テレワーク時代の社員教育のポイント

遠隔社員教育を成功させるポイント

次に、遠隔社員教育を成功させるポイントについてご紹介していきたいと思います。これは当社がいろいろな会社様でeラーニングや遠隔社員教育というプロジェクトをご支援する過程で、様々な経験を積みながら学んできた事を共有させていただくものです。

1. 目的、対象者、達成目標を明確にする

まず1点目は、これは最初に行っていただきたいのですが、目的や対象者、達成目標を明確にしましょうということです。

これは当たり前に思われるかもしれませんが、意外とここをおろそかにして進めてしまうケースもあり、その場合はうまくいかない場合が多いと思います。

例えば、目的については、「情報セキュリティの強化」、対象者としては「社員全員」、達成目標としては「当社で必ず守るべきセキュリティ対策方法を理解し、常に実践する」というような形です。簡単なもので結構ですのでこの3点を整理していただいて、そして関係者でまず共有をしていく事が重要です。

通常、会社ではこのようなテーマは1つだけではなくて複数あるかと思います。ですので、このような形の表で、テーマ別に目的、対象者、達成目標を整理すると良いと思います。

こういった整理をしながら、関係者、プロジェクトチームの中でディスカッションをするのが有効です。関係者で、こういった活用テーマもあるんではないかとか、このテーマを行った上で次にこのテーマを行おうといった、テーマの洗い出しと優先度の整理を関係者と最初にしておくと、その後の導入がスムーズに進むと思います。

2. 徐々に適用範囲を広げる

次に、導入の進め方としては、一気に大きな範囲で大きなことをやりすぎるというのはやはり失敗しやすいと感じています。ですので、徐々に適用範囲を広げていくというようなアプローチの方がよいのではないでしょうか。いわば「Think Big, Start Small」で、大きく考えて小さく始めましょうということです。ずっと「Think Big 」だけだと大きな企画ばかり考えていてもなかなか一歩踏み出せないということにもなりますので、できるだけ「Start Small」で、早く小さく試してみるのがよいかと思います。試しながら、「こうやったらうまくいった」という成功例を作って、徐々に適用範囲を広げるというのが成功している会社様の多くが採用されている進め方と思います。

この考え方によれば、例えば、コンテンツ作成では、最初に何十個、何百個の講座を一気に作るのではなく、最初にプロトタイプ(試作品)ということで数講座を作ってみます。何人かの対象ユーザーに見てもらって、意見を聞いて改善点を反映したものを作り、講座の作り方なんかも習得して作り方を標準化してから展開します。このほうが成功率はやっぱり高いですね。テーマについても、先ほどテーマリストを紹介しましたが、最初に全10テーマを一度にやらないで、最初は1、2テーマから進めてみます。特に成果を上げやすく、必要性が高いものから実施してみて成功例を作った後で、それをノウハウにして他のテーマに拡大していきます。

対象ユーザーもそうです。最初にあまり優先度が高いユーザーではないところからスタートしても、あまり受講してもらえなかった、というようなことになりがちですので、教育ニーズが高い部門とか、情報ニーズが高い対象ユーザーから教育を実施していきます。そして、成功例を作ったあとでユーザー層を広げていくことで、他の部門も「既に成功例があるのであればやってみようか」というふうになってきます。このように、成功例を作ってから徐々に適用範囲を広げていくというアプローチを考えていただけるとよいのではないかと思います。

3. 「自社コンテンツ」と「既製品」を使い分ける

そして、次はコンテンツの準備に関してです。「自社コンテンツ」と「既製品コンテンツ」を使い分けるというのがコツです。どういうことかといいますと、会社独自の重要なノウハウ、この会社でしかやっていないこと、すなわち会社の強みについて教育するコンテンツは通常社外にはありませんので、これは自社でコンテンツを作るしかないです。しかもその自社独自の教育コンテンツというのが新たな強みになるわけです。会社にとって重要なノウハウを、社員が習得できるようなコンテンツを作ることができれば、これは非常に大きな会社の強みになります。

一方で、一般的な知識とか標準的なスキル、例えばコンプライアンス教育の一般的なものなどの一般的なテーマについては、車輪を再発明する必要性はありません。つまり、世の中に既製品コンテンツがありますから、外部のコンテンツを活用していく方が合理的です。この使い分けをうまく考えられると、重要なところにエネルギーやコストを集中することができます。

4.短時間で学習できる工夫をする

そして、コンテンツの作り方というところでは、eラーニングのコンテンツ制作にはちょっとコツがあります。それは何かというと、短時間で学習できる工夫をするというところです。業務の合間や隙間時間で学べるようにすると良いです。1時間の動画を1個作るのではなく、章立てにして5分とか10分といった短い単位に区切っていただくと隙間時間で学びやすくなります。また、このような短いコンテンツは、スマートフォン・タブレットで学びやすいため、移動時間なども活用することができます。

5.動画とアウトプット学習を組み合わせる

そして、コンテンツの種類としては、動画に加えて、アウトプット学習、つまりテスト等を組み合わせるとさらに教育効果が高くなります。動画中や見終わった後などにチェックテストを受けるような形です。テストは簡単なものでも、あるのとないのでは受講者の真剣度が結構違うんですね。そのため、最後にチェックテストがありますよということを伝えた上で、受講者に学んでいただくのがよいと思います。

コース構成の具体例、この画面は当社が提供しているAirCourseのコースの例なんですけれども、「はじめてのEXCEL」というコースに、いろいろなレッスンがあります。最初はデータ入力を学び、次に書式設定を学ぶ、といった順番でレッスンを学ぶようになっています。また、それぞれの動画を見た後に簡単なチェックテストがあり、最後に確認テスト(総合テスト)がある、といった構成になっています。

皆様がコンテンツ作る場合には、チェックテストはここまでたくさん入れなくても構いません。テストは最後に1個だけ入れるだけでも効果があります。

当社が提供しているコースでは、それぞれのレッスンの中に、さらに小さい動画のクリップが含まれており、1つの動画が3分~5分といった短い単位になっています。そのため、内容が分からない時に、すぐその場所だけ確認できるという形になっています。

6. 現場を巻き込む

そして次のポイントは、現場を巻き込んでいくということです。特に人事とか教育担当者の方が、そこだけで進めようとしてもなかなかうまく進まないケースが多いと思います。やはり現場の業務に必要な教育というのは現場でないとなかなか分からないですので、現場で必要なコンテンツを、現場で作って共有できるような仕組みを回していく事が重要です。

管理者がいなくても現場で回る仕組みを作っていくというのがポイントです。また、現場で組織で学び合うという習慣・文化を作っていくのが成功の最大のポイントかと思います。

7. 導入と保守の手間・コストがかからないシステムを選ぶ

あとシステムに関して少しだけお話させていただくと、なるべく導入や保守の手間、コストがかからないシステムを選ばれると良いと思います。オンプレ型(顧客先サーバーにインストールするタイプ)よりも、クラウド型のシステムの方が初期導入が簡単ですし、一般的に保守コスト等も安いですので、これから導入される場合にはクラウド型のシステムがおすすめです。

また、システムの各種設定や、システムのカスタマイズについては、最初から、自社に合わせて細かいカスタマイズをするよりも、最初はなるべくシステムの標準機能で実装して、そこからだんだん拡張をしていく「Think Big, Start Small」の進め方のほうがよいと思います。

8. コンテンツ登録や管理が簡単なシステムを選ぶ

そして最後はコンテンツ登録と管理です。ここは一つポイントがありまして、コンテンツを作ったり登録するのが大変なシステムを使ってしまいますと、業者さんにお願いしないとコンテンツを載せられないということになりがちです。そうすると現場でコンテンツを運用できないということになりますので、いずれ使われなくなってしまいます。

当社のツールも簡単にコンテンツを共有できるようになっていますが、現場でのコンテンツの運用管理が楽なシステムを使ってなるべく管理の手間を減らし、できるだけ現場主導で使ってもらうことが重要と思います。

ABOUTこの記事をかいた人

KIYOラーニング株式会社 代表取締役 東京工業大学情報科学科卒。外資系ソフトウェア会社、ITコンサルティング会社を経て、KIYOラーニング株式会社を創業。効率的な学習法を研究し、2008年にオンライン資格講座「スタディング(旧「通勤講座」)を開講、忙しい社会人でもスマートフォンで効率的に学べる講座として人気を博し、2020年2月現在で講座数26、累計受講者数6万人を超える。 2017年に社員教育クラウド「AirCourse」をリリース。受け放題の動画研修コースと、簡単に自社コースが配信できる利便性により、大企業~中小企業まで幅広い層の企業に導入されている。 現在は、人や組織の能力を最大に引き出すために、AIを使った学習の効率化に力を注いでいる。