企業における人材育成の一環として資格取得支援制度があります。従業員の資格取得が進むことにより、企業全体の生産性・業務効率を高められる効果が得られるでしょう。
この資格取得支援制度は、従業員が積極的に利用したいと思える補助内容にしなければなりません。つまり制度設計が重要になるのです。
そこで本記事では、資格取得支援制度を導入するメリット・デメリット、企業が行う補助の3大パターン、策定する際のポイントを解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
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目次
企業における資格取得支援制度とは
企業における資格取得支援制度とは、企業が業務上必要と認定した資格を従業員が取得する際に、企業が金銭面でバックアップする制度のことをいいます。
資格取得支援制度があることで、従業員のスキルアップに繋がるほか企業側も業務効率や生産性の向上につながるなど、さまざまな利点が得られるでしょう。
少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少している昨今では、限られた人材のなかで各従業員が最大限のパフォーマンスを発揮するために、企業における人材育成の重要性が高まってきています。
そのため、資格取得支援制度を導入して従業員のスキルアップを人材育成のツールとしている企業が増えているのです。
資格取得支援制度で企業が行う補助の3大パターン
資格取得支援制度の利用が進むためには、企業が補助(負担)する内容が極めて重要となります。補助が手厚すぎると企業の負担が増えますが、補助が少なければ利用促進につながりません。
ここでは、資格取得支援制度で企業が行う補助の3大パターンを紹介します。
資格取得にかかる費用の一部または全部を負担
1つ目の補助は、資格取得にかかる費用の一部または全部の負担です。資格取得には、主に「教材代」「受験費用」「試験会場までの交通費」「講座受講費用」などのコストがかかります。
それぞれの企業の状況や考え方によって負担範囲を自由に設定できます。ここで費用負担範囲を設定するポイントを紹介します。
積極的に受験したいと思える設計にすること
資格取得支援制度があるにもかかわらず金銭面の支援が乏しければ、従業員の資格取得が進みません。そのため、制度を導入する以上は企業側がしっかりと投資する意思を示すことが必要となるでしょう。
企業が負担する回数に制限を設けること
従業員が何回受験しても合格しないのに、企業が支援を続けるのは本末転倒です。そのため、企業が負担する回数に制限を設けて従業員にも一定の緊張感を持たせることが必要だといえるでしょう。
資格取得後に報奨金を支給
2つ目の補助は、資格取得後に報奨金の支給です。いわゆる合格祝いのようなものと捉えてよいでしょう。従業員にとっては資格取得を目指すひとつのきっかけになるため、積極的な受験と学習期間中の励みとなる効果が期待できるでしょう。
報奨金の設定金額は、取得した資格によって変えるのもよいでしょう。資格自体の難易度や企業にとっての重要性によって設定金額を変えることで、従業員により取ってもらいたい資格の受験に導くことができます。
資格を取得した従業員に資格手当を支給
3つ目の補助は、資格を取得した従業員に資格手当を支給することです。資格手当を支給することで毎月の給料が上がるため、積極的な資格取得につながるでしょう。
また、資格を取得した従業員は、専門的な知識の修得と引き換えに一定の社会的責任や企業内責任が発生するケースが多いです。その責任を資格手当の支給で交換するといった考え方もできるでしょう。
企業で資格取得支援制度を設けるメリット
企業で資格取得支援制度を設けることで、さまざまなメリットが得られます。
メリットは主に以下の3つです。
従業員の学習意欲が向上する
1つ目は、従業員の学習意欲が向上することです。資格を取りたいけれど、教材代や受験費用が高くてなかなか資格取得に踏み切れないといった場合に、企業からの援助があることで従業員が資格取得に対して積極的になってくれるでしょう。
また、従業員が資格取得支援制度を利用するときは、当然企業に申請しなければなりません。企業に資格取得を宣言した上で金銭面の援助まで受ける従業員は、宣言どおり資格取得しなければならないといった一定の責任感が生まれます。
従業員が必死に勉強してくれるようになるため、各従業員の効率的なスキルアップが期待できるでしょう。
自社の業績向上につながる
2つ目は、自社の業績向上につながることです。資格取得支援制度を通じて従業員がスキルアップしていくことで、業務効率や生産性が高まります。
その結果として業績の向上が期待できるでしょう。つまり資格取得支援制度の導入は、将来への投資活動と位置づけられます。
採用市場での優位性アップを期待できる
3つ目は、採用市場での優位性アップが期待できることです。資格取得支援制度を導入している企業は、採用市場において以下の評価が得られるメリットがあるでしょう。
- 人材育成に力を入れている
- 従業員を大切にしている
- キャリアアップが期待できる
このような評価を受けることで、他社との差別化が図れます。生産人口が減少している昨今では、優秀な人材の確保するための競争が激化しているのが現状です。
このときに、資格取得支援制度があることで他社との差別化が図れるのがメリットの1つだといえるでしょう。
実際に、資格取得支援制度の導入にかかる工数やコストと比べると、新規採用にかかる労力や費用の方が高くなる傾向があります。
資格取得支援制度があることで、効率的によい人材を採用して企業に定着してもらえるといったメリットもあるのです。
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企業で資格取得支援制度を設けるデメリット
企業で資格取得支援制度を設けるデメリットは、以下の3つです。
コストが増加する
1つ目は、コストが増加することです。例えば、資格取得までにかかる費用の内訳は、主に以下のようなものがあります。
- 教材代
- 受験費用
- 試験会場までの交通費
また、専門の講師を呼んで学習指導を委託する場合は、そのコストもかかります。このように、資格取得支援制度を設けた場合はさまざまな費用がかかることを理解しておきましょう。
資格取得支援制度を導入した先に業績向上を目的とする場合は、いわゆる先行投資と位置づけられます。そのため、企業として投資回収の見通しをしっかり立てておく必要があるでしょう。
制度設計と策定に手間がかかる
2つ目は、制度設計と策定に手間がかかることです。資格取得支援制度の導入にあたってどの資格を支援対象にするのか、企業が負担する金額や内容はどうするのかといった項目を細かく設定する必要があります。
例えば、支援する資格の選択を誤った場合、従業員が自社の経営に関連しない資格を取得したところで企業価値の向上には役に立ちません。
また、コスト増を気にして企業が負担する金額を抑えすぎると、従業員が資格取得してくれなくなるなどのデメリットが生じます。
このように、資格取得支援制度を効果的に運用するためには、企業の経営に役立つ資格を従業員が積極的に取得してもらうことをイメージした制度設計が求められるのです。
また、資格取得支援制度の利用促進と従業員の公平性を担保するために「評価制度」と「資格手当」の策定が必須です。
策定後は管理や評価の手間が発生する
3つ目は、制度の策定後は管理や評価の手間が発生することです。資格取得支援制度を導入した以上は従業員の学習状況・取得状況などを把握する必要が生じます。
また、人事考課査定の際に資格取得を評価の対象にする場合は、その工数がかかります。
企業が資格取得支援制度を策定する際のポイント
企業が資格取得支援制度を策定する際のポイントは、以下の3つです。
各部署の推奨資格を明確化する
まずは各部署の推奨資格を明確化することです。例えば、不動産企業の営業部門であれば宅建士、経理部門であれば簿記など、部署や職種別で推奨する資格を設定しましょう。
従業員がやみくもに資格取得したところで企業の企業価値向上にはつながりません。あくまで業務に直結する資格の取得を目指してもらうのがセオリーのため、推奨資格を明確にしておきましょう。
補助金額については社内規定で明文化する
補助金額についてなどは、社内規定で明文化するのが望ましいでしょう。明文化することによって、人事担当者に毎回質問する、される手間が省けます。また、制度の公平性・透明性が担保される側面もあります。
評価基準をあわせて整える
資格取得支援制度を策定する際に、評価基準をあわせて整えることが大切です。評価基準が曖昧だと公平性の担保が難しくなるため、従業員の不満につながりかねません。
評価基準があることで従業員の学習意欲の向上にも役立つため、しっかりと策定しておきましょう。
企業の資格取得支援制度を充実させる「eラーニング活用」について
ここまで、資格取得支援制度の運用効果などを中心に解説してきました。しかし、実際には従業員が積極的に資格取得支援制度を利用してくれるのか未知数なところがあるでしょう。
そこでおすすめなのが「eラーニング」の活用です。eラーニングとは、インターネットを使った学習システムのことで、教材や学習カリキュラムを企業側が選択・設定できるという特徴があります。
パソコンやスマホからいつでも学習できるため、eラーニングであれば従業員が資格取得に向けて積極的に取り組む期待が持てるでしょう。
短期合格者と同じ学習をいつでもどこでも行える方法
さらに弊社では、短期間で合格した人の勉強法を徹底的に研究し、だれでも・いつでも・どこでも、短期合格者と同じように効率的に学習できるように開発された究極のオンライン資格講座 『STUDYing(スタディング)』を提供しております。
スタディングもeラーニングですので「いつでもどこでも学習可能」です。スマートフォン・携帯音楽プレーヤー・タブレット・ノートPC等で学べるため、業務時間に影響することなく効率的な学習を実現できます。
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社員の自主学習にeラーニングを活用した事例3選
資格取得支援制度の成功には、社員が主体的に学習に取り組める環境づくりが不可欠です。
ここでは、eラーニングを活用して社員の自主学習を促進し、効果的な資格取得支援を実現した企業事例をご紹介します。自発的学習文化の醸成、マルチデバイス対応による学習機会の拡大、継続的なモチベーション維持など、各社が工夫を凝らした取り組みが特徴的です。
これらの実践例から、自社の資格取得支援制度をより効果的に運用するためのヒントを見つけることができます。
社員の自発的学習を重視した教育環境で自己啓発を推進|日本瓦斯株式会社(ニチガス)様

LPガス事業から総合エネルギー企業へと事業転換を図る日本瓦斯株式会社様では、エネルギー自由化とIT改革に対応できる人材育成が急務でした。従来利用していたeラーニングサービスではコンテンツの重複が発生し、また営業現場を中心とした多様な勤務形態において全社統一の教育体制構築が課題となっていました。特に現場活動を優先しつつ、社員の自発的な学習をサポートする環境整備が求められていました。
AirCourseの800コース4,500本以上の充実したコンテンツを活用し、パートを含む全従業員が自発的に学習できる環境を構築しました。標準コースの全コンテンツを視聴可能とし、各社員が関心や必要性に応じて自由に受講できる体制を整備。必須受講はハラスメントとメンタルヘルスの2つのみに限定し、約97%の高い受講率を達成しています。先行導入していたSTUDYingと組み合わせることで、ITパスポート取得支援(資格手当付き)から自己啓発まで包括的な学習環境を提供しています。
導入後の主な成果
- 800コース4,500本の豊富なコンテンツで社員の多様な学習ニーズに対応
- 必須受講を最小限にしつつ約97%の高受講率を実現
- いつでもどこでも学習可能な利便性で現場活動との両立を支援
参考:現場活動とのバランスが取れた充実した学習環境|日本瓦斯株式会社(ニチガス)様 STUDYing活用事例
継続的な呼びかけでリスキリングの浸透を推進|マグチグループ株式会社様

総合物流企業であるマグチグループ株式会社様では、事業の多角化に対応するリスキリング推進が重要な経営課題でした。多数の事業会社(ディビジョンカンパニーを含む)で構成される企業として、365日24時間稼働する現場での研修実施の困難さから、体系だった研修が無く現場作業を通じた学びが中心でした。2023年の経営方針として「リスキリングの浸透」を掲げ、「学び直し・学び増し」の環境整備が急務となっていました。
AirCourseの導入により「学ぶ環境」と「学ぶ習慣」のきっかけを全社に提供しました。多岐にわたるグループ企業に対応できる「コースの多さ」と、自社コンテンツ(グループの歴史・フィロソフィー等)も同じツール内で管理できる機能を活用。リスキリング推進室による「発信を途切らせないこと」を重視した継続的な呼びかけと、推進者説明会・受講者説明会を通じた段階的な浸透により、学習習慣の定着を図っています。各事業会社では「なぜ学ぶべきか」の丁寧な説明や繁忙期を避けた「集中受講期間」設定など、現場に応じた工夫により受講率向上を実現しています。
導入後の主な成果
- 複数の事業会社に対応する豊富なコンテンツで全社リスキリングの基盤を構築
- 継続的な発信と段階的浸透により学習習慣の定着を推進
- 現場に応じた工夫により各事業会社での受講率向上を実現
参考:eラーニングを活用したリスキリングで自社の未来を創る!|マグチグループ株式会社様 AirCourse活用事例
細切れコンテンツでPC1人1台でない環境の課題を解決|株式会社フレスタ様

広島県を中心にスーパーマーケットを展開する株式会社フレスタ様では、コロナ禍で集合研修が実施できなくなった状況への対応が急務でした。PC1人1台の環境でない店舗現場において、従来の数時間単位の動画では「スキマ時間で受講できない」という課題があり、多様な勤務形態の従業員全員に平等な学習機会を提供することが困難でした。また、店舗業務マニュアルをより分かりやすく伝える「動画活用」の必要性も高まっていました。
AirCourseの「細切れになっている教育コンテンツ」を活用し、スキマ時間での学習を可能にする環境を構築しました。店舗業務の合間でも受講できる短時間コンテンツにより、従来の長時間動画では困難だった継続学習を実現。動画作成からeラーニング配信まで一元管理できる機能により、店舗業務マニュアルの動画化と効率的な配信体制を整備しています。受講者からは「短時間で効率よく学べる」との評価を得て、経営層からも学習効果の高さが認められています。
導入後の主な成果
- PC1人1台でない環境でも細切れコンテンツによる学習機会を提供
- スキマ時間活用により多様な勤務形態の従業員の学習継続を実現
- 動画活用による分かりやすいマニュアル化と効率的な情報共有を実現
参考:PC1人1台の環境でなくとも全従業員に教育機会を提供|株式会社フレスタ様 AirCourse活用事例
まとめ
企業の資格取得支援制度は、従業員の学習意欲向上や自社業績の向上、優秀な人材確保などのメリットがある一方で、コストアップやシステム構築・運用の手間などのデメリットもあります。
しかし、従業員の能力開発は企業にとって重要な投資です。支援制度を策定する際は、以下のポイントに留意することをおすすめします。
- 各部署の推奨資格を明確化する
- 補助金額は社内規定で明文化する
- 評価基準をあわせて整備する
さらに、eラーニングを活用することで、いつでもどこでも効率的な学習が可能になり、制度の充実と合格者増加が期待できます。
制度の種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
受験費用の全額または一部負担 | 積極的に受験したくなる | 企業負担が大きくなる |
合格報奨金の支給 | 合格への動機付けになる | 予算化が難しい |
資格手当の支給 | 優秀な人材の定着化が期待できる | 手当額の設定が難しい |
こうした制度を適切に組み合わせることで、メリット最大化とデメリット最小化を両立できるでしょう。
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