OJT研修とは|指導者を育てる手順と定着のさせ方

OJTは多くの企業が採用している育成手法ですが、成果は指導する側の力量に左右されます。厚生労働省の調査では、人材育成に問題があるとした事業所のうち、最も多い理由が「指導する人材が不足している」でした。

指導者を育てる研修は、手順の理解と実際の関わり方の両方を扱います。この2つは向いている実施形式が違うため、分けて設計すると限られた時間でも組み立てやすくなります。

本記事では、OJT研修で扱う内容と、集合・オンライン・動画をどう使い分けるかを解説します。指導後のフォローや定着のさせ方にも触れているので、自社の育成体制づくりにお役立てください。

OJT研修とは

OJT研修とは、日常の業務のなかで後輩を指導する立場の社員に対して、その進め方と心構えを学んでもらう取り組みです。受講するのは新入社員ではなく、部下や後輩に業務を教える側にあたります。

対象は「部下や後輩に業務を教えた経験が少ない方」「これから部下や後輩に業務を教える方」です。指導を任されたものの、何から手をつければよいか分からない状態にある社員が中心になります。研修を通じて、OJTとは何かを理解し、進め方の手順を身につけ、指導者として求められる心構えと具体的な行動を確認していきます。

OJT自体は広く行われています。厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」によれば、計画的なOJTを実施した事業所は64.1%でした。ただし対象は新入社員に偏っており、新入社員(正社員)が52.3%であるのに対し、中堅社員は38.7%、管理職層は24.9%と下がっていきます。

出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」調査結果の概要(2026年7月31日公表・図31)

企業規模による差も大きく、30〜49人の事業所では44.4%、1,000人以上では78.4%です。小規模な職場ほど、指導が個人の裁量に委ねられやすい状況がうかがえます。

OJT研修で扱う内容

OJT研修で扱う内容は、大きく3つに整理できます。進め方の手順、指導者としての姿勢、指導後のフォローです。この順に学ぶことで、指導を体系立てて考えられるようになります。

OJTの進め方を身につける

最初に押さえるのは、OJTをどのような手順で進めるかという基本です。計画を立てずに始めると、指導内容が担当者の記憶と裁量に頼ることになり、育成の質が人によって大きく変わります。

扱うのは、OJTの定義と目的、指導計画の立て方、実際に教える場面での進め方です。初めて後輩を持つ社員がここを押さえると、行き当たりばったりの指導から抜け出せます。

指導者としての心構えを学ぶ

OJTは指導者と後輩の関係のうえに成り立ちます。手順を知っていても、相手の状況を踏まえた関わり方ができなければ、指導は伝わらず後輩の意欲も下がります。

この領域では、OJTを担う立場に求められる姿勢と、具体的にどう行動するかを扱います。日常業務と並行して指導する難しさを踏まえた内容になっており、時間が取れないなかで何を優先するかという判断も含まれます。

定着につなげるフォローを学ぶ

一度教えただけでは行動は定着しません。指導後にどう振り返り、次にどうつなげるかというフォローの設計が、OJTの効果を左右します。

扱うのは、振り返りの進め方、できていない部分をどう伝えるか、次の目標をどう設定するかです。あわせて、リモートワークが混在する職場でどう進めるかという論点も入ります。画面越しでは相手の様子が見えにくく、対面と同じ進め方では機能しない場面があるためです。

OJT研修をどう実施するか

OJT研修で扱う内容は、性質が2つに分かれます。手順や心構えといった知識として理解する部分と、実際に後輩へ伝えてみるやってみる部分です。この2つを同じ形式で扱おうとすると、どこかに無理が生じます。

実施形式ごとの性質を整理すると次のようになります。

実施形式向いている場面同時に届けられる人数必要なもの記録の残り方
集合(対面)講師に直接聞ける。演習や議論も組める会場の収容人数講師・会場・日程調整出席簿
オンライン(ライブ)拠点をまたいで同時に受けられる拠点をまたいで可講師・配信環境・日程調整接続ログ
動画各自の都合で受けられる。同じ内容を何度でも人数の制限なし教材・配信のしくみ受講履歴・テスト結果

教え方の実技は集合・オンラインで身につける

手順を知っていることと、実際に後輩へ伝えられることは別物です。「分かりやすく説明する」「相手の理解度を確かめながら進める」といった行為は、頭で理解しても、いざその場になると言葉が出てきません。

この部分は他者とのやり取りを含む練習が要るため、集合またはオンラインのライブ形式が向きます。指導役と後輩役に分かれて実際に教えてみて、その場でフィードバックを受ける形が一般的です。

ただし、演習の時間をすべて集合の場で使うのは効率が良くありません。OJTの定義や手順といった前提知識は事前に動画で共有しておき、集合の場は演習に充てる分け方が実務的です。限られた集合の時間を実技に集中させられます。

手順と心構えはeラーニングを有効活用する

進め方の手順と、指導者としての心構えの2つは、動画で届ける形が向いています。OJT研修という文脈でeラーニングが活きるのは、次の2点があるためです。

第一に、指導者は日常業務を抱えており、日程を揃えにくい層です。研修のために全員を一箇所に集めるとなると、その間の業務をどうするかという調整が発生します。受講のタイミングを本人に委ねられる形式なら、この制約を避けられます。

第二に、誰が受講したかが記録として残ります。指導者を任命したタイミングで受講させたいとき、届けたかどうかを確認できることが前提になります。人事異動のたびに新しい指導者が生まれるため、繰り返し配れることも実務では効いてきます。

関連記事:OJT指導者の育成に強いeラーニング5選|進め方・心構え・フォローを一続きで

OJT研修を成功させるポイント

OJT研修は、実施すること自体は難しくありません。難しいのは、実施した後に指導の現場が変わるかどうかです。ここでは実務でつまずきやすい3つの論点を取り上げます。

指導者を任命したタイミングで届ける

OJT研修を年に一度の集合研修だけで実施すると、期の途中で指導者になった社員が次の開催まで待つことになります。その間の指導は本人の我流に委ねられ、後から研修を受けても既にできあがった癖を直すことになります。

指導者の任命は人事異動のたびに発生します。任命と同時に受講できる形を用意しておくと、我流が固まる前に手順を届けられます。動画で配る方式にしておけば、開催を待つ必要がなくなります。

教える内容を業務ごとに書き出しておく

研修で学んだ手順は、教える中身が決まっていて初めて機能します。何を教えるかが指導者任せになっていると、担当する業務によって育成の範囲が変わってしまいます。

対策として有効なのが、業務ごとに「何ができれば一人前か」を書き出しておく考え方です。指導者はその一覧をもとに計画を立てられるようになり、後輩側も現在地を把握できます。書き出す作業は指導者だけでは負荷が高いため、既に業務を担っている社員と一緒に整理する形が現実的です。

指導者を一人にしない

OJTは指導者と後輩の一対一で進むため、指導者が孤立しやすい構造にあります。教え方に迷ったとき、相談する相手がいなければ我流で進むほかありません。

厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」では、人材育成上の問題点として「指導する人材が不足している」が事業所全体で59.5%と最多でした。これは指導者個人の問題ではなく、一人に任せきりにする組織設計の問題です。

出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」調査結果の概要(2026年7月31日公表・図36)

指導者同士が情報を交換する場を四半期に一度でも設けると、他の人がどう教えているかを知る機会になります。上長が指導計画を確認する運用も、指導者を一人にしない仕組みとして機能します。複数の指導者が連携して育成を支える体制が、OJTの質を安定させます。

まとめ:知識は配り、実技は集める

OJT研修がうまくいかないとき、原因は内容そのものより、内容と形式の組み合わせにあることが少なくありません。手順の説明を集合研修で行い、教え方の演習を動画で済ませようとすれば、どちらも中途半端になります。

OJT研修で扱う内容は、手順や心構えを理解する部分と、実際に教えてみる部分に分かれます。前者は全員に同じ内容を届けたいので動画が向き、後者は他者とのやり取りが要るので集合やオンラインが向きます。この割り振りが基本の形になります。

指導者の任命は人事異動のたびに発生します。年に一度の開催を待つのではなく、任命と同時に届けられる形を用意しておくと、我流が固まる前に手順を渡せます。そのうえで、指導者を一人にしない仕組みを整えていくと、育成の質が個人の力量に左右されにくくなります。

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よくある質問

Q. OJTの三原則とは何ですか?

一般的には「意図的・計画的・継続的」の3つを指します。思いつきで教えるのではなく意図を持って、行き当たりばったりではなく計画を立てて、一度きりで終わらせず継続して指導する、という考え方です。この3つが揃わないと、指導が担当者の記憶と裁量に頼ることになり、育成の質が人によって変わります。

Q. OJTはどのような手順で進めればよいですか?

計画を立てる、やってみせる、やらせてみる、振り返る、という流れが基本形です。まず何ができれば一人前かを決めて計画を立て、実際の業務で手本を示し、本人にやらせたうえで、できた点とできなかった点を振り返ります。この一巡を繰り返すことで定着していきます。

Q. OJTで大切なことは何ですか?

教える側の準備と、指導後の振り返りです。何を教えるかが決まっていないまま始めると、その日の業務に流されて指導が場当たり的になります。また、一度教えただけでは行動は定着しないため、振り返りの時間を確保することが要ります。指導者本人の負荷も高いので、上長が計画を確認するなど、一人に抱えさせない運用も欠かせません。

Q. OJTの具体例にはどのようなものがありますか?

営業職なら、商談への同行から始めて、次に本人が話す場面を一部任せ、最終的に一人で商談を担当する、という段階を踏む形です。事務職なら、書類作成の手順を実際の案件で示し、チェックを入れながら本人に任せる範囲を広げていきます。いずれも「見せる→やらせる→振り返る」の順で、任せる範囲を段階的に広げるのが基本になります。