リモートワークを導入する企業が増えるなか、集合研修がオンライン研修へと急速にシフトしています。そのため、企業にはより効率的な研修管理体制の整備と社員教育の実施が求められています。
これらを実現するためには、旧来のeラーニングシステムに代わる新しい企業内研修インフラの構築が必要とされており、その中核として注目されているのがLMS(Learning Management System:学習管理システム)です。
この記事では、現在の社員教育が抱える課題と、それらを解決するための新しい企業内研修インフラであるLMSについて解説します。
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オンラインで学習できるeラーニングシステムを使えば、より広範囲な人材のスキルアップや教育の均質化を実現できます。
時間や場所に縛られることなく、また、最新の情報に常にアップデートして学習コンテンツを提供できるため、新人向け・管理職向けといった階層別研修や、従業員のリスキリングなど幅広く導入されています。
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LMS(学習管理システム)とは
LMS(学習管理システム)とは、Learning Management Systemの略で、eラーニングの実施に必要な学習コンテンツの配信やテスト・アンケート結果の管理を行うシステムです。
従来のeラーニングシステムは、別途購入したeラーニングコンテンツや社内集合研修を録画した動画を、企業内LAN経由で配信するのが主な利用形態であり、あくまでも集合研修を補完する位置づけでした。
これに対して、LMSは、クラウド環境での利用を前提としており、多様な研修形態に対応し、研修管理業務のシステム化を促進することを目的としています。
eラーニングとの違い
eラーニングとLMSは、同じ意味で使われがちですが、双方には違いがあります。eラーニングとは、インターネットやデバイスを用いて、学習することを指します。一方でLMSとは、eラーニングを管理するシステム自体のことを意味します。
オンライン研修との違い
LMSとよく似た言葉にオンライン研修があります。オンライン研修はZoom等のビデオ会議ツールを用いた研修のことです。一般的にライブ配信で行われ、リアルタイムでの研修を前提としています。
企業研修で解決すべき課題と全体像
テレワークを実施する企業が増える中、企業の研修形態は大きく変化しています。テレワーク禍における企業内研修における大きな課題は主に2つあります。
1つ目は「いつでも、どこでも、受講できる環境の提供」です。
オフィスや自宅でも、PCやスマートフォンでも、場所やデバイスを問わず学習できる機会を提供することは、今後の企業内研修における最低限の条件となります。これには、実習やワークショップ、OJTなど、これまで集合研修でなければ困難だった研修プログラムを効率的、効果的にオンライン化することも含まれます。
もう1つの課題は「実施形態が多様化した研修の管理」です。
勤務形態がテレワークに移行するのは、受講者だけではなく研修管理者も同様です。さらに、オフラインとオンライン、集合研修、eラーニングとOJTといったように研修の実施形態も多様化しています。
このような状況では、従来のExcelなどに頼った研修管理では業務ワークフローが破綻することは目に見えており、研修管理業務のオンライン化や受講履歴、進捗など受講者データのデータベース化を早期に行う必要があります。
LMSは、テレワーク禍における課題の多くを解決します。
これに、従来の集合研修を代替する「Web会議システム」とOJTなどで関係者間のコミュニケーション・ツールとなる「グループチャット」を加えたものが今後の企業内研修インフラの理想的な構成といえます。
この構成においては、Web会議システムとLMSのeラーニング機能が、オフィスでも自宅でも、PCでもスマートフォンでも受講できる環境を提供します。
従来、オンライン化が難しかった実習、ワークショップ、OJTは、LMSのマイクロラーニング機能とグループチャットの併用により現実的となるでしょう。
同時に、LMSの研修管理機能を活用して管理者の環境に依存しないシステムを構築し、受講者データの収集とデータベース化を実現することも可能になります。
5つの特徴
LMSは、従来のeラーニングシステムと比較すると5つの特徴を持ちます。
1. クラウドサービス化/マルチデバイス対応
オフィス、自宅、あるいはそれ以外の場所にあっても、公衆インターネット回線を通じて、PCあるいはスマートデバイスで利用でき、いつでもどこでも受講できる環境が提供されるようになります。
2. 標準コンテンツの提供
従来のeラーニングシステムの場合は、eラーニングコンテンツの販売がベンダーの重要な収入源でしたが、LMSでは、サブスクリプション・モデルに基づくLMSプラットフォームの利用料が主な収入源となります。
これに合わせて、従来別売されていたeラーニングコンテンツが、利用契約内で受講し放題となる標準コンテンツとして提供されるようになったことが最新のLMSの第2の特徴です。
初期の標準コンテンツは、新卒研修で使われるような初歩的な内容のコンテンツが中心でしたが、質、量ともに充実する傾向にあり、中堅・管理職・経営層向けのコンテンツも含まれるようになってきています。
3. 研修ワークフローのシステム化
従来のeラーニングシステムでは、受講の申請から受講後アンケートの提出に至る一連の研修ワークフローは、電子メール、ファイルサーバなどを使用した手作業で実行されており、受講履歴データもExcelなどの汎用ソフトウェアで管理されていました。
LMSの第3の特徴はこの研修ワークフローをシステム化できることです。LMSでは、研修企画段階で、研修ワークフローをオンラインで設定し、以降の一連の業務プロセスも全てオンラインで処理することができます。
これにより、研修管理者の負担が大幅に軽減されるだけではなく、受講履歴データもLMS内のデータベースに一元的に管理されるため、特定の社員が受講した全ての研修を時系列にレポートするといった集計、分析が可能になります。
4. フィードバックとナレッジ共有機能
従来のeラーニングシステムでは、eラーニングコンテンツの配信が主な機能であり、確認テストの実施や受講後アンケートの提出といったフィードバック作業は、受講者と研修担当者間で、手作業で行われていました。LMSの第4の特徴はこのフィードバック作業をオンライン化できることです。
さらに、最新のLMSでは、ナレッジ共有機能も提供され始めています。最新のLMSが提供するナレッジ共有機能を利用すると、研修動画に対してコンテンツに対してYouTubeのような「高く評価」やコメントを書き込む機能を提供することにより、過去の受講者の評価や質疑応答の内容を蓄積し、新規受講者の受講意欲や理解度を高めることが可能になります。
5. マイクロラーニングへの対応
LMSの第5の特徴は、マイクロラーニングへの対応です。
マイクロラーニングとは、マイクロコンテンツ(数分程度の短い動画)を使用する新しい研修形態で、実習、ワークショップやOJTといった従来オンラインでは難しいとされてきた研修のオンライン化を実現するものとして注目されています。
LMSでは、スマートフォンなど一般的なデバイスで録画された動画を、アップロード、編集する機能を提供することにより、専用の機材や専任担当者を準備することなく、マイクロコンテンツを作成することが可能となります。また、登録された数多くのコンテンツにタグを付与することで、研修のテーマや受講者のスキルレベルに合った複数のコンテンツを抽出し、カスタムコンテンツとして提供することも可能となります。
参考:マイクロラーニングとは何か?特徴と効果的な活用方法を解説
導入メリット
ここからはLMSを企業に導入するメリットについて、受講者側と管理者側に分けて解説します。
(受講者側)学習の進捗状況が把握しやすい
LMSでは、受講者が過去の学習履歴やテスト結果を確認できます。自分自身で学習の進捗度合いを把握できるため、課題や不明点を明確にした上で研修に取り組むことができます。
(受講者側)時間や場所を選ばずに自分のペースで学習ができる
LMSは、インターネット環境があればPC・スマホ・タブレットなどのデバイスを使用して、時間や場所を選ばずに学習することができます。また、同じコンテンツを繰り返し何度も見返すことができるため、受講者が自分自身のペースで理解を深めることができます。
(管理者側)データドリブンな人材開発ができる
従来の集合研修では、研修内容を受講者がどれくらい理解しているのかを定量的に分析することに課題がありました。
一方でLMSでは、タレントマネジメントシステムなど人材開発のツールと連携して活用することで、データドリブンな人材開発を可能とします。
たとえば、LMSの管理機能で各従業員の得意分野や苦手分野を把握し、会社にとって不足しているスキルを伸ばしていくことや、従業員一人ひとりの得意スキルを活かせるポジションに移動させるといったことができます。
(管理者側)コストの削減につながる
LMSを導入することで、研修の講師や実施する会場の確保が不要となります。既存の研修コンテンツもしくは新たに制作したコンテンツをLMSに登録し、受講してもらうだけで研修が実施できるため企業にとって大幅なコスト削減になります。
(管理者側)教材のアップデートがしやすい
コンプライアンスや法律にかかわる領域では、毎年のように法改正が行われ、教材をアップデートする必要があります。LMSには教材の修正ができる機能が搭載されており、このような法改正のたびに簡単に教材をアップデートすることができます。
導入する際の注意点
LMSを導入する際に、担当者は以下の点について留意する必要があります
コンテンツを内製する場合、時間と手間がかかる
特定の業界の知識や慣習などに関する研修では、既存のコンテンツだけでは学習ニーズが満たせず、コンテンツを自社で内製する必要がある場合があります。必要な知識やスキルを習得させやすいというメリットがありますが、制作には時間と手間がかかります。
自社に教材制作のノウハウや経験がない場合は、学習コンテンツの制作を代行してくれるサービスを用いることも検討しましょう。
学習の意欲が受講者個人に依存しやすい
集合研修とは異なり、eラーニングでは受講者が講師や管理者の目の届かない場所で学習します。リアルでの受講者同士のコミュニケーションもないため、学習の意欲が受講者個人に委ねられることになります。
管理者は学習の進捗状況やテスト・アンケートの結果を踏まえて、進捗や習熟が芳しくない受講者に個別でフォローアップすることが求められます。
実技での研修が難しい
知識を取り入れるなどインプット型の研修とLMSは相性が良いものの、実際に体を動かす必要がある実技研修や受講者同士で、リアルタイムにコミュニケーションを取りながら進めるような体験学習には不向きです。
受講者の能力に応じて、eラーニングでの研修と実習を使い分けることが求められるでしょう。
具体的な活用方法・活用シーン
ここからはLMSを活用したより効果的な社員教育の活用法としてインターバル型研修とソーシャルラーニングについて解説します。
1. インターバル型研修
インターバル型研修とは1つのテーマの研修を一度にまとめて実施するのではなく、数ヵ月間のインターバルを間に挟んで複数回に分けて実施する研修形態です。
インターバル期間に前回の研修で学習したことの実践とそのレポートが義務付けられていることが特徴で、研修内容の定着化に非常に効果が高いといわれています。
しかし、インターバル型研修は効果が高いとされているにもかかわらず、研修担当者の管理負荷が大きいため、実際に実施している企業が少ないのが現状です。
インターバル型研修では、長期間にわたって多数の受講者の研修受講やレポート提出を管理する必要があり、研修管理者の負荷が重く、担当者の変更に伴う引継ぎ不足などが発生するといった多くの課題がありますが、LMSを活用することで、この課題を解決することができます。
LMSを利用すると、研修受講履歴やレポート提出状況をデータベースで一元的に管理し、担当者の変更に伴う引継ぎ不足などのリスクを解消することができます。また、レポートそのものをオンライン化することで、紙やファイルのやり取り、コピー、集約といった作業も不要になり、研修管理者の負荷が大きく低減されます。
例えば、KIYOラーニングが提供するクラウドサービスAirCourseには、インターバル型研修の実施に大変効果的な「提出課題」機能があります。
この機能を使うと、受講者が、課題に対し自身の考えや回答をテキスト形式で自由に回答したり、様々なファイル形式のフォーマットを添付ファイルとして提出したりすることができます。
また、管理者向けにも多くの機能が備わっており、例えば、課題提出の進捗状況を全受講者について一覧表として表示する機能もあります。
2. ソーシャルラーニング
ソーシャルラーニングとは、TwitterやLINEといったSNSをツールとして活用する学習方法のことです。
SNSでのやりとりを通じて行うため、職場の人間関係に限定されず、業務上の接点がない人や全く面識のない人でも、誰とでも学び合うことができる学習形態です。
参考:ソーシャルラーニングとは何か?実現するためのITインフラとは
3. コンプライアンスなどの全社員研修
コンプライアンス教育など、全社員を対象とした研修の場合、LMSを用いる企業が増えています。
セクハラやパワハラ・個人情報保護などコンプライアンス教育は役職を問わず、研修を受ける必要があるのが一般的です。そのため、一度に多くの社員が受講することができる研修会場を確保しなければならず、研修内容の作成や出欠管理など、担当者の負担が大きくなります。
そのため、集合研修ではなくLMSを活用しオンラインで実施することによって、短期間かつコストを抑えて実施することができます。
参考:eラーニングでコンプライアンス教育を行う7つのメリット
活用・導入事例
専門スキルを身につけてスタッフのキャリア形成をサポート|パーソルテンプスタッフ株式会社
人材派遣や人材紹介・アウトソーシングなどを手掛けるパーソルテンポスタッフ株式会社では、キャリア推進部キャリア推進室で「ネクスク経理」というサービスを運営しています。
ネクスク経理では、弊社のLMSシステム「AirCourse」を導入し、登録スタッフに簿記3級レベルのオンライン研修や実務研修の機会を提供し、経理職への転職をサポートしています。
AirCourseで週次の目標と学習進捗の共有の為のカリキュラムを制作し、毎週更新をしているため、受講者が今週中に受講すべきコンテンツを素早く認識できる仕組みを作っています。
また、受講の進捗状況を全員に公表しており、遅れている人には担当者がメール・電話・LINE等でフォローを実施、受講者のモチベーションを高めるために全体でのオンラインのキックオフを行っています。
そのため、多くの受講者が高いモチベーションを保ち、3.5ヶ月のコースを完了。受講を完了した人の多くの人が簿記試験を受験し、転職活動へと活かしています。
参考:理想のキャリア形成に向けた手厚いサポートを実現|パーソルテンプスタッフ株式会社 AirCourse活用事例
新型コロナウイルスによる環境の変化もLMSで柔軟に対応|多摩都市モノレール株式会社
東京の多摩地域を南北に結ぶモノレール事業を展開している多摩都市モノレール株式会社では、従来実施していた集合研修では、欠席者が出た際に講師を再度アサインする必要があることや、研修の出欠管理の工数が膨大になるといった課題を抱えていたことから、弊社のLMSシステム「AirCourse」の導入を決定しました。
導入当初は、輸送の安全を維持・推進する安全管理推進室のみで活用されていましたが、今では各部署が必要なオリジナルコンテンツを作成して社員の育成に役立てています。
集合研修からeラーニングに切り替えたことで、新型コロナ禍でも研修を実施できたことや、各社員の空いている時間に受講ができることから、時間効率を向上できたといった効果を得られています。
実際に現場の社員からも集合研修よりも受けやすい・操作がわかりやすく直感的にコンテンツを見ることができるといった声が上がっており、社長の年頭挨拶や鉄道の安全に関する動画マニュアルなど、さまざまなシーンで活用が広がっています。
参考:eラーニングを各部署が自発的に活用する環境を構築し、教育の効率化・効果UPを実現|多摩都市モノレール株式会社様 AirCourse活用事例
LMSを選ぶ前に検討すべきこと
実際にLMSのシステムを選定・導入する前に、検討すべき3つのポイントについて解説しま
す。
LMSの導入目的を明確にする
システムを選定する前に、LMSの導入によって組織にどのような効果をもたらしたいのかを
明確にしましょう。LMSのシステムは数多くのベンダーによって開発されており、達成した
い目的によって選ぶべきシステムは異なります。
運用の体制を整備する
LMSを運用するにあたって、ルール作りや実際の管理を行う体制を整備しましょう。LMSは各
部門や部署ごとに運用を実施するケースと、人事部が統括責任となるケースに分かれます。
自社の運用体制でどちらがマッチするのかを考えて、体制を作っていく必要があります。
また、LMSはただ導入するだけでなく、導入後の成果計測や改善につなげることに意味があ
ります。担当者が教育方針を計画〜実行し、効果測定ができるような組織体制を構築することが求められるでしょう。
受講者が自発的に学習できるようモチベーションを維持する
LMSの受講は、進捗状況が確認できるといっても、学習に対する態度は受講者本人のモチベーションに委ねられます。
トップダウンでLMSを導入するだけでなく、学習することによって受講者本人のキャリア形
成にどのような影響があるのか、また何を学ぶ必要があるのかなどを本人が自覚し、能動的
に受講していくような体制を作りましょう。
まとめ
LMS( Learning Management System:学習管理システム )について理解は深まりましたでしょうか?
コロナ禍となりリモートでのコミュニケーションが当たり前になったことで、その重要性は大変高まっています。
KIYOラーニングが提供するクラウド型eラーニングサービス「AirCourse」では、LMSとしての機能はもちろん多種多様な受け放題の動画研修もついており、様々な人材育成のお悩みを解決可能です。
特に「使いやすさ」「直感的な操作性」で多くの企業様から評価をいただいていますので、ぜひ一度その操作性を体験してみてください。
“失敗しない”eラーニング導入ガイドをお届けしています
オンラインで学習できるeラーニングシステムを使えば、時間や場所に縛られることなく、より広範囲な人材のスキルアップや教育の均質化を実現できます。
また、最新の情報に常にアップデートして学習コンテンツを提供できるため、新人向け・管理職向けといった階層別研修や、従業員のリスキリングなど幅広く導入されています。
『eラーニング導入・活用 完全ガイド』は、eラーニングの導入や活用をご検討中の人事・教育担当者の方々に向けてご用意いたしました。基本的なメリット・デメリットだけでなく、導入手順や実際の導入事例も交えて、eラーニング導入・活用におけるポイントを詳しく解説しています。
どなたでも無料でダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。