ダイバーシティ研修とは|階層別に分ける内容と実施形式

ダイバーシティ推進の施策として研修を実施する企業は増えていますが、全社員を動かすことの難しさに直面する担当者も少なくありません。制度を整えても、日々の職場で違いが受け入れられなければ、施策は形だけのものになります。

ダイバーシティ研修の難しさは、一般社員と管理職で求められる学習内容がまったく異なる点にあります。対象に合わせた形式の使い分けが、全社への浸透を左右します。

本記事では、ダイバーシティ研修で扱う内容と、集合・オンライン・動画の形式をどう使い分けるかを解説します。一般社員向けと管理職向けそれぞれの設計のポイントにも触れているので、自社のダイバーシティ推進計画にお役立てください。

ダイバーシティ研修とは

ダイバーシティ研修とは、性別・年齢・国籍・働き方などの違いを持つ人材が力を発揮できる職場をつくるために、必要な知識と姿勢を全社員に届ける取り組みです。

対象は大きく2層に分かれます。一般社員は、ダイバーシティが求められる背景を理解し、違いを認知・受容・活用する姿勢を身につけることが中心です。一方、管理職は推進施策の理解にとどまらず、多様なメンバーが働ける組織を実際に整える役割を担います。研修を通じて到達したい状態は、「なぜダイバーシティが必要か」を全員が知ったうえで、管理職がその仕組みを動かせるようになることにあります。

ダイバーシティ研修の対象がほぼ全社員に広がるのは、一人ひとりの認識が揃わなければ施策が機能しないためです。無意識の思い込みや行動の癖は、制度を整えるだけでは変わらず、個人の認識に働きかける研修が必要になります。女性活躍推進法や障害者雇用促進法といった法令の整備を背景に、推進体制の構築を求める声も高まっており、研修の位置づけは制度理解を超えて職場文化の形成にまで及びます。

厚生労働省「令和5年度 雇用均等基本調査」によれば、管理職(課長相当職)に占める女性の割合は12.0%にとどまります。制度整備が進む一方で、職場の認識を変えないかぎり実態との乖離が生まれやすい状況にあります。

出典:厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」(令和6年7月公表)

ダイバーシティ研修で扱う内容

ダイバーシティ研修で扱う内容は、一般社員向け・管理職向け・全社共通の3つに整理できます。対象によって学ぶ深さが異なり、その違いを踏まえた設計が前提になります。

一般社員が学ぶダイバーシティの基礎

一人ひとりが当事者だという認識がなければ、ダイバーシティは人事部門の施策として遠ざけられます。まずなぜ必要なのかを共有し、違いを認め・受け入れ・活かすという段階を順に理解することが必要です。

扱うのは、ダイバーシティの意義と背景、一人ひとりが当事者である理由、違いを認知・受容・活用するための各段階の考え方です。全社員向けの基礎研修として一貫した内容で届けることで、職場での行動の土台を揃えられます。

管理職が担う推進の役割を学ぶ

管理職には、多様なメンバーが働ける環境を実際に整える役割があります。一般社員が違いを認め活かす姿勢を身につける段階にあるのに対し、管理職は施策の設計と実行まで担います。

この領域で扱うのは、推進する立場からみたダイバーシティの意義、よくある誤解の整理、ポジティブアクションや仕事と家庭の両立支援(ファミリーフレンドリー)といった施策の考え方です。取り違えた理解のまま進めると、特定の層への配慮が別の不公平を生む場合があるため、誤解を解くプロセスが重要になります。

無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)に向き合う

ダイバーシティを妨げるのは、明確な差別よりも本人が気づいていない思い込みであることが少なくありません。「この仕事は男性向き」といった判断が、無自覚のまま機会の差につながります。

扱うのは、無意識の偏見とその前提にある思考の癖(ステレオタイプ)、見方を捉え直す技法(リフレーミング)です。階層を問わず全社員が受講しておきたい内容であり、一般社員向け研修に組み込む形でも、管理職向け研修と並行して届ける形でも機能します。

ダイバーシティ研修をどう実施するか

ダイバーシティ研修で扱う内容は、性質が2つに分かれます。意義の理解や施策の知識など全社員に同じ内容を届ける部分と、管理職がチームで実践する推進施策を設計・運用する部分です。この2つを同じ形式で扱おうとすると、対象と内容がずれます。

実施形式ごとの性質を整理すると次のようになります。

実施形式向いている場面同時に届けられる人数必要なもの記録の残り方
集合(対面)講師に直接聞ける。演習や議論も組める会場の収容人数講師・会場・日程調整出席簿
オンライン(ライブ)拠点をまたいで同時に受けられる拠点をまたいで可講師・配信環境・日程調整接続ログ
動画(eラーニング)各自の都合で受けられる。同じ内容を何度でも人数の制限なし教材・配信のしくみ受講履歴・テスト結果

ここからは、2つの学習領域をどの形式で身につけるかを整理します。

推進施策の判断と実践は集合・オンラインで身につける

管理職には、推進施策の理解と組織づくりまでが求められます。扱う内容は、よくある誤解の整理、ポジティブアクション、仕事と家庭の両立支援など、知識の伝達にとどまらず自社の状況に当てはめた施策の判断が要ります。

グループワークやケーススタディを通じて実際の場面での判断を練習させる形は、集合またはオンラインのライブ形式が向きます。管理職の日程は揃えにくい場合も多いため、基礎知識は事前に動画で届けておき、集合の場は実践的な演習に充てる分け方が実務的です。

定義と推進の知識はeラーニングを有効活用する

ダイバーシティの意義・違いの認知・無意識の偏見といった「定義と知識として届ける部分」は、動画で配る形が向いています。ダイバーシティ研修においてeラーニングが活きるのは、次の2点があるためです。

第一に、対象が全社員に広がります。正社員だけでなく、契約社員・パート・派遣といった多様な雇用形態や、複数拠点にわたる組織でも、同じ内容を同じ精度で届けることができます。日程を揃えにくい構造は、受講タイミングを本人に委ねられる形式で解消できます。

第二に、受講状況が記録として残ります。ダイバーシティ推進の取り組みを対外的に説明する場面でも、誰がいつ受講したかを数値で示せることは実務上の意味があります。管理職向けの内容を別コースとして配布する運用も、階層に応じた割り当てができる配信環境があれば無理なく実現します。

eラーニングを活用した具体的な設計については、下記の関連記事が参考になります。

関連記事:ダイバーシティ推進に強いeラーニング5選|階層別の学びと無意識の偏見

ダイバーシティ研修を成功させるポイント

ダイバーシティ研修は実施すること自体より、実施した後に職場での行動が変わるかどうかが問われます。ここでは実務でつまずきやすい2つの論点を取り上げます。

一般社員と管理職を同じ時期に動かす

一般社員だけが研修を受けて管理職が後回しになると、職場の行動は変わりません。逆に管理職だけが施策を理解しても、一般社員の認識が揃っていなければ、推進施策が受け入れられにくくなります。

ダイバーシティ研修は、一般社員向けと管理職向けを同じ推進サイクルの中に組み込む設計が前提になります。内容はそれぞれ異なりますが、全社員に基礎認識が揃う時期と、管理職が施策を動かし始める時期が乖離すると、制度と現場の行動がずれたままになります。一般社員向け研修と管理職向け研修を連動させて計画することが、推進の実効性を左右します。

異動者や新入社員にも随時届けられる体制を持っておくと、年度の開催を待たずに全員の認識を揃えられます。人事異動のたびに認識の空白が生じる構造を、運用設計で防ぐことが継続的な推進につながります。

研修後の職場での実践を支える仕組みを持つ

研修で「ダイバーシティが大切だ」と理解しても、日々の業務に戻れば従来の行動パターンに戻ることは珍しくありません。一度の研修で職場の文化が変わるとは考えず、継続的な働きかけの設計が必要です。

実践を支える仕組みとして有効なのは、研修後に職場で話し合う機会を設けること、推進の進捗を定期的に確認するサイクルを持つことです。管理職が日々の場面で無意識の偏見に気づき、行動を修正できる環境があって初めて、研修の効果が職場に根付きます。研修単体を完結させるのではなく、推進の仕組みと研修を一体として設計する視点が求められます。

まとめ

ダイバーシティ研修がうまく機能するためには、一般社員と管理職を同じ時期に動かす設計が前提になります。一方だけに届けても、職場での行動の変化には結びつきません。

扱う内容は、全社員が共通で学ぶダイバーシティの基礎・無意識の偏見と、管理職が上乗せで学ぶ推進施策の理解に整理できます。このうち意義の理解や知識として届ける部分は動画が向き、管理職向けの施策判断や演習は集合またはオンラインが向きます。

研修を実施した後も、職場での実践を支える仕組みまでを設計の範囲に入れることが、ダイバーシティ推進の定着を左右します。制度と研修だけでなく、日々の職場での行動変容を支えるサイクルを持つことが、推進の実効性につながります。

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よくある質問

Q. ダイバーシティ研修で具体的にどのようなことを教えますか?

性別・年齢・国籍・働き方などの違いを持つ人が力を発揮できる職場をつくるために、必要な知識と姿勢を扱います。扱う範囲は、ダイバーシティが求められる背景の理解から、違いを認知・受け入れ・成果につなげるという段階の理解が中心です。管理職には、よくある誤解の整理やポジティブアクションといった推進施策の理解が加わります。一般社員向けと管理職向けで学ぶ深さが異なるため、対象に合わせて内容を設計する形が一般的です。

Q. ダイバーシティとインクルージョンは、どう違うのですか?

ダイバーシティは人材の多様さそのものを指し、インクルージョンはその多様な人が実際に力を発揮できている状態を指す言葉として使い分けられます。両者を並べて「D&I」と表記されるのは、多様な人を集めるだけでは十分ではないという考え方が前提にあるためです。研修でも、違いがあると知る段階と、その違いを受け入れて活かす段階を分けて扱う構成が取られます。

Q. アンコンシャスバイアスとは何ですか?ダイバーシティ研修で扱いますか?

本人が気づいていない思い込みのことで、ダイバーシティ研修の主要なテーマの一つとして扱われます。ダイバーシティを妨げるのは明確な差別よりも、こうした自覚のない判断であることが少なくありません。「この仕事は男性向き」といった見方が、無自覚のまま機会の差につながる場面が例として挙げられます。研修では偏見の前提にあるステレオタイプの思考の癖や、見方を捉え直す技法まで含めて扱われることもあります。

Q. 管理職にはダイバーシティ推進でどのような役割が求められますか?

多様なメンバーが働ける環境を実際に整える役割が中心になります。一般社員が違いを認め活かす姿勢を身につける段階にあるのに対し、管理職は推進施策の理解と組織づくりまでを担います。取り違えた理解のまま進めると、特定の層への配慮が別の不公平を生む場合もあります。研修ではよくある誤解の整理に加え、ポジティブアクションや仕事と家庭の両立支援といった施策の考え方が扱われます。