対策を打っても同じ問題が形を変えて繰り返される職場では、多くの場合、問題の原因を確かめないまま解決策に飛んでいます。何が起きているかは見えていても、なぜ起きているかを掘り下げないと、手を打つたびに別の問題が浮かび上がります。
この状況を変えるには、問題を定義する段階から原因の特定・解決策の立案・効果の検証までを一続きのフレームとして教える研修設計が必要です。思考の型を組織で揃えることで、担当者ごとにばらついていた問題へのアプローチが共通言語で動くようになります。
本記事では、問題解決研修で扱う内容と、集合・オンライン・動画の形式をどう使い分けるかを解説します。成功のポイントやよくある疑問にも触れているので、研修設計の判断材料にしてください。
目次
問題解決研修とは
問題解決研修とは、あるべき状態と現状のずれを見つけ、原因を特定して対策を打ち、効果を検証するまでの一連の思考を、スキルとして習得する取り組みです。研修の対象は、全社員向けの思考力教育としても、若手の基礎教育としても使われます。
研修を通じて到達したい状態は、フレームの名前を知っているだけでなく、実際の業務の場面で「何が問題なのか」を定義し、原因を絞り込んで対策に落とし込める状態にあることです。対策を打って終わりにせず、効果を確かめて次につなげる流れまでを身につけることです。その一連が、研修設計の根底にある考え方です。
ロジカルシンキング研修との違いとして、ロジカルシンキングが論理的に考え、根拠をもって結論を導く「考える技術」を扱うのに対し、問題解決研修はその技術を使って「問題に適用するフレームと手順」を扱います。両者は関連しますが、「解決策を思いつくが実務で機能しない」という課題への対処として研修を組む際は、問題解決研修が論点の中心になります。
厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」によれば、企業が正社員(50歳未満)に重視するスキルとして「課題解決スキル(分析・思考・創造力等)」を挙げた割合は31.1%です。コミュニケーション能力や職種特有スキルと並ぶ上位に入っており、問題解決力が経営課題として認識されています。一方、体系的な研修機会はまだ限られていることがうかがえます。
出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」調査結果の概要(2026年7月31日公表・図10)
問題解決研修で扱う内容
問題解決研修の内容は、「問題を正しく定義する」「原因を特定し、解決策を立てる」「課題を見つける力を養う」という3つの切り口で整理できます。この流れで学ぶことで、問題への対処が後手に回らず、自ら課題を見つけて動ける状態が目指せます。
問題を正しく定義する
最初に押さえたいのは、そもそも何が問題なのかを定める段階です。「売上が下がっている」という認識だけでは打ち手が定まらず、担当者ごとに違う対策が動き出します。
問題と課題の違い、そして問題の定義の仕方から始まり、問題箇所を絞り込む方法を扱います。解決策を考える前のこの段階が、結果を最も大きく左右します。
原因を特定し、解決策を立てる
問題の所在が分かっても、原因を取り違えれば対策は効きません。思いついた原因で止まらず、複数の可能性を検討したうえで最も影響の大きいものを見極める必要があります。
原因の特定から解決策の立案、実施後の効果検証までを扱います。対策を打って終わりにせず、効果を確かめて次につなげる流れが押さえられます。
課題を見つける力を養う
指示された問題を解くだけでなく、まだ表面化していない課題を自ら見つけられるかどうかが、担当者としての力量を分けます。現状を当たり前と受け止めていると、改善の起点そのものが生まれません。
課題発見力の考え方から現状分析の手法、周囲への提案の仕方までを扱います。若手が主体的に動けるようになるための土台として使えます。
問題解決研修をどう実施するか
問題解決研修で扱う内容は、性質が2つに分かれます。問題定義・原因の特定・フレームの考え方といった知識として届ける部分と、実際のケースに当てはめて考え、他者と検討する演習が必要な部分です。この2つを同じ形式で扱おうとすると、どちらかに無理が生じます。
実施形式ごとの性質を整理すると次のようになります。
| 実施形式 | 向いている場面 | 同時に届けられる人数 | 必要なもの | 記録の残り方 |
|---|---|---|---|---|
| 集合(対面) | 講師に直接聞ける。演習や議論も組める | 会場の収容人数 | 講師・会場・日程調整 | 出席簿 |
| オンライン(ライブ) | 拠点をまたいで同時に受けられる | 拠点をまたいで可 | 講師・配信環境・日程調整 | 接続ログ |
| 動画 | 各自の都合で受けられる。同じ内容を何度でも | 人数の制限なし | 教材・配信のしくみ | 受講履歴・テスト結果 |
ここからは、2つの学習領域をどの形式で身につけるかを整理します。
原因の特定と解決策立案の演習は集合・オンラインで身につける
問題の定義ができたあと、原因を特定して解決策を立てる段階は、知識として知っているだけでは実務で機能しません。「なぜなぜ分析」や「特性要因図」などのツールを実際のケースに当てはめてみることが必要です。そこで初めて「複数の原因候補を並べて最も影響の大きいものを選ぶ」という動作が身についていきます。
このフェーズでは、架空のケースや自社の実際の課題をもとに、参加者が原因を掘り下げ、解決策を検討する演習が中心になります。参加者同士で「この原因候補は本当に根本か」を突き合わせる議論が、分析の精度を上げます。集合またはオンラインライブの形式が向いているのは、他者との議論がこの段階には欠かせないためです。
ただし、演習の時間をすべて集合の場で使うのは効率がよくありません。フレームの知識や手順といった前提は事前に動画で届けておき、集合の場はケーススタディに充てる分け方が実務的です。
知識とフレームはeラーニングを有効活用する
問題を定義する手順、原因を特定するアプローチ、解決策を立案する考え方といった「知識として届ける部分」は、動画で配る形が向いています。eラーニングがこの領域で有効な理由は2点あります。
第一に、対象が全社員に広がります。問題解決の思考力は職種・役職を問わず必要になるため、幅広い層に同じフレームを届ける必要があります。日程を揃えて集合研修に集めるのが難しい規模でも、受講タイミングを本人に委ねられる形式が実務に合います。
第二に、繰り返し確認できることが定着を後押しします。実務でフレームを使う場面が来たとき、動画に戻って手順を確認する使い方が、スキルの定着を支えます。
関連記事:問題解決に強いeラーニング5選|問題の定義から原因特定・効果検証まで
問題解決研修を成功させるポイント
問題の定義をスキップしない設計にする
研修では「原因の特定」や「解決策の立案」にすぐ進みたくなりますが、何を解くべきかを定める段階を飛ばすと、その後の対策が機能しなくなります。「売上が下がっている」という認識のまま対策に入ると、担当者ごとに別の打ち手が動き出し、チームの力が分散します。
研修設計として、問題定義のステップを最初のセッションとして明示的に組み込み、この段階に十分な時間を割り当てます。解決策を考える演習の前に、「今回扱う問題は何か」を参加者全員で揃える場を設けることが、研修の効果につながります。
フレームを学んだあと実務で使う場を設ける
問題解決のフレームは、研修の場で一度学んでも、実務で使わなければ定着しません。研修後に自分の担当業務の中で実際に試す機会がないと、研修で覚えた手順が職場に持ち帰られずに終わります。
研修の場に演習時間を設けるだけでなく、研修後にも実務の問題にフレームを当てはめる機会を継続的に持てる設計が有効です。たとえば、研修から数週間後に「自分の業務で問題定義を試した事例を持ち寄る」場を設けることが、定着につながります。
まとめ
問題解決研修は、あるべき状態と現状のずれを見つけ、原因を特定して対策を打ち、効果を検証するまでの一連の思考をスキルとして習得する取り組みです。原因を確かめないまま対策に飛びつく習慣を変えるために、問題定義から始まるフレームを組織で揃えることが、研修設計の核になります。
扱う内容は、問題を正しく定義する段階・原因の特定と解決策立案・課題を見つける力の3つに整理できます。このうちフレームの知識と手順は動画が向き、実際のケースに当てはめて他者と検討する演習は集合またはオンライン形式が向きます。
研修の効果を現場に根付かせるには、問題の定義を研修設計の中でスキップしないことと、研修後にフレームを実務で使う機会を継続して設けることが鍵になります。知識のインプットだけで終わらず、実際に使って確認する機会が揃うことで、組織全体の問題対処の質が上がります。
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よくある質問
Q. 問題解決の基本的なステップはどのようなものですか?
問題の定義から始まり、問題箇所の絞り込み・原因の特定・解決策の立案・効果の検証という流れが基本的な手順として挙げられます。フレームによって4段階から8段階まで表現の揺れがありますが、「何が問題か」を定める段階を最初に置く点は共通しています。解決策を考える前のこの段階を飛ばすと対策が機能しないケースが多いため、研修では問題定義に十分な時間を割いた設計にします。
Q. 問題解決研修とロジカルシンキング研修は何が違いますか?
ロジカルシンキングは、物事を筋道立てて考え、根拠をもって結論を導く「考える技術」を扱います。一方、問題解決研修はその思考技術を使って「問題に適用するフレームと手順」を学びます。両者は重なる部分がありますが、ロジカルシンキング研修が思考の型の習得を中心に置くのに対し、問題解決研修は問題の特定から対策の実行・効果検証まで一連の流れとして扱う点で異なります。「考えられているのに同じ問題が繰り返される」という職場の課題には、問題解決研修のアプローチが直接的に対応します。
Q. 問題解決研修でよく使われるフレームワークにはどのようなものがありますか?
原因を掘り下げるための「なぜなぜ分析」(Why-Why分析)、原因と結果の関係を整理する「特性要因図」(フィッシュボーン図)などが実務の研修でよく扱われます。問題を広く整理するためのKJ法や、対策の優先順位をつけるためのマトリクスを併用するケースも多くあります。フレームワーク自体の暗記より、自社の問題に当てはめて使う練習がセットになることが定着への近道です。
Q. 問題解決力を高めるには、どのような学び方が向いていますか?
問題の定義、原因の特定と解決策の立案、課題を見つける力という順で段階的に押さえる進め方があります。ただし、思考系のスキルは座学だけでは身につきにくいため、演習や実務でのアウトプットとの併用が前提になります。eラーニングは、手順や考え方の型について社内の理解を揃える土台づくりに向いています。
Q. 問題解決能力が高い人は、どのような動き方をしていますか?
指示された問題を解くだけでなく、まだ表面化していない課題を自ら見つけて動ける点が挙げられます。現状を当たり前と受け止めていると、改善の起点そのものが生まれません。そのため、現状を分析する基本手法を押さえ、見つけた課題を周囲へ提案するところまでを一連の動きとして身につけておくと、主体的に動ける土台になります。








