技術継承とは?OJT・動画・eラーニングの方法を比較し成功させるポイントを解説

「OJTだけでは技術継承が間に合っていない」「ベテランの暗黙知をどう動画化すればいいかわからない」「eラーニングを使って他社はどんな成果を出しているか」——こうした比較・判断に迷っている人事・教育担当者の方に向けて、本記事では技術継承の定義と背景、課題の整理、OJT・動画・eラーニングの方法別比較、そして実際に成果を上げている2社の事例を体系的に解説します。

経済産業省「2019年版ものづくり白書」によると、技能継承に問題があると回答した製造業の割合は86.5%に達しており、製造業では他産業と比べて技能継承の難しさが際立っています。特に製造業や建設業では技術習得に長い時間がかかりますが、ベテラン社員が大量に退職する時代を迎え、従来のOJT※だけでは技術継承が間に合わないという危機感を持つ企業も増えています。

※OJT(On-the-Job Training):実際の業務を通じて、上司や先輩が部下や後輩に仕事を教える教育手法のこと。

技術継承とは|定義と注目される背景を整理

技術継承を効果的に進めるには、まず「何を継承するのか」「なぜ今これほど重要視されているのか」を正確に把握しておくことが出発点になります。

技術継承の定義

技術継承とは、ベテラン社員が長年培ってきた技術・知識・ノウハウを、若手社員や後継者に伝承することです。単に作業手順を教えるだけでなく、経験に基づく「勘」や「コツ」といった暗黙知※まで含めて伝えることを指します。

※暗黙知:経験や直感に基づく知識のこと。言葉で説明するのが難しく、体験を通じて習得される。

技術継承は事業を継続し組織の競争力を維持・向上させるために不可欠な取り組みです。ベテラン社員が持つ技術を企業のノウハウとして展開し若手に伝えることは、他社との差別化や競争力の強化につながります。

技術継承が注目される3つの背景

日本では少子高齢化が進行しており労働力人口が減少しています。新たな人材を採用するのが難しくなる中、既存の従業員を早期に戦力化することが重要になっています。また、ベテラン社員が退職する時期が続いており、長年蓄積されてきた技術やノウハウが失われるリスクが高まっています。さらに製造業や建設業では技術が複雑化・高度化しており、従来の「見て覚える」「やって覚える」といった方法だけでは、若手が技術を習得するのに時間がかかりすぎてしまいます。

技術継承が必要な理由|属人化・退職リスク・若手育成長期化の3つのリスク

「なぜ今すぐ取り組む必要があるのか」を経営層・現場双方に説明するためにも、技術継承が必要な理由を3つのリスクとして整理しておきましょう。

ベテラン社員の高齢化・退職リスク

多くの企業で、ベテラン社員の高齢化が進んでいます。特に製造業や建設業では、高度な技術を持つベテランが退職するとその技術が失われてしまうリスクがあります。カナツ技建工業株式会社では「社員の高齢化も進んでいるため、いかに効果を上げて技術継承をしていくかが非常に大きな課題」と認識し、eラーニングを活用した技術継承に取り組んでいます。

技術の属人化によるリスク

技術が特定の人にしか伝承されていない状態を「属人化」と言います。属人化が進むと、その人が退職したり病気で休んだりした際に業務が回らなくなるリスクがあります。技術を組織の財産として体系化し、誰でもアクセスできる状態にすることが、組織の持続可能性を高めるために重要です。

若手育成の長期化

製造業や建設業では若手が一人前になるまでに非常に長い時間がかかります。カナツ技建工業でも「一人前になるには10年」という現実に直面し、効率的な技術継承の仕組みを整える必要性を感じていました。若手を早期に戦力化できれば、企業の生産性向上や人材不足の解消にもつながります。

技術継承の課題|製造業の86.5%が直面する3つの壁

技術継承の重要性はわかっていても、「なかなか進まない」と感じている企業が多いのはなぜか。代表的な3つの課題を整理します。

製造業の86.5%が抱える問題

経済産業省「2019年版ものづくり白書」(厚生労働省「平成30年度能力開発基本調査」より)によると、技能継承に問題があると回答した事業所の割合を産業別に見ると、製造業が86.5%と最も高い水準を示しています。このデータからも、技術継承が製造業をはじめとした多くの企業にとって深刻な課題であることがわかります。

暗黙知の言語化の難しさ

ベテラン社員が持つ技術には「勘」や「コツ」といった暗黙知が含まれています。これらは言葉で説明するのが非常に難しく、「見て覚えろ」「やって覚えろ」という形でしか伝えられないことが多いです。若手社員にとっては何を見てどう感じ取ればいいのかがわからず、習得に時間がかかってしまいます。

時間とコストの問題

OJTによる技術継承は、ベテラン社員が若手に付きっきりで教える必要があるため多大な時間がかかります。リノベる株式会社では、従来の方法では「ある担当者の場合、一つの研修コース業務を完了するのに90時間の工数を割いていた」という状況がありました。ベテラン社員は本来の業務もあるため、技術継承に十分な時間を割けないという問題も生じます。

技術継承の方法を比較|OJT・マニュアル・動画・eラーニングのメリット・デメリット

技術継承の手段は複数あり、それぞれにメリット・デメリットがあります。自社の状況に合わせた組み合わせを選ぶために、4つの方法を比較整理します。

OJTによる技術継承

実際の業務を通じて技術を伝える最も一般的な方法です。現場で実際に作業しながら学べるため実践的なスキルが身につき、すぐに業務に活かせる知識・スキルを習得できる点がメリットです。一方で、ベテラン社員が付きっきりで教える必要があり多大な時間がかかること、教える人のスキルや性格によって伝わる内容に差が出ることがデメリットです。

マニュアル化・文書化

技術をマニュアルや文書として残す方法です。手順を整理して体系的に学べるようになること、誰が学んでも同じ内容を習得できることがメリットです。一方で、複雑な作業や微妙な動作は文字だけでは伝えるのが難しいというデメリットがあります。

動画による技術継承

近年注目されている方法で、実際の作業を動画で記録することで業務の手順や注意点をわかりやすく伝えられます。文字だけでは伝わりにくい技術も視覚的にわかりやすく伝えられること、何度でも視聴できるため理解度に応じた学習ができること、手の動き・姿勢・道具の使い方など細かな部分まで正確に伝えられることがメリットです。動画の撮影や編集には一定の手間がかかる点がデメリットです。

eラーニングの活用

インターネットを利用してオンラインで学習する方法です。動画や資料をeラーニングシステムにアップロードし、従業員がいつでもどこでも学べる環境を整えます。時間・場所を選ばずスキマ時間に学習できること、誰がどこまで学習したかを一元管理できること、テスト機能を使って理解度を確認できることがメリットです。AirCourseは初期費用0円で導入可能なため、導入コストを抑えた運用が可能です。

動画・eラーニングで技術継承を効率化するメリット|OJT単独との違いを5つの観点で比較

OJTとの組み合わせでeラーニングを活用する場合、どのような効果が期待できるのかを具体的に把握しておきましょう。5つの観点から整理します。

視覚的にわかりやすい

工具の持ち方、力の入れ具合、作業のリズムなど、言葉で説明するのが難しい部分も動画なら正確に伝えられます。文字だけでは伝わりにくい技術も、動画なら視覚的にわかりやすく伝えられます。

繰り返し学習できる

従業員は自分のペースで何度でも動画を視聴できます。一度では理解できなかった部分も繰り返し視聴することで確実に習得でき、「何度も質問することへの抵抗感」という心理的ハードルも下げられます。

教育の均一化

OJTでは教える人によって伝える内容にバラつきが生じることがありますが、動画・eラーニングを使えば全員が同じ内容を学べるため、教育の均一化を実現できます。

時間とコストの削減

リノベる株式会社では、AirCourseを導入した結果、研修業務の工数を90時間から45時間に半減することに成功しました。ベテラン社員は本来の業務に集中でき、若手社員も効率的に学習できるようになります。

習熟度の可視化

eラーニングシステムのテスト機能を使えば従業員の理解度を可視化できます。リノベるでは、テスト分析により「平均点が低いポイントや、同じところで同じミスをしてしまうといったウィークポイントの可視化ができる」ようになり、その部分にフォーカスした研修で効率的なスキルアップを実現しています。

AirCourseで技術継承を効率化した成功事例|カナツアカデミー発足・研修工数50%削減を達成した2社

施策の効果を判断するうえで最も参考になるのが実際の導入事例です。業種・規模・課題の異なる2社の取り組みと成果を紹介します。

カナツ技建工業株式会社(建設・土木・水処理施設、283名)

背景・課題として、「一人前になるには10年」という現実として技術習得に長い時間がかかること、社員の高齢化が進んでいるためベテラン社員の技術継承が急務であること、「今のうちに、ノウハウをきっちりと教育できる仕組みを整えたい」という強い課題意識がありました。

AirCourse導入の効果として、「KANATSU AKADEMY(カナツアカデミー)」という委員会を発足し技術継承に取り組んでいます。土木部門・建築部門など各部門から選出されたメンバーが講師となってオリジナルコースを作成し、現場へ取材に行って撮影した動画にPowerPointスライドや写真も組み合わせてわかりやすいコンテンツを制作しています。

「若手の早期育成」を目的に体系立てた教育を提供しており、「受講者からの高評価もあるので、継続することで成果は出ていくと予想しています」と述べており、技術継承の効率化に手応えを感じています。

事例記事:未来に向けた人材育成・人づくりのためにカナツアカデミーを発足。技術継承に活用

株式会社あいはら(建設・電気設備工事、100〜300名)

背景・課題として、電気設備工事を主体に社会インフラを支える同社では、集合研修の実施が困難になったことに加え、若手への技術継承が急務の課題となっていました。これまで明確な教育計画・教育体系がなく、技術の伝え方が属人的になっていたことへの問題意識から、「オリジナル動画をアップできる仕組みで、若手への技術継承を体系化したい」という強いニーズがありました。

AirCourse導入の効果として、eラーニング委員会を発足し、オリジナルコンテンツによる技術継承に取り組んでいます。若手への技術継承を目的としたオリジナル動画の制作・配信に加え、社員紹介やトップメッセージの共有など社内コミュニケーションの活性化にも活用しています。

また、採用活動においても「社員の自己啓発支援をeラーニングで実施しています」と打ち出すことで新卒採用力の向上も実現しました。これまで不明確だった社内の教育体系が整備され、技術継承の仕組み化に手応えを感じています。

事例記事:若手への技術継承、コミュニケーション活性化。新卒採用力アップを実現

技術継承を成功させるポイント|経営層のコミットメントから継続的な改善まで

技術継承を「仕組み」として定着させるには、単発の取り組みではなく継続的な運用設計が必要です。成功に向けた4つのポイントを確認しておきましょう。

経営層のコミットメント

技術継承を成功させるには経営層のコミットメントが不可欠です。経営層が技術継承の重要性を理解し予算・人員を確保してトップダウンで推進することで、組織全体に技術継承の文化が醸成されます。

計画的な実施

行き当たりばったりで進めるのではなく、誰の技術を・誰に・いつまでに継承するかを明確にし、失われると影響が大きい技術から優先的に取り組むことが重要です。

継続的な改善

技術継承は一度実施して終わりではありません。受講者のフィードバックを反映し常にコンテンツをアップデートすることで、より効果的な技術継承を実現できます。

動画・eラーニングとOJTの組み合わせ

eラーニングで作業の全体像や基本的な手順をあらかじめ学び(反転学習)、OJTでは現場の細かなコツや注意点の習得に集中するという役割分担が最も効果的です。OJTの時間を最小限に抑えつつ実践的なスキルを効率的に習得できます。

技術継承の仕組みづくりを検討している方へ

技術継承の仕組みを整えるにあたって、次の3ステップで進めると設計がスムーズです。

ステップ①:「今すぐ記録すべき技術」を特定する

退職リスクの高いベテランが担っている技術のうち、属人化度が高く・代替が難しい工程を優先します。「全員分を一気に動画化する」のではなく、最もリスクの高い1〜2名から始めることで、運用の負担を抑えながら継続できます。

ステップ②:動画化→eラーニング搭載→OJT補完の流れを設計する

ベテランの技術を5〜10分程度の動画に分割してeラーニングシステムに搭載し、若手が事前学習を終えた状態でOJTに臨む「反転学習」の流れを設計します。カナツ技建工業の「カナツアカデミー」のように、各部門のメンバーが自ら講師になれる仕組みにすると継続しやすくなります。

ステップ③:無料トライアルでテスト機能・視聴履歴レポートを確認する

AirCourseは初期費用0円・月額200円/名〜で試験導入が可能です。習熟度を可視化するテスト機能、個別フォローに活かせる視聴履歴レポート、オリジナルコンテンツの作成操作のしやすさを確認してから本格導入を判断することをおすすめします。