという点が課題として挙がっていました。
そこで、現場主導で人材発掘、育成の方針を立てることにシフトしました。
その結果、「やらされる側」から「主導する側」に回ることにより、人材育成に対する現場の意識が変化。スタッフ満足度調査で出た意見などを参考に、ツールの導入やスキルアップ支援のカリキュラムを作成するなどの取り組みを進めています。
また、経営陣や人事では現場に必要なスキルが判断できませんでしたが、現場主導となったことで「ジョブローテーション」が採用され、様々な介護度(自立者・重介護・認知症)のご入居者に対応できるスキルが身に付けられるようになりました。
参考:厚生労働省 人材育成事例019「株式会社LIXIL シニアライフカンパニー」
社会福祉法人 佑啓会 ふる里学舎
課題 | 育成手法 | 結果 |
---|---|---|
職員の知識やスキルを定着させるための継続的な研修と、効果的な振り返りの機会が確保できていなかった。 | 外部研修・階層別研修 | 研修の定期的な振り返りとアンケートを実施し、職員のスキルと知識の定着を促進。また、他事業所との交換研修により、実務経験が広がり、職員の成長を促進。 |
社会福祉法人 佑啓会 ふる里学舎では、 職員が職業人として生きていくうえで、仕事による自己実現とキャリア形成を行えるよう、年代・階層に応じた研修の機会を提供しています。
外部研修への積極的な参加を促すほか、新人、2〜3年目、中堅、役職者別に研修の実施や先進的な取組みをしている施設への視察研修を企画。障害者福祉について、多くの事業を実施している法人内の他事業所との交換研修を行うなど、別事業を見聞き経験する機会を作り、人材の成長を図っています。
また、経験年数に応じたグループ分けを行い、繰り返し継続して研修を実施することでスキル・知識の定着を促進。各研修後にはアンケートを実施し、研修内容の定着度を図る仕組みを構築しています。
参考:厚生労働省 人材育成事例016「社会福祉法人 佑啓会 ふる里学舎」
株式会社あいはら
課題 | 育成手法 | 結果 |
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若手社員から「基本的なビジネスマナーを学べる場が欲しい」との要望があったが、従来の研修方法では対応が困難だった。 | eラーニング | 全社員が積極的に受講するようになり、ビジネスマナーだけでなく幅広いビジネススキルの学習機会が増加。さらに、オリジナル動画でのカスタマイズ研修により、社員教育が強化され、新卒採用にも貢献。 |
国内の諸産業プラントや発電所、公共施設、建物など幅広い分野で電気設備工事を主体に事業を行う株式会社あいはらでは、若手社員から「基本的なビジネスマナーを学べる場が欲しい、会社としてもフォローしてほしい」という要望があり、会社としてもそのニーズに応える必要がありました。
しかし、コロナ禍で集合研修の開催が困難となり、従来の研修方法の限界を感じたため、eラーニングの導入を決断。
導入直後は多少の抵抗感をもつ社員や、操作方法についての質問があったものの、今では全社員が学習習慣を身につけ、積極的に受講するようになりました。
その結果、ビジネスマナーに加えて、ビジネススキル全般を幅広く学べる機会が増え、社員の大きな成長につながったのです。
さらに、数多くのオリジナル動画を作成し、社員のニーズに応じたカスタマイズ研修も実施しているため、「社員教育に積極的な企業」として新卒採用にも貢献しています。
エフエムジー&ミッション株式会社
課題 | 育成手法 | 結果 |
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マネジメント層の育成や社員のボトムアップが必要だったが、既存のシステムでは受講管理ができず、自社コンテンツの配信もできなかった。 | eラーニング | 「セルフラーニング・自己学習」の風土が形成され、DXやリスキリングに対応するための基礎ができた。また、関連会社間で共通コンテンツと各社独自のコンテンツを柔軟に運用可能に。 |
化粧品や栄養補助食品、ファッション関連品の製造・販売を行うエフエムジー&ミッション株式会社では、人事総務部人事課が中心となって、全社従業員の人材育成にeラーニングシステム「AirCourse」を活用しています。
従来は、マネジメント層からの「各社員のボトムアップ」や「マネージャー層の育成」、「会社方針の理解度向上」といった要請に応えるのが難しく、また、DXやリスキリングへの対応も課題となっていました。既存のサービスでは受講履歴が残らず、受講管理ができないという問題もありました。
「AirCourse」の導入後は、標準コンテンツと自社作成コンテンツを組み合わせて活用し、階層別研修や会社方針の共有など、様々な場面でeラーニングを活用できるようになりました。受講をKPIに含め、評価に反映させることで受講を促進した結果、「セルフラーニング・自己学習」の風土が形成され始め、自主的に学びを深める社員も現れています。
また、関連会社間で共通のコンテンツと各社に適したコンテンツを柔軟に運用できるようになり、効率的な人材育成が可能になりました。
参考:エフエムジー&ミッション株式会社様 AirCourse活用事例
株式会社ぐるなび
課題 | 育成手法 | 結果 |
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複数のExcelファイルを使用した受講管理が煩雑で、全国の営業メンバーに対する集合研修の実施に多くの調整と工数がかかっていた。また、社内のナレッジが分散しており、一元管理が必要だった。 | eラーニング | 育成に関する情報をAirCourse上で一元管理することで、運営・管理側の工数を大幅に削減。受講の進捗状況確認からアンケート結果管理、レポーティングまでが完結し、効率的な運用が可能になった。 |
株式会社ぐるなびでは、セールスイネーブルメントグループが中心となって、全国の営業メンバーの育成にeラーニングシステム「AirCourse」を活用しています。
従来は、Web会議システムを使用した集合研修が中心でしたが、日程調整や会議室の確保など、多くの調整と工数がかかっていました。また、数百名の営業メンバーの受講管理を複数のExcelファイルで行っており、非常に煩雑でした。
しかし、「AirCourse」を導入した結果、標準コースと自社作成のオリジナルコンテンツを組み合わせて活用できるようになりました。特に注力しているのが「営業パフォーマンス」という動画コンテンツで、営業プロセスを細かく分解し、各プロセスにおける活動内容やポイントを紹介しています。
この取り組みにより、いつでも学べる環境が整い、運営・管理側の工数も大幅に削減されました。レポート機能を活用して進捗状況やアンケート結果を共有するなど、幅広い活用が可能になっています。
株式会社フレスタ
課題 | 育成手法 | 結果 |
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対面での集合研修が困難であったが、継続的に人材育成を進める必要があった。その対策として、動画研修コンテンツを内製してみたが、イントラネットのデータ容量制限などが原因で、スムーズな移行ができなかった | eラーニング | eラーニングの導入に加え、振り返りシートに「動画研修を受講して、自分はいつまでにこういうことができるようになる」といった個人の目標を記載してもらい、上長にサインをもらって提出するという仕組みを運用することで、自発的に学習していく風土が根付き始めた。 |
株式会社フレスタは、「地域に密着した店舗展開」をテーマに、広島県を中心に岡山県・山口県含めて、63店舗(インタビュー時点)のスーパーマーケットを展開する企業で、生鮮宅配サービスなど、お客様のライフスタイルに寄り添った独自のサービスを展開しています。
従来は実地での集合研修で教育を行っていましたが、新型コロナウイルス感染症により対面での教育が困難になってしまったことをきっかけに、eラーニングシステム「AirCourse」の導入を決意。
また、今後は店舗業務のマニュアルをより分かりやすいものにしていく必要性も感じており、情報を明確に伝えるために「動画の活用」を検討し、「AirCourse」での動画研修を開始しました。
その結果、スキマ時間で学習が可能となり、社員のスキルアップにつながっ多だけではなく、振り返りシートに「動画研修を受講して、自分はいつまでにこういうことができるようになる」といった個人の目標を記載してもらうことで、自発的に学習していく風土が根付き始めました。
リノべる株式会社
課題 | 育成手法 | 結果 |
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社内の資料や動画コンテンツが散財し、「誰が」「何を」「どれくらい」学習しているのか把握できない状況だった。また、遠隔地の内定者や、中途採用者の覚えるべき内容が多すぎた。 | eラーニング | テスト機能や視聴履歴のレポート機能を活用して進捗管理が行えるようになると、特定のレッスンを長時間視聴している、何回も繰り返し受講しているなどの状況が可視化され、社員一人ひとりのウィークポイントも見えるようになった。 |
リノべる株式会社は、個人や法人向けのリノベーション事業を主体としつつ、テクノロジーを使ったプラットフォームの展開も行なっている企業です。
同社では、社内外に散在していたナレッジの整理や、新卒・中途採用者への一貫した研修体制の構築が課題となっておりました。また、遠隔地の内定者や、中途採用者向けの人材育成においても、知識やスキル習得のばらつきや、工数の多さが問題となっていました。
これらの課題を解決するためにeラーニング「AirCourse」を導入。コンテンツ作成のしやすさやテスト機能の自由度の高さが決め手となりました。
導入後は、テスト機能を活用した弱点の可視化や、研修の体系化が実現。結果として、研修工数を50%削減し、スキルの均一化を推進することができました。
今後は、動画コンテンツの充実やナレッジのアーカイブ化を進め、さらなる教育強化を目指しています。
人材育成が成功する会社の共通点
部下の育成には、企業と従業員双方にとって多くのメリットが存在します。ここでは、人材育成が成功する会社の共通点として、下記の4つを解説します。
- 経営層が人材育成を重要視している
- 明確な育成目的・ゴールを設定している
- 育成目的に紐付いた育成手法を選択できている
- 社員の自発的な成長を促す環境がある
経営層が人材育成を重要視している
成功する企業では、経営層が人材育成を単なる「コスト」としてではなく、「投資」として捉えています。
人材に対する投資は、長期的な成長や競争力の強化をもたらす重要な要素であると認識されているため、経営層は積極的に人材育成に関与しているのです。
例えば、経営層が人材育成に対して戦略的なビジョンを示すことで、育成の意義や目的が全社員に伝わり、企業全体で育成の重要性が共有されます。
また、経営層が関与することで、リソースや予算の確保、育成活動の優先順位が明確化され、実効性のある人材育成の実施が可能となります。
こうした経営層の姿勢が社員一人ひとりの成長意欲を高め、企業の持続的な発展につながっていきます。
明確な育成目的・ゴールを設定している
育成の目的が明確で、どのようなスキルや知識を育成したいのか、またそれによって企業がどのように成長するのかがしっかりと定められている点も、成功している企業の共通点として挙げられます。
企業が掲げるビジョンやミッションに基づいた育成計画や目標があれば、社員は自分の成長が会社全体の目標に繋がっていることを実感し、より自主的に動きやすくなります。
また、過度に高すぎる目標を設定すると、社員が達成感を感じにくくなり、モチベーションが低下する恐れがあるため、育成目的・ゴールは社員にとって無理のない範囲で設定することが重要です。
育成目的に紐付いた育成手法を選択できている
成功する企業は、育成目的に紐付いた育成手法を選択しています。
例えば、リーダーシップを養うための研修や、スキル向上を目的としたeラーニング、キャリアアップを支援するメンター制度など、目的に沿った手法を選ぶことで、社員一人ひとりに合った育成が可能になります。
しかし、ここで重要なのは育成手法に固執することなく、「なぜ育成が必要か?」という根本的な目的を達成するために、最適な手法を選ぶことです。
つまり、「研修を実施したい」「eラーニングを導入したい」という考えから始めるのではなく、自社の現状や課題を把握し、それを解決するために人材育成がどのように役立つのかを考え、そのうえで最適な手法を選ぶことが求められます。
社員の自発的な成長を促す環境がある
効果的な人材育成を実現するためには、社員が自主的に成長に取り組む環境を整えることが重要です。
例えば、企業は研修や講座を提供するだけでなく、社員が自由に学べる環境を作るため、通信教育費や書籍購入費を負担する制度を導入することが効果的です。
その結果、社員は「やらされている感」を感じることなく自分のペースで学び、キャリアアップにつながる知識やスキルを身につけることができます。
さらに、研修の選択肢を増やすことで社員が自分に合った学習方法を選べるため、積極的に学習に取り組む意欲が高まります。このような支援を行うことで、社員は自ら成長しようという意欲を持ち、組織全体の成長につながるでしょう。
「人材育成が成功する会社になる」王道ステップ
人材育成は闇雲に進めてしまうと様々な課題が生じることがあります。ここでは、人材育成の基本的な進め方について、順序だてて解説していきます。
育成目的の設定
人材育成を成功させるには、まず明確な育成目的を設定することが重要です。目的が曖昧なままでは、適切な育成手法を選ぶことができず、期待する効果も得られません。
育成目的を設定する際は、まず自社が抱えている課題を浮き彫りにして、それが育成によって解決できる課題かを見極めましょう。
さらに「半年以内に管理職のマネジメント力向上を目的とした人事育成を実施し、育成後の評価向上を目指す」といったような具体的なゴールを設定します。
目的が明確であれば、育成計画の立案や手法の選定もスムーズに進み、効果的な人材育成が実現できます。
関連記事:人材育成の目標|目標例や立て方、目標管理のポイントまで解説
経営層への提案
人材育成を成功させるためには、経営層の理解と協力が不可欠です。
現場レベルで育成の必要性を感じていても、経営層の承認が得られなければ、十分な予算やリソースを確保することは難しくなります。そのため、経営層に対して効果的に提案し、育成の重要性を理解してもらうことが重要です。
提案の際には、経営目標や事業戦略との関連性を示すことで、提案がしやすくなるでしょう。
例えば、「売上拡大のために営業スキルの強化が必要」「次世代リーダーの育成が事業成長の鍵になる」など、経営層が納得しやすい理由を明確に伝えます。
次に、具体的な課題とその影響を数値やデータで示し、育成によるメリットを数値で示すことで、経営層の意思決定を後押しできます。
育成計画の策定
経営層の理解が得られたら、次に目的を達成するための具体的な育成計画を策定します。
計画が不十分だと、育成の方向性がぶれたり、実施後に効果が検証できなかったりするため、十分な時間をかけて綿密な計画を立てることが重要です。
育成計画を立てるうえで、まずは育成対象者を明確にすることから始めます。全社員向けなのか、管理職候補者や特定部門の社員向けなのかによって、適切な内容や手法が変わります。
次に、達成すべきゴールと期間を設定します。「半年後から6ヶ月かけて人事育成を実施し、育成後は社員の評価を平均〇〇%向上させる」など、定量的かつ具体的な目標を決めることで、成果を測定しやすくなります。
さらに、評価指標を設定し、効果検証の仕組みを作ることも計画時に検討しておくべきでしょう。育成後に業務成果が向上したか、受講者の意識や行動に変化があったかなどを確認する方法を確立しておき、次回の育成計画に活かせるようにします。
関連記事:人材育成計画の立て方|階層別の記入例や目標設定、テンプレート
育成方法の検討
育成計画を策定したら、次に具体的な育成方法を検討します。
ここで重要なのは、「育成手法ありき」で考えるのではなく、育成目的や対象者に適した方法を選択することです。
また、効果的な人材育成を実現するために、複数の手法を組み合わせるのも有効です。
以下の表では、代表的な育成目的と、それに適した育成手法をまとめています。
育成目的 | 育成手法 |
---|---|
実務を通してスキルを習得したい。即戦力を育成したい。 | OJT(On-the-Job Training) |
多様な人との交流を通じて視野を広げたい。体系的な知識習得をさせたい。 | OFF-JT(Off-the-Job Training) |
特定のスキルや知識を集中的に学ばせたい。社員の意識改革を促したい。 | 研修(対面・オンライン) |
自主的に学習できる環境を提供したい。場所や時間を選ばず学習させたい。 | eラーニング |
社員同士のコミュニケーションを促進し、知見を共有させたい。 | メンター制度 |
社員の適性を見極め、柔軟なキャリア形成を支援したい。 | ジョブローテーション |
育成方法を選定する際は、コストや時間、受講者の負担も考慮し、実施後の効果測定ができる仕組みを整えることが大切です。目的に沿った適切な手法を選ぶことで、実践的かつ効果的な人材育成が実現できるでしょう。
関連記事:OJTとは?意味や研修のやり方、OFF-JTとの違いを解説
関連記事:OFF-JTとは?意味やOJT・自己啓発との違い、メリットを解説
育成の実践・フィードバック
人材育成計画は作成して終わりではありません。単に研修やトレーニングを実施するだけでなく、学びが実務に活かされているか、成長につながっているかを確認し、適宜改善することが重要です。
研修や教育プログラムを実施した後は、参加者の習得度を評価し、フィードバックを必ず行いましょう。受講者へのコメントや評価を残し、研修内容の定着度を確認することで、より効果的な育成へとつなげることができます。
また、実務で活かせているかを確認するために、1on1ミーティングを定期的に実施すると、上司と部下の対話を通じて学びの定着や課題の発見が可能になります。さらに、コーチングを取り入れることで、社員の主体性を引き出し、成長をサポートできます。
さらに、メンター制度を活用すれば、経験豊富な先輩社員との知識共有が進み、より実践的なスキルの習得が期待できます。こうした制度を組み合わせることで、企業全体として学びを支援し、成長を促す環境を整えることができるのです。
実践・フィードバックを繰り返しながら、社員のスキルアップと組織の成長を促進することが、人材育成の成功につながるでしょう。
関連記事:1on1とは?目的・やり方、効果を高めるポイントを解説
関連記事:コーチングとは?目的や役割、効果的なやり方・学び方を解説
関連記事:メンター制度とは?メリット・デメリットや成功事例を紹介
育成の文化定着
人材育成を一時的な取り組みで終わらせず、企業文化として定着させることが重要です。社員が継続的に学び、成長できる環境を整えることで、企業全体の競争力向上につながります。
そのためには、「学ぶことが当たり前」という風土を醸成し、従業員が自発的にスキルアップに取り組める仕組みを整えることが不可欠です。具体的には、以下のような施策が有効です。
施策 | 具定例 |
---|---|
学習支援制度の導入 | 研修費・通信教育費・書籍購入費の補助 |
ナレッジシェアの推奨 | 社内勉強会やナレッジ共有ツールの活用 |
成果を評価・還元する仕組みの構築 | 育成を評価項目に組み込む |
キャリアパスの明確化 | 学びが昇進やキャリアアップにつながる仕組み |
また、経営層などの上層部が率先して学び続ける姿勢を示すことで社員の意識も高まり、育成の文化がより根付いていきます。
企業全体で「学ぶことの価値」を共有し、持続的な成長を支える企業風土をつくることが、人材育成の成功には欠かせません。
まとめ
人材育成は、単なるスキルアップや知識の定着にとどまらず、企業の成長に直結します。
効果的な人材育成を実現するためには、明確な育成目的の設定、適切な育成手法の選択、実践とフィードバックの繰り返し、そして育成の文化を企業全体に定着させることが不可欠です。
また、育成方法の検討時には自社の目標や課題を理解し、それに合った育成方法を選択することで社員の成長を促し、組織全体の成果を最大化できます。
成功する企業の共通点や育成手法を参考に、戦略的な人材育成を実践し、企業の成長を支える人材を育てていきましょう。
人材育成を成功に導く「最新育成モデル」を活用しませんか?
人材育成を成功に導くためには、育成過程の注力ポイントを知り、必要な成果に向けて適切なステップと育成スキームを選択することが重要です。
KIYOラーニングでは、「人材育成で大切な8つのこと」を仕組みでカバーできる『デジタル時代の人材育成モデル』をお届けしています。
社員が成長し、最終的に成果をあげるまでに必要な施策とその流れをモデル化したものになりますので、自社の状況と照らし合わせて育成方法を検討したい方はぜひご活用ください。