目標設定研修とは、社員が実行可能な目標を自分で立てるスキルと、評価制度との連動を理解するための教育です。SMART原則などのフレームワークを使った目標設定スキルを習得し、評価面談につながる目標管理の基礎を育てます。
ただ、研修後も「立てた目標が形骸化する」「評価サイクルと噛み合わない」という課題が残る企業は多くあります。
本記事では、目標設定研修の実施方法と、外部委託・eラーニングの費用感、使い分けの基準を解説しています。研修の選定や設計の参考にしてください。
目次
目標設定研修とは
目標設定研修とは、社員一人ひとりが達成可能で測定できる目標を自ら立てられるよう、必要な知識とスキルを習得する取り組みです。人事評価制度の起点となる目標設定が機能しなければ、評価面談も育成計画も形だけの作業に終わります。
研修の対象は、目標を持つすべての社員です。一般社員には個人目標の立て方と組織目標との連動が求められ、管理職には組織目標を部下の目標に分解し、設定と達成を支える役割があります。評価される側と評価する側で求められるスキルが異なるため、対象に応じた内容の設計が前提です。
研修を通じて到達したい状態は、目標達成の基本フレームを知っているだけでなく、期初の目標設定から進捗管理、達成を妨げる要因への対処まで自律的に行動できることです。制度的には目標管理制度(MBO)の文脈で扱われることが多く、個人の目標が組織全体の達成につながる仕組みとして機能させることが、研修設計の根底にある考え方です。
厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」によれば、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとする事業所は80.1%に上り、そのうち最も多い問題点は「指導する人材が不足している」(59.5%)です。目標設定と進捗管理を自律的に行える人材を育てることは、指導工数を下げ、組織全体の育成負担を軽減する効果があります。
出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」調査結果の概要(2026年7月31日公表・図35・図36)
目標設定研修で扱う内容
目標設定研修の内容は、「達成の基本を個人のスキルとして押さえる」「評価される側の役割を理解する」「評価する側の役割を理解する」という3つの切り口で整理できます。この流れで学ぶことで、個人スキルと組織内の役割の両面が揃います。
目標を達成する基本を身につける
まず押さえるのは、目標をどう立てれば達成に近づくのかという基本です。「頑張る」「意識する」といった書き方では進捗が測れず、途中で軌道修正する判断もできません。
この領域では、目標達成の基本的な考え方、目指す成果を数値に置き換える方法、成果につながる行動目標の立て方、達成を妨げる要因への対処を扱います。役職を問わず、目標を持つすべての社員に共通する内容で、ここを固めることが以降の実践の基盤になります。
評価される側の目標設定を学ぶ
目標管理制度のもとでは、個人の目標は組織目標とつながっている必要があります。この関係を理解しないまま自分のやりたいことを書くと、評価の段階で上司との認識のずれが表面化します。
扱う内容は、目標管理制度の背景と組織目標との関係、個人目標の設定方法、目標達成に向けた実行の進め方、目標設定面談への備え方です。評価される立場の社員が、期初の目標設定に臨む前に受けておきたい内容になります。
評価する側の目標設定を学ぶ
管理職には、組織目標を立て、それを部下の個人目標へ分解し、達成を支えるという役割があります。部下の目標を承認するだけの関わり方では、組織全体の目標が達成される仕組みになりません。
学ぶのは、組織目標の設定方法、部下の個人目標への落とし込み方、部下の目標達成を支える関わり方、目標設定面談の進め方です。評価者として期初に何をすべきかが具体的につかめる内容です。
目標設定研修をどう実施するか
目標設定研修で扱う内容は、性質が2つに分かれます。SMART原則のフレームや制度の背景といった知識として届ける部分と、目標の書き直しや面談の実演など実際に手を動かして試す部分です。この2つを同じ形式で扱おうとすると、どちらかに無理が生じます。
実施形式ごとの性質を整理すると次のようになります。
| 実施形式 | 向いている場面 | 同時に届けられる人数 | 必要なもの | 記録の残り方 |
|---|---|---|---|---|
| 集合(対面) | 講師に直接聞ける。演習や議論も組める | 会場の収容人数 | 講師・会場・日程調整 | 出席簿 |
| オンライン(ライブ) | 拠点をまたいで同時に受けられる | 拠点をまたいで可 | 講師・配信環境・日程調整 | 接続ログ |
| 動画 | 各自の都合で受けられる。同じ内容を何度でも | 人数の制限なし | 教材・配信のしくみ | 受講履歴・テスト結果 |
ここからは、2つの学習領域をどの形式で身につけるかを整理します。
目標の書き直しと演習は集合・オンラインで身につける
SMART原則を知識として理解しても、実際に自分の目標をフレームに当てはめて書けるかどうかは別の話です。「頑張る」という表現を「毎月3件の新規提案を行う」に書き直す作業は、やってみて初めて感覚がつかめます。
この部分は手を動かす練習が要るため、集合またはオンラインのライブ形式が向きます。自分の業務目標をSMART原則で書き直し、他の参加者や講師からフィードバックをもらう形が一般的です。目標が曖昧かどうかは、他者に見てもらうことで初めて気づける部分があります。
ただし、演習の時間をすべて集合の場で使うのは効率がよくありません。SMART原則の5つの観点や目標の書き方のポイントといった前提知識は事前に配信しておき、集合の場は実際に書いて直す演習に充てる分け方が実務的です。
知識と手順はeラーニングを有効活用する
SMART原則のフレーム、目標管理制度の背景、組織目標との連動の考え方、行動目標への落とし込み手順といった「知識として届ける部分」は、動画で配る形が向いています。eラーニングがこの領域で有効な理由は2点あります。
第一に、対象が全社員に及ぶ点です。一般社員から管理職まで届ける必要があるため、日程を揃えにくい規模でも、受講のタイミングを本人に委ねられる形式が実務に合います。評価サイクルの前に全員の理解を揃えるには、随時配信できる体制が欠かせません。
第二に、繰り返し確認できることが定着を後押しします。目標の書き直しや面談準備のタイミングで動画に戻って確認する使い方が、スキルの定着を支えます。
目標の立て方をeラーニングで学んでもらうなら:目標設定研修向けeラーニングの比較
目標設定研修を成功させるポイント
曖昧な表現を具体的な指標に書き直させる
「意識する」「頑張る」「積極的に取り組む」といった表現は、期末に達成できたかどうか判断できません。研修ではこうした表現を指摘するだけでなく、数値や行動の頻度に書き換える作業をセットで行うことが、スキルとして定着させる手順になります。
どの表現が曖昧にあたるか、どう書き直せば測れるようになるかを、自分の業務目標で試すことで、「知っている」と「書ける」のギャップが埋まります。研修後に管理職が部下の目標文を確認する際にも、このフレームが共通言語として機能することで、フィードバックの精度が上がります。
上司が部下の目標を一緒に確認する場をつくる
研修でSMART原則を学んでも、実際の目標設定で適切に使えるかどうかは、上司との目標設定面談の質に左右されます。部下が自分で書いた目標を上司が確認し、曖昧な部分を一緒に具体化する場があることが、研修の学びを現場につなげる手順です。
管理職が目標設定面談の進め方を知らないまま承認作業だけをこなすと、部下の目標の質は変わりません。評価される側と評価する側の両方を対象に研修を設計し、面談を「確認の場」ではなく「一緒に考える場」として機能させることが、制度の実効性を高めます。
まとめ
目標設定研修は、「頑張る」「意識する」といった曖昧な表現を具体的で測れる目標に変えるスキルを習得し、評価サイクルの中で制度が実効的に機能する状態をつくる取り組みです。SMART原則を全員の共通言語にすることが設計の出発点です。
扱う内容は、目標達成の基本を個人スキルとして押さえる部分と、評価される側・評価する側それぞれの役割を学ぶ部分に分かれます。フレームの知識と手順は動画が向き、実際に書き直して他者からフィードバックをもらう演習は集合またはオンライン形式が向きます。
研修の効果を現場に根付かせるには、曖昧な表現を書き直す練習をセットで行うことと、上司が部下の目標を一緒に確認する面談の場を設けることが鍵になります。知識のインプットだけで終わらず、実際に書いて確認する機会が揃うことで、制度の定着につながります。
目標設定研修に使える動画コースの一覧
目標設定研修のうち知識の部分を動画で届けるなら、使えるコースがあるかを先に確かめておくと、演習との組み合わせを決めやすくなります。
受け放題の動画研修から、目標設定研修に使えるコースを含む標準コースの全体を、対象者・内容・学習時間つきで一覧にした資料です。
管理職向け研修の組み立て方から確かめるなら:『マネジメント研修 設計ガイド』(無料)
よくある質問
Q. 目標設定の5原則(SMART原則)とは何ですか?
Specific(具体的)・Measurable(測定可能)・Achievable(達成可能)・Relevant(関連性がある)・Time-bound(期限がある)の5つの観点の頭文字を並べたフレームワークです。George T. Doranが1981年(Management Review)の論文で示したフレームです。目標が「測れるか・達成できるか・業務に関係があるか・いつまでか」を確認する基準として、目標管理制度の文脈で広く使われています。研修でこのフレームを扱うことで、曖昧な表現を数値や行動の頻度に書き直す共通言語が整います。
Q. 目標設定を研修で扱うとき、どのような手順で進めればよいですか?
まず目標達成の基本的な考え方を押さえたうえで、目指す成果を数値化し、そこへ至る行動目標に落とし込むという流れが挙げられます。加えて、達成を妨げる要因をあらかじめ洗い出し、対処を考えておく進め方も有効です。研修設計としては、SMART原則のフレームを知識として先に届け、その後に実際の業務目標を書き直す演習をセットにすると、「知っている」と「書ける」のギャップが埋まりやすくなります。
Q. 目標設定で避けるべき表現・NGワードには何がありますか?
「頑張る」「意識する」「積極的に取り組む」「できるだけ」といった表現が挙げられます。これらは期末に達成できたかどうかを判断する基準がなく、進捗の確認も軌道修正の判断もできません。SMART原則のMeasurable(測定可能)の観点から、数値・頻度・締め切りを含む表現に書き直すことが、目標を機能させる基本の手順です。研修では「意識してコミュニケーションを取る」を「週1回30分の1on1を実施する」のように具体化する作業を演習で扱うと、定着しやすくなります。
Q. 目標と目的はどう違いますか?
目的は「なぜ行うのか」という方向性や理由を示すもの、目標は「何をいつまでにどの程度達成するか」という具体的な到達点を示すものです。たとえば「顧客満足度を高めたい」は目的、「今期末までにNPSスコアを現状比10ポイント改善する」が目標にあたります。目的だけでは進捗を測れず、目標だけでは何のために取り組むのかが見えにくくなります。研修では両者の区別を最初に扱っておくと、SMART原則の Relevant(目的との関連性)を理解する土台になります。
Q. 目標設定研修を外部委託する場合の費用感はどれくらいですか?
外部講師を招いた集合研修は1回あたり15〜40万円程度が目安(人数・時間による)。eラーニングで実施する場合はシステム利用料に加え、目標設定コースの月額費用が加算されます。インソース・リクルートなど大手研修会社のプログラムは1名あたり5,000〜20,000円程度のメニューも提供しています。費用と実施規模を照らし合わせて判断してみてください。








