テレワーク時代の社員教育のポイント

動画eラーニングによる遠隔社員教育への活用例

まず活用例から見ていきます。動画eラーニングによる遠隔社員教育への活用例ということです。先ほどテレワーク時代の社員教育の課題ということで7点挙げさせていただきましたが、それぞれの課題を解決するためのeラーニング活用法という形で見ていきたいと思います。

課題: 集合研修が難しい

まず1点目の課題として、集合研修が難しいという課題がありました。これを解決するための活用法はシンプルで、集合研修をeラーニング化するという方法です。おそらく、eラーニングを検討されている企業様で一番多い活用法ではないかと思います。現在、当社のお客様でも、まずこの使い方をされている企業様が多いです。

特に、これから新卒採用、新人研修の時期になってきますが、現状では集合研修の実施が難しいという会社様もあるかと思います。そのため、eラーニングでの研修実施を考えていかなければいけないということで検討されている会社様が多いです。

コンテンツ作成方法は比較的簡単で、研修の講義を撮影してeラーニングにして配信するという形になります。用途としてはいろいろありますが、例えば新卒採用や中途採用の入社時・入社後の研修(オンボーディング)、あるいは階層型の研修等、従来、集合研修で行っているもの全てが対象になり得ます。

また、eラーニングだけで社員教育ができるのかというようなご質問もよくあります。それに関しては、かなりの部分はeラーニングでできますが、内容によっては集合研修と組み合わせたほうがよいものもあります。これは「ハイブリッド型」と呼ばれる形態ですが、eラーニングと集合研修を組み合わせることで教育効果が非常に高くなります。この場合、大きく2種類の方法があります。

1つは、eラーニングを先に行い予習をしておく、つまり知識のインプットは全部eラーニングで行っておきその上で集合研修をする方法です。集合研修ではディスカッションやグループワークなどを中心にします。eラーニングを組み合わせることで、集合研修の時間を減らすことができます。またeラーニングで事前に予習しておくことで集合研修も密度が高くなります。

そしてもう1つの方法が、集合研修を行った後に eラーニングで復習をしたりフォローアップをしていくという方法です。こちらも最近よく使われている方法です。集合研修を撮影しておき、研修後にeラーニングに動画を載せて復習をできるようにしておきます。集合研修の中で与えられた、研修後のアクションプランやワークについて、eラーニングシステムからワークの提出をして上司や講師のほうからフィードバックをするといった使い方ができます。

このように、導入が簡単でメリットが多い方法ですので、テレワーク導入企業での社員教育方法を検討されている企業様は、まずこの集合研修のeラーニング化をお考えいただくのが良いかと思います。

メリットとしては、まず、遠隔地・在宅で教育ができます。また集合研修のための移動時間が削減できますし、教育部門の方の研修実施負担も大幅に削減することができます。その結果研修コストも減らすことができます。また、よく実施する研修に関してストック化することで再利用が可能になります。また、教育が必要な全ての人を教育できます。集合研修ではどうしても本社中心になってしまうというケースもあるかと思うのですが、各地の拠点や店舗のスタッフといった人たちも漏れなく教育することができます。

また、研修動画というのは比較的簡単に作成できます。研修自体がある意味一つのコンテンツですので、これを撮影するだけでコンテンツが作成できます。また、本セミナーの最後に簡単にご紹介させていただきますが、当社では集合研修のコンテンツ化をご支援する「動画制作おまかせパック」というサービスもご提供しておりますので、コンテンツ制作の人手が足りないとか、品質の高い講座が作りたいという場合にはご相談いただければと思います。

課題: 業務手順がバラバラ、仕事の効率が低い


次の課題は、業務手順がバラバラで仕事の効率が低いという課題です。どうしても在宅勤務では、会社からの指示やアドバイスがしにくいです。

これはよい解決法がありまして、動画マニュアルです。これが非常に今時といいますか、YouTube時代なって登場した学び方かと思います。標準的な業務手順を動画マニュアルにして配信をするという方法です。例えば、接客、倉庫作業、事務、製造工程など、会社では様々なオペレーションがあると思うのですが、そういったオペレーションの手順を動画マニュアルにします。その他、新しいシステムの操作マニュアルなども可能です。例えば勤怠管理やワークフローの承認申請等の画面操作もこういった動画マニュアルで説明することができます。

この動画マニュアル化のメリットですが、動画というのは文章よりも圧倒的に分かりやすいという特長があります。特にこの数年、YouTube、Netflix等、いろんなところで動画を見るというのがかなり一般化しています。また、その影響もあるかもしれませんが、文章を読んで理解するのがちょっと苦手な方が増えているのではないかなと感じます。動画を見て学ぶというのは最近の個人が普段行っている情報収集のスタイルですので、会社でも動画でマニュアルを用意してあげると非常に習熟が早いです。動画は繰り返し視聴できますから、習熟度や業務の生産性が高まります。また最近は外国人スタッフを活用されている会社様が多いですが、日本語だとなかなか難しいことも動画で見本を示してあげることで育成がしやすくなります。また、スマートフォン、タブレット等で視聴できるため、店舗などで PCが人数分用意できないという場合でもスマートフォンやタブレットで学ぶことができます。

コンテンツの作り方ですが、一番簡単なのはスマートフォンのカメラで動画を撮影する方法です。業務の手本となるような人を見つけて、その人の業務の方法を動画で撮ることでコンテンツを作成可能です。また、多少テロップを入れる等の動画編集を行った方が分かりやすくはなりますので、動画編集ソフトを使って行っていただくか、当社のような会社にそういった編集・制作などを依頼することもできます。

課題: OJTが難しく、見本を示せない

次は、OJTが難しく見本を示せないという課題です。動画マニュアルと似ていますが、こちらについても「見本を動画で共有する」というのが解決法になります。見本となるようなベテラン社員、OJTの先輩社員役を選び、その人の仕事の仕方を動画で共有するという方法です。

例えば、成績トップの営業が、商談やクロージングをどのように行っているかや、ベテランの接客担当がどうやって接客をしているのかについて示すため、見本となるような人を見つけて動画で撮って共有していくという形になります。こちらも先ほどの動画マニュアルと似ていますが、ポイントは優秀な社員のやり方を全社員に共有できるということです。

OJTというのは良い人に付くと非常に良いんですけれども、その業務が得意ではない人に付いてしまった場合ちょっと残念なことになってしまうんですね。しかし、この見本を撮って共有するという方法では、社員の中でベストな人のやり方を皆で共有できるというのは大きなメリットです。見本を真似することで、皆が早くできるようになります。特に文字だけでは伝えにくい、動作を伴う業務や、表情や声のトーンといった非言語のコミュニケーションが重要な業務に有効です。商談や提案、接客などは、書き言葉で示して指導しても「そうじゃないんだよな」というような感じになることも多いと思いますが、動画で見本を示した上でそれを真似て、そこで違いを見つけながらなるべく見本に近づけていくということをすると効率的に習得でき、業務の生産性が高まります。

課題: 部内でのナレッジ共有 ができない

そして次に、「部内でのナレッジ共有ができない」という課題がありました。これに関する解決策は、グループ内でナレッジ共有をしていくということになります。

ここに示している画面は、当社の「AirCourse」というツールを使い、「営業部」というグループを作ってその中でナレッジを共有している画面です。こういったナレッジ共有の機能を使うことで、組織内でナレッジを共有できる仕組みができます。

このようなナレッジ共有機能を使うと、例えば部内の業務の手順や改善方法を示した動画や資料、業務の参考になるような記事のURLなど、いろいろなフォーマットのものをナレッジとして共有していくことができます。在宅勤務だと、なかなか部門の中でワイワイ言いながら改善するというのはできませんが、こういったSNS的なものを使うと擬似的に部内で顔を合わせてカイゼン活動を行っているような場を作れます。

このように、現場で必要なナレッジを各自が共有して現場でナレッジを活用できるというのが、ナレッジ共有のメリットです。言い換えれば、個人の知識から、新たな「組織知」を創造できます。SNS的なツールを使うと、個人の投稿に対して、他の人が「いいね」やコメントをしたりといったことを行いながら、ナレッジを共有するモチベーションを高められます。

課題: 新商品などの最新情報が伝わりにくい

そして次に、テレワークだと新商品などの最新情報が伝わりにくいという課題があります。これに関しては「最新情報を共有する」というeラーニングの活用方法があります。

当然、プレスリリースとかカタログのような文書を共有するのはeラーニングツールを使わなくてもできます。しかし、社員がその文章を読んだだけで、この新商品の「ポイント」や「売り」をお客様に分かりやすく説明できるようになるかというと、なかなかそうはならないと思います。ですので、そういった重要な商品・サービスなどは説明動画にすることで、皆が特長や売りを説明できるように育成できます。

コンテンツの作り方としては、新商品・新サービスが出たときに、説明が上手な人にそれを説明してもらいます。それを動画で撮っておくことで、文章やWebページだけでは分かりにくいおすすめのポイント、セールストークを現場の社員に共有できます。営業やコールセンターのスタッフなど、顧客に接する社員が同じような説明ができるようになるということになります。

課題: 一体感が薄れる、孤独

そして次の課題です。これは属人的な事になるのですが、テレワークを進めていくと、どうしても組織としての一体感が薄れたり、あるいは孤独を感じている人が出てくることがあります。

それに関しては「メッセージを共有」するというeラーニングの使い方があります。例えば会社のトップや、部門のマネージャー、あるいは時にはスタッフの皆さんからのメッセージを動画で共有します。

定例会議の様子を動画で撮って配信したり、会社の重要な方針などはトップやマネージャーが動画でしっかり伝えます。社員の共有事項も、重要なことは担当の人が動画メッセージにして伝えていく事ができます。

単にメールなどでメッセージを流した場合との違いとして、eラーニングでは誰が見た/見ていないという確認ができます。そのため、メッセージを全員が見たかどうかの確認ができます。また「動画」というフォーマットは、文章よりも、想いや熱意を伝えられるという特長があります。

現状では、組織の一体感の醸成、孤独感の解消といったものに、eラーニングをうまく活用していただけると良いと思います。今、新型コロナウイルスの影響や対応方法について、皆様の会社で非常に問題になっているかもしれませんが、こういう危機を社員の皆さんで解消していこう、一緒に乗り越えて行こうというようなメッセージを出していただけると良いのではないかと思います。

課題: コンプライアンス意識が低下

そして最後に、コンプライアンス意識が低下するという課題です。在宅ワークでは、社員を監督しにくい状況になりますので、コンプライアンスを守らせるという事も非常に重要になってきます。

コンプライアンス教育を動画で配信するのは、多くの会社様で既に実行されている施策です。また、研修動画に加えて最後に理解度テストを入れることで、社員の理解度をチェックすることができます。

例えば、就業ルール、情報セキュリティ、ハラスメント、インサイダー等々、皆様の会社・業界で必ず守らなければいけないコンプライアンスというのがあると思いますので、そういったものを研修動画にして説明し、テストで理解度を測るという形です。

コンプライアンス教育のメリットとしては、情報漏洩やハラスメント、インサイダー等で事故を起こしてしまうと会社にとって大きな損害になりますが、このような社員が必ず守らなければいけない教育というのを漏れなく全員に行えるということです。そして受講記録、テスト履歴を確実に残すことができます。万が一、なにか事故が起こってしまったという場合でも、しっかり対策をしてきた事を外部に示せるかどうかというのも非常に大きなポイントになります。また受講をしていない人や、理解度が低い人、得点が低い人に対して、フォローアップや指導を個別に行うことができます。

ABOUTこの記事をかいた人

KIYOラーニング株式会社 代表取締役 東京工業大学情報科学科卒。外資系ソフトウェア会社、ITコンサルティング会社を経て、KIYOラーニング株式会社を創業。効率的な学習法を研究し、2008年にオンライン資格講座「スタディング(旧「通勤講座」)を開講、忙しい社会人でもスマートフォンで効率的に学べる講座として人気を博し、2020年2月現在で講座数26、累計受講者数6万人を超える。 2017年に社員教育クラウド「AirCourse」をリリース。受け放題の動画研修コースと、簡単に自社コースが配信できる利便性により、大企業~中小企業まで幅広い層の企業に導入されている。 現在は、人や組織の能力を最大に引き出すために、AIを使った学習の効率化に力を注いでいる。