ソーシャルラーニングのためのITインフラ|ソーシャルラーニングを実現するためのITインフラとは?第2回

SNSを利用したコミュニティによる学習方法であるソーシャルラーニングが、新しい企業内研修形態として注目されています。

しかし、TwitterやLINEといったパブリックSNSの使用は、セキュリティやコンプライアンスの面で問題があります。また、SNSにもそれぞれ特徴があり、ソーシャルラーニングに必要な機能を全て持っているとは限りません。

この記事では、企業内研修形態としてのソーシャルラーニングの特徴と、それを実現するためのITインフラについて全3回にわたって解説します。

第1回:ソーシャルラーニングとは何か?
第2回:ソーシャルラーニングのためのITインフラ(本記事)
第3回:理想のソーシャルラーニング環境に近づける方法

連載第2回の今回は、ソーシャルラーニングを実現するためのITインフラについて解説します。

パブリックSNSの問題点

ソーシャルラーニングはSNSを利用したコミュニティによる学習方法ですので、もともとは、TwitterやLINEといったパブリックSNSを使用することを想定してます。

しかし、企業内研修としてソーシャルラーニングを行う場合は、パブリックSNSを使用することで、セキュリティやコンプライアンス上の問題が発生します。

パブリックSNSを企業内で使用する際には、次の4項目が問題となります。

  1. ハッキング
    ハッキング被害によってアカウントを第三者に乗っ取られた場合、アカウント内に残されている機密情報が外部に漏えいしてしまう恐れがあります。
  2. なりすまし
    同僚や先輩のアカウントを社内の情報共有グループに追加したところ、実は “なりすまし” だった場合、無意識のうちに社内情報を外部に流出してしまう恐れがあります。
  3. 誤送信
    社内の人にメッセージやファイルを送るつもりが、誤って、よく似た名前のプライベートの友人に送ってしまった場合、情報漏えいが発生する恐れがあります。
  4. ログ管理
    パブリックSNSでは、個人アカウントのログを会社が管理しているわけではありませんから、問題が発生した場合でも、情報の追跡や状況を確認することができない恐れがあります。

以上のように、パブリックSNSを利用したソーシャルラーニングは、企業内研修のインフラとしてはリスクが高いため、Slackに代表される企業内SNSが利用されます。

企業内SNS(Slack)の特徴

Slack(スラック)は、最近多くの企業で使われるようになった社内コミュニケーションツールです。Slackを使うと社員同士がさまざまな方法でコミュニケーションをとることができます。

1対1のコミュニケーションとしては、音声通話やビデオ通話が可能で、画面を共有して資料を見ながら会話することも可能です。さらに、メッセージやチャットといった多彩な方法でコミュニケーションをとることができます。

また、1対1でのコミュニケーション機能のほとんどはグループで利用することもでき、「チャンネル」と呼ばれるグループを設定することで、特定のテーマ、話題、組織、プロジェクトなどに限定されたコミュニケーションを関係する社員だけで行うことができます。

このように、多彩な機能を持つSlackですが、代表的なパブリックSNSであるLINEと比較することで、その特徴をより明確に理解することができます。

パブリックSNS(LINE)と企業内SNS(Slack)の違い

LINEは、一般の個人同士のコミュニケーションツールとして広く使われています。一方、Slackは企業内の社員同士のコミュニケーションを想定しています。このため、LINEとSlackには、いくつかの大きな違いがあります。

LINEとSlackのもっとも大きな違いは、利用できる端末の範囲にあります。LINEは、IDに紐づいた電話番号を持つ特定の携帯端末からしか利用できません。一方、Slackでは、PCや携帯端末からIDとパスワードでログインすることで、どこからでも利用できる

グループの設定については、LINEではLINEグループを、Slackではチャンネルを利用して、どちらもグループを設定することができます。

しかし、Slackのチャンネルでは、最初の発言者がスレッドを立てることで、その後のやり取りをスレッドとして管理することができますが、LINEグループでは、そのようなことはできません。

そのため、LINEグループでは複数の話題について同時にやりとりが発生したため、混乱してしまうことがありますが、Slackでは、そのようなことは起きません。

LINEでは、一度送信してしまったメッセージの内容を変更したり、削除したりすることはできませんが、Slackでは可能です。

さらにSlackでは、編集中のメッセージが、相手にも編集中であることがわかるようになっています。

そのため、相手が最初のメッセージの内容に疑問を感じたとしても、すぐに確認メッセージを送らず、再編集が終わるのを待つということもできます。

企業内SNS(Slack)によるソーシャルラーニングの実現

このように、企業内の社員同士のコミュニケーションツールとして、多くのメリットを持つSlackですが、その特性を活かして、ソーシャルラーニングでも十分活用することができます。

Slackの最大の特徴の一つがグループ設定としてのチャンネルと、そこでのスレッドの管理です。

チャンネルを設定することで、同じ事業所だけではなく、離れた事業所の社員も含めたグループ内で教える/教わる関係を構築することができます。

さらに、スレッドを管理することで、複数のテーマについて並行して教える/教わることができ、教える側にとっては、内容を準備する時間が、教わる側にとっては内容を咀嚼する時間が取れるようになるというメリットがあります。

まとめ

ソーシャルラーニングはSNSを利用したコミュニティによる学習方法ですので、もともとは、TwitterやLINEといったパブリックSNSを使用することを想定してます。

しかし、企業内研修としてソーシャルラーニングを行う場合は、パブリックSNSを使用することで、ハッキング、なりすまし、誤送信、ログ管理といったセキュリティやコンプライアンス上の問題が発生するため、Slackに代表される企業内SNSが利用されます。

Slackを使うと、音声通話、ビデオ通話、メッセージやチャットといったさまざまな方法で社員同士がコミュニケーションをとることができ、1対1だけではなく、「チャンネル」と呼ばれるグループを設定することで、特定のテーマ、話題、組織、プロジェクトなどに限定されたコミュニケーションを関係する社員だけで行うことができます。

Slackは、代表的なパブリックSNSであるLINEと比較すると、PCや携帯端末からIDとパスワードでログインすることで、どこからでも利用できる、最初の発言者がスレッドを立てることで、その後のやり取りをスレッドとして管理することができる、一度送信してしまったメッセージの内容を変更、削除できるといったメリットがあります。

Slackは、その特性を活かして、ソーシャルラーニングでも十分活用することができます

Slackのチャンネルを設定することで、同じ事業所だけではなく、離れた事業所の社員も含めたグループ内で教える/教わる関係を構築することができますし、スレッドを管理することで、複数のテーマについて並行して教える/教わることができ、教える側にとっては、内容を準備する時間が、教わる側にとっては内容を咀嚼する時間が取れるようになるというメリットがあります。

しかし、理想的なソーシャルラーニング環境を作るためには、Slackでは足りない部分も存在します。

次回は、Slackではカバーできない部分を補完して理想のソーシャルラーニング環境に近づける方法を考察します。

ABOUTこの記事をかいた人

ソフトウエアベンダーやコンサルティング会社で20年以上にわたりコンサルティング、企業経営に携わる。現在は、IT企業の新規事業立上げ、事業再編を支援するかたわら、データ分析、人材管理、LMSなどに関する講演・執筆活動を行っている。