フォロワーシップ研修とは|ケリー5類型と職場での実践

フォロワーシップ研修を実施しても、研修後に指示待ちの状態が変わらないという状況は、多くの職場で共通して起きています。「フォロワーシップとは何か」という言葉の意味は伝わっても、翌週の業務で上司への働きかけが増えるわけではなく、研修をやった記録だけが残ります。

この状況を変えるには、考え方の理解と実践的なコミュニケーション技術を別々に設計し、それぞれの定着を支える形で組み合わせることが必要です。定義や役割を理解する段階と、実際に上司へ提案・質問するスキルを身につける段階を切り分けると、研修の設計が整理しやすくなります。

本記事では、フォロワーシップ研修で扱う内容と、集合・オンライン・動画の形式をどう使い分けるかを解説します。成功のポイントやよくある疑問にも触れているので、研修設計の判断材料にしてください。

フォロワーシップ研修とは

フォロワーシップ研修とは、組織のメンバーが自分の判断を持ちながら上司や組織の目的に能動的に貢献するための考え方と行動を習得する取り組みです。対象は主に若手・中堅社員で、上司を巻き込むことが難しいと感じている方、チームに貢献したいが何をすればよいか分からない方、組織における自分の役割が明確でないと感じている方を中心に実施されます。

研修を通じて到達したい状態は3つあります。フォロワーシップの定義を明確に理解すること、メンバーとしての役割を現場の文脈で捉え直すこと、そして上司への提案や情報収集のための質問を実際に行えるようになることです。

フォロワーシップは「上司に従うこと」と受け取られがちですが、実際には異なります。自分の判断を持ちながら組織の目的に貢献する姿勢を指しており、リーダーシップが「率いる側」の働きかけを扱うのと対になる概念です。組織の成果はリーダーの力量だけで決まるものではなく、メンバーが受け身のままでは、リーダーが優秀でも組織全体の動きは鈍くなります。

厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」によれば、企業が正社員(50歳未満)に最重視するスキルは「チームワーク・協働力」(54.3%)です。「マネジメント能力・リーダーシップ」(34.9%)を大きく上回っており、メンバーとして組織に貢献する力への期待の高さがうかがえます。

出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」調査結果の概要(2026年7月31日公表・図10)

フォロワーシップ研修で扱う内容

フォロワーシップ研修の内容は、「考え方を理解する」「実践的なコミュニケーションを身につける」という2つの切り口で整理できます。考え方を先に押さえ、そのうえで具体的な行動技術へと進む流れが、受講者が日常業務に落とし込みやすい構成です。

フォロワーシップの考え方を理解する

まず押さえたいのが、フォロワーシップが何を指すのかという前提と、メンバーに期待される役割の理解です。「上司の言うことを聞くこと」と受け取られがちですが、研修では自分の判断を持ちながら組織の目的に貢献する姿勢として定義を共有します。

扱う内容は、フォロワーシップの基本知識とフォロワーとしての役割認識の2つです。リーダーシップとフォロワーシップを比較しながら概念を具体化し、リーダーの状況を理解したうえで自分がどう動くべきかを整理します。役割の認識が変わることで、日々の仕事の受け止め方そのものが変わります。

上司へ働きかけるコミュニケーションを身につける

考え方の理解を土台に、実際に上司へ働きかけるコミュニケーションの技術へと進みます。フォロワーシップを発揮するには、提案したり、必要な情報を引き出す質問をしたりするやり取りが不可欠ですが、伝え方を誤ると意見が通らないばかりか、関係を損なうこともあります。

扱う内容は、提案場面でのコミュニケーションと、情報収集のための質問の2つです。提案では、アサーションスキルを活用して言いにくい場面でも相手に伝わる形を整えます。質問では、把握すべき情報を整理して質問リストを作成する実践的な手法を学びます。いずれも手を動かすワークを含むため、考え方の理解とは異なる設計が求められます。

フォロワーシップ研修をどう実施するか

フォロワーシップ研修で扱う内容は、性質が2つに分かれます。フォロワーシップの定義・役割認識・リーダーシップとの違いといった知識として届ける部分があります。一方で、提案のアサーションスキルや質問リスト作成など実際に練習して身につける部分もあります。この2つを同じ形式で扱おうとすると、どちらかに無理が生じます。

実施形式ごとの性質を整理すると次のようになります。

実施形式適する学習内容同時に届けられる人数必要なもの記録の残り方
集合(対面)講師に直接聞ける。演習や議論も組める会場の収容人数講師・会場・日程調整出席簿
オンライン(ライブ)拠点をまたいで同時に受けられる拠点をまたいで可講師・配信環境・日程調整接続ログ
動画(eラーニング)各自の都合で受けられる。同じ内容を何度でも人数の制限なし教材・配信のしくみ受講履歴・テスト結果

提案と質問の実践は集合・オンラインで身につける

フォロワーシップを実際に発揮するには、上司への提案や質問を「実際にやってみる」経験が必要です。「言いにくい提案をアサーションを使って伝える」「把握すべき情報を整理して質問リストを作る」といったワークは、説明を聞くだけでは身につきません。

この部分は手を動かす実践が要るため、集合またはオンラインのライブ形式が向きます。自分の担当業務の中で上司への提案場面を想定し、実際に伝え方を設計して、他の参加者や講師からフィードバックをもらう形が定着を早めます。ただし、前提となるアサーションの考え方や質問の視点は事前に動画で届けておき、集合の場は実際に試して確認する演習に充てる分け方が実務的です。

基本知識と役割認識はeラーニングを有効活用する

フォロワーシップの定義、役割認識、リーダーとの関係性といった「知識として届ける部分」は、動画で配る形が向いています。eラーニングがこの領域で有効な理由は2点あります。

第一に、対象が全社員規模に広がります。若手・中堅の多くに届けるためには、日程を揃えにくい規模でも、受講のタイミングを本人に委ねられる形式が実務に合います。まとまった時間が取りにくい職場では、1本ずつ分割して配る形も取れます。

第二に、繰り返し確認できることが実践を後押しします。提案や質問のワークに取り組む前に、役割認識の動画に戻って確認する使い方が、研修全体の理解を深めます。

関連記事:フォロワーシップを高めるeラーニング5選|役割理解と上司への提案・質問

フォロワーシップ研修を成功させるポイント

自分のフォロワータイプを把握させる

フォロワーシップの研究として広く知られるのが、経営学者ロバート・ケリーが提唱した5つの類型です。ケリーは著書「指導力革命」(原著: The Power of Followership, 1992)の中で、フォロワーを「クリティカルシンキング(批判的思考)の度合い」と「能動的な関与の度合い」の2軸で分類しました。この分類では、模範的フォロワー・順応型・実務型・孤立型・消極的フォロワーの5つのタイプが定義されています。

研修でこの類型を扱う意義は、自分がどのタイプに近いかを把握することで、現在の働き方の傾向と課題を具体化できる点にあります。「指示を待つことが多い」「自分の意見を伝えられていない」という抽象的な自覚を、行動レベルで捉え直す手がかりになります。自己理解が先にあることで、提案や質問の練習が自分の課題として腹落ちします。

研修後に上司とのやり取りで実践させる場を設ける

提案・質問のスキルは、研修の場で学んでも、実際の業務で使わなければ定着しません。研修後に職場の上司に対して提案を試みる機会がないと、アサーションの型は記憶から消えていきます。

研修後にも実務の場でスキルを試す機会を継続的に持てる設計が有効です。たとえば、研修から数週間後に「上司に提案してみた経験を持ち寄る」場を設けることが、定着につながります。提案の伝え方や質問のリストは、日常の報告・相談でそのまま使えます。スキルを使う機会と振り返りのサイクルを組み込むことで、職場での行動変容が実現します。

まとめ

フォロワーシップ研修は、組織のメンバーが自分の判断を持ちながら能動的に組織の目的に貢献するための考え方と技術を習得する取り組みです。「上司に従うこと」ではなく、「自ら働きかけること」を研修の出発点として設計すると、研修後の行動変容につながります。

扱う内容は、フォロワーシップの基本知識・役割認識という考え方の理解と、提案・質問というコミュニケーション技術の2軸に整理できます。知識の理解は動画で全員に届け、実際に手を動かす演習は集合またはオンライン形式で行う組み合わせが、実務的な研修設計の基本形です。

研修の効果を職場に根付かせるには、ケリーの5類型を用いた自己把握を研修の入口に置き、研修後に実際の業務で提案・質問を試みる場を継続的に設けることが鍵になります。

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よくある質問

Q. フォロワーシップとフォローアップ研修は何が違いますか?

フォロワーシップ研修とフォローアップ研修は、名称が似ていますが対象と目的が異なります。フォロワーシップ研修は、組織のメンバーが自分の判断を持ちながら上司や組織の目的に能動的に貢献する姿勢と行動を習得するものです。一方、フォローアップ研修は、以前に受けた研修の内容を現場で活かせているかを振り返り、理解の定着や行動の改善を図る研修形式を指します。フォロワーシップ研修は「どう組織に関わるか」というテーマを扱い、フォローアップ研修は「研修後の振り返り」という実施方法の形式を指す言葉です。

Q. フォロワーシップの5つのタイプとは何ですか?

経営学者ロバート・ケリーは、フォロワーを「クリティカルシンキングの度合い」と「能動的な関与の度合い」の2軸で5つのタイプに分類しました。模範的フォロワーは両軸ともに高く組織の目的に能動的に貢献します。順応型は能動性が高いが批判的思考が低く、実務型は両軸とも中程度、孤立型は批判的思考はあるが関与が少なく、消極的フォロワーは両軸ともに低い状態です。研修ではこの分類を自己把握の手がかりとして使い、現在の働き方の傾向と課題を具体化します。

Q. フォロワーシップは、具体的にどんな行動を指しますか?

上司に従うことではなく、自分の判断を持ちながら組織の目的に貢献する行動を指します。具体的には、上司へ提案する、必要な情報を自分から引き出すといった働きかけがその典型です。日常業務では、報告・相談の場面で「自分の意見を添えて伝える」「何を把握すれば判断できるかを整理して質問する」といった形が中心になります。指示を待つのではなく、上司が判断しやすい情報を先回りして届ける動きもフォロワーシップの一部です。

Q. フォロワーシップを高めるには、何から始めればよいですか?

まず何を指す考え方なのかと、メンバーに期待される役割を共有するところから始める形が一般的です。役割の認識が揃わないまま行動だけを求めても、指示待ちの状態は変わりにくいためです。基本知識と役割認識を扱う内容を入口に置き、そのうえで提案・質問という働きかけの技術へ進む構成が取られます。

Q. フォロワーシップ研修は、リーダーシップ研修とどう使い分けますか?

対象になる立場が異なります。リーダーシップが率いる側の働きかけを扱うのに対し、フォロワーシップは支える側が自ら組織の成果に関わる姿勢を扱います。組織の動きはリーダーの力量だけでは決まらないため、両方を対で実施する形が取られます。フォロワーシップの研修は若手・中堅層への研修として、リーダー研修と組み合わせて活用されます。eラーニングで扱う場合、基本知識から役割認識、提案・質問のコミュニケーションまでを段階的に配信する形が一般的です。