オンライン研修のポイント~対面型研修との違いと必要な事前準備編~

本コラムでは、オンライン研修をスムーズに進行して、対面型研修と同等の効果を得るために必要な知識とコツをお伝えします。

会議室など参加者全員が一か所に集まって受講する対面型研修の講師を務めたことはあるけど、職場の自席や自宅のパソコンから受講するオンライン研修の講師を務めたことがない方には特にお役立ていただける内容です。

なお今回は基本編です。

実践編その1 研修実施時の役割分担と研修本番で気を付けること編
実践編その2 研修実施前後の取り組み編

対面型研修とオンライン研修の違い

まず押さえておきたいのが、対面型研修とオンライン研修の違いです。
大きく異なるのは「存在感」「距離感」「態度」の3つ。
順番に解説いたします。

1. 存在感

対面型では発言をしなくても、腕組みや咳払い、下を向いて黙るといった態度を示すことで、研修会場内で存在感を示すことができます。

オンライン型の場合、参加者はパソコンの画面上に同じ大きさで映るため、よほど奇抜な振る舞いをしなければ態度で存在感を示すことはできません。

存在感を示すことができるのは発言したときのみ。
発言しなければ、いないのと同じとも言えます。

2. 距離感

対面型では座る場所によって講師との距離感が変わります。

あまり研修に積極的でない受講者が後ろの席に座りたがるのは、講師との距離が近いと当てられてしまい、答えられないと恥ずかしい思いをするのではないかという不安から来ています。

オンライン型は講師が話しているとき、画面には講師のみ映し出されるため、1対1で対話している感覚で受講することができ、全員が同じ距離感となります。

3. 態度

対面型では人によって態度が大きく変わります。

とくに後ろの席に座りたがる受講者は受講態度が消極的な傾向があり、研修に集中できずに内職をしたり、ついウトウトしたりしがちです。

オンライン型は受講している自分の姿が画面に映し出されるため、他者から見られている緊張感もあって「しっかり受講しなきゃ」という意識が働くため、受講態度はおおむね良好です。

オンライン研修の事前準備で心がけたいこと

次にオンライン研修の事前準備で心がけたいことを紹介します。
ポイントは3つです。

1.ストレスを減らす
2.違和感を減らす
3.緊張感を減らす

それぞれ具体的に解説いたします。

1. ストレスを減らす

オンライン研修に慣れていない受講者は、操作に手間取ったり、チャットで質問したいのに素早く入力できず機会を逃してしまったりなど、オンラインで研修を受講すること自体に多くのストレスを感じます。

そのため受講者のストレスをできるだけ少なくする工夫が必要です。
ストレスを減らすために押さえておきたいポイントを3つご紹介します。

1)音声

講師の声がクリアに聞こえるように配信環境を工夫しましょう。

具体的には、PC内蔵のマイクではなく、ヘッドセットまたはマイク付きイヤホンを使います。PC内蔵のマイクの場合、周囲の音やキーボードをタッチする音など雑音が入りやすく、受講の妨げとなります。

ヘッドセットまたはマイク付きイヤホンはPC内蔵のマイクと比べると講師の声をしっかり拾ってくれるので、講師の声が受講者に鮮明に届きます。

パソコンとUSBで接続できるマイクを使うのも有効です。

2)通信環境

通信速度が不安定だと、音声が途切れたり、ビデオが固まって動かなくなったりすることが頻繁に起こります。

画面越しの講師の動きがスムーズでないと、受講の妨げになります。そうならないように通信速度を安定させる工夫をしましょう。具体的には3つの対策があります。

・Wi-Fiルーターの高速化

高速通信が可能な無線LANの規格11ac、11ad、11ax対応のWi-Fiルーターに切り替えます。なおWi-Fiルーターを切り替える場合は、パソコンも11ac、11ad、11axに対応していることを確認しておく必要があります。

・Wi-Fiルーターと有線接続

多くの場合、パソコンとWi-Fiルーターは無線LANで接続していることが多いですが、これを有線(LANケーブル)接続に変更します。

・Wi-Fiルーターの近くにパソコンを置く

もしWi-Fiルーターの高速化、有線接続への変更が難しい場合は、パソコンをWi-Fiルーターの近くに置くようにしましょう。無線LANでWi-Fiルーターと接続する場合、パソコンがWi-Fiルーターの近くにあるほど通信速度が安定します。

3)事前案内

オンライン研修のURLは社内のスケジューラに入れておけば、受講者が自分で確認して参加してくれるだろう。

そう受講者に期待しても、スケジューラを確認せず開始直前に参加しようとして「URLがわからない」と主催者に問い合わせてくる方は一定数いらっしゃいます。

開始直前の問い合わせで慌てないように、研修前日や当日朝にメールやチャット、メッセンジャーなどで研修開催の最終案内を行い、オンライン研修のURLを確実に伝えるようにしましょう。

2. 違和感を減らす

オンライン研修では、受講者が違和感を覚えてしまうと研修への意欲が大きく損なわれてしまいます

研修への意欲を維持するために、違和感を減らす工夫をしましょう。違和感を減らすために最も大切なのは見え方の改善です。

具体的には2つのポイントを押さえておきましょう。

1)目線を合わせる

机の上にノートパソコンを置いた状態だと、パソコンのカメラが目線より低い位置にあるため、相手から見ると上から目線に映ってしまい、「この講師は偉そうだ」「威圧感がある」と感じて講師を敬遠してしまうことがあります。

そうならないように目線を合わせる工夫をしましょう。具体的にはPCスタンドを使う、パソコンの下に台を置くなどして、パソコンのカメラと目線を同じ高さにします。

オンライン会議ツールは画面に映る自分の姿を事前に確認できる機能があるので、研修開始前に自分が画面にどう映っているか確認してから臨むようにしましょう。

2)照度を合わせる

画面に映る自分の顔が暗かったり、影になっていたりしないでしょうか。

原因は部屋の照明が暗い、逆光になっている、といったことが多いですが、顔が暗いと顔色が悪く見え、受講者によくない印象を与えてしまう懸念があります。

そうならないようにライトを使ったり、窓とパソコンの位置を調整したりして、自分の姿が明るく映るように調整しましょう

3. 緊張感を減らす

オンライン研修に限らず、研修開始前の受講者は緊張していることが多いです。

とくにオンラインの環境に慣れていない受講者が多い場合は、受講者の緊張感を減らす工夫を行いましょう。

受講者の緊張感を減らすために有効なのが前説です。前説とは本題に入る前の説明のこと。テレビやラジオの公開番組で観客に番組進行などについて事前に説明することを指します。

研修開始前に、研修中どうふるまったらよいかを一つひとつ丁寧に説明することで、オンライン研修の受講に慣れていない受講者の不安を解消することができます。

例えば、こんなことを前説で伝えます。

・カメラはオンで参加してください。
・講師が話しているときはマイクをミュートにしてください
・ヘッドセット、またはマイク付きイヤホンを着用してください
・質問はチャットで受け付けます、いつでも気軽に入力してください
・時間割と休憩時間の目安

もし時間に余裕があれば、開始前にチャット入力練習を兼ねて、例えば自己紹介や研修に対する意気込みをチャットに入力してもらったりすると、研修本番もチャットで質問しやすくなります。

まとめ

今回は基本編ということで、対面型研修とオンライン型研修の違い、そしてオンライン研修の事前準備について解説いたしました。よかったらご活用くださいませ。

実践編もご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

実践編その1 研修実施時の役割分担と研修本番で気を付けること編
実践編その2 研修実施前後の取り組み編

ABOUTこの記事をかいた人

大谷更生総合研究所合同会社:代表社員、問題整理の専門家 新潟県出身。明治大学商学部卒業後、KDDIで18年間システムエンジニアとして勤め、2010年に独立。KDDIでは主に総勢数百名の大規模システム開発プロジェクトの全体調整やシステム設計を担当。現在は問題整理手法、仕事のダンドリ、報連相を始めとするビジネススキル全般、売れ続ける仕組み構築に関する講師やコンサルティングを行っている。