企業における人材育成の重要性が高まる中、従来型の集合研修に代わる手段として「オンライン研修」と「eラーニング」が注目されています。
場所や時間に縛られず、効率的に学習を進められるという点で共通する2つの手法ですが、その目的や内容には違いがあります。
それぞれの違いを理解しないまま導入を進めてしまうと、期待していた効果を得られなかったり、逆に非効率な研修体制を生み出してしまったりする可能性もあります。
結果として、従業員のモチベーション低下や企業の成長を阻害する要因にもなりかねません。
そこで、本記事では「オンライン研修」と「eラーニング」の違いについて、それぞれのメリット・デメリットを交えながら詳しく解説していきます。

目次
オンライン研修とeラーニングの違い
オンライン研修とeラーニングは、どちらもインターネットを活用した学習形態という点では共通しています。
しかし、両者には明確な違いがあります。それぞれの違いを、目的・使用するツール・学習形式3つの観点から見ていきましょう。
目的
オンライン研修とeラーニングは、どちらもIT技術を活用した学習形態ですが、目的が大きく異なる場合があります。
区分 | オンライン研修 | eラーニング |
---|---|---|
目的 | ・特定のスキルや知識を短期間で習得させること ・業務課題の解決や組織目標の達成に繋げることが目標 | ・個人の学習ニーズやペースに合わせて、必要な知識やスキルを習得させること ・個人の能力開発やキャリアアップを支援することが目標 |
オンライン研修は、参加者同士の相互学習や講師との質疑応答を通じて、実践的なスキルを習得することを目的とすることが多いです。
一方、eラーニングは、自分のペースで繰り返し学習を進めることができるため、基礎知識の習得や資格取得など、個人の学習目標に合わせた活用が期待できます。
このように、オンライン研修とeラーニングは、その目的とするところが異なるため、どちらの学習形態が適切であるかは、研修の内容や対象者、期待する学習効果などを考慮して決定する必要があります。
使用するツール
オンライン研修とeラーニングでは、使用するツールが異なります。
オンライン研修で使用するツールとしては、主に以下のようなものがあります。
- ビデオ会議システム(Zoom、MicrosoftTeamsなど)
- ウェビナー配信プラットフォーム
- オンラインホワイトボード
- チャットツール
これらのツールを使うことで、講師と受講者がリアルタイムでコミュニケーションを取りながら研修を進めることができます。
一方、eラーニングで使用するツールとしては、主に以下のようなものがあります。
- LMS(ラーニングマネジメントシステム)
- ビデオ学習プラットフォーム
- テキスト教材配信システム
- テスト・評価システム
これらのツールを使うことで、受講者は自分のペースで学習を進めることができます。
学習形式
オンライン研修とeラーニングでは、学習形式に違いがあります。
項目 | オンライン研修 | eラーニング |
---|---|---|
学習形式 | 同時配信型 オンデマンド型 | オンデマンド型 |
特徴 | ・講師や他の受講者とリアルタイムにコミュニケーションを取りながら学習を進められる ・自分のペースで学習を進められる | ・インターネット環境があれば、いつでもどこでも自分のペースで学習を進められる |
メリット | ・講師や他の受講者と質問や意見交換を通して、理解を深められる ・自分のペースで学習を進められるため、忙しいビジネスパーソンでも学習しやすい | ・場所や時間に縛られず、自分のペースで学習を進められる ・繰り返し学習することができるため、理解を深めやすい |
デメリット | ・決まった時間に受講する必要がある場合がある ・インターネット環境やデバイスによっては、受講が難しい場合がある | ・講師や他の受講者とのコミュニケーション機会が限られるため、孤独を感じやすい場合がある ・学習のモチベーションを維持するのが難しい場合がある |
このように、オンライン研修とeラーニングでは、学習形式が大きく異なるため、自社に合った研修方法を選択する必要があります。
オンライン研修のメリット・デメリット
オンライン研修は、従来の集合研修と比較して、時間と場所の制約が少ないという大きなメリットがあります。しかし、一方で、オンラインであるがゆえのデメリットも存在します。
オンライン研修のメリット
オンライン研修のメリットとして、主に以下の点が挙げられます。
メリット | 説明 |
---|---|
時間と場所の柔軟性 | インターネット環境があれば、いつでもどこでも研修に参加することができます。 |
コスト削減 | 会場費や移動費、印刷費などのコストを削減できます。 |
参加者の負担軽減 | 移動時間や宿泊費などの負担を軽減することができます。 |
研修内容の標準化と均質化 | 録画や配信システムを活用することで、場所や時間に関わらず、常に質の高い研修を均一的に提供することができます。 |
参加状況の把握 | 参加者の出席状況や学習進捗を容易に把握することができます。 |
双方向性のある研修 | チャットやアンケート機能などを活用することで、参加者との双方向性のある研修を実施することができます。 |
このように、オンライン研修は、従来の集合研修に比べて多くのメリットがあります。
オンライン研修のデメリット
オンライン研修は、時間や場所にとらわれずに学習できる反面、いくつかのデメリットも存在します。
デメリット | 概要 | 対策例 |
---|---|---|
通信環境に左右される | 安定したインターネット環境が必要になるため、通信環境が整っていない場所では受講が難しい場合があります。 | 事前に推奨環境を参加者に伝えたり、モバイルWi-Fiルーターの貸し出しを行う、などの対策が必要です。 |
受講者の集中力維持が難しい | 集中力を維持するのが難しく、学習効果が低下する可能性があります。 | 小テストやチャット、グループワークなどを実施し、飽きさせない工夫を取り入れることが重要になります。 |
コミュニケーション不足 | 参加者同士のコミュニケーションが不足しがちになり、孤独感を感じやすくなります。 | グループワークや個別面談などを実施し、コミュニケーションを促進する工夫を取り入れることが重要になります。 |
機器トラブル発生の可能性 | パソコンやソフトウェアのトラブルが発生する可能性があり、その場合はサポートが必要になります。 | 事前に機器の動作確認や、トラブル発生時の対応マニュアルを準備しておくなど、サポート体制を整える必要があります。 |
セキュリティリスクへの懸念 | 情報漏洩などのセキュリティリスクがあります。 | セキュリティ対策ソフトの導入や、アクセス権限の設定など、セキュリティ対策を徹底する必要があります。 |
eラーニングのメリット・デメリット
eラーニングは、時間や場所にとらわれず学習できる自由度の高さが魅力ですが、一方で、学習者によってはデメリットに感じる点も存在します。
eラーニングのメリット
eラーニングには、時間や場所にとらわれずに学習できるという点以外にも、さまざまなメリットがあります。
ここでは、eラーニングのメリットをいくつかご紹介します。
メリット | 説明 |
---|---|
低コストで導入できる | オンライン研修のように、会場費や移動費、講師の交通費などがかからないため、低コストで導入できます。 |
自分のペースで学習できる | 時間や場所にとらわれずに、自分のペースで学習を進めることができます。 |
繰り返し学習できる | わからない部分を何度でも繰り返し学習することができます。 |
学習進捗を可視化できる | システム上で学習進捗を管理できるため、学習の進捗状況を可視化することができます。 |
学習コンテンツの均質化 | 講師のスキルに依存することがなく、常に一定の品質の学習コンテンツを提供することができます。 |
これらのメリットを踏まえると、eラーニングは、特に以下のようなケースで有効な学習方法と言えるでしょう。
- 新入社員研修など、大人数への研修を効率的に行いたい場合
- 専門知識やスキルを習得させたい場合
- コンプライアンス教育など、社員に必須の知識を理解させたい場合
eラーニングのデメリット
eラーニングは、時間や場所にとらわれずに学習できる便利な学習形態ですが、一方でいくつかのデメリットも存在します。
eラーニングのデメリットとして、まず挙げられる点は学習者のモチベーション維持が難しい点です。
eラーニングは自分のペースで学習を進められるというメリットがある一方、学習の進捗管理は学習者自身に委ねられます。そのため、学習意欲が低い学習者の場合、学習が滞ってしまう可能性も孕んでいます。
次に、eラーニングでは、学習者同士や講師とのコミュニケーションが不足してしまうという側面も挙げられます。
対面式の研修とは異なり、気軽に質問したり、他の学習者と意見交換したりする機会が限られるため、孤独を感じやすくなってしまう可能性も考えられます。
そして、eラーニングを受講するためには、インターネットに接続できる環境とデバイスが必要です。
また、eラーニングシステムの操作方法を理解している必要もあり、ITリテラシーが低い学習者にとっては、受講ハードルが高くなってしまう可能性も考えられます。
このようにeラーニングには、時間や場所の自由度が高いというメリットがある一方で、学習者のモチベーション維持やコミュニケーション不足、学習環境、ITリテラシーといった点が課題として挙げられます。
オンライン研修がおすすめのシーン
オンライン研修がeラーニングより適しているケースについて、以下で具体的に見ていきましょう。
リアルタイムのインタラクションが求められる場合
研修内容に対して、参加者同士または講師と参加者間で、リアルタイムに意見交換や質疑応答を行いたい場合は、オンライン研修が適しています。
オンライン研修 | eラーニング |
---|---|
双方向性が高い | 一方向的な学習になりがち |
疑問点をその場で解決できる | 疑問点を解決するまでに時間がかかる場合がある |
オンライン研修であれば、チャットやビデオ会議システムを活用することで、参加者同士の活発な議論や、講師への質問を促すことができます。
このようなインタラクティブな要素を取り入れることで、参加者はより深く内容を理解し、研修への集中力やモチベーションを高めることが期待できます。
一方、eラーニングは一方的に情報提供を受ける形式が一般的です。そのため、疑問点があってもすぐに解決できない場合があり、学習の進捗に影響が出る可能性があります。
例えば、新しいビジネス戦略やマーケティング手法を学ぶ研修の場合、参加者同士が意見交換をすることで、多角的な視点を得たり、実践的なアイデアを生み出したりする効果が期待できます。
このようなケースでは、リアルタイムのインタラクションを重視できるオンライン研修が適しているといえます。
新たな知識・スキルの即時適用が必要な場合
オンライン研修は、学習した内容をすぐに業務に活かせるという点で優れています。リアルタイムの研修だからこそ、研修内で得た知識やスキルを、業務時間内にすぐに試行錯誤することができます。
例えば、営業ロープレ研修をオンライン研修で行うとします。オンライン研修であれば、以下のような流れで即時適用と改善を繰り返すことが可能です。
- 営業ロープレの実施
- 講師や他の受講者からのフィードバック
- フィードバックを踏まえて実践
このように、オンライン研修は研修時間内での実践と改善を繰り返せるため、より実践的なスキルを習得できるというメリットがあります。
特に、新製品の発売や新しいサービスの導入など、すぐに知識やスキルを習得して顧客対応に活かす必要がある場合には、オンライン研修は非常に有効な手段と言えるでしょう。
チームの結束を強化したい場合
オンライン研修は、チームの結束を強化したい場合にも有効な手段となりえます。
従業員同士の相互理解を深め、一体感を醸成するためには、共同作業やコミュニケーションの機会を増やすことが重要です。
オンライン研修では、グループワークやディスカッションを通じて、メンバー同士が互いの意見を交換し、協力しながら課題に取り組むことができます。
このような経験を通して、チーム全体で目標を共有し、一体感を高めることが期待できます。
オンライン研修でチームの結束を強化するメリット | 具体的な内容 |
---|---|
コミュニケーション機会の増加 | グループワークやディスカッション、チャットなどを活用することで、気軽に意見交換や情報共有ができるようになります。 |
相互理解の促進 | オンライン上でも、お互いの個性や強みを理解し、尊重し合う関係性を築くことができます。 |
チームワークの向上 | 協力して課題に取り組むことで、チームとしての一体感を醸成し、共通の目標達成に向けて協力する姿勢を育むことができます。 |
オンライン研修は、場所や時間に縛られずに実施できるため、多様なメンバーが参加しやすく、チーム全体で共通の経験を共有しやすいというメリットもあります。
eラーニングがおすすめのシーン
eラーニングは、オンライン研修と比較して、時間や場所にとらわれず学習を進められる自由度の高さが特徴です。そのため、以下のようなシーンに最適です。
大量の社員への同時研修が必要な場合
eラーニングは、インターネット環境とデバイスさえあれば、時間や場所を問わずに学習できるというメリットがあります。
そのため、全国各地に拠点を持つ企業や、シフト制で働く従業員が多い企業など、大人数の社員に一斉に研修を実施することが難しい場合でも、効率的に研修を進めることができます。
従来の集合研修では、会場の手配や講師のスケジュール調整などに手間がかかりましたが、eラーニングであれば、これらの手間を省くことができます。
項目 | 集合研修 | eラーニング |
---|---|---|
時間と場所の制約 | 会場と時間に制約がある | 時間と場所の制約を受けない |
コスト | 会場費や講師の交通費などのコストがかかる | 会場費や講師の交通費などのコストを削減できる |
参加者の負担 | 会場までの移動時間や宿泊費などの負担がかかる | 移動時間や宿泊費などの負担を軽減できる |
このようにeラーニングは、従来の集合研修と比較して、時間や場所、コストの面で大きなメリットがあります。
反復学習や復習が必要な場合
eラーニングは、インターネット環境さえあれば、いつでもどこでも自分のペースで学習できるため、反復学習や復習が必要な場合に最適です。
従来型の集合研修では、一度聞き逃したり、理解が追いつかなかったりした場合でも、その場で質問したり、再度説明を受けたりすることが難しい場合がありました。
しかしeラーニングであれば、自分のペースで繰り返し学習したり、理解度に合わせて学習スピードを調整したりすることができます。
また、モバイル端末にも対応しているeラーニングシステムも増えているため、場所を選ばずにスキマ時間を有効活用して学習することも可能です。
認定試験や資格取得のための教育が求められる場合
eラーニングは、資格取得に向けた学習にも効果を発揮します。
例えば、個人情報保護に関する資格として「CPP/CPO」などがあります。
資格 | 概要 |
---|---|
CPP | CertifiedProcurementProfessional 企業内における購買・調達部門における専門的な知識やマネジメント手法の水準を評価する資格 |
CPO | ChiefPrivacyOfficer 組織の代表者によって任命された個人情報保護に関する最高責任者 |
これらの資格取得を目指す場合、関連法令やガイドライン等、膨大な量の学習が必要となります。eラーニングであれば、自分のペースで効率的に学習を進めることができます。
また、教材によっては模擬試験が提供されている場合もあり、試験対策としても有効です。
さらに、合格後も教材にアクセスできるeラーニングであれば、継続的な学習や知識のアップデートにも役立ちます。
社員のキャリアプランの幅を広げたい場合
eラーニングは、社員一人ひとりのキャリアプランに合わせた学習機会を提供できます。従来型の研修では、集合研修やOJTなど、時間や場所の制約があるため、個々の学習ニーズに対応することは容易ではありませんでした。
しかしeラーニングであれば、時間や場所にとらわれず、自分のペースで学習を進めることができます。そのため、自分のキャリアプランに合わせて、必要なスキルや知識を効率的に身につけることが可能です。
また、eラーニングは、多様な学習コンテンツを提供できる点も魅力です。企業は、ビジネススキル向上のための講座はもちろんのこと、語学学習や資格取得のための講座など、幅広いジャンルのeラーニングコンテンツを社員に提供できます。
社員は、自身のキャリアプランに基づいて、自分に必要な学習コンテンツを選択し、学習を進めることができます。このように、eラーニングは、社員一人ひとりのキャリアプランの実現をサポートする強力なツールと言えるでしょう。
まとめ
オンライン研修とeラーニングは、どちらも場所や時間に縛られずに学習できるという点で共通していますが、それぞれに異なる特徴があります。
どちらの手法が適しているかは、研修の目的や対象者、学習内容によって異なります。
リアルタイムの相互作用やチームワークを重視する場合はオンライン研修が、一方的な知識習得や個人のペースでの学習を重視する場合はeラーニングが適しています。
費用面では、一般的にeラーニングの方が低コストで済む傾向があります。
企業は、それぞれの研修の目的や内容、対象者に最適な方法を選択することが重要です。
効果的な社員研修に「eラーニング」を活用しませんか?
VUCA時代の社員研修は、企業を取り巻く流動的な環境にあわせた適切な研修プログラムや、定期的なコンテンツのアップデートが欠かせないため、eラーニングの活用が成功の鍵となります。
eラーニングシステムを活用すれば、時間や場所に縛られずに学習できるため、より広範囲な人材のスキルアップや教育の均質化を実現できます。
また、最新の情報に常にアップデートして学習コンテンツを提供できるため、社内人材に即戦力のスキルを身に付けさせる「リスキリング」にも活用可能です。
『eラーニング導入・活用 完全ガイド』では、効果的な社員研修をご検討中の人事・教育担当者に向けて、eラーニングの基本から自社運用のコツを導入事例とあわせて解説しています。
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